衝撃の展開から数分後──全裸のラクルは所在なげにホールで立ち尽くしていた。
先の中年紳士はと言えば、恙無く一杯を飲み終えると小さな会釈を一つ残して立ち去ってしまった。
そうして一人取り残されたラクルも結局──周囲の同調圧力に負け、結果として自分もまた彼らの一員と為らざるを得なかった。
しかしながら他の船客達は皆、全裸だというのに何に臆することなく胸を張っている。
その立ち振る舞いたるや服を着ていた平時とまったく変わらず、むしろ一人動揺するラクルは自分が『服の透けて見える目』を得てしまったかのような錯覚を覚えるほどだ。
バーカウンターの隅で、腰を引き股間へ両手を宛がっている自分こそが一番滑稽であることは分かってもいるのだが、どうしてこれを晒す境地には至れない。
そんな折り、斯様な自分を見つめているであろう視線に気付いてラクルも顔を上げる。
それこそは、傍らに立つインテレオンのそれに他ならなかった。
「なんだよぉ……今さら俺の裸なんて珍しくも無いだろ?」
思わず悪態をつくラクルにもしかし、当のインテレオンはと言えばいつも通りの様子で小首をかしげるばかり。
そんな彼女の変わらない様子に、なおさらこの状況を必要以上に意識してしまっている自分に気付いては更にラクルは恥ずかしくなってしまうのだった。
「もうここまで来たら開き直るしかないな……よぉーし」
覚悟を決めると背を伸ばし、遂には股間から手をどけるラクル。
両の爪先を外へと展開させて仁王立ちよろしくとなるラクルの姿はそれでもまだ硬く、やはり周囲からは滑稽に見えた事であろう。
しかし本人にとっては大きな一歩だ。
後はもう慣れるしかないと、内に込み上げる羞恥心と戦うそんなラクルを──いつの間に現れたのか、一匹のヒメグマが見上げていた。
その登場に驚いては瞬間的に股間を隠して身を屈めてしまうラクルではあったが、すぐに我へと返ると胸を張る。……どちらの感性の方が正常なのか分からないが。
おそらくはここの船客の手持ちポケモンなのだろう。
不思議そうに見上げてくるヒメグマにラクルも何か言葉を掛けようとしたその時──ヒメグマは一歩ラクルの前へと歩み出て腰元に抱き着いたかと思うと、そのまま彼のペニスを口中に咥え込んでしまった。
「ちょっ、ちょっとぉ……──!?」
その衝撃に思わず硬直してしまうラクル。
一方のヒメグマはと言えばそんなラクルにはお構いなしに小振りの頭を前後させ、咥え込んだそれへより一層に舌や口中の甲へと吸い付けさせては、中身の物を吸い出そうと躍起になっている。
しかも驚くべきはその展開だけに収まらない。
というのもこのヒメグマ……
──なんだコイツ……メチャクチャ上手いッ!?
ラクルに抵抗の暇すら与えぬほどにテクニシャンであった。
窄める口唇でしかと絞り上げつつ、亀頭へ頬の内側を張り付けさせては大量の唾液で濯ぐように口内で刺激を与えてくるその技量たるや、けっして興味本位で咥え込んでいるといった風情ではない。
ぬいぐるみ然とした愛らしい見た目のギャップに戸惑いつつも瞬く間に勃起を促されてしまうと次の瞬間には──
「んあッ? あ、あああ………ッ!」
不覚にもラクルは達してしまった。
後ろ頭を掻い繰られ、突如として口中に放たれる熱い精の飛沫を受けてようやくヒメグマの動きが止まる。
それでもしかし内頬はポンプ然として収縮を続けては、送られてくる精を吸い出す動きだけは忘れない。
やがてはそれを出し切り、最後の一滴まで吸い上げられると──ヒメグマは存分にそれを吸い付けたまま引き抜き、やがては小さく空気を弾けさせるような音を立てては窄めた口唇からラクルのペニスを介抱する。
一方でラクルもまた腰砕けてはその場に尻もちをつく傍ら、あのヒメグマはといえば目置閉じて口中に転がすラクルの精を吟味している様子。
やがてはアゴを上げてそれも飲み下すや、ヒメグマは大きくため息をついては満足げな笑顔をラクルに向けて咲かせた。
依然として乱れた呼吸を整えられぬラクルに近づき、御馳走の礼とばかりその唇へ小鳥のよう小さなキスをすると、ヒメグマは未練もなくその場を走り去っていく。
その後ろ姿を見送りながら……
「な……何だったんだ、アレ?」
思わずラクルも呟かざるを得ない。
頭の中はいまだに何の整理も付いていなかった。
ただ同時、先ほどの中年紳士の言葉が思い出される。
──『男女はおろかポケモンの垣根すら無い、フリーセックスイベントなんだよ』
「それにしたってフリーダム過ぎるだろ」……思わず毒づくように漏らすラクルの傍らに、インテレオンもまた屈みこんだ。
そうしてつい先ほどまでヒメグマが吸い付いていたペニスに掌を被せると、まるで痛みを散らしてくれるかのよう、そっと彼女はラクルのそこを撫でた。
その気遣いと力加減に不思議とラクルは気分の落ち着く思いがした。
平素日頃であったのなら、パートナーのペニスに直で触れてくるなど非常識もこの上ない行動であろうに、この時ばかりはそんな彼女からの労りがラクルには素直に嬉しく思えた。
「ありがとな、インテレオン……すごくホッとしたよ」
素直に礼を言うラクルと目が合うとインテレオンは小さく微笑む。
そうして鼻先を僅かに寄せたかと思うと、彼女はそんなラクルの上唇に触れる程度のキスをした。
おそらくは母親が幼児をあやす行為の延長線上にあるキスだったのだろうがそれでもしかし……──
行為後の熱も手伝ってか、ラクルはそんなインテレオンに好意以上の感情を覚えずにはいられなかった。