※ 注意!
この章にはポケモンに対する、流血を伴った暴力や凌辱、レイプ、肉体の欠損、虐殺行為などの、残虐的な描写が含まれます。
自己責任のもと、お楽しみください。
会場入りするピカチュウを迎え入れたのは──予想外の大歓声であった。
その歓迎ぶりに当人であるところのピカチュウもが困惑してしまう。
地下の賭けプロレスなどと謂うからさぞアングラで、なおかつ部外者の自分などはブーイングのひとつでも貰うものだと思い込んでいただけに、この存外に熱狂的な受け入れには面食らわずにはいられなかった。
同時に自分の中のレスラー魂が刺激されるのを感じた。
ここまでの数の観客に注目されるなど、表世界のリングですらも受けたことが無い。
いつもピカチュウがショーをするそれなど場末の、しかも観客など微塵もいないような場所で孤独に戦うのだから。
思わぬ歓声に刺激されてはピカチュウの中の闘志も一気に燃え上がる。
セコンドであるユンストを追い抜いて花道を駆け抜けると、一躍トップコーナーまで飛び上がりその上にてピカチュウは高々と右腕を掲げた。
そんなアピールにさらに会場は熱せられていく。
この時のピカチュウは生涯初となる、自分が観客を魅了しては場を操る快感に酔いしれていた。
これこそは自分の憧れていたスター選手の姿だ。
図らずも、こんな場所においてその夢が叶ったことに、もはや非合法の危険な地下試合に身を投じていることなど忘れてピカチュウは今のリングを楽しんでいた。
そんな折り──ふと自分へと注がれる視線に気付く。
大衆から浴びせられるものではなくそれは、さながらに錐の如くに突き刺すような鋭くも冷たい気配──それに気付いてリング上を見下ろすピカチュウは、いつの間にやら対面の青コーナーに立ち尽くしているポケモンの存在に気付いた。
そこにはキテルグマが一匹──居た。
ピカチュウとは対照的に微動だにせず、円らな目でただ対戦相手であるピカチュウ一点を見据えてくる様子は、そのぬいぐるみ然とした見た目と相成って一切の感情が読めない不気味さがあった。
そんなキテルグマの視線にようやくピカチュウは我に返る。
このポケモンこそが本日の対戦相手であり、そして同時に得も言えぬ不気味さを感じては高揚していた気分も冷水を浴びせられたかのよう沈静してくのが分かった。
かくして場内アナウンスも無いまま、ピカチュウがトップロープから降りると試合開始のゴングが打ち鳴らされる。
開始直後、まずは四つん這いに姿勢を低くしてはピカチュウも相手の出方を窺う。
どの攻撃にも対応できるようにする為の構えではあったがしかし……キテルグマに動きらしい動きは無かった。
ゴング後、散歩よろしくに無防備にリングの中央へと歩み出て以来、キテルグマは微動だにしていない。
ならばこちらから仕掛けるべく、ピカチュウはスピードにて翻弄しようとキテルグマの周囲を駆け巡る。
それでもしかし何の変化も無ければピカチュウを追うべくに首一つ動かさないキテルグマに、ピカチュウの思考は「自分のスピードに追い付けないのだ」という希望的観測に偏っていた。
思えばここへ会場入りした時の歓声からしてもう、ピカチュウは元来の慎重さを見失っていた。
すっかり舞い上がってしまっては自身が絶対無敵のチャンピオンにでもなった気分でいたのだ。
そして今もそんな気持ちのまま身勝手に状況を解釈しては、不用意にキテルグマの正面からドロップキックによる強襲などを仕掛けてしまった。
これこそが間違いであった。
揃えられた両爪先がキテルグマへ届くよりも遥か手前で──ピカチュウは撃墜される。
突如として閃いたキテルグマの右掌が、蠅でも叩き落すかのよう振り落されては無惨に宙空のピカチュウを打ち据えたのであった。
斯様にして撃墜され、さらには掌を被せたままリングへと叩き潰されるその衝撃にピカチュウは大きくひとつ咳き込む。
そして次に呼吸を吸い込んだ瞬間──有りと在らゆる痛みがピカチュウの肉体を駆け巡った。
巨大な掌に打ち据えられ圧し潰される全身の骨の軋み、肺が潰されることで感じる痛みを伴った呼吸障害、眼球が飛びださんばかりに後頭部に広がる頭痛……その瞬間、ピカチュウはそれら痛みと衝撃によるショックで完全に肉体のコントロールを失った。
無数の羽虫が全身を這いあがってくるような痺れの中で全ての感覚が失調するピカチュウには、豪雨のよう会場に満ちていた観客達の声援すら消えていた。
それなのに意識だけは妙にハッキリとしていて、次なるキテルグマの攻撃に備えなければと気持ちだけが急いた。
しかし無情にも体は芋虫よろしくにもがくことしか出来ず、依然として肉体を包み込む激痛と苦しみの中──見上げる視線の先では再びキテルグマが右腕を高々と掲げていた。
アレが振り落とされれば致命傷は避けられない!
