※この作品はR-18です。

三擦り半のマス☆カーニャ   作:たつおか

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第4話・タナトス

 

 

 筋繊維と腱や筋の千切れる音が脳内に響き渡る。

 まさしくに身を引きちぎられる感覚の後に訪れた右股関節への衝撃──その痛みが嵐の如くに過ぎ去り、我が身に何が起きたのかすら理解できず痛みの余韻に喘ぎ続けるビクティニへと、同じ衝撃と痛みとが今度は左足へも行われた。

 

 言うまでも無くこの穴の下において行われている凶行に彼女も必死にそこからの脱出を図ろうとするが……如何せん体を締めつけている内輪の拘束は緩むことなく、やがては左股関節にも同じような痛みが走ると、再びビクティニは声の限りに叫んだ。

 

 半ば半狂乱に頭を振り乱しながら室内を見渡すと、そこにこの施設の職員を探す。

 声の限りに叫んでは助けを求めるも、白を基調とした簡素な室内にはビクティニの叫び声が残響するばかりで、一向に助けの手が差し伸べられる気配は無かった。

 

 この時においてようやくビクティニは自分の無防備さを悔いた。

 いつ何事においても、有事の際には逃げ出せばいいとたかをくくっていたビクティニは、目先の欲に駆られるがあまり自ら拘束される行動を取り、さらにはそれに疑いすらもしなかった。

 

 その結果がこれであるのだから、自分の馬鹿さ加減を嘆かずにはいられないのだが……そんな感傷も、現状からもたらされる恐怖と痛みを前にしては考えている余裕すらも無い。

 もはや脱出は不可能であることを悟り、次なるはどのような痛みが加えられるものか戦々恐々と待ち受けていると──次にビクティニを苛み始めたのは、腹腔への激しい圧迫感だった。

 

 肛門に対して重く冷たい流動感が生じる感触に、それが直腸に対する浣腸であるのだと察するに至る。

 大量の薬液注入によって内臓が圧迫される感触は先の脱臼の衝撃とはまた毛色の違うものではあるが、内面へと直に加えられるそれにはまた、耐え難い苦しみと痛みとがあった。

 

 そしてようやくに注入が止んだかと思えば、今度は腹腔内に収められた薬の効果による腹痛に苛まれる。

 便意というよりはむしろ、腹の中に生じた岩や鉛の塊が内臓を圧迫しているに等しい苦しみにビクティニは、場違いにも昔話の中に出てくる腹に石を詰めこまれる狼と今の自分とを重ね合わせていた。

 

 そしてもはや、自身の意志とは無関係にそれの排泄もなされる。

 それこそ先に想像した腹の中の石が、肛門を突き破っては尻から流れ落ちる感触には排泄の爽快感などは微塵も無い。 

 それが激しく流動してひり出されている最中もまた、ビクティニは消化器と肛門に覚える痛みに眉を顰め続けていた。

 

 永遠とも思えるその排泄をしばし経験し、既に疲労困憊といった体で俯せる彼女ではあるが……その後も多種多様な責め苦はビクティニを苛み続けた。

 熱と冷気とを交互に繰り返しているであろう皮膚表面への熱傷を始まりに、おそらくは薬品と思しき何かもまたそこへと浴びせられると、先の傷と合わさったその痛みに、もはやビクティニは人の子供のように声を上げては泣き出していた。

 

 怒りや懇願や悲しみといった様々な感情が入り混じった彼女のその錯乱具合からも、いかに今の状況がビクティニにとって不条理で、かつ苦痛であるのかが窺い知れる。

 

 そんな責めも、ある時を境にその手を潜める。

 ここまでに数時間を掛けて一連の責め苦を耐え抜いてきたビクティニには、この合間の休息が僅かながらの命の洗濯であると同時にしかし、むしろこの『次を待つ時間』こそが最大の苦痛であるようにも感じられた。

 

 願わくばこれにてこの地獄が終わってくれることを祈るもしかし……そのささやかな願いは、おおよそ最悪の形で裏切られることとなる。

 

