『通常の進化は神様からの贈り物で、メガシンカは努力の賜物だよ』
後日ネクスより相談を受けたポケモンセンターの職員はそう諭した。
メガデンリュウ後に現れるTS化について心配するネクスを慮っての台詞ではあったがしかし、それでも自身の言葉は的を射ていると職員は考えていた。
『要はなりたい自分になる……その夢を叶えた結果なんだ』
通常の進化とは自分自身でそこへ至るかどうかの選択はあるものの、それは比較的単純に手に入れられるものである。
しかしながらメガシンカは違う。
それこそはその姿や能力を手に入れたいと願う明確な意思や努力を必要とされる。
言うなれば通常進化が『成長』であるとすれば、メガシンカは筋トレやダイエットといった『肉体改造』に等しい。
望む姿や望む力を渇望し、筆舌に尽くしがたいと努力とそしてトレーナーとの信頼の果てに勝ち得る、それは尊いものなのだ。
そして今回、デンリュウはそのメガシンカと同時に『メス』という新たな性別を手に入れた……謂わばそれは強く本人が望んだ姿であり、結果なのだ。
すなわちそれこそは──
『女の子として、キミのそばに居たかったってことだね』
そう締めくくられてはネクスは何も言えなくなってしまった。
けっして納得したわけではないが、それでも悪い気はしなかったのだ。
なぜなら異性として傍に在り続けたいと願うデンリュウの本意こそは、ネクスを愛してやまないという事実の裏返しでもあったのだから。
初めて褥を重ねたあの夜以降、デンリュウはメガシンカ状態のまま元には戻っていない。
それどころか、日を経るごとに彼女の美しさには拍車がかかっていくようだった。
今も隣合って歩くデンリュウは、道行く人々から振り返られるほどの輝きを放っていた。
そんなデンリュウを隣にしながらネクスも身が引き締まる思いがした。
デンリュウが美しければ美しい程、それは彼女がそれを望んだ結果であり、そして努力の賜物である。
もし本当にデンリュウが自分の為にそれを成し得てくれたのだとしたら、一方の自分はそれに値する男なのかとふと疑問に感じたからだ。
自己判断する今の自分は……だいぶ頼りなく思えた。
しかしそれを申し訳なく思う心は同時に、ならば彼女の為に尽くしてやろう──自身もまたそれに見合う男になってやろうという強い決意もまたネクスの心に湧き上がらせてくれるのだった。
「デンリュウ……俺も、頑張るよ」
ふと掛けられるネクスからの言葉にデンリュウも、その意図を測りかねては不思議そうな視線を向ける。
それを受けて立ち止まると改めてネクスはデンリュウを見上げた。
「お前、サイコーに進化してくれたじゃんか。だったら、そのパートナーの俺もお前が恥ずかしくないような男になってやるからな」
今はまだ言葉だけの約束である──それでもしかし見つめてくるネクスの瞳に確かな決意と、そして自分への強い愛情を感じられたデンリュウにはそれだけでも十分だった。
ついには感極まりネクスを抱き上げてしまうと、外部の往来にも拘わらずデンリュウはキスの嵐をお見舞いする。
さらにはシャツの裾から手を忍ばせては体を直接にまさぐってくる様子に、
「ば、バカ! ここで始めるな!」
ついネクスの声も高くなるが、デンリュウにはそんなことはお構いなしだ。
メリープの頃よりネクスへ想いを寄せてから幾星霜……ついには種の壁すらをもメガシンカをして乗り越えたデンリュウにはもう怖いものなど何も無かった。
後は愛するネクスと行けるところまで行く──それこそが次なる彼女の目標であり、そして二人の望みなのだった。
【 デンリュウのTS(メガシンカ)・完 】