目の前において対峙するエースバーンに対し、テッカグヤはあからさまな戸惑いを見せていた。
太古より続けられてきた因習の記憶は、当然ながら今のテッカグヤにも引き継がれている。
そんな千年に渡る記憶の中において、自身の分裂体がまったくの別物へと変貌してしまうなどという事態は初めてのことであった。
先のカイリキーの件もある。
原因は分からずとも、第三者の闖入には警戒をして然るべきであろうが……この瞬間におけるテッカグヤの胸中には不思議と暖かいものが溢れていた。
同時にそれは、久しく忘れていた期待を思い起こさせては胸もまた躍らせている事に気付き、テッカグヤはそれらへの戸惑いを覚えずにはいられない。
一方で目の前に佇むエースバーンもまた右腕を掲げていたポーズを解き、自然体に脱力をしては改めてテッカグヤと向き合う。
そこから向けられる眼差しや気配に敵意のようなものは一切込めてはいない。
むしろ彼女を迎え入れんとするかのような包容力を感じさせるその佇まいにむしろ、見つめられるテッカグヤは切なさすらも覚えたほどである。
抱き着きたい──そんな衝動に駆られる。
それこそは激しく求めてやまなかった愛情を与えてくれる存在……幼児が無自覚に親の愛を欲するのような気持ちが全身に湧き上がっていた。
それでもしかし、テッカグヤは自身から動き出すこと叶わず、遂には視線を外しては所在なげにその場で身を捩じらせては立ち尽くすばかりだった。
そんなテッカグヤへと──エースバーンは接触をする。
ゆっくりと、やや大股に一歩を踏み出してテッカグヤに歩み寄るや、その頬元に手の平を添えた。
うなじに懸かる髪を梳き分けてはその顔を露とさせると、エースバーンは更に身を寄せてはその頬元へとキスをした。
言わずもがなの抱擁にテッカグヤは瞬間、両肩を跳ね上がらせては身をすくめるも……その後も顎のラインへと降りては首筋に施されるその、幾度となく吸い付ける愛撫に、徐々に彼女もまた脱力をしてはその身をエースバーンへと委ねるのだった。
同時に下半身においては救う様に宛がわれたエースバーンの右手が、テッカグヤの重ね襟に侵入してはその内部もまたまさぐり始める。
その瞬間、我が身に走るその感覚にテッカグヤは息を飲む。
自分自身にこんな感覚を受容できる器官があったことに驚きを禁じ得ないが、そんな未知の感覚をエースバーンの手の平は次々と発見していく。
おそらくは膣口と思しきその間口を探り当ててはエースバーンの指先はそこの撹拌をしていた。
無遠慮に挿入してしまうような真似はせず、その指先で陰唇やクリトリスの表面を捏ねるようにして撹拌する左右運動に、徐々にテッカグヤの内側からも愛液が滲み出しては瞬く間にエースバーンの右手を、さらには十二単然とした体表の裾にもその雫を滴らせるに至った。
それと同時、エースバーンの肉体にもまた変化が現れた。
指先に感じるテッカグヤの体温と愛液の潤滑に反応し、エースバーンの引き締まった股間からも、その痩躯には似つかわぬ巨大な陰茎が勃起を始めていた。
血を滴らせたように赤く鮮明な先細りのペニスそれ──そこからも醸しだされる体温と匂いもまた感じとっては、なおさらにテッカグヤの肉体も興奮に煽られる。
もはや触れられている股間からは放尿と思しき量の愛液が溢れ出しては、その下に跨ぐ田畑の灌水に滴り落ちては幾重にも波紋を広げる。
もはやテッカグヤはその待ち遠しさに狂い出さんばかりの興奮にあった。
性的なそれは元より、何よりも自分がいま生殖を為そうとしている事実にである。
それこそは悠久の刻の中で待ち続けた瞬間でもあった。
そして正面からその背に両腕を回してテッカグヤを抱き寄せたエースバーンは今──……その前面同士を密着させ、遂に彼女の膣への挿入を果たすのだった。
