その日、都内で発生した銀行強盗の襲撃現場に現れたのは……──
「愛と正義のポケモン! ピーオージーン参上! 雪に変わっておしおきよ♡」
その全身をニンフィアよろしくの、黒いレースリボンに身を包んだポケモンであった。
白を基調とした体色に黒のリボンというゴスロリ風のいで立ちにもしかし、そのポケモンは凄まじい強さを見せては瞬く間に現場の強盗3名と、その協力者であったポケモン2匹を取り押さえてそこを去っていった。
さらにはこの事件の前後にも似たような事例が多数発生しており、いずれの場合も強盗や危険なカーチェイスを繰り広げる凶悪犯達を、かのポケモンは瞬く間に取り押さえてはその身柄を確保していたのである。
専門家すらその種類の特定が難しい稀少な見た目も相成って、巷間では新たな都市伝説として浸透し始めたこの事象ではあるがしかし……──
「ふ~……今日も世の為、人の為に頑張っちゃったねパオジアン?」
自室に戻り、姿見の前でゴスロリ調の自分自身(パオジアン)に語り掛けるリン。
そんな問いかけに対し、
[ うおあああぁぁ~ッッ‼‼ 殺せ! もう殺してくれぇッッ‼ ]
その内面から呼応したのはその肉体の本来の持ち主であるパオジアンであった。
「ダメだよ、ワガママ言っちゃ。あなたが今まで迷惑かけた償いを少しでもしなくっちゃ」
[ 世直しのことではなく、妾はこの見た目のことを言っておるのじゃ! ]
「えー、カッコイイじゃん?」
姿見を前に着飾った姿を見つめるリンとパオジアンとの温度差には液体窒素と溶鉱炉並みの差がある。
よくよく見ればこの姿、全身のいたる所を黒レースのリボンと、さらには雪の結晶を模したアクセサリーで彩り、ご丁寧に腰元にはミニスカート然とした腰巻という、さながら女児アニメのヒロインヒーローを思わせるような出で立ちであった。
「全然おかしくないよね、ガーディ?」
幾度となく姿見の前で体を翻し、さらに後ろ足で直立しては左前足の内肘に右手首を乗せて相手を指差す決めポーズも披露してみせるリン。
その傍らでは舞踏会のアイマスクで顔を隠し、さらにシルクハットとマントを羽織った『ブリザード仮面』なるガーディも同意を示すよう一声吼えた。
[ おおおおおお……ッ、こんなことならあの時に消滅した方がどれほどマシだったか……! ]
リンとガーディにだけ聞こえるパオジアンの内なる声が耐えがたい苦痛と悲哀とを入り混ぜては絞り出される。
あの封印の地下室における事件以降──リンはこのパオジアンの容姿と能力を自在に切り替える力を手に入れていた。
それによりリンが始めたことがこの、有事の際にはパオジアンに変身して事件を解決するという『世直し行脚』であったのだった。
もっともパオジアンは既に討伐したものとして、リンも自分の家に報告していたことからも、表立って『パオジアン』を名乗るわけにはいかない。
その結果生み出されたのが変装にて正体を隠した『愛と正義のポケモン・ピーオージーン』であったという訳である。
この時のパオジアンには自身の体はおろか、人であるリンの体に至るまで双方どちらの支配権も得てはいなかった。
ただただこの体の中においてリンの行う世迷言……もとい世直しを見つめ、それに加担する道化たる自分を憐れみ続けるしかないのだった。
[ そちらのガーディを復活させるために力を使ったせいで妾の永久性も失われてもうた……後はこの同化したお前が死ねば妾もその巻き添えで死ぬ……そんな脆弱な生き物になってしまったというのに、なおもお前は妾を苦しめるか!? ]
「あなただって今まで他の人にヒドいことしてたんでしょ? じゃあ今度は自分の番じゃない」
[ ぬぐぅ……ッ ]
二人の不毛なやり取りはいつもこの着地点で終了する。
自身が強大な力を持っていた頃は斯様なリンの言葉も笑い飛ばしたであろうが、もはや肉体の借り暮らしが確定してしまった今となっては唯々諾々と受け入れるしかパオジアンには無かった。
「さてと……無事に人助けも出来たし、今日の『ごほうび』いっちゃおうか?」
一方で話を切り上げたリンは改めて傍らのガーディへと向き直る。
[ ま、待て! よもやまた妾の体で致そうと宣うかッ? やるなら自分の体に戻って致せい! ]
慌てふためくパオジアンを前にガーディもまた仰向けに寝そべると、胸の前で前足を折り揃えては無防備に腹を晒す。
新雪のように白くふくよかな内腹の中に一点、赤い花の如くに勃起したペニスが屹立していた。
それを前にしてリンもまた興奮に鼻を鳴らすと、上唇を大きく舐めては口中に生じてくる唾液を飲み下す。
ポケモンの体を使役した後は決まって強い興奮状態に陥るのが常であり、そしてその慰め役は決まってガーディであった。
そのことに対し、自分が下賤の者に触れられることを激しく忌避するパオジアンではあったが、
「もうわたし達は一心同体でしょ? それにこれは罰なんじゃなくて『ごほうび』なんだからパオジアンも楽しんでよ♡」
そう言っていつもリンは彼女を説得してしまう。
そもそもが再三、パオジアンには拒否権など無いのだ。
やがてリンはガーディの元へとたどり着き騎乗位にその体を跨ぐや、お互いの前戯も無しにその先端を膣口に擦り付けていく。
先の活躍ですっかり興奮状態となった肉体は、すでに溢れんほどに濡れ咲いてはいつでもガーディを迎え入れられる状態にまでなっていた。
「それじゃあ今日も良い事が出来たのをお祝いして……カンパーイ♡」
[ んぎゅおああああああああああああッッ‼ ]
訳の分からない音頭と共に、一息でペニスを挿入してしまってはその後ハードファックへと移行していく二人……。
きっと短い人の生が全うされるその日まで、自分はこんな理不尽に振り回されることだろう。
しかしながらリンと共有するその強い快感に晒されながらパオジアンも──
[ まあ……これはこれで良いか…… ]
いつしかこのノリにも感化され始めている自分へ気付くこともなく──過ぎ去りし日の厄災は、正義執行の『ごほうび』を諦観の内に享受するのであった。
【 夏禍の豹剣・完 】