パオジアンと刃を交えるに際し、ガーディは寄り代となっているリンの肉体を傷つけまいと配慮しては、少なからずの手心を加える思惑でこの戦いへと挑んだ。
しかしながら、それこそは取るに足りない気遣いであったことに……即ちは自身の自惚れを思い知らされる結果となった。
初手において、自身の得意とするスピードにおいて撹乱すべく、ガーディはパオジアンの周囲を電光石火のフットワークにて翻弄した。
テールランプのごとき赤い残像の帯を引きながら縦横無尽に標的を囲い混むこの戦法は一族内における訓練や、はたまた外部でのポケモンバトルにおいてさえ攻略されたことはないガーディの必勝パターンとも言うべき布石の一手ではあったが──その中央で微動だにしなかったパオジアンがある時、
『あなやぁ………』
場違いにも嗤いを浮かべた。
そうして次の瞬間にはフットワークの中央に捉えていたパオジアンが、突如として消え失せる。
その動きにガーディもまた目を見張るとその姿を探す。
動体視力に優れたガーディの目は即座に自身の前方にリンの……今となってはその体を憑き奪ったパオジアンの背を発見した。
どうやら相手もまたガーディとのスピード勝負に打って出たらしい。
その意図を計ると、ガーディもまたスピードを上げた。
見たところ自分の方が速力には勝る自負があった。ならばこのまま一息に決めてしまおうと、更なる力を滾らせては四肢をしならせたガーディではあったが……そこに彼は思わぬ違和感を覚えた。
僅か前方に捕らえているパオジアンとの距離が一向に縮まらない。
ならばと思いさらに全身のバネを俊敏にさせるも、二匹の距離はその一時わずかに縮まるばかりでまたすぐに引き離された。
やがては追いかけるパオジアンの背が僅かずつに遠ざかっていく。
そしてその距離は半周ほどに離れては疾走するパオジアンを横目に捉え、さらに数瞬後には──一変して背後からパオジアンに追走される展開へと状況は変化していた。
この時になり、ようやくにガーディも気付く。
彼のパオジアンは俊足自慢の自分を遥かに凌ぐ速力を持っていたことを。
高速のその世界の中において、やがては左隣に追いつかれてしまうと二匹は並走する形で肩を並べた。
この一事からも分かることはパオジアンは自身よりも速力に劣るガーディを隣にして、その優越感に浸っているという事実……そして存分にそれを愉しみ、さらにはガーディの狼狽ぶりを存分に愛でた後、
『キルキルキル……愚鈍めぇ』
横並びで目の合ったパオジオンの貌が……よく知るリンの口角が、目尻に触れ合わんばかりに吊り上がった次の瞬間──さながら爆発するかの如き衝撃が鼻先に炸裂した。
その一撃に地にへばりついていた蹠が離れると、ガーディは突風に弾かれるが如く宙を錐揉みしては、壁面の一角へと叩き込まれる。
斯様なガーディを打ち込まれた壁面は、彼の質量のみならずガーディが纏ってきた衝撃波もまた受け止めては、大きく半球状に崩壊してその瓦礫を宙へと舞わせた。
倒れ込むガーディの頭上に崩れた瓦礫が舞い落ちるも即座に起き上がり、辛うじて前傾姿勢に身を沈めた構えを取り直すもしかし……もはやそれらは本能で行われているだけであり、ガーディの意識は遠く脳や肉体から離れた場所にあった。
朦朧とする意識はそれでも現状を把握しようと回転するあまり、つい先ほどの攻防を記憶の中へと再生させる。
パオジアンが自分を追い抜いた直後、繰り出された右裏拳がガーディの鼻頭へと炸裂していた。
それにより体幹が崩されたガーディは、自身が纏っていた高速の衝撃に飲み込まれそこから弾き飛ばされては今に至っていた。
そして斯様な状況分析は同時に、この聡明なガーディへ一つの答えを導き出すに至った。
自分如きの実力では、けっしてこのパオジアンを討伐することは叶わない──
