※この作品はR-18です。

三擦り半のマス☆カーニャ   作:たつおか

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第5話・約束の果て

 

 

 ラボの中央に存在する巨大なシリンダー──かつてガブリアスはこの中で生成され、そして生まれ出でた。

 

 ふとそのことに感慨深くなるハイマンであったが、すぐそれを頭から振り払う。もはや今は一分一秒とて無駄には出来ない。

 件のテーザー銃による麻痺状態は、人間ならば45分から1時間といったところだ。しかしながらポケモンでありあの巨躯を誇るガブリアスであるのならば、ヒトよりもずっと早く回復してくることだろう。

 とりあえずその復活までの時間を15分と見積もると、ハイマンは最後の戦いに備えるべくにその準備を始める。

 

 しかしながら作業を始めるにあたりハイマンは取り出したスマホでなにやら操作すると、後はそれをすくめた左肩口と横顔で挟み込んでは、その姿勢で作業を開始した。

 この時ハイマンはある人物へと電話を掛けていたのだ。そしてその人物は数度の呼び出し音の後──声に怪訝な響きを持たせながら電話口に出た。

 

『…………はい』

「あ、あぁクリスかい? 僕だ……」

 

 この時ハイマンが電話をかけた相手とは、誰でもない元妻・クリスチーナの元であった。

 ハイマンの声を聴いて改めてため息の度合いを深くする理由は相手が離婚したばかりの元・夫だからというだけでもないだろう。今現在、深夜2時半とあってはおそらく彼女も就寝中であったはずだ。

 

『こんな時間に掛けてきてどういうつもり? ウィリアムの親権を譲るつもりは無いわよ』

「えっと、違うんだ。今は、そういうつもりで電話したんじゃないんだよ……」

 

 クリスに応えながらハイマン自身、己の行動の真意を図りかねていた。

 カブリアスとの対決を控え、もしかしたら自分もまたここで死んでしまうかもと考えた時──ハイマンは無性に元妻の声を聞きたくなったのだ。

 

「ごめんよ。ただ君の声が聴きたかったんだ……こんな時間に非常識なのは分かってたんだけど」

 

 存外にしおらしく告白してくるハイマンに、電話口におけるクリスの空気にも弛緩する様子が窺えた。

 

『……そうね、私も話したいことはたくさんあるわ。今後の養育費の件でもね。だから一度会いましょ』

「あぁ……あぁ! そうだね。約束するよ。必ず会いに行く……」

『分かったわ。じゃあその時には一緒に食事でもしながら話しましょう』

「うん、君とウィリアムに会えるのを楽しみにしているよ」

 

 恙無く会話を終えると電話はクリス側から切られた。

 通話が遮断され、後には乾いたビジートーンだけが響いて来るばかりのスマホをそれでもハイマンは遮断することなく、いつまでも肩と顔に挟み込んだまま作業を続けた。

 やがてはそれも終了し、ようやくに立ち上がるとスマホを手に取り、画面に表示される元妻の名をもう一度だけ確認する。

 そしてその顔を上げるハイマンの視界には──あのガブリアスが、悠然とこちらへと歩み進んでくる様子が見て取れた。

 

「………時間通りだ」

 

 スマホを白衣のポケットへ放るようにしまい込むとハイマンもまた彼女と対峙する。

 一歩一歩を踏みしめながら歩んでくるガブリアスは、女体然としてメリハリの利いた肉体から、さながらファッションショーにおけるモデルの闊歩を思わせた。

 胸元には乳首を突き上げて形良い椀型を形成した乳房と、そして歩くたびに弾んでは性的存在感をアピールしてくる臀部……人とポケモンとが中和したこのガブリアスは、まさにノイマンと神が作りたもうた最高傑作にして最悪の雌豚──もとい、雌鮫(セックス・シャーク)であるのだった。

 

 斯様にして悠然と歩んでくるガブリアスは、生後1時間半にして4人の男達をヤリ殺したことにより、もはや人間の持つ身体能力の分析を完全に見極めていた。

 慌てて駆け寄らずとも、もはやこの同じ空間においてハイマンを見失うことは無いという自信が彼女を慇懃無礼にたらしめている理由でもあった。

 

 そんなガブリアスの接近を間近にし、ハイマンもまた行動に出る。

 羽織っていた白衣を捨て去るや、次いでシャツとスラックスもまた脱ぎ去り──カブリアスを前にハイマンは、革靴に靴下だけを残した全裸の状態で対峙を果たしたのだった。

 

 それを前にして目を剥くガブリアス。彼女にしてみればそんなハイマンの行動は意外なものに思えた。

 今まで彼女が狩ってきた人間達は、皆が泣きわめいては混乱するばかりであったからだ。そんな中で正面から自分と向き合い、ましてや臆することも無くペニスを晒してきたハイマンに、ガブリアスは好意に近い感情すら覚える。

