依然として彼女に気付かれることなく、僕とエルフーンの共同生活は続いた。
あれから更に一ヶ月が過ぎる頃には、僕の部屋の至る場所にはポケモン用のオモチャやオヤツが散見されるようになった。
もちろんそれらは全て僕が用意したものだ。そしてそれに対しエルフーンもまた存分に遊び、そして味わった。
一日の内で彼女がこうして屋根裏から出て来られる時間は少ない。だからこそその僅かな時間を少しでも充実させてやろうと思ったが故のお節介であった。
件のアイテムを買い始めた当初は、これによって彼女が自分の居候を僕に気付かれたと感づいて出て行ってしまうのではないかという不安もあったが、それも杞憂でむしろ彼女はこの部屋での借りぐらしライフを今まで以上に満喫する様子が見て取れた。
最近では天井裏に帰るのが名残惜しいのか、僕のベッドの枕に顔を埋めては残りの数時間をただ漫然と過ごしていることも多くなった。
そんなエルフーンを見守る僕は、そこへ覚える切なさに胸掻きむしらんばかりだ。
事ここに至ってはもう、僕にとって彼女は無くてはならない存在と化していたのだった。
一日の仕事を終え、こうして日中に録画した監視カメラの映像を見ていると、時折りこの昼の最中に突然帰宅などして彼女を驚かせてやりたいという衝動に駆られることもあった。
彼女に触れてみたい……この腕の中に抱き上げて存分にキスをしてやったり、そのふくよかな鬣の中に鼻先を埋めて匂いなど堪能したいなどと考えると、仕事を終えた後の疲れた体であっても僕は目が冴えて眠れなくなってしまうことすらあった。
それでもしかし、そんなもどかしさもまた楽しいのだと僕も弁えている。
この、自身の存在をバレていないと思いこみながら居候をするエルフーンと、そしてそれに気付かぬ振りをする僕の予定調調和こそがこの場所を『楽園』たらしめているのだから。
願わくばいつまでもこの恙無い幸せが続いてくれることを、僕は祈らずにいられないのだった。
しかし……──そんなささやかな僕らの日常は、とある些細な事件を皮切りに崩壊してしまうこととなる。
その日もいつものように日中の彼女の様子を観察していた僕は、その中でエルフーンの異変に気付く。
いつもの如く天井裏から降りてきた彼女の表情はどこか熱っぽかった。
目蓋を半ばに閉じ、明らかに両肩を上下させては呼吸する姿はどこか息苦しそうな印象を抱かせた。
「あれ? もしかして風邪ひいたかな?」
その様子に僕の気もそぞろとなる。
病気に関しては考えたこともなかった。彼女もポケモンであり一個の生物である以上、体調不良に陥ることだってあるだろう。
こういう時、今の関係性は何とも歯がゆい。
手持ちのポケモンであったのならば薬を投与したり、あるいは地元のポケモンセンターへと連れて行ってやることも出来るだろうに。
そんな不安な気持ちになりながらも見つめ続けていると、画面の向こうの彼女はいつもの専用のコップで水を飲んだ後、今日は食事を摂ることも無く台所を後にした。
依然として右手にはあのコップを持ったまま彼女が向かった先は──どこでもない僕の寝室だった。
そうしてベッドの上へとダイブするや、そこのベッドシーツに顔を埋めては幾度となく身を捩じらせる。
さては病気で弱まっていたが故にベッドで横になりたかったのかと見守っていた僕ではあったが──それらは全て僕の勘違いであり、この時エルフーンの肉体には想像もつかない変化が現れていたのだった。
偶然か否か、エルフーンは左側臥位に身を起こしたかと思うと、膝を立てガニ股に開脚するような姿勢を取った。
メスである彼女の何も無いのっぺりとした股間が、遠目ではあるもののカメラの前に晒される様子に僕の不整脈は大きくひとつ高鳴る。
そこからはもう混乱もしきりだ。
ともすれば下品とも取られないその姿勢で彼女は何をしようとしているのか……何も分からず想像もつかない僕ではあったが、ある種の期待が胸の中に渦巻いていた。
マスコット然とした愛らしさゆえ『その妄想』をエルフーンへ当て嵌めてしまうことの禁忌感に、僕は必死にその妄想を頭から振り払おうとする。
それでもしかしカメラの前の彼女は、おおよそ信じられない……しかしある意味では僕の期待へと大きく応えるような行動をとった。
開かれた股間の中心へ、パンのようにふくよかな指先を這わせたかと思うと……次の瞬間、彼女は小さくその先端で螺旋を描いては自身の局部を愛撫した。
その刺激に瞬間、エルフーンは瞳を閉じて苦し気に顎先を上げたかと思うと、そのまま硬直しては小刻みに体を震わせる。
依然として指先が置かれたままの股間は、いつしか切り裂かれたようなスリットがうっすらと現れだしては、その端から液体の流れる煌めきを午前の日差しに反射(かえ)しては寝室の監視カメラへと晒す。
おそらくはその一掻きで絶頂してしまったのだろう。
体の硬直が解け、大きく両肩を上下させながら息荒く泣き濡れた表情を晒す彼女もしかし、次の瞬間には再び膣へと指先を這わせてはその顔を苦しみにしかめさせた。
その後も彼女の自慰は続いた。
幾度となく絶頂を迎えては、今までその足跡を隠し続けてきたのが嘘のように僕のベッド上へ自身の愛液をまき散らしては身悶えるエルフーン……やがて傍らの枕を抱き寄せたかと思うと全身を以てそれを抱きしめ、股座に挟み込んだ枕の鋭角へ股間を押し付けてはこれまた存分に噴き上げた潮をそこに染み込ませた。
もはや声を押し殺すような真似もせず、歌うように嬌声を上げる彼女の声はしかし──どこまでもそれを見守る僕を刺激してやまなかった。
いつしか僕もまた、無意識に勃起したペニスをスラックスのジッパーから解放しては握りしめ、さらにはそれを激しく慰める。
そして数度目のエルフーンの絶頂に合わせ──僕もまた生涯に感じたことも無い快感と開放感の中で果てるのだった。
視界に星をきらめかせるほどの快感の余韻を帯びながら、僕は重いその体を引きずってはベッドへと移動する。
そうして日中に彼女が愛していたであろう枕を抱き寄せ、その角に僅かな湿り気を憶えてはそこに鼻先を潜らせた瞬間──アンチョビを煮詰めたかのような深く濃厚な芳香を確認した僕は、再びペニスを上下に擦り上げる運動を再開させた。
これこそはエルフーンが幻ではなく確かに此処に存在していた証だ。
その蠱惑的な匂いの元をさらに咥え込んでしまうと、僕もまた口中に彼女の味を堪能しながら何度も達した。
その合間にふとパソコンの画面へ目を走らせると、そこには依然として僕の枕を抱きしめては声を上げ続けるエルフーンが映っている。
「はぁはぁ……エルフーン……エルフーン……ッッ!」
その後も数時間に渡り自慰を繰り返す彼女と褥を重ねるよう、僕もまた自身を慰め続けた……事この瞬間においてはもはや、これは枕を媒介とさせた彼女とのセックスに他ならなかった。