ソファに腰かけるイーウィックを見下ろすようにして、しばしマギアナはその視線を交わす。
機械特有の無表情さに加え、まっすぐただ一点を見つめてくるその視線ではあるが、不思議とイーウィックはそこに敵意のようなものは感じなかった。
それどころか今のマギアナからは500年ぶりの務めを果たせることへの喜びのようなものまで伺えるかのようだ。
そんなことを考えていると、マギアナは座るイーウィックの前へと跪いてはその腰元へ鼻先を寄せる。
そうしてスラックスのジッパーをおろすやその下の肌着を晒し、そこのフロントポケットから──慣れた手つきでイーウィックのペニスを取り出す。
マギアナの金属の手による冷たい感触が陰茎に伝わると、最高潮に達したイーウィックの興奮を反映してか、取り出されたペニスは押さえつけられていた下着の反動から大きくそそり立ってはその身を振動させる。
かねてよりマギアナには好意以上の感情を抱いていた……その少女然とした愛くるしい見た目と鋼の肉体はまさに、イーウィックの好みに合致したデザインであった。
我ながらその性倒錯ぶりには苦笑いを禁じ得ないがしかし、このマギアナならばこんな自分を受け止めてくれるのではないかという仮説……むしろ願望のような思いがイーウィックにはあった。
それこそは昨晩のマギアナの行為に由来する。
深夜に置き出しては身近にいるヒトの元へと身を寄せて来たマギアナ──そのイーウィックが就寝していることは判断しつつも、自分に性的なリクエストをしてくれることを待ち望むよう三時間もその寝顔を見守り続け、遂には起きること叶わずとその日の性交は諦めたものの……最後にはその名残り惜しさを示すかのよう、被服ごしに彼のペニスを撫でては戻っていった一連の行動。
思うにこのマギアナは、こうした夜の相手を務めるべくに設定された個体──すなわちは『セクサロイド』であるというのが、イーウィックの結論であった。
深夜の稼働を想定されているが故に日中は起動することを許されず、そうして夜になっては起き出し、その役目を果たすべくに男性を探す。
あくまでヒトが主体であるだけに、対象が就寝中やはたまた行為を行える状態に無い場合には身を引くあたりにも、その事務的に役割を判別しようとする機械特有の不器用さというか、融通の利かなさがむしろイーウィックには愛らしく感じられてしまうのだった。
一方で腰元に蹲るマギアナはと言えば──目の前にそそり立つイーウィックのペニスへと見入ったまま、身動き一つ取らなかった。
しかしながら無表情であるはずのその面には、500年ぶりに見るであろう勃起した男性器の姿に見惚れているような気配すら感じられる。
感無量とも取れるその一時の後、小さな駆動音と共にマギアナの口元に楕円の開口が広がった。
そして開け放たれたそれはおおよその予想通りに──咥え込むようにして、その中へとイーウィックのペニスを迎え入れた。
「んう……あぁ……ッ!」
亀頭越しに感じる内部の温度……もはやそのマギアナの体温に思わずイーウィックは呻きを漏らす。
機械然とした見た目から硬く冷たい印象を持ったそれは存外に熱く、湿気を伴った感触であった。
その滑るような感触と艶めかしさは、到底500年も眠っていた機械の者とは思えない触感を伝えてくる。
それがイーウィックのペニスをみっちりと隙間なく包み込んでは、空気と潤滑液を介した前後運動を繰り返した。
もはやその感覚たるや、同類であるはずの生身の人間以上の快感に感じられた。
永らく性処理などは自身の手によるものですら怠っていたイーウィックなどはたちどころに射精を予期しては声を上ずらせる。
「あ、ああ……マギアナ、もうダメだ……このままじゃ君の口の中に……」
そんなイーウィックからの言葉に対し、僅かに顔を上げたマギアナが上目遣いに見つめ返す。
依然とした表情の変わらない文字通りの鉄面皮にも拘らず、ペニスを咥え込みながらに見つめてくるマギアナの視線はこれ以上に無くイーウィックの欲情を昂らせる。
やがては限界に達し、無礼とは知りつつも頭部の髪飾りをハンドルよろしくに握りしめるや──
「くあぁ……ッ、もう、出る……ッッ!」
イーウィックはマギアナの口中へと想いの限りの射精を果たした。
それを受け、一定のリズムを刻んでは前後し続けていたマギアナの頭部がようやくに速度を落とし……やがては止まった。
尿道を数倍にも膨らませては送精を続けるペニスの脈動に恍惚としているのか、それを受け止めるマギアナの瞳の点灯は眠たげに半眼へと消沈していくのだった。
胎の奥底に貯め込まれていた精液を吐きつくし、遂には自身のコントロールでは射精が行えなくなると──そこからはそれを見計らったかのよう、マギアナの口中内で緩やかな吸引が始まっては尿道に残った残滓の吸い上げが始まる。
ヒトには到底不可能なレベルの新旧状態を維持した吸い上げは、精液のみならず尿道を介しては体中の体液を吸い出されるかのような感覚があった。
やがてはそれらもすべて吸い付くし、ようやくにイーウィックの下腹に押し付けていた鼻先が離れ始めると……やがてはその小さな顎先を上げ、マギアナの口元から小さな空気の弾ける音ともにイーウィックのペニスは解放されるのだった。
依然として荒い呼吸のままイーウィックはそんなマギアナを見つめた。
一方の彼女もまた、閉じかけた口の端から僅かな精液の雫を伝わらせては依然子供めいたあどけない視線を送って返す。
やがてはイーウィックもまた、
「はぁはぁ……ありがとう。すっごく、気持ち良かったよ」
自身の気持ちが伝わるかも分からなかったが、そんな感謝を伝えずにはいられなかった。
それを受け、マギアナは小さく小首をかしげる。
そしてその瞳の赤い照明が素早く点滅する様にイーウィックは確信をする──
彼女は、『機械型のポケモン』であるのだ、と。
さらには、
──そして、喜んでいる……
そんな感情の一端を読み取っては、イーウィックはなおさらにマギアナが愛おしくなってしまうのだった。