 

 そして彼が服を脱いだ理由もまた彼女は察する……それこそは、

 

「ガブリアス……セックスで決着をつけるぞ! 僕と勝負だ!」

 

 ハイマンからの宣戦布告に、遂にはガブリアスの顔に満面の笑みが浮かんだ。

 見ればハイマンのペニスもまた十分に充血しては屹立し、そこに勃起を果たしている。

 後に分かることではあるが、このガブリアスからは他のオスを刺激し強制的に肉体を子作りの形態へと移行させる能力(フェロモン)が備わっていた。

 過去に彼女の餌食となった男達があの極限状態の中においても勃起を果たしていた理由こそはそこにある。

 

 やがてはハイマンと胸元は触れ合わんばかりまで接近すると、両者はしばし見つめ合い互いの視線を絡める。

 やがてはそれもガブリアスから振り切ると、彼女は四つん這いに体位を取っては、突き上げた尻と局部とをハイマンへ見せつけては挑発をした。

 彼へと先手を譲ったのである。

 

「いつまでも、調子に乗っていられると思うな……」

 

 それを受けハイマンもまた両膝をついて彼女の背後に陣取ると、まずはあいさつ代わりにその巨大な臀部へと張り手を見舞った。

 乾いた破裂音を響かせ、脂肪質の臀部が掌の形にひしゃげて波立つや──ハイマンはそれを両手でワシ掴んで引き寄せ、遂に挿入を果たした。

 

 その瞬間、まるで巣穴へと飛び込んできた獲物に食らいつくかの様、粘膜を狭めてはペニス全体を締め上げてくる膣圧にハイマンは眩暈を覚える。

 その蠕動運動によってペニスへ血液が集中することにより、瞬間的に脳へとめぐる血流に変化が生じたが故だ。

 

──想像以上の膣圧だ……早く勝負を決めないと、先のみんなと同じ轍を踏むことになる!

 

 気を引き閉めると同時、この圧とあっては10分以内かつ一度の射精が限界であることを見極めるや、ハイマンもまた能動的に腰を前後させる動きを開始した。

 そんなハイマンのピストンに対し、始まりこそは身体的優位も手伝い彼を甘くみていたガブリアスもしかし、膣内をペニスが数往復するうち、その余裕を湛えていた表情は徐々に突き崩され、しまいには吼え猛るよう嬌声を上げてはハイマンから施されるピストンに過剰な反応を見せるに至っていた。

 

 そのカラクリはハイマンのテクニックにこそある。

 しかしながら長らく研究一筋で生きてきたハイマンはけっしてプレイボーイの類ではない。

 そんな彼が唯一女性を悦ばせる技量を持ち得るとすればそれは──元妻・クリスによって教授されたものであった。

 

 そもそもがガブリアスの変節を目の当たりにした時、ハイマンの心へときめきにも似た感情が湧き上がったのは、このガブリアスの姿形がクリスに似ていたことに由来する。

 そして今、過去に彼女へと施していた愛撫の悉くがガブリアスを悦ばせるに至っては──このガブリアスは、もはやクリスの模倣といっても過言ではなかった。 

 

 それゆえにハイマンは今、改めてクリスの存在を実感する。

 さながら忘れて久しかった彼女とのセックスに思いを馳せながら腰を打ち付けるや、たちどころにガブリアスは激しい快感の波に拐われ、床へと額を押し付けては身悶える。

 

 そんなガブリアスの感覚を反映した肉体もまたいっそうに強いうねりを帯びてハイマンのペニスを苛むと、もはや心臓を上回る血流の基点となったペニスは強力なポンプと化して半ば強制的にハイマンの体内における血流を促進させた。

本来巡るべき脳や心臓といった箇所の血流不足に晒され強い譫妄感を覚えると同時、ハイマンの鼻腔からは鮮血が溢れだしては、目下に置くガブリアスの尻に落ちてそこを赤く点描する。

 

 ここまでにおける一連の性交により、もはや二人はいつ果てておかしくない状態にまでその身を熱せられていた。

 そしてついにその決着の瞬間は訪れる。

 一足先に絶頂を迎え、四つん這いのその背を弓形に仰け反らせては──ガブリアスが爆発するかのようなオルガスムスを受け入れた。

 地球上のどんな動物からも発せられたことも無いような、それでいて聞く者の発情を煽らずにはいられない扇情的な声をガブリアスは謳い上げる。

 そしてそれとタイミングを同じくしてはハイマンもまた同じくして絶頂に声を上げるもしかし──

 

「うぐぁぁぁッッ! あぁッッ……ッがああああァァァァァァァァァァッッッッ!!!!」

 

