翌日は一切の仕事が手につかなかった。
それどころか事あるごとに脳裏にはあのエルフーンの艶めかしい姿と、そして枕やベッドシーツに染み込んだ彼女の芳香とが再生されて、もはや狂いだしそうなほどに僕はいま胸を焦がしている。
そしていつまでも彼女のことが頭から離れない僕は、トイレへと立つ傍ら個室にて密かに監視カメラのアプリを立ち上げた。
時間は午前10時を少し過ぎたところ……いつも通りならば既に彼女は起き出している時間である。
アプリ起動の際の、その僅かなその読み込み時間ですらもが永遠のように感じられた。
そこに僕は昨日同様の刺激的な光景を強く望むのと同時、あれは一時の間違いであって、今日の映像にはまたいつも通りの朗らかなエルフーンの日常が戻っていてくれていることもまた強く望んでいた。
斯様にして矛盾する願望の真意は、もしもう一度あんな彼女の姿を見せられたらもう──僕は理性を保てる自信が無かったからに他ならない。
そしてそんな僕の僕のささやかな願いは無惨にも断たれることとなる。否、ここに至ってはもう叶えられたとも捉えるべきか。
画面がスマホロトムのモニターへ映し出されるや──最大音響のエルフーンの嬌声が突如として響き渡った。
彼女は今日もまた僕の部屋にいる。
そして何処から見つけてきたものか、僕が普段愛用している万年筆の柄尻をペニスに見立てては、それを幾度となく激しく膣へ挿入してはそこから愛液の飛沫をまき散らせていた。
その映像を前に、僕は音が外部へと漏れている危機感も忘れては齧りつくようにそこへ見入る。
ベッドへ横顔を押し付け、その小振りな尻を天高くに突き上げては声を上げる彼女──股座から通した右手に握りしめた万年筆を、見ていて不安になるくらいあの小さな膣へ深く挿入しては引きだす光景はただただ僕を圧倒した。
幾度となく絶頂を繰り返しながらも、なおも貪欲に挿入を続ける彼女の嬌声にしかし、僕はふと不思議な法則性を見つける。
一際感情が高ぶる時や、そして絶頂の瞬間に彼女は同じイントネーションの単語を必ず叫んだ。
おそらくは同一の単語であろうそれ……一体それが何を意味するのかと、ふと興奮のエアスポットの中で考える僕は、画面の中のエルフーンが枕を抱きしめそこに強く口づけを交わしながらをそれを叫んだ瞬間──それが意味することの全てを僕は察してしまうのだった。
「僕を……呼んでるのか?」
身勝手ながら、その時の僕はそれを確信していた。
そもそもが彼女が僕の部屋に居候を始めたのもけっして偶然などではない。
あの日僕に助けられた時から既に、少なくとも彼女にとっての僕との関係は始まっていたのだ。
彼女が僕を愛してくれている。
そして求めている。
そのことに気付いた次の瞬間には、僕はトイレの個室を飛び出していた。
さらには会社からも駆け出し、僕は自宅までの帰路を駆ける。
ここから自宅までは一駅分の距離があり、効率を考えるならば何らかの交通手段を利用した方が労も無く帰宅することが出来る。
しかしながらその時の僕は駆けださずにはいられなかったのだ。
身の内に湧き上がる興奮──それこそはエルフーンを性的に翻弄してやりたいという強い性欲に突き動かされた情動と、そしてそれに負けないくらいに彼女を強く愛でたいという息苦しいほどの恋情。
その二つを内に燃え上がらせた肉体は、今にも爆発しそうなそのエネルギーと想いとを発散させるべく、僕に走らせることを選択させたのだった。
走り続ける中、視界に映る景色は残像を帯びてはどれ一つとして制止した像を結ばない。
それでもしかし通い慣れた道順を辿る肉体は本能的に正確な帰路を辿った。
瞬く間にいつも乗り降りをする最寄りの駅前を通り抜け、いよいよもって自室への距離が目と鼻の先に迫ると──焦燥感に駆られた僕は、もはやまともな思考を保つことが出来なくなっていった。
そうしてアパートの自室前に辿り着き、震える手でもどかしくもドアの開錠を果たすと、僕は脱いだ靴を跳ね上げるようにして玄関の上がり框を跳び越す。
直線の廊下を抜けてリビングへ出ると、左にキッチンが在りそして右壁面のドアから僕の寝室へと通じるドアが見える。
瞬く間にリビングを越え、そして一切のノックや気遣いも無しにそこを開け放った僕は──ベッド上において、仰向けに両ひざを立ててはその股座へと万年筆を挿入しているエルフーンと遭遇した。
その一時、入り口のドアで立ち尽くす僕を見つけてもエルフーンに取り乱す様子は見られなかった。
むしろこの瞬間もなお激しい絶頂の中にあった彼女は、そんな僕を──想い人を目にした瞬間、快楽に泣き濡れた表情を溶かしてはむしろ僕へと満面の笑顔を向けたのだった。
同時、彼女の膣からも潮が吹き上がっては入り口の傍らに立ち続ける僕の鼻先へと浴びせかけられる。
その生々しいまでに匂い立つ彼女の芳香を嗅ぎ取り、そして鼻筋を伝ったそれが唇へと流れ落ちては口中に得も言えぬ彼女の味を感じさせた瞬間──
「エルフーンッッ!」
僕は飛び込むようにして彼女のいるベッドへと身を乗り上げさせていた。
そこから荒々しく唇を奪う蛮行に対しても、エルフーンはむしろそんな僕の両頬へと手を添えては自らも深くキスを交わしては僕からの抱擁を貪った。
互いの舌を噛ませあいながら粘着質に音を立てては唾液を啜り合うキスを交わす僕のポケットからスマホロトムが零れ落ちては床に転がる。
依然として監視カメラの確認アプリを起動したままの画面には──ベッド上にて激しく絡み合う、僕とエルフーンの姿が映し出されていた。