数日後──
卵より無事に孵化したブイゼルは、依頼主であるトレーナーの元へと引き取られて行った。
その引き渡しの際にレウーは育て屋である祖父に付き添ってそれに立ち会ったわけではあるのだが……その時にふとした違和感を覚えた。
それこそは、
「ねえ、じいちゃん……あのトレーナーの人さ、手持ちに『りくじょう』のポケモンいた?」
見る限り、里親のトレーナーに『りくじょう』や『すいちゅう』に関するポケモンが見当たらなかったのだ。
もし彼女の依頼で今回フローゼルを懐妊させるのであるならその交尾相手が必要であり、そしてその相手はフローゼルと卵タイプが一致していなければならないはずである。
一体どうやってそれを成し得たのかをそれとなく聞いてくるレウーに対し、
「あぁ、あの人の手持ちには居ないよ。今回のフローゼルは体外受精の卵子で産んでもらったんだ」
その実、レウーのフローゼルへの執着を知っていた祖父は穏やかにそう答えた。
「た、体外受精ッ!?」
一方でそれを聞かされたレウーは対照的に慌てふためいた様子だった。
なぜならそれが指し示す事実こそは……
「じゃあ、フローゼルは直接交尾したわけじゃないのッ?」
子を身に宿したとはいえ、フリーゼルは処女であったという事実だった。
祖父曰く、この家での代理母にはすべてその方式をとっているとのことであり、さらには実際の交尾を介した繁殖はデメリットの方が勝る、とも続けて言った。
精子の状態というものはオスが健全であったとしても必ずの万全とは言い切れない為、事前によるチェックで健康な精子を選別しておく必要がある。
また受精卵を作るにも、必中とは言えぬ実際の交尾では効率が悪すぎるし、トレーナーの求める特性を持つそれらの個体を探しだしてきてマッチングすること自体が不可能に等しい。
だからこそデータとして登録されている特性の精子や卵子をトレーナーは業者から購入し、それをポケモン育て屋──すなわちはレウーの家において受精卵を代理母に仕込ませてもらう、というのがこの家のやり方であった。
と、そんな説明もそこそこにレウーは走り出していた。
もはや彼に受精方法だの業界の手法などは些末なことであった。
今なによりもレウーにとって重要だったことは──あの日、情を交わしたフローゼルが処女であったという一事だけだ。
母屋の中、フローゼルが何処にいるのかの見当はついていた。レウーは自分の部屋へと一直線に向かう。
そしての辿り着いたその先、レウーはノックもせずにそこのドアを開け放つ。
既にけたたましい足音を立てていたせいか、急のレウーの入室にもフローゼルが驚くことは無い。
ベッド上に腰かけた彼女は、むしろレウーが戻ってきてくれたことを喜んでは柔らかく微笑んで彼を迎え入れる。
出産を終えた彼女の体は一回り小さくなったように思えた。
加えて限界まで皮膚の伸ばされてしまった下腹部と、まだ乳腺の張っている乳房はすっかり張りを失くしては若干の弛みをそこに宿していたが──そんな落ち着いた肉付きの彼女からは、より一層に肉感的な艶やかさをレウーに覚えていた。
そんな愛しのフローゼルへと……
「ボクが……初めてだったんだね?」
祖父から知らされた事実を反復するよう、そのことをレウーは訊ねる。
それを受け、最初は何のことやら小首をかしげたフローゼルではあったが、次いで体外受精の話がレウーから出されるとようやくに彼女もまた頷いては──どこかはにかんだ様子で俯いた。
この瞬間──レウーの心には言いようもない悦びが湧き上がり、それは体中に駆け巡る。
そして無意識にフローゼルの名を叫んでしまうと、レウーは彼女の恵体の中へと飛び込んでしまうのだった。
「ありがとう! ありがとうね、フローゼル! 君の初めての人になれて、ボク本当に嬉しいよッ!」
もはや溢れ出る喜びの感情を持て余すレウーは、ただ以降も彼女の名を呼び続けながらその乳房の谷間に顔を埋め続け、一方でフローゼルもまたそんな彼を幾度となく抱き直しては抱擁した。
しばしそうして情動の発散が済むや、ようやくに落ち着いたレウーは依然として抱かれ続けるフローゼルの胸元から顔を上げる。
そして互いの視線が結び合うや、
「フローゼル、今度はボクと赤ちゃんを作ろう!」
その願望を──もはや、レウーの中では決定事項となったその決意をフローゼルへと伝えた。
それを受け、最初は驚いたように瞼を見開いては口を開いていた彼女ではあったが、レウーが何よりも本気なことと、さらには最愛の人を受け入れられることの喜びを実感した瞬間──その返事とばかりに、フローゼルもまたレウーを強く抱きしめるのであった。
同時にどちらが押し倒したとも引き込んだとも分からずにベッドへなだれ込むと、そのまま二人は激しく唇を交わし合う。
食み合うかのようなキスの最中でレウーは乳房を弄び、フローゼルもまた手を伸ばしてはレウーのペニスを掬い取ってそこを刺激した。
もはや今の二人に怖いものなど何もない。
二人が一緒ならば異種族の妊娠も、そして種の壁を乗り越えることでも何だって出来るような気がした。
これから先の人生においてどんな苦難が待ち受けていようとも、二人一緒ならば乗り越えられる自信と願いこそが、今二人を満たしている全てであった。
「フローゼル……愛してるよ! どんなことがあったって、絶対にボクが守ってあげるからね!」
その誓いも新たに再びキスを交わす二人──。
ありとあらゆる未来と可能性とが、レウーとフローゼルの行き先には広がっているのだった。
【 フローゼルの授乳遊戯・完 】