 悦びと解放を全面に出していたガブリアスとは対照的に、こちらはこの世における苦しみの総てを一身に背負うがごとき慟哭をラボに響かせた。

 それと同時、胎内の奥底において射精による灼熱の飛沫を感じ取っては、ガブリアスもまた更なる快感の追い打ちに晒される。

 

 先に組敷いた研究員達のもの同様に子宮へと打ち付けられる生命の躍動に繁殖の本能を刺激され、ただ恍惚とその余韻に浸るガブリアスであったがしかし──ある時を境に、その心地良いはずであったハイマンの射精はその性質をガラリと変えた。

 

 生命の脈動は、突如として鉛の如き質量と感触を以ては腹腔へと落ち込む。

 その後も重く息苦しい感触に臓器を圧迫され続けるガブリアスは、いつしか膣より下の下半身にコントロールが利かなくなっていることへも気付いた。

 言わずもがなの緊急事態に一変してオルガスムスの余韻は掻き消され、その原因を確かめるべく背後を顧みたガブリアスは、そこにて想像を絶する光景を目撃する。

 

 それこそは依然として自分へと挿入を敢行しているハイマンの睾丸が、数十倍にも肥大化しては床にその身を付けている姿であった。

 あまりのその異常さに目を見張るガブリアスは同時に、そんなハイマンの睾丸に突きさされた一本のチューブの存在にも気付く。

 これこそが全てのカラクリの正体にして、ハイマンの最終手段……それこそは、

 

「ぐぅぅうううう……ど、どうだッ……マイナス196度の、ザーメンの味は……ッッ!?」

 

 培養シリンダーの傍らに設置された、温度管理用・液体窒素のタンクより連結されたチューブであった。

 

 今、この研究所内にある物質そして環境を利用してガブリアスを撃破することを考えた時、もはやハイマンにはこの液体窒素による『氷結後の破砕』以外に方法が思いつかなかった。

 しかしながらそれを実行するにしても、そう易々とガブリアスがこれを受けるはずもない。

 故に、計画実行においてガブリアスの性格や特質もまた加味し、最終的にハイマンが実行した作戦こそ──『セックス中、直にガブリアスの胎内へと液体窒素を流し込む』というものであった。

 

 しかしながらこれを成立させるにも数多くのハードルが存在する。

 まず第一に彼女を交尾に集中させ、願わくば絶頂にまで導くことだ。

 性交中とはいえ、異変を察知すればカブリアスはすぐにハイマンから離れることだろう……故に、正常な思考を保てなくなるほどに彼女を悦ばせる必要があった。

 

 第二には、ハイマンによる射精のタイミングだ。

 ペニスを経由して液体窒素を打ち込む以上、その瞬間には尿道は最大径にまで肥大していなくてはならない。

 そのタイミングこそが射精の瞬間であり、しかもこれはガブリアスの絶頂より早くても、はたまた遅くともいけないのだ。

 

 作戦成功の達成条件は、カブリアスと共に同時の絶頂へと至ること──そしてハイマンは今、それを成し遂げたのであった。

 

 第一波の射精後も弛まなく液体窒素はペニス経由で注がれ続け、遂にそれはガブリアスの全身を侵食するにまで至っていた。

 そうして刻一刻と凍りゆくガブリアスはその最後の動きにおいて振り返らせた視軸をハイマンへと結んだ。

 透明感のある黄金の水晶体がその中に一瞬ハイマンを移し込むも、それもすぐに氷結しては白く皮膜を覆わせ冷気の白煙を周囲に漂わせ始める。

 

 斯様にして完全にガブリアスが凍り付いたのを確認するや──ハイマンは一際大きく腰を引く。 

 そして存分にそこに力を漲らせ、最後にもう一度、氷の彫像と化したカブリアスの尻へ標準を合わせるや、

 

「………おやすみ、ガブリアス」

 

 渾身の力を込めて──ハイマンは最後の一撃となるピストンを打ち付けた。

 その瞬間、凍結膨張を引き起こしていたガブリアスの肉体は爆散するが如くに破裂し、その結晶をラボに舞い上がらせては幻想の如き光景をそこへ作り上げた。

 

 それらガブリアスの最後を見届けるとハイマンもまた背から倒れ込む。

 もはや彼にしてももう、一握りの体力すら残されてはいなかった。

 それでもしかし自身の責任を果たせたことと、そして愛すべき家族の未来を守れたことに満足しては、ダイヤモンドダストの降り注ぐ宙空をどこまでも満ち足りた想いで見上げ続けた。

 

 この段に至っては、もはや走馬灯すらも見ることは無い。

 それでもしかし意識が薄れるその直前には……──

 

 

「……ごめんよ、クリス……僕は、最後まで……嘘つきだったね………」

 

 

 クリスとの約束を違えることに、一抹の罪悪感を覚えるのだった。

 

 

 

 

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