瞬く間にあの大盛りの焼きそばと磯部餅を平らげてしまうと、ゾロアークは胸元を反らせて小さく息をついてみせた。
一方で私は、重ね襟の下に凝縮された彼女の胸元を目の当たりにしては大きく生唾を飲み下す。
昨日のワンピースドレスとは違い、作務衣の上着という構造からも彼女の胸元は大きく露出を見せていた。
白く艶やかな短毛は人肌のように艶めかしく、それが作務衣に緊縛されて、今にも外へ零さんばかりに肉の谷間をそこへ形成している。
先の食事で体温が上がっているのか、紺地の色合いをさらに濃くしているその様子から斯様な彼女の肉体も多分に汗ばんでいるのが確認できた。
事実、自身でも手うちわで額に風を送っている様子から暑いのは間違いなさそうだ。
そして次の瞬間、彼女は信じられない行動に出る。
自身の両襟に手を掛けたかと思うと、惜しげもなくゾロアークはそれを左右へと展開させた。
完全に胸元をはだけさせた訳ではないが、それでも両肩から諸肌を露出し、乳房もその先端に掛かった襟が辛うじて乳首を隠しているといった程度だ。
天真爛漫ゆえの無防備な行動なのか、それとも私を信頼してくれているが故の行動なのか……それを考えることが何とも私には悩ましい。
前者なら彼女は誰に対してもこういった無防備な行動を取ってしまっている訳であるし、ならば後者だった場合、私は『男』として認知されていないこととなる。
今の役得の傍らでそんなことも考えては、複雑な思いに駆られる私をよそに、ゾロアークは鬣を纏めていた手ぬぐいの頬かむりもまた解いた。
予想通り豊潤な鬣はポニーテールにまとめられていて、その軽やかないでたちは昨日までの髪を下ろしている彼女とはまた違った雰囲気が感じられて何とも魅力的だ。
そうして剥いだ手ぬぐいを丁寧に4つに折り畳むと、それを自身の首の下へと置いた。
左右へ転々と押し付けるような手の動きを繰り返す仕草から、どうやら汗を拭っている様子だ。
その最中、どこか演技掛かった様子で傍らの私に気付いたかと思うと彼女は手にしていた手ぬぐいを私へと手渡してくる。
「わ、私は汗はかいてないが……」
それを貰い受けても、その意図が分からずに手の中のそれと彼女とを見比べてしまう私に対しゾロアークは更に身を乗り出させて互いの距離を詰めてくる。
そうして前傾に身を寄せると、両肘を抱いて腕の中に乳房を挟み込んでは凝縮させた。
魅惑の谷間はよりいっそうに圧を増しては汗に濡れた乳房を香り立たせたる。
そんな一連の仕草を前に……
「私に拭いてほしいのか……?」
ようやくに私もそれを悟る。
独り言ちるよう確認する私を前に、ゾロアークもまた恥じらう仕草で顔を背けつつも妖艶に、そして下瞼を上ずらせた視軸は私に定めたまま悪戯っぽく微笑んでみせるのだった。
つい先ほどまでは純朴に見えていた少女が、途端に女の色香を振り撒いては魅惑してくるそのギャップに私も眩暈を覚えるような感覚に陥る。
そうして半ば半催眠に掛けられたかのような酩酊感を覚えつつ……手ぬぐいを携えた私の手は、吸い付くようにして彼女の胸元へと置かれた。
布越しではあるものの、それを受け私の掌の感触と重みをそこに感じたゾロアークは、針で刺されたかのよう瞬間的に身を震わせては背を反らせる。
その後も何かに耐えるよう眉をしかめさせては背を震わせる仕草を前に、いよいよ以て私も彼女の体をなぞる行為に夢中となっていった。
行為を繰り返すたび私は無遠慮にそして大胆になっていき、遂にはあの巨大な乳房の谷間へと指々を立て揃えた手の平を差し込んでしまう。
そこにて掌全体を包み込む彼女の体温と肉の柔らかさに忘我した。
別段女性経験が皆無という訳でもないのだが、それでも久しく忘れていたその感触と、そして何よりもこれがあのゾロアークの物であるという実感がより一層に私を発奮させた。
そして彼女からもまた新しい反応が返される。
より一層に身を前のめりにさせたかと思うと次の瞬間、ゾロアークは件の胸元へ取り込むかのよう──正面から私を抱きしめた。
今までは手の平を通じ部分的にしか感じられなかった彼女の体温と香りとがダイレクトに私を包み込む。
その衝撃に作務衣は完全にはだけ、もはや前襟を解いた半裸の状態で彼女は私を抱きこんでいた。
はだけた作務衣を両肘の内に掛けては背に回すゾロアークの前面からは既に、弾けんばかりの弾力を押し付けてくる両乳房が何に遮られることもなく私の前に晒されていた。
その感触と体温についには理性を失いかける私ではあったが、そんな最後の理性を繋ぎ止めたのは、以外にもその恵体を晒すゾロアークであった。
何かを訴えかけるよう切なげにか細い声を上げては立ち上がり、私にも同様に求める。
もはや思考停止状態のままそれに従うや、彼女は荒い呼吸のまま私の傍らに着けては店の奥へと誘導していく。
店舗とを隔てる暖簾を潜り抜けて進むと、目の前には想像通りの厨房とそして右手には縦格子が細やかに連なる障子の引き戸が見えていた。
それが何の部屋に連なるものなのかを訊ねるよりも先に彼女はそこを引き開いては、中の全貌を私の前へと晒した。
畳の敷き詰められた六畳間には見るからに柔らかい、雲の如き布団が一式敷かれていた。
赤い刺繍の掛け布団と、そして薄暗い室内を枕元の行灯がほのかに照らしている光景が示すこの空間が、何に使われるための物かは聞くまでも無かった。
もっともその時の私には既にそれを訊ねられる口などはあろうはずもない……。
後ろ手で部屋の引き戸を閉めるやゾロアークは──……深く強く私を抱きしめて、その唇もまた荒々しく奪っていたからだった。