それに気付いては、場違いにも戦い始めにリンの身を案じた自身を自嘲した。焦りや闘争心すらをも失わせるほどに、彼我の戦力差は圧倒的であったのだ。
そうこうするうちに、視界の先に遠くパオジアンの姿が見えていた。
今あの高速世界から降り立ったものか、あるいはもっと早くにあの場所にいて朦朧とするガーディを眺めては愉悦に入っていたものか……ともあれしかし、まだ終わりではない。
もはやこの戦いにおける勝敗に自身の命の有無は関係なかった。
是が非でも、たとえこの身に代えてもガーディはパオジアンを此処より地上へと出してしまう訳にはいかないのだ。
その決意が再び気力を呼び覚まし、そして僅かばかりでも休憩を取れたことで肉体に感覚を取り戻したガーディは──今一度大きく咆哮を上げては再び、前方のパオジアンへと地を蹴った。
『おぉ、おぉ……愛(う)い愛い……好(よ)き仔犬じゃあ』
傷つき、心身の負傷に震えながらも気力を奮い起こすガーディの姿は思いもよらずパオジアンの胸を打った。
さりとてそれは生命賛歌への感動には程遠く、対象を自分よりも一段下の存在として見下すが故の憐れみと、そして愉悦からの感心である。
一方で後の無いガーディは持てる己の全てを以てパオジアンへと当たった。
従来は丸みを帯びた鬣の毛先が鋭く毛羽立つほどに体内の炎を燃焼させては、そこから濁流の如き巨大さの火炎放射を吐きつける。
瞬時に炎柱にまとわりつく空気を吸い込んでは、取り巻く周囲の大気を熱波に変えてパオジアンに迫るそれ。
しかしながら我が身の数倍を誇るその炎を前にしてもパオジアンは動じない。口元には蔑みの笑みを残したままである。
そしていよいよ以てそれを直前に控えるや、
『キルキルキル……裏を取ったつもりかえ?』
突如として正面に据えられていたパオジアンの視線が右へと走った──そこにはこの火炎放射に並走して迫りくるガーディの火炎車が見えていた。
先の火炎放射は威嚇であると同時に足止めであり、本命はこの火炎車だ。
火炎放射を受け止めるならばそれに追従して追い打ちをかけ、躱そうものならば無防備なそこへ全力の火炎車を打ち込むのがガーディの戦術であった。
そしてその二択を前にパオジアンは──空へと舞い上がった。
『躱した』のだ。
そこへとガーディは追撃する。あとは全力でぶつかるのみ。
一方のパオジオンもまた、体勢の制御が利かぬ宙空とあっては迫りくる火炎車を避ける術もない。
飛翔した時のままの片膝を上げた無防備な姿勢のパオジアンへと、ガーディもまた咆哮一閃とばかりに火炎車の飛翔を敢行したその瞬間──
『うつけめぇ………』
突如として、パオジアンの姿が消えた。
その瞬間をガーディの目もまた追っていた。
宙空において両膝を畳んで身を丸めるや、パオジアンは両掌から突出していた剣の剣脊に両足を置いた。そしてその両剣を手の平から分離させると同時──それを足場にして今度は地上へと跳躍を果たしたのだ。
これにより完全にガーディの攻撃は目論見を失った形となる。
しかしながら──この瞬間こそが、ガーディの戦術における盤上逆転の一手であった。
宙において丸みを帯びてガーディを包み込んでいた炎が一変して尖鋭的なフォルムへとその形態を変える。
そしてその切っ先を、まるで弓の狙いを定めるかのよう下降中のパオジアンへ定めるや次の瞬間──再び石室の空気を焼き貫いては、ガーディはフレアドライブによる強襲を敢行した。
『あなやッ────!』
それを前に、この日初めてパオジアンの表情から哂いが消えた。
高速で迫りくるそれに対し、再び両掌から刃を生み出しては防御に当てようとするも──もはやその再生すら待たずにガーディは乾坤一擲の体当たりをパオジアンへと炸裂させた。
