第1話・クンニしないと出られない部屋
コルネは駆け出しのトレジャーハンターだ。
天涯孤独という生い立ちもあって、若い身空でありながら様々な遺跡を巡ってはそこに眠る財宝や、歴史研究の資料となるべき発見を持ち帰り、それを日銭に変える生活をしていた。
若くしてそれなりの成果を上げているコルネの成功は彼自身のセンスはもとより、パートナーとして共に行動しているテブリムの献身に依るところも大きい。
彼女の超能力により重要発見の特定は元より、遺跡内においては罠の発見や解除に至るまで、テブリムの協力があったればこそコルネは今日まで無事に生き残れたといっても過言ではなかった。
そんな信頼できるビジネスパートナーであると同時に幼馴染でもある彼女は、もはやコルネにとっては肉体や心の一部と言っても過言ではない存在となっていた。
そしてそれはテブリムにしても同じらしく、もはや二人の仲睦まじさは『人とポケモン』の垣根を越えた、対等かつ信頼と親愛に満ちた関係ですらあった。
斯様にして今日(こんにち)まで最強の二人ではあったがこの日──彼らは生涯初となる遺跡内のトラブルに巻き込まれることとなった。
いつも通りに探索をしていた最中、突如として遺跡内の退路が落石に塞がれた。
老朽化による崩壊というよりは、罠の意図を思わせるそれにコルネとテブリムは唖然とする。
それこそはテブリムがそれを見抜けなかったことにあった。
彼女による罠や隠し部屋の察知は、そこに残留する制作者の悪意を読み取ることで発揮される。
特に探索者を陥れようとする類の罠に関しては過敏なほどに反応するはずのテブリムが、この時に限っては一切その気配に気付くことなく罠を受け入れてしまったのだった。
そのことに責任を感じては動揺するテブリムを、
「お前のせいじゃないよ。こういうのは僕だってしっかりしてなきゃいけないんだ。別の道を探そ」
コルネはそう励ましつつあえて明るく、そして何事でもないように振舞った。
生来のテブリムは心配性で怖がりだ。ここでコルネが不安がってしまっては、なおさらに彼女が傷つくことを危惧したが故の行動である。
それでもすすり泣いでしまうテブリムをコルネは抱き上げると、幼児をあやすように彼女を慰めながら共に直線の回廊を辿った。
しばし歩くと、二人は開けた一室に出る。
他の場所同様に石造りのそこは、次の部屋か回廊に出る為の頑強な扉が対面の壁に設けられただけの簡素な造りである。
とりあえず扉の前まで歩み寄ってそこを見上げると、扉の上部にはこの部屋の特異な罠を説明するアンノーン文字による暗号があった。
斯様なポケモン文字の解読が苦手なコルネは瞼をしかめてはたどたどしくその文字を辿ったが──彼の腕の中からそれを見上げていたテブリムはいち早くその文言を解読しては絶句する。
「分かったかいテブリム? なんて書いてるあるの?」
なおも解読を続けるコルネをよそにすっかり黙りこくってしまったテブリム。
さてはそれほどに残酷か、はたまた絶望的な内容がそこに記されているのかと戦慄を覚えるコルネではあったが、その数分後──それらとは全く違った方向でコルネは驚愕することとなる。
そこにはこう書かれていた。
【 女性同伴者の生殖器を舐めろ 】
そのあまりの唐突さと無意味さに二人は唖然となる──要は、【クンニしないと出られない部屋】であったわけだ。
その意味を理解して二人は言葉を失った。
あるいは読み間違えがあったのかとも思い、繰り返しそれの解読を試みたものの……その意味はやはり、テブリムの膣をコルネに舐めるよう指示する内容であった。
依然として固まったままのコルネの中には実に様々な思惑が渦巻いていた。
実のところ、テブリムのそれを愛撫してやることにコルネはさして抵抗や嫌悪も感じてはいなかった。
問題はこれを彼女がどう受け止めるかである。
ポケモンとはいえ、人並み以上に知能の高いの彼女はもはや、『ポケモンを模った人』と言っても過言ではないくらいの自我と精神性を確立した存在であったからだ。
ゆえに今命令されているようなことに対する羞恥心や嫌悪は人並み以上に備わっていることだろう。
ならばコルネの答えはもう決まっている。
「……はあ。戻って別の道を探してみよう」
何よりもテブリムが第一だ。
こういう時にこそパートナーを思いやってやれなければ、互いの間に信頼などは築けないことをコルネは知っていた。
ゆえに当然の如くコルネはそう決断し、来た道を折り返そうとした訳だが──突如としてテブリムは彼の手から飛び降りた。
見れば扉のすぐ脇には小高い燭台のようなものが設えられており、そこに降り立つと改めてテブリムはコルネと向き合う。
高さ的にもその上でテブリムが直立すると二人の目線はちょうど同じくらいの高さとなった。
もしかして何か突破のアイデアがあるのかとその行動に期待をしたコルネであったが、事態は思いもよらぬ方向へと動き出すこととなる。
その燭台の上で、テブリムは尻もつを着くように座り込む。
そして末広がりのドロワーズ然とした尻を持ち上げ、曲げた両膝の裏に手を掛けると──テブリムは自身の股間をコルネへと晒すように開帳したのであった。
「ち、ちょっと! 何してるのテブリムッ!?」
一方で激しく動揺したのはコルネであった。
一連のテブリムの行動はまさに自身の股間をコルネに舐めてもらうが為に膳立てた行為であったからである。
おまけに今のテブリムを乗せた台の高さたるや、ちょうどコルネの眼前に彼女の股間が晒されるという絶妙さですらある。
……まるでそうさせるために設えたかのような意図さえそこには感じられた。
そんな状況の中で、テブリムはか細い声を上げた。
僅かに震えが混じる涙声のそれはコルネにクンニを求めるそれである。
その声同様に曇った表情には瞳が涙で潤みと、いかにこの行為が彼女にとって恥ずかしいものであるのかを物語っていた。
同時にコルネも察する。
これこそは彼女なりのケジメの付け方であるということを。
罠を察知するという従来の役割を果たせなかった責任感はテブリムの心を圧迫し続けていた。
いかにコルネに問題無いと慰めても、当の本人であるテブリム自身こそが自分達をこんな窮地へと追い込んでしまった自分を許せずにはいられなかったのだ。
いわば一連のテブリムの奇行はそんな責任感ゆえの行動であった。
そしてそれを察した以上、コルネも覚悟を決めるしかなかった。
彼女に恥をかかせられない……そうまで心を決めたのであるならば、これに応えることもまたパートナーである自分の務めであるのだと自覚もしていた。
「……わかった。それじゃ、やるよ?」
そう告げて僅かにコルネが上背を屈めると、股間に迫る彼の鼻先とそして吐息とを感じてはテブリムも緊張に身を固くする。
かくしてぎこちないコルネの上唇は──震えるテブリムの股間へと着地したのだった。