漠然とした危機感がこの時のラクルにはあった。
何が危ういのかという具体的なことは分からなかったが、一刻も早くこの場を立ち去らなければという思いに駆られ、未だ快感の余韻に痺れる体に鞭を打つ。
上体を起こし、どうにか僅かに後退るラクルではあったがしかし──無情にもそんな彼の思惑は踏みにじられることとなる。
その瞬間、突如として発生した重みが下腹を直撃する。
もっともそれは苦痛や苦しみを生じさせるものではなかったが、それでもその新たな展開にラクルは恐怖を覚えた。
視線をそれの起きた下腹へ転じれば、そこには茶褐色の毛並みが見て取れる。
明らかに人ではない何かが自の上に鎮座している──しかもそれは先のサーナイト達ではないのだ。
そこからゆっくりと視線を上げ、いま自分の上に陣取るそれを確認するラクルは、その新たなプレデターの出現に大きく息を飲んだ。
騎乗位然としてラクルの上に居た者は──一匹ミミロップであった。
両膝を折り、内腿を地に着けるような姿勢で座り込んではそこからラクル一点を見つめるその視線──。
小首をかしげながら何かを問うようなその仕草は、明らかに子が親に対して餌をねだるそれだ。
そして今の場合、ミミロップがラクルに求めているものとは……──
「あ、あぁ……やめて……」
依然として怯えるラクルを見据えたまま、ミミロップの手は腰の下に組み敷いたペニスへと伸びる。
彼女が求めているものはラクルの肉体に他ならなかった。
臆することなく一点にこちらを見つめてくるミミロップのその赤い瞳──濡れるような光彩の下に沈む黒い瞳孔を見つめ続けていると、やがてはそこから『瞳』の概念が薄れ、さながら催眠の為の照明でも中てられているかのような心地にされた。
事実ラクルからの抵抗も消え失せ、身を寄せてくるミミロップの口唇が舌同士を絡ませるようなキスを施してきても、ラクルはただ為されるがままにそれを受け入れるばかりだった。
斯様にしてラクルの舌先を一方的に味わいながら、ミミロップの腰は別個に生物のよう前後に臀部をしならせては自身の股間を組み敷くペニスへと擦り付ける。
裏筋に生暖かさと濡れる感触が広がると同時、たちどころにそれは溢れさせるほどにその量を増してはラクルのペニス全体を粘液にまみれさせていった。
言わずもがなの愛液を介することで互いの表面の感覚は敏感となり、ペニス越しにミミロップの陰唇の感触がダイレクトに伝わる。
肉厚のそれが自重の圧に任せてラクルのペニスを挟み込み、そしてクリトリスが裏筋から鈴口をくすぐるに至って──ラクルはそこに完全に勃起を果たしていた。
その状態変化に初めてミミロップは視線を外すと、それを自身の股間へと転じた。
すっかりそそり立っては、その上に乗るミミロップの膣との狭間でクリトリスを押しつぶしている眺めは、種の違いなど無くともそれが淫靡なものであることを自覚させる眺めであった。
斯様にして興奮を煽られたミミロップはやがて、為るべくして次なるステージへと展開する。
僅かに腰を浮かせてはペニスの根元に手を添えると、そこから亀頭の先端を自身の膣へと誘導し──次の瞬間には、驚くほどあっけなくそれの挿入を果たしてしまうのだった。
「ああッ……ああああッ!」
瞬時にしてペニス全体包み込む熱と粘膜の感覚にラクルは声を上げたが、それが意味するところは何も肉体的な快感によるものだけではなかった
事この瞬間、ついにラクルはポケモンとのセックスを……いわば獣姦にも通じるタブーを犯してしまった事実に狼狽と激しい困惑とを覚えていたのだ。
とはいえそんなことなどは所詮、人の理屈に過ぎない。
一方の動物(ミミロップ)はと言えば、同種では味わえない人のペニスの感触を全身を使っては感じ取り、そして悦び貪るばかりであった。
軽量の体躯からは信じられない圧力と激しさでミミロップは尻を打ち下ろし、そして互いの腰をぶつけ合う。