 その瞬間は突然に──そして始まるや即、最大限の痛みを以てビクティニを貫いた。

 

 突如として肛門に焼けるような痛みが走ると同時、一息に腸を直進に矯正しては胃を打ち上げる衝撃に、その一瞬ビクティニは表情を呆けさせる。

 しかし一拍子遅れて内臓への痛みが爆発するや──ビクティニは叫びよりも先に胃の中の内容物を眼前の床へとぶちまけてしまうのだった。

 

 消化途中であったオムライスの残骸が赤と黄色の汚いグラデーションとなって目の前に広がると同時、斯様な吐瀉物は何度も逆流してはケチャップの風味を含んだ不快な臭気をビクティニの鼻腔から溢れ出し続ける。

 

 それでもしかし、なおも腹腔内で竜巻の如くに暴れまわる何事かの衝撃に、ビクティニは天を喘いでは吐瀉物を吐き散らしながら声にならない声を上げた。

 腋の下を締めつけて拘束するカバーをその表面が破けて剥がれるほどに握りしめ、直腸を螺旋に掻き回し続けるその衝撃を声で表現するかのよう、強弱の抑揚をつけては叫び続けた。

 

 やがてはその衝撃ゆえに肛門からその異物が弾き出されると、途端に頭をうなだれては糸の切れた人形よろしくに脱力するビクティニ。

 しかしながらこれが終わりではないことを、この時のビクティニは薄々に感づいていた。

 むしろ今自分が思い描いている展開が起こらないことを彼女は願ったわけではあるが、皮肉にもその想像は最悪の形で己の未来を予知せしめることとなった。

 

 ほぼ同時に再び肛門と、そして膣とにこれまた特大の硬い異物が挿入されたのである。

 

 肛門への痛みも然ることながら、特に膣へと侵入してきたそれは一息で深部まで達するや、その先端で無遠慮に子宮口を打ち潰しては更なる悲鳴をビクティニに上げさせる。

 そしてその痛みの余韻も過ぎ去らぬうちに、再び胎内の異物達は激しく彼女の内部で暴れ出すのであった。

 

 先の大きな旋回こそは為されなかったものの、それでも激しく前後しては内部を突き上げてくる双方の衝撃はそれは激しいものと言えた。

 前方の膣と後方の肛門からそれぞれ進行方向を交差させる様にその異物が突き入れられると、双方はビクティニの胎内において互いの先端を打ち付けつけては子宮と直腸の区別も無く脆い内臓の内壁を存分に傷つける。

 

 そうして互いが擦れ違うと膣の異物は背から脱さんと腰元の皮膚を突き上げ、そして肛門からのそれは腹部を突き上げては、その内側に織り込まれていたヘソの内部を外へ押し出しては。妊婦さながらの様相へとビクティニの腹部を変形せしめる。

 

 存分に腹腔内を掻き回されては、もはや何がどれに由来する痛みや苦しみであるのかも分からず、ただ無限に続く苦しみにビクティニは翻弄され続けるばかり……。

 しかしながらそれゆえに意識が遠のく感触を覚えては、このまま気絶してしまうことを彼女は期待した。……もはやこの段に至ってはいっそ、早く殺してくれとも思ったほどだ。

 

 しかしながら常に彼女の予想を上回ってくるのが一連の地獄である。

 そんな朦朧としていた意識を一度に覚醒へと導いたのは──突如として尿道に生じた焼けつくような痛みであった。

 

 再び、ビクティニは悲鳴を上げる。

 尿道そこに覚えるその痛みは今までに感じたどの苦痛よりもシャープで、一刺しでそれが尿道へと施されたものであると分かるほどの衝撃を彼女に与えていた。

 

 おそらくは針金と思しき細身の何かが長く激しく出し入れされている痛みに意識が呼び起こされると、途端にマヒしていた膣や肛門の痛みもまたそれぞれに感じ取れるようになっては、再びその苦しみに下唇を噛みしめて耐える。

 

 そしてこの日、最大となる衝撃が彼女を襲った。

 

