※この作品はR-18です。

三擦り半のマス☆カーニャ   作:たつおか

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【41】饑渇の紅勾(けかつのまがたま)
第1話・豎子の咎人


 

 

 事の発端は一人の生徒による告白から始まる。

 

 

 リンの通う小学校の四年生教室──

 午後二限目の授業中、担当教員がテキスト朗読の傍らに生徒達の席を巡っていた時に事件は起きた。

 その最中において、やおら一人の男子生徒が立ち上がるや彼は教員に対し愛の告白をする。

 

 その内容たるや小学4年生の語彙で伝えられる非常に拙いものであり、一方で受け止める20代女教員もまたしばし呆気には取られたが……すぐに彼の生徒を窘めては互いの歳の差をジョークに絡めた注意と共に場は和やかな雰囲気に包まれた。

 

 他の生徒達からは件の男子生徒の勇気をからかったり、あるいは讃えたりとして湧いたがしかし──次の瞬間に事態は一変し、教室は阿鼻叫喚の修羅場へと化す。

 

 告白を拒絶された生徒はその場にて自身のモンスターボールからリザードを繰り出す。そうして登場した彼に眼前の教師への攻撃を命じたのであった。

 思えばこの時には生徒も、そして彼のパートナーであるリザードの様子もおかしかったと後にクラスメート達は述懐する。

 命令されたリザードもまた、一切の躊躇もなく『竜の息吹』を教師へと向けて撃ち放ったのだ。

 

 思わぬその展開に、一切の抵抗もなく直撃を受けては昏倒する女教師の惨状に周囲は凍り付いた。

 そして斯様な衆人環視の中、少年とリザードは二人掛かりによってその女教師を輪姦し始めたのだった。

 

 いかに子供とはいえ、4年生ともなれば彼の犯していることの重大さは理解できる。

 一連の行動を目の当たりし、叫び出しては泣き出す女生徒を始め、友人でもある男子生徒達もまた彼の蛮行を止めようとその中に割って入った。

 しかしながら、件の生徒は動じない。

 

 依然として正常位に教師に覆い被さったまま、そんな傍らの友人には一瞥もくれずにリザードへとそれの排除を命じる。

 直後、リザードから繰り出された『炎の渦』により、周囲の生徒一同は薙ぎ払われる。

 

 それによって深刻な傷を負っては昏倒する者も現れ、さらには自衛すべくに他の生徒達も手持ちのポケモンを繰り出してはリザードへの攻撃を敢行するにあたり──もはや場は、友人同士が殺し合うという地獄絵図の如き様相を呈していった。

 

 数分後、助けを求めに走ったクラスメートによって他教室の教員や警備員達が駆け付け、抵抗著しかった男子生徒とリザードは鎮圧されたが……結果とし、一連の騒動はこの学校始まって以来の災事となってしまった。

 

 渦中の被害教員を始め、生徒やポケモン達においても重傷を負った者達は数知れずで、そして騒動の中心人物であった男子生徒とリザードもまた、激しい抵抗の末に実力行使で取り押さえられることとなり……それ相応の傷を負っては同じくに入院するという結末を辿っている。

 

 

「レノ君ってさ、ぜったいにそーいうことする男の子じゃないんだよ?」

 

 その日の夕方──斜陽が差し込む校舎の中をパートナーであるヒスイガーディと小走りに駆けながら、少女リンは内なるパオジアンへとそう語り掛けた。

 一友人として件の少年・レノを良く知るからこそのリンの言葉ではあったがしかし……

 

[キルキルキル……しかしながらその人畜無害の子羊が牙を剥いたのだ。その事実は変わるまい?]

 

 一方でリンの内部からパオジアンはさも愉快げに嘲笑する。

 

[『そのような事をする者ではない』……その言葉ひとつで全てを無かった事に出来るか? 凌辱された者はそれで納得することが出来ると?]

「またそういうイジワルなこと言ってー……」

[お前らの言う倫理や人間性などという言葉もまやかしよなあ]

 

 結果こそが事実であろうとパオジアンは続けた。

 どんなにその人物の善性を説かれたところで、他者を傷つける行動をとってしまったのならば所詮は悪人の凶状と変わらない。

 それをまことしやかに個人の『人間性』などという曖昧なものを持ち出してきては肯定或いは許容しようとする人の矛盾をパオジアンは『浅ましい』と一蹴してはそして哂うのだった。

 

 いつもならばそんな彼女の皮肉を窘めるリンもこの時ばかりは返答に窮しては口噤む。

 かのレノによって傷つけられた教師もそして他の生徒達も、リンにとっては大事な恩人でありそして親友達であったからだ。

 パオジアンの言葉通りにレノを庇ってしまってはそれら被害者達の尊厳を無視してしまうこととなる。

 

 頭の処理が追い付かなくなり、やがては現実逃避然としてそれを頭の隅へ追いやってしまうと、

 

「それより! レノ君をあんな風にした原因があるって本当なの?」

 

 リンは話題を変えた。 

 それこそは彼女が今ガーディと共に放課後の校舎を走り続ける理由であった。

 

 それを受け、パオジアンもまた頷く。

 内心ではいつもの仕返しとばかりにさらにこの話題を掘り下げてはリンを責め苛んでやりたい心情ではあったが、如何せんその『原因』の元へと近づきつつある。

 そこへの到達前にそれに関することも聞かせてやらねばならなかったからだ。

 

[おそらくは妾と同じ存在が原因よ……そやつが裏で糸を引いておる]

「それってパオジアンの知ってる人?」

[妾には組した覚えも無いが……其奴は妾と共に、『四災』と呼ばれた存在であったわ]

 

『四災』の言葉にリンもガーディもまた息を飲む。

 二人にとってその存在こそは幼少時より徹底的に語り聞かされてきたものであったからだ。

 そもそもがこのパオジアンこそ、リンとガーディの一族が代々守人を務めながらその封印を見守って来た四災の一角である。

 ひょんなことからその封印を解いてしまったリンではあったが、パートナーであるガーディの奮戦のもとこれを調服せしめたという経緯によって、今はリンの内に封じられる運びとなった。

 

 故にリンは人の身でありながらも『パオジアン(ポケモン)』へと変態する能力を得ては、内なる彼女と二人三脚で世直しに奔走しているといった現状であった。

 そして今、件の女教師強姦事件の解決に走っている理由も友人の潔白を証明し、その原因究明に努めるべく災禍の根源へと向かっているのであった。

 

「その四災ってどういうポケモン?」

[……知らぬ。連中のことは分かっているが、今回の首謀者ともなると誰がその役割を負っていても不思議ではない。皆それぞれに、手練手管に人間を操る術には長けている連中ばかりでな。……──ここじゃ]

 

 話しているうちに目的地へ到着したのか、パオジアンは一方的に会話を打ち切った。

 それを受けて立ち止まるリンもまた──

 

「用務員室……」

 

 目の前のドアに掲げられる古びたプレートを読み上げては、固唾を一つ飲み下してみせるのだった。      

 

 

 

  

 

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