傷ひとつ見当たらないなだらかな床の上に切り取られた正確無比の新円──その内輪にはピンクのカバーらしきものが嵌め込まれており、一目でこれは体を埋める装置なのだとビクティニも理解した。
『それじゃ、今日の治験内容を説明しますね』
周囲を回り込みながら物珍し気にその穴を覗き込むビクティニの背後から、ここまで案内してきた職員は丁寧に説明を開始する。
大方の予想通りビクティニには今日この穴の中へ下半身を差し込んでもらい、きっかり24時間を過ごしてもらうという依頼だった。
その間に穴の内部では彼女の下半身に開発中の麻酔を投与し、それがポケモンの体に及ぼす影響を観察するというのが、今回の仕事の内容である。
──がしかし、そんな職員の説明などは既にビクティニの耳には遠い。
穴の周囲にはこれからの24時間を快適に過ごしてもらうためのゲーム機や各種コンテンツを収めたタブレット、そして多種多様のお菓子に飲み物の類が用意されていたのだが、既に彼女の意識はすっかりそちらへと向いてしまっている。
とはいえしかし依頼側としてもビクティニに余計な恐怖や疑念を抱かれずに済むのは都合がいい。
さっそくに彼女には穴へ入ってもらうと、職員一同は手際よくその準備を進めた。
内輪に仕込まれたカバーの下には低反発クッション材と思しき材料が詰められていて、そこにビクティニが体を通すと周囲のカバーは適度に彼女を締め付けては、その体が脇から下へ落ちないように固定をした。
締め付けの塩梅もまったく苦にはならなければ、カバー素材も肌触りが良くてそのジャストフィット感はむしろ心地良くすら思えたほどだ。
そこまでをセットし職員が退室した後は、別室からのマイクによってビクティニに語り掛けが行われる。
『始めますがよろしいですか? ──実験中は自由に過ごしてください。用意したゲーム機で遊んでもらってて構いませんし、持参のスマホの使用も許可します。飲食に関しても好きなタイミングで好きなものを要求してください。用意できる限りのものは用意しますので……』
その説明の中で一点、『トイレはどうするのか?』という疑問だけが湧いたが、それについてもそのままの状態で垂れ流してしまって構わないという説明がされた。
これだけが唯一の不満点ではあるが、まあこれも『仕事』である──この程度の不自由は享受せねばと、何様かのつもりで納得するビクティニ。
やがて脊椎麻酔による薬物の投与が告げられたが、その頃にはビクティニもすっかり目の前のゲーム機にDLされたタイトルを物色するのに夢中で、そんな処置がされたこと自体気づいてはいない様子であった。
かくして彼女の治験……否、『実験』は開始される。
職員達が待機する別室はビクティニがいる部屋から半地下に潜った構造となっており、円筒形のガラス管を周囲360度どこからでも観察できる仕組みとなっていた。
その中央にすっかり脱力しては宙に吊らされた、胸元から下となる彼女の下半身はさながらに歪な果実のような眺めである。
やがては職員達も研究所の上層部から送られてきた指示書に従って、斯様なビクティニの下半身へと実験を開始していく。
ヒドイデから抽出されたこの新薬は、部分的な触感及び神経系の知覚を全て消し去ってしまうという画期的なものであった。
この試薬の驚くべき点は、投与された個所と本人の意識とが完全に隔離されるところにあり、今のビクティニはしっかりとした意識を保ちつつも、これからは下半身に何をされようとも一切知覚をできない状態にあった。
その確認の為、筒身が真っ赤に焼かれた針金がアーム操作によって近づけられ、やがては彼女の爪先へと僅かに触れた。
本来ならば熱傷に伴い、その鋭い痛みに反射的な反応を示すところではあるが──一方で上半身のビクティニはというと、用意された菓子を貪りながらメタモンを使ったバラエティチャンネルに爆笑している有り様である。
思惑通りに薬の効果が聞いていることを確認した職員達は、いよいよ以て実験へと本腰を入れていく。
鉤爪の装着された実験アーム二本を操作し、それぞれ彼女の腰と右足を掴むやそこから万力の如き力を込めてそれを上下に引き伸ばした。
鈍い重低音が響きアームが離れると、ぶら下がるビクティニの右足は左足よりもさらに半分以上は長く伸びる。──今の操作でこの右足を股関節から脱臼させたのだ。
さらには左足に対しても同じ処置を行うと、アームで摘まみ上げる彼女の両足は前後左右へと通常ならありえない方向へと展開としてその一時、見守る職員達の失笑を誘う。
斯様にしてバンザイさながらに両足を吊り上げられるビクティニ。
さらに前準備として、無防備なその肛門から大量の浣腸が注入されると──即効性のそれは途端に作用しては大量の糞便を排泄させた。
薬による強制的なものゆえ、この小さな体のどこにこれだけの物が詰まっていたのかと思うほどの大量が、出詰まりを解消された水道管よろしくに排泄される。
その様子に流石にビクティニも違和感を覚えているのではと、別モニタ上の彼女の様子を観察するが──そこには今自分の下半身にて起きている事態などはまったくとして感じていないビクティニが、昼食のオムライスを凄まじい勢いで食している様子が写されていた。
この麻酔の効果は、内臓の異変に関する知覚さえも本体の脳から分離してしまうことにもあったが、その思惑もまたしっかりと果されていたようである。
その後も熱や冷気、酸やアルカリといった薬物による熱傷、さらには単純な殴打や針による刺突といった、皮膚表面に対するあらゆる触角と痛覚を試す実験が行われたが、そのどれに対してもビクティニが反応することは無かった。
それどころか、食を満たされてすっかりリラックスした様子の彼女はその場で大いびきをかいて昼寝しだすという有り様だ。
かくして実験はいよいよ以て佳境へと入っていく。
次なるは内面からの刺激に対し被験者がどう反応を示すのかを見るべく、ぶら下がったビクティニの体へと数本のアームが迫った。
その先端には挿入を目的とする役割上から男性器を思わせる形状の器具や、はたまた先細りした筒身にいくつもの瘤を連ならせた器具等、多種多様な道具の類がアタッチメントされている。
やがては鉤爪型のアームが彼女の腰元を背後からワシ掴んで固定するや、両足を吊り上げられて開帳されたビクティニの肛門へとペニス型の器具のひとつが宛がわれる。
そうして一切の躊躇も無く次の瞬間には──無遠慮にそれは、その根元まで直腸内へと挿入されてしまうのだった。