一方のラクルはと言えば、ただ地面の芝へ後ろ頭を擦り付けては身を仰け反らせ、腰元か生じる快感に耐えるばかりだ。
そんなラクルの視界に新たな影が差した。
陽の光が遮られるそれに、固く閉じていた瞼をうっすらと開くも……その瞬間目の前の光景が何を意味する眺めであるのかを判じかねてラクルは困惑する。
眼前に迫っていたものは、谷合いに肉の凝縮された皺の光景──その奥窄まったそこには大量の液体を滴らせた穴と肉の襞とが蠢いている。
そしてその景色越しにこちらを覗き込んできたのは、誰でもない逆さづりにされたサーナイトの顔であった。
一連の状況からラクルは、自分がサーナイトに馬乗りにされていることにようやく気付く。
だからと言ってその何故を問うても、根本的に言葉の通じないポケモンに対しては詮無いことだった。
そしてその行動が意味するところの答えもすぐに明かされることとなる。
目の前にあの肉の谷が迫り始める。
言わずもがなサーナイトが腰を下ろし始めていることは明確で、そして瞬きのその次には──彼女は完全にラクルの顔面へと騎乗し、己の膣を彼の鼻先や口唇へと触れ合わせていた。
そこからサーナイトもまた独自の腰の動きを展開する。
ミミロップが上下に腰を打ち付けるのとは対照的に、サーナイトは前後に体を揺すってはラクルの顔へ激しく局部を擦り付けるように体をスライドさせる。
その様はさながらラクルの鼻頭をペニスに見立ててのセックスに他ならなかった。
しとどに溢れる愛液は容赦なくラクルの鼻孔や口唇に流れ込んではその呼吸を塞いだ。
凹凸に富んだ人の顔の感触に快感を覚えてか、よりいっそうにスライドを激化させるサーナイトの局部は、しまいにはその肛門にすらをも鼻頭へと宛がい、さらにはそこの味わいもまたラクルに吟味させた。
生物独特の生理臭と排泄臭……口中と鼻腔に満ちるそれら多種多様な体液に苛まれ、ラクルにはもはや満足な呼吸すらもままならない。
肉体は酸欠からくる生命維持への危機を痙攣や硬直に変えさせてはラクルに伝えるも、そんな不規律な動きはその上に跨る獣達を悦ばせるばかりであった。
そして最後の瞬間は訪れる。
一足先に絶頂へと導かれたミミロップとサーナイトが二人──合わせ鏡のよう背を仰け反らせては胸を突き上げる動作をシンクロさせた。
乳房の膨らみの浅い痩躯を絶頂の力みに合わせては小刻みに痙攣させるその様は、傍から見ればまるで一個の芸術作品の様な親和性をそこに生み出していた。
しかしながら、その作品の台座とされているラクルにはそんな感傷に浸る余裕などは餅わせていない。
特に顔面に騎乗するサーナイトに至っては、絶頂からそのリミッターが解除されるあまり、もはや無遠慮に膣口全体でラクルの呼吸器を塞いでは、彼に息継ぎをさせる暇すら許さなかった。
そして身を駆け巡る硬直が解かれ、液状化の錯覚をボ得させるほどに脱力を果たした二匹からは──大量の放尿もまたラクルの上にて果たされた。
腰の上のミミロップはまだしも呼吸器上に陣取られたサーナイトからのそれは洒落にならない。
どうにか気道を守るべく口中に満ちるそれを飲み下してみせるも、ラクルの嚥下よりも放出される量こそがそのキャパシティを圧倒した。
たちどころに溢れたそれは気道を埋め尽くしては食堂にまで循環し、ラクルを灼熱の尿の海に溺れさせるが如き錯覚へと誘った。
この時、ラクルは大袈裟でもなく死を予感した。
瞬間的に鼻を突き抜ける異物の痛みや苦しみが遠退き、記憶の底には過去の光景が再生される。
磯楽はこれが走馬灯化などと眺めていると、その光景はすぐに最近のものへと直結し、そこに船上で談笑するインテレオンの笑顔を映し出した。
──あぁ……しばらく会ってない気分だなぁ……またお前の顔が見たいよ……
ぼんやりとそんなことを考えたのが最後の記憶となった。
楽の意識そのまま闇の中に沈み、後は空を揺蕩うかのような浮遊感の中で曖昧模糊と全ての感覚が消えていった……──。