激しく自身の身を打ち当てたまま、双方は地の石畳へと衝突しては周囲にガーディの炎を爆発飛散させた。
赤く熱を持った爆心地は大きくその地表を削り取り、周囲には飛び散った炎の残滓と黒煙とが立ち上がる。
そして斯様な煙の暗幕の中、足元の炎に照らされた影が一つ……ゆらりと立ち上がった。
しばし影法師は茫然と足元を見つめた。
やがて黒煙の薄れゆくその下から現れた者は……──
『キルキルキル……まこと、好い狗じゃあ』
その頬の一部を僅かに煤けさせたパオジアンであった。
そうして完全に黒煙の晴れたそこに現れた光景は──その鼻先をパオジアンの右掌でワシ掴まれては地表に叩きつけられた姿のガーディが、力なく瓦礫の中心で横たわるばかりだった。
完全に意表を突いたあの瞬間においても、やはりパオジアンの膂力が勝った。
宙空でガーディを受け止めたパオジアンは、力任せに身を翻しては、受け止めたガーディを勢いそのままに石畳ヘと叩きつけたのである。
押さえつけていたパオジアンの掌が離れてもガーディは微動だにしなかった。
もっとも肉体を取り巻く炎はその勢いこそ衰えさせつつも消えていない様子から、辛うじて一命はとりとめているようではある。
がしかし……それとても詮の無いことだ。
もはやガーディは尾の一振りとして動かすことは叶わなかった。
おそらくはこのまま死に至ることだろう。
仰向けのまま微動だにしないガーディにもしかし──その時、ある肉体の変化が起きた。
こともあろう天に向けられた股間の毛並みの中から薇(ゼンマイ)の如きにゆるりと鎌首を持ち上げながら……勃起してきたガーディのペニスが硬く屹立したのであった。
それを目の当たりにし──爆発するようなパオジアンの笑い声が周囲に響き渡った。
文字通りに腹を抱えては身を屈め、死に瀕した生物が見せる生存本能の生理現象をパオジアンは心底から憐れに感じては込み上がる嘲笑を抑えきれなかった。
しばしそうして笑いつくした後、何を思ったかパオジアンは依然仰向けになったままのガーディへと鼻先を突き付ける。
『憐れな仔犬ヨ……ならば、死ぬ往くお前に妾からの手向けじゃ』
語り掛けながら自身のワンピースの胸元を両手でワシ掴むや、パオジアンは身に着けていたそれを左右に千切り剝いだ。
ワンピースとその下に纏っていたスリップの残骸が宙に散らされては、そこに残っていた炎の残滓に浸食されて灰燼と化す。
乳房の膨らみなど微塵も無い、僅かにアバラの浮いた胸元と白く起伏の無い腹部を晒しては、その股間を覆っていた最後の下着の一枚もまたパオジアンは剥ぎ取って捨てる。
体毛の一本も生えそろっていなければ、おおよそ排尿にしか使われてこなかったであろう尻の割れ目と同化した膣のスリットを露出させては、パオジアンはガーディを足の間に跨いだ。
そうして両膝を曲げて腿を水平にすると、その犬型ポケモン特有の先細ったペニスの先端を下ろした膣のスリットになぞらせては刺激を与えつつ……
『今日までこの者に仕えてきた褒美じゃ……』
折った膝の上に右ひじを乗せては頬杖をつくと、そう傲慢に吐き捨ててはパオジアンはガーディを見下ろした。
斯様な状況には、その意識を朦朧とさせていたガーディもまた我に返り必死の抵抗を試みる。
無駄な抵抗と知りつつも身を捩じらせれば、皮肉にもペニスはパオジアンの膣の溝を解しては、一層にその内部へと先端を潜り込ませてしまった。
『キルキルキル……おぉ、こそばいこそばい。焦るでない……待てぬというのなら叶えてやろう』
改めて身を起こすや、パオジアンは肩をいからせて両手を膝頭に被せる。
そうしてその瞬間を恐怖に慄く眼差しで見つめてくるガーディを射竦めながら次の瞬間──
『この娘の純潔………しかと味わうがいい』
一切の躊躇もなくパオジアンは、ガーディのペニスを幼きリンの膣内へと挿入させてしまうのだった。