リウがブニャットと出会ったのは、まだ自我すらも満足に定まらないような幼い頃だ。
その当時はまだ祖母が生きていて、家庭事情からその元に預けられていたリウは彼女の伝手によりあのブニャット──当時はまだ第一進化状態であったニャルマーと出会った。
如何せん大昔のことゆえに当時の記憶などは皆無に等しいのだが、それでも彼女と過ごした友情の日々が、どれだけ孤独であったリウを慰めたか知れない。
いつしか二人は互いをパートナーと呼び合えるほどに親密な仲となっていった。
ニャルマーがブニャットへと進化を果たしたのはリウが15歳になった年の瀬であった。
本来ならば条件が合えば数年で進化してもおかしくない彼女がこうまで成長を送らせたのは、ひとえにリウを思うが故でもある。
幼い彼と出来る限り人生の歩調を合わせたいと考えた彼女はニャルマーのままであり続け、そしてこの村では『成人』として扱われる15歳を彼が迎えたのに合わせ彼女もまたブニャットへの進化を果たしたのであった。
晴れて二人は揃いの成人を迎えた訳ではあったが……リウの心境は複雑なものとあった。
こともあろうリウはこの時、ブニャットへと恋心を抱いてしまっていた。
脂肪質のふくよかなブニャットの体躯は何とも肉感的で、その蠱惑な彼女のプロポーションにたちどころにリウは魅了される。
谷間を見せる豊満な胸元に、脂肪を蓄えつつも猫科獣特有の吊り上がった臀部の体躯は多感な年齢のリウを刺激するには余りあるインパクトがあった。
事実、彼女を妄想の助けにして自慰にまで及んでしまうにあたり、当時のリウはそんな自分を激しく自己嫌悪したりもした。
一方でしかし、リウはそんな彼女が自分のこともまた憎からず思っているであろう気配を察する。
もしかしたらそれは幼少時から続く『変わらぬ友情』であったのかもしれないが、この時にはもうリウはそんな親愛の距離感を測れなくなるほどにブニャットへと執着をしていた。
しかしながら同時、自身と彼女との間を隔てる生物的な溝の存在にもまた気付き、リウは激しく絶望することとなる。
それこそが人とポケモンという、種の隔絶であった。
友人同士であった頃にはさして気にもならなかった自身とブニャットの違いはしかし、こと恋愛感情へと移行するにたちどころにその存在感を増してはリウを責め苛めた。
今後いかなる状況の変化があろうとも自分達は結ばれない……その事実にどれだけ絶望したか知れない。
解決しようの無いその問題に苛まれること一年──ようやくにリウは自身の中で気持ちの整理を付ける。
それこそは己の種を捨てる覚悟であった。
とはいえそれも村からの離脱や肉体改造といった大仰なことではなく、単に生涯独身を貫き通そうという決意に他ならない。
要は従来通りの人同士による婚姻を諦め、自分は生涯ブニャットに寄り添おうと覚悟したのであった。
そしてその決意の表われこそが、今回の『夜這い』騒動とへと続く……──煩雑な手続きを終え、残るは彼女へのアプローチを仕掛けるだけという段階においてリウは足踏みをし、そして今……突如来訪してきた彼女に殴られては昏倒した。
玄関先で仰向けに倒れたリウは、星がきらめく視界の中にブニャットを見上げていた。
従来は4つ脚で行動している筈の彼女が、支える後ろ足を震えさせながら直立していた。
そのせいか、あの豊満な胸元と臀部のシルエットは逆光も手伝ってかより鮮明に浮き上がっては、こんな状況にもかかわらずリウを魅了させた。
──あぁ……やっぱりブニャット、キレイだなあ……
もはや襲撃の何故を考えるよりもそんなことを思っているうちに、リウの意識は完全に断たれる。
意識が途絶える瞬間、慌てふためいたブニャットの声を聴いたような気がした。
不思議とそれが心地良くて……リウの意識はより深みと落ち込んでいくのだった。
気付けとなったのは尿意に似た感覚であった。
寝ている時に覚えるあの感覚におぼろげながらに意識を結び、しばし肉体に圧し掛かる気だるさを振り払えずに仰臥し続けるリウはしかし……
──あれ……? そういや俺、何で寝てるんだろう?
徐々にその意識が鮮明になるにつけて、いま置かれている異常な状況にもまた気付くのだった。
そして同時、静止している自分とは裏腹に、傍らで何者かが激しく律動する気配が窺えた。
それは仰向けに寝そべる自分の体の上で行われており、さらに限定するならば腰元に集中していた。
依然とした寝たままの状態から僅かにアゴを引き、腰元にて起きているそれを確認したリウの寝ぼけまなこは──一気に覚醒へと引き上げられた。
一糸まとわず左右へ展開された自分の両脚の間には……おぼろげな影法師が陣取っては、その股座にあるペニスへと舌先を這わせていたからである。
それを確認するや、途端に性器から来るそれの舌先の感触が艶めかしく脳を直撃する。
そのあまりの展開と、そして場違いなまでの感覚と満足感に支配されては、リウは依然として狸寝入りを続けた。
場に響く吸い付けるような水音と、そして粘膜をもって亀頭や咥え込んだ陰茎全体を締め付けてくるその熱い感覚……いかにリウが唐変木であろうとも、いま自分へと施されているそれが性的な交渉であることは疑いようもなかった。
──ならば誰が……ッ?
そして当然の如くにわき上がる疑問にもしかし、リウにはこんな自分の相手を努めているモノの見当がついていた。
否、むしろその人であってほしいと強く切望しながらうっすらと目蓋を開いては、広げられた体の裾を望む。
そこにはいからせた両肩を口唇の動きに連動させては激しく上半身を上下させる影──……そこにリウは願い通りの姿を見止めては嘆息をせずに居られない。
股座において、情熱的なまでに奉仕をしてくれていた者は、誰でもない想い人(ブニャット)その人であった。