せめて両腕によるガードをと身を蠢かせるも、それすらもままならずにピカチュウは……無惨にも振り落とされる二撃目の直撃を顔面から受けてしまっていた。
口の中でカリカリと不快な音と感触が転がった。どうやら歯が折れたようだ。……否、この衝撃と重さから察するに、『砕かれ』たといった方が正確か。
それがトドメとなり、ピカチュウは完全にリングへ沈んだ。
言わずもがなのノックアウトである。
どんなに持ち上げられ気分を高揚させたところで、ピカチュウ本人の実力は変わらない。
表世界においても場末の興行の前座ですら満足に勤められなかった弱小レスラーの現実を改めて思い知っては、ピカチュウは一連の自分の行動を恥じては消えてしまいたい気分になっていた。
しかしながら──そうして敗北の感傷に浸れるのは表世界だけの話である。
ピカチュウがいま身を置くこの場所は、対戦者のノックアウトで試合を終わらせてくれるような場所ではなかった。
もはやすっかり戦意を喪失しているピカチュウの右腕を摘まみ上げると、まるで雑巾でも掲げるかのようキテルグマは眼前にそれを吊り下げた。
夥しい量の鼻血と、そして口中からの出血でコスチュームの胸元を赤く染め上げたピカチュウを前に、キテルグマは小首をかしげては何か考え込むようなそぶりを見せる。
その一切の感情がこもっていない視線にピカチュウは改めて恐怖を覚える。
意図の知れない感情はけっしてピカチュウを介抱しようという優し気なものではない。
それこそはむしろ逆で……これよりどう彼女を嬲ろうかの思索にふける表情であった。
いかに苦しい生活の中で世間から虐げられてきたとはいえ、肉体的な拷問それへの経験など無いピカチュウは、ただその恐怖から逃れようと身をよじらせた。
相変わらずの凄惨な状況ではあるが、幾ばくか休めたことで大分肉体の自由も取り戻しつつある。
万力の如き力で自分の右手を握り締めているキテルグマの拳を解こうとそこへよじ登り、弱々しく牙を立てるもしかし──むしろピカチュウが歯茎に激痛を感じて悲鳴を上げた。
口中はピカチュウが捉えていた以上に悲惨な状態であるらしかった。
それでもしかしその手から逃れようともがいていると、不意にもう片方となるピカチュウの左手をキテルグマは掴み取った。
両腕を水平にされ、さながら十字架へ貼り付けられたかのような姿勢にされては、しばし目の前のキテルグマのと視線を交わす。
そうして円らな瞳を宿したその顔が、伺うかのようかしげられた次の瞬間──突如として両腕は左右へと引かれ、ピカチュウは体内から鳴り響く繊維の引きちぎれる音を聴いた。
その衝撃も始め、痛みとしては伝わらない。
しかし左右へと目を配らせ、そこに不自然なほどに長く伸びた自身の両腕を確認し、改めてキテルグマが左右から力の限りに自分の両腕を引き伸ばしたのだと理解した時──初めてピカチュウは、その身を裂かれた痛みに絶叫した。
リングに響き渡る絹を裂くようなその絶叫を前に、変わらず無表情のキテルグマはしかし、どこか恍惚とそれに耳を傾けているかのようにも思えた。
やがては宙吊りから足元へと落とされると、両腕が利かないことからもピカチュウは顔面からマットへと叩きつけられる。
脱臼もやむなく、両腕の支えを失ったピカチュウは上体を起こすことすら叶わずに鼻先を地へ擦り付けたまま──芋虫のよう尻を上げては身を伸ばすなどしてマット上を逃げるその姿に、会場からは大爆笑の渦がうねり上がる。
歯が砕かれるほどに顔面を潰され、脱臼し両肩の筋や腱を切断されて地に這いつくばる自分は、もはやポケモンなどではない憐れな虫のように思えた。
そして幼子がするかのよう、さしたる理由も無しに弄ばれる虫の末路を思い描いた時、どんなに惨めであろうともピカチュウの本能はこの場からの逃避を選択せずにはいられなかったのだ。
この遊びの最後に待ち受けているものは、残虐無惨な死以外のなにものでもないのだから。
そんなピカチュウの生殺与奪の権利を持つキテルグマは、曲げた膝を掲げては悠々と右足を持ち上げると……のたうつピカチュウの背へと狙いを定める。
そして無慈悲にも打ち下ろしたキテルグマの右足は、己の全体重と膂力を込めてピカチュウを踏みしめた。
その衝撃と圧に瞬間、頭を振り上げたピカチュウの顔がライトに晒される。
驚いたような表情にもしかし見る間にその目頭はどす黒くうっ血しては、閉じた口元の電気袋を限界まで膨らませた。
完全に肉体はその制御を失い、電気袋から意図せぬ放電が漏れた次の瞬間──ピカチュウは口中に混み上がって来ていた吐瀉物と血反吐とを、背を踏みしめられる圧に任せては吐き散らかした。
同時に肛門や尿道にもすさまじい勢いで排泄物が流動する摩擦が身を震わせる。
小さなピカチュウの体からは信じられぬ大量のそれらを、頭と尻の双方から放射状にマットへと広げ……もはやピカチュウはピ微動だにもしなくなった。
機能を停止した消化器から逆流した糞汁の匂いが鼻腔に満ち、そんなか細い呼吸までもがうつ伏せた体の下に溜まる自身の排泄物によってふさがれる。
斯様にして己の排泄物の海の中で溺れながら、遠くピカチュウは打ち鳴らされるゴングの残響を聞いたような気がした。