 最初は胸部へと……正確には乳首へと刺突された小さな痛みであった。

 とはいえ、さんざんに局部を苛まれている最中とあっては、ビクティニもその触覚にすら気付けずにいた。

 徐々に変化を繰り返すその異変を察知したのは、胸部に想像もつかない圧迫感と重みを感じ始めた頃であった。

 

 最初は乳首へ電極を当てられているのかと疑うほどに、そこが一点集中をして痺れる感覚に見舞われた。

 次いで乳房の皮膚表面が無理矢理に肥大化しては四方へ引き伸ばされる膨張感に異変を感じた頃にようやく……この乳房の中へ、外部から何か別の液体が充填されていることにビクティニは気付くのであった。

 

 この時彼女の頭をよぎった妄想は、このまま注入を続けられ、やがては風船よろしくにはじけ飛ぶ自分の姿であった。

 

 無理なその膨張に皮膚と筋肉の境目が剥離して、胸部のクーパー靱帯が残らずに切断されると──限界以上にその液体を溜め込んだビクティニの乳房は、水風船のヨーヨーさながらに先端を丸まらせては重力に惹かれて垂れ落ちる。

 

 その重みと今なお進行形で皮膚と筋肉が連鎖的に胸部から首元へと剥離し続ける感触に、ビクティニはこの日最大の恐怖を覚えていた。

 その瞬間彼女の脳裏をよぎった妄想は、この乳房が完全に重力に負けて落ちた時……自分の肉体の全ても、この胸元から千切れて分離してしまうのではないかという恐怖だった。

 

 しばしして乳房への注入が止む。

 今も液体を大量に宿したまま不安定に垂れる乳房は、なおも続く局部への責め苦からの振動に晒されては、右に左にと揺らいでいるのが感じられた。

 これ以上の刺激を与えてはならないと、苦痛の嵐の中において必死にその揺れを相殺すべくに身をよじっては、振動を吸収しようと無駄な抵抗をした。

 

 しかしそんな彼女の努力をあざ笑うかの如く……無情の魔の手は、文字通りにビクティニをワシ掴む。

 それこそは背後より新たに迫っていた鉤爪の掌であった。

 3本指のそれが無遠慮に膨張の限界を迎えていた乳房を掴み取るや、そこから万力の如くに力を込めながら、ゆっくりとビクティニの乳房を圧迫していった。

 

 もはや一切の抵抗を封じられたビクティニはただ、小刻みに頭を振っては恐怖に表情を歪ませながら弱々しく停止の懇願などしてみせる。

 しなしながら、この程度で止めてくれるような手合いらもっと早くに解放されていたことは彼女にも分かっているのだ。

 

 やがて鉤爪の掌一杯に乳房が充満し、その鋭い爪の先が肉に食い込むとそこから伝わってくる新たな痛みに対し、ついにこの日最大級の恐怖を感じたビクティニは──自分でも意外となる言葉を発した。

 

 この時ビクティニは、必死の体で母親を呼んだ。

 

 もはや自身ですら記憶の曖昧な存在の母を探し、その存在しようはずも無い存在へと声の限りに助けを求めては泣きじゃくった。

 

 それでもしかし無情には鉤爪は圧縮を続けると、その圧に押し出された乳首は異様な形に圧縮されては指々の間から零れ落ちる。

 そうして3本指の掌の中、その乳房の柔肉が二等分に指の間から膨張してはみ出し、ついに緊張の限界を迎えたその瞬間──ビクティニは、自身の乳房が完全に破裂した解放感を知覚した。

 

 実際は乳房内の液体が乳首より噴出しただけではあるのだが、もはや此処に至るまでの12時間以上を苦痛と恐怖とによって責め苛まれ続けたビクティニの精神はこの時──自身の身の崩壊を妄想すると同時に完全に崩れ去ったのであった。

 

 そのまま事切れてしまったかのよう頭をうなだれると、遂に彼女は微動だにしなくなる。

 

 それでも糸のようにか細い自我が消滅を知覚した瞬間──

 

 

 このまま死ねることを、彼女は今までに経験したどんな願い事よりも強く、見えない何かに祈るのだった。

 

 

 

 

 

 

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