熱を持った物体が千年越しの処女を引き裂く感触にテッカグヤはその細い首を仰け反らせては身悶える。
過去に様々な抵抗からありとあらゆる痛みに晒されてきた彼女にとってしかし、今この身を裂く破瓜の痛みはまるで別物の感触であった。
痛みの中にも確かな暖かさと、そしてエースバーンからの愛情を感じた。
その強さこそが今の痛みと比例しているように感じると、なおさらにテッカグヤは自ら腰を突き出してはより深い挿入を望む。
そして今、文字通りの一心同体と化したエースバーンにもその想いは通じていた。
あるいは更なる愛を彼女に刻み込みたいというエースバーンの想いこそがテッカグヤに伝播していたのかもしれない。
二人は今、互いを求めることを何にも増して強く求めた。
無機質とした外見の彼女にもしかし、その胎内は何処までも柔らか気でありそして潤沢に愛液を滲ませていた。
その包み込まれる快感に無新で腰を突き出し続けるエースバーンに呼応するかのよう、テッカグヤの膣もまた激しく収縮を繰り返し、その肉襞を以て包み込むペニスを扱き上げるのだった。
ペニスの先端が最深部へ到達すると、子宮周りに浮き上がった独特の襞がくすぐるようその先端を刺激した。
それを味わうに至り、もはや激しい射精の予感に肛門を収縮させてはエースバーンも身動きが取れなくなる。
そんな彼を今度はテッカグヤが抱き寄せた。
エースバーンの細い背に交差するよう掛けられた先の攻撃衛星二本は、この時初めて他者を慈しむ両腕としての機能を果たしたといって過言ではない。
同時にエーズバーンもまたテッカグヤの背に両腕を回しては力の限りに──さながら自身の中へと取り込まんとするかの如き膂力を込める。
いつしかエースバーンは忙しないピストンを開始していた。
しかしながらそれも、もはや相手を慮ったものではなく一刻も早く射精を得たいというはなはだ身勝手で忙しない動きであった。
それでもしかしテッカグヤはそれに動じることなく、今は溢れんばかりの慈愛を以てそれを受け止めていた。
オスにも求められる悦びを……そしてメスとしての務めを今果たしているという実感は何にも増してテッカグヤに充実と、そして目の前のエースバーンへの愛情とを募らせた。
それが反映されたかのようテッカグヤにもまた心身共だった変化が現れる。
彼女もまた絶頂を予期した。
同時にその果てに待つ受精もまた肉体は感じ取っては、全身を以てエースバーンの子種を搾り取ろうと躍起になる。
そんなもは暴力的なまでの吸い付けに晒されては、エースバーンもテッカグヤにしがみ付いたまま声を上げた。
もはや射精はすぐ目の前だ。
我が身の体内へとそれが注がれようとする瞬間を予期した瞬間──その興奮から先だって、テッカグヤは絶頂を果たした。
月光による光の粉が降り注ぐような夜の下に、テッカグヤの謳うかのような嬌声が響き渡った。
そしてそれから遅れること数瞬──遂にはエースバーンもまた射精へと至る。
声高く見の内に籠っていた全てを解放するかのようなテッカグヤとは対照的に、エースバーンはより強く抱きしめてはその胸元へ鼻先を埋めると、深く低く呻きを漏らしては彼女の体内への送精に意識を集中させた。
腹の奥底で湯が湧くかの如き感触に幾度となく絶頂を繰り返すテッカグヤはしかし、今日まで焦がれ待ち望んだ他者の子種が自身の子宮を通っては卵巣へと向かう様を感じるような思いがした。
やがてそれは、千年という時を超え──ようやく子を生す宮の奥深くに鎮座する卵へと到達する。
その神聖な場においてこの日を待ちわびた二人の魂は手を取り合い、やがては互いに身を寄せ合っては一つとなる。
永きに渡る刻の漂流の果てにその邂逅へ至れたこと──そしてこの旅の終わりを実感しては、テッカグヤもエースバーンもあふれる涙を抑えることが出来なかった。