部屋の北側にジュナイパーのベッドは設置されていた。
入り隅に引き出し式のナイトテーブルが置かれていて、そのすぐ隣にベッドという並びではあるのだが──そんなベッド上においてジュナイパーと枕を並べたピークは、ただ一人眠れぬ夜を延々と過ごしていた。
幾度となく視線だけを動かしては隣のジュナイパーを伺う。仰向けの自分に対し、彼女はこちらに背を向ける体位で寝入っていた。
つい数分前まではピークも疲労から意識を朦朧とさせていたというのに、今や新年を迎える瞬間さながらに目が冴え渡ってしまっている。
それというのも、すべては隣に寝ているジュナイパーの存在がゆえだ。
至近距離で感じる彼女の香り・体温、そして息づかいに至るまでそのすべてがピークを刺激してやまなかった。
常日頃から自身の性欲の強さは自認していたが、よもや行きずりの少女──ましてや恩人に対してまで欲情を催す性(さが)をピークは恨まずにはいられない。
そしてこんな時の対処法として、自慰による沈静化の術もまた心得ていたピークではあったが……いかんせん、状況が悪い。
隣にはジュナイパーがいるのだ。
ベッドを抜け出してこっそり処理しようかとも考えたが、如何せん今の自分の位置たるや、壁とジュナイパーに挟まれた位置にある。
こうして動きあぐねている間にも興奮は募り、ついにピークは……──同衾しているこのベッドの中において済ませてしまおうと心を決めた。
もう一度ジュナイパーの様子を伺った後、シーツの下においてピークはいきり立った自身のぺニスへと触れる。
存分に焦らされたこともあり、膨張の限りに肥大化したい亀頭の鈴口からは、射精のそれと見紛わんばかりの量の腺液が溢れだしていた。
ジュナイパーの背と触れ合ってしまっている右腕を動かしてしまってはその振動が伝わってしまうことから、ピークは元来の利き腕ではない左手を用いて自身を慰める行為を執り行おうと試みる。
しかしながら、普段使い慣れていない左手のそれではただ表面をなぞるばかりで、肝心の『扱く』行為が思うように行えない。
手首のスナップが利かないが故、一向に射精へと導く快感が得られないのだ。
──早く早く……! 早くしないとジュナイパーにバレる……!
ただ気持ちだけが急いていくと、その焦りが現れる手の動きは一層にしなやかさを失ってはなおさらにピークの絶頂を遠ざけてしまうのであった。
そしてそんなピークの傍らにおいて……──
──ピーク……自分のおチンチン触ってるの!?
人知れずジュナイパーは覚醒していた。
というべきか、彼女自身もまた隣に異性を置くこの状況に緊張しては眠れなかったのだ。
いつもならば目を閉じてメリープのことでも考えていれば途端に眠りに落ちる健康優良児の自分が、今夜ばかりはピークを意識するあまり一向に眠れる気配がなかった。
それでもしかし、隣に添い寝するピークの気配などを探っている今宵のベッドはどこか気持ちの弾む気がして、そんな不眠の煩わしさを半ば愉しんでもいた。
しかしそんな矢先に起きたのが──いま隣で始まってしまったハプニングだ。
一般感覚であるならばおおよそ信じられない事態ではあるのだがしかし、彼女自身がポケモンであったことと、そして何よりもピークのそんな苦しげですらある息遣いに、ジュナイパーの意識はむしろそんな彼を心配する向きへと傾いていった。
──たしか男の子もオナニーするって聞いたことがある……でもピーク、なんか苦しそう……
依然としてピークの押し殺した息遣いに聞き耳を欹てていると、やがてジュナイパーはピークの非常識さをさらに上回る発想へと至ってしまう。
それこそは、
──ピークは大切なお客さんなんだから、私がおもてなししなきゃ……!
