※この作品はR-18です。

三擦り半のマス☆カーニャ   作:たつおか

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エピローグ

 

 

 打ち捨てられるようビクティニは公園のベンチへと置き去りにされた。

 

 うつ伏せにベンチの上へ突っ伏したまましばし痙攣よろしくに打ち震え続けるビクティニ。

 体には一応の治療はされていたが、脱臼や各部で拡張されてしまった肉体が一瞬で完治しようはずも無く、それら傷跡は今も鈍い痛みを体中に響かせている。

 そんな痛みと疲労に苛まれてはしばし動くことの出来ないビクティニは、先に立つことの無かった後悔と共に、改めて自分の軽率さを顧みては猛省した。

 

 世の中に楽をして稼げる狩り(仕事)などは無い──有るのだとすればそれは詐欺か、あるいは相当にリスクを伴う内容だ。……まさに今回のように。

 そのことは理解していたつもりではあったが、所詮は『つもり』でしかない認識のビクティニは結局、目先の欲に駆られて都合よくそれを解釈してしまった。

 

 その結果がこれであるのだから笑い話にもならない訳ではあるのだが、そこは生来のポジティブ思考である。今までしがみ付く様に握りしめていた右手の茶封筒へと彼女は視線を落とした。

 

 依然としてガチガチに凝り固まった体に鞭を打って身を起こすと、職員が去り際に手渡してくれたそれの中見をビクティニは確認する。

 封筒の間口を菱に開き、片目を凝らしてその中を覗いていた彼女ではあったが──次の瞬間には、痛みを堪えていたはずのその顔は見る間に笑顔へと晴れ渡っていった。

 ……その顔も天真爛漫なそれではなく、片側の口角を吊り上げては下瞼を上ずらせる、どこまでも狡猾で浅ましい笑みではあったが。

 

 封筒の中には約束通りの報酬が入っていた。

 それどころか改めて数えてみると枚数が二枚ほど多い。

 おそらくは今回負ったケガに対する特別手当と後の治療費を加算したものであろうが、その僅かな増額にまさにビクティニは瞬間、全ての体の痛みを忘れてはガッツポーズを一人取る。

 

 多少の色が付いていたとしても、今後この傷がもたらすリスクや完治までの治療手間を考えると、この額程度では到底補えるものでは無いのだが、それでも目先の増額という事実しか見えていないビクティニは、これに関しても『自分はツイている』などと思う有り様だった。

 

 それどころか喉元過ぎれば熱さ忘れるの如くに、今日の治験もまた『耐えられたのならば大したことは無かった』などと考えだしている始末である。

 事実、渡された報酬額に満足感を覚えたビクティニの意識は既に今日の教訓を忘れ、これからこの金でどんな豪遊をしてやろうかという、遊びの算段へと傾いているのだった。

 

 しばしして大きく伸びをすると、ビクティニは軽やかにベンチを降りた。

 着地の際に股関節が大分痛んだが、そのうちこれも治るだろうと能天気に考えては歩き出す。

 

 しばらくはコレで遊んで暮らせる。その後はまた割のいい狩りを探そう。……そう考えているビクティニには、すでについ先ほどまでの軽はずみを悔いていた自分などはいない。

 

 とりあえず肉が食べたくなって、スマホでステーキの高級店などを検索してみる。

 食後はスパ銭など行ってリフレッシュなどしたら、今日は少々割高のホテルなんて泊まってやろうと算段を付けると一人浮き足立つビクティニ……。

 

 

 そこにはすっかり元通りの、自堕落で軽率なポケモンが一匹いるばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

【 感覚遮断 Ⓥ ビクティニ・完 】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──後日、報酬の高さに釣られて乗り込んだマグロ漁船においてビクティニは、嵐逆巻く漁場の中ゲンシカイオーガと巨大ホエルオーの縄張り争いに巻き込まれては悲惨な目に遭う訳ではあるが……それはまた別のお話に。

 

 

 

 

 

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