斯様な謎の使命感に目覚めるジュナイパー。
生来の気真面目さと、処女ゆえの無知からくる勘違いではあるのだが……その実、気持ちの根底においてジュナイパーはピークに想いを寄せて始めていた。
初対面に加え、他者との付き合いなどほとんど持たなかった経験不足からそんな自身の気持ちにも気付けないジュナイパーは、それゆえにピークに触れたいという気持ちをそんな考えで昇華したのだ。
とはいえ──だからと言ってすぐに起き上がってピークに夜這いを掛けられるほどジュナイパーは積極的でも無ければ非常識でもない。
それでもしかしピークに触れたい一心のジュナイパーが取った行動は……──
「はぁはぁ……ん? じゅ、ジュナイパー……ッ?」
依然としてピークには背を向けたまま、ジュナイパーは無言で左腕を繰り出してはピークのペニスを握りしめた。
そんな突然の行動に慌てふためくばかりのピークではあったが、その瞬間ペニスを包み込むジュナイパーの体温と、そして羽毛を介した滑らかな手触りを陰茎に感じ取っては息を飲んだ。
そこからジュナイパーの掌が不規則に上下をする。
不慣れなせいか握りしめてくる圧は強く、扱く動作も包皮を包茎に戻してはまた完全に剥き切るを繰り返す荒々しいものではあったが、他人の感触という新鮮さと誰でもないジュナイパーの甘い香りに包まれての手淫とあっては、たちどころに陰茎には激しい痛痒感が生じた。
肛門が収縮をし、いよいよ以て限界が近づく。
そして腺液に滑ったジュナイパーの掌が剥きだされた亀頭全体に覆い被さった瞬間──
「あぁッ……あぁ!」
息を殺してはピークも絶頂した。
同時に、
──なにこれ? 熱いのがいっぱい手に染み込んでくる……!?
掌の羽毛に染み込んでくる精液の、マグマさながらの灼熱感にジュナイパーの興奮もまた最高潮へと熱せられた。
本能でそれが『精液』であること、これこそがピークの子種でありそれが自身の掌の中で躍動している感覚にジュナイパーもまた──
『んんんぅ………ッ♡』
人知れず絶頂を憶えた。
そうしてしばし互いに身を硬直させていた二人も、やがては同時に感覚の波が過ぎ去ると大きく息をついてはベッドに身を沈ませた。
そうして幾ばくか冷静さを取り戻すと、依然ジュナイパーはピークのペニスを掌に収めたままゆっくりとそれを抜き出す。
その際にも無垢なペニスそれを傷つけてしまわぬよう細心の注意を払っては引き抜き、可能な限り溢れ出た精液を手羽先に絡めては彼のペニスを綺麗に出来るよう努めた。
やがて完全に手の筒からそれが抜き取られると、その瞬間にピークが小さな呻きを漏らす。
その後はか細くも荒い呼吸を繰り返す彼に対し、
『………ナイトテーブルにタオルが置いてあります。それを使ってください……』
依然として背を向けたままのジュナイパーは、勤めて声の抑揚を抑えながらに示した。
あくまで事務的に接することでピークに気遣いをさせない彼女なりの配慮だ。
しかしながら、
「あ、ありがとう………」
それを受けて礼を返すピークではあるが、そう言葉を紡ぐ半面で彼の意識は既に曖昧模糊に形を失いつつあった。
これまでに感じたことも無かった快感に晒されたことに加え、そこに今までの疲労もまた追いつくと、途端にピークの意識は混濁して現実と夢の境界を曖昧とさせていった。
やがては一連の体験自体が夢であったのかもと訝っていると──……いつしかピークは深い眠りへと落ちていくのであった。
しばしして……斯様に規則立ったピークの寝息が響き始めると、改めてジュナイパーは身を起こして目下にピークを見下ろした。
今までにまじまじと見つめること叶わなかったピークの顔は、初対面の印象通りに幼くも、そして今は誰よりも愛らしくジュナイパーの目には映った。
『明日はどんな顔をして会ったらいいんでしょうね……』
そっと語り掛けると、ジュナイパーもまた微笑みまじりに鼻を鳴らす。
そうして鼻先を寄せるとジュナイパーは──密かにピークの横顔へと就寝の挨拶(キッス)をしてみせるのだった。