※この作品はR-18です。

三擦り半のマス☆カーニャ   作:たつおか

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【51】農場物語
第1話・まさかのルームメイト


 

 

 夏休みを利用して、アルカンは泊まり込みのバイトに応募をした。

 

 期間は25日間で、そのうち実労日は20日間──農家場における作業が中心の内容だ。

 初日は他のメンツとの顔合わせと、さらには今後の仕事場となる農場内の案内で終わった。

 今日まで接点の無かった農業への興味に存外に胸が躍ったことが意外だった点と、そして何よりも今回のバイト応募にはヒト以外にもポケモンの応募もまた多いことにアルカンは驚かされた。

 

 20人ほどいる今夏の参加者の内、実に3割以上となる7匹がポケモン達であった。

 ざっと見たメンツとしては、カイリキーが2匹にミミロップとカメールにバリヤード、そしてその中には名前すらも分からない鋭角な耳介をV字に立てた見慣れないポケモンが1匹……。

 そして最後に『そのガルーラ』が居た訳ではあるが、彼女こそがこの夏のバイトにおいて、アルカンに忘れることの出来ない思い出を与えてくれる存在となる。

 

 見学後は農場の職員も含めた全員で親睦会となるバーベキューなどして初日はお開きとなった。

 明日からは4時半起きで作業となるゆえ皆、25日間の拠点となる寝室へと引き上げた訳ではあるが──そこにてアルカンは思わぬ試練に直面する。

 

 今回の参加者は2人一組の相部屋とされ、それぞれに同種族・同性に組み合わされて配置された訳ではあるが……この時アルカンと相部屋を余儀なくされたのは、人ではないポケモンであったのだ。

 

『どうにも、こういう組み合わせが出る場合もあるんだ……』

 

 案内してくれた農場職員は申し訳なさげにアルカンへ伝えた。

 確かにヒト13人:ポケモン7匹では、双方に必ず一人ずつの余りが生じることとなる。

 不幸にもその組み合わせに選ばれてしまったのがアルカンではあったが、そこはすぐに気持ちを切り替えた。

 むしろなまじ人同士で気遣いをし合うよりも、いっそのことポケモン相手の方がはるかに気楽であることに気付いたからだ。

 

 バイトも日数が進めばどこかでリタイヤする者も出るだろうから、その時にまた調整し直すということを職員は説得してきたが、むしろアルカンは快くそれを受諾した。

 しかしながら今回、同居人となるポケモンは──先の親睦会でも見かけたガルーラであった。

 

 彼女のことは印象に残っていた。

 というのもこの度のメンツの中では一際大柄で、なおかつ頑強な手足とそこに宿る爪の見た目に、密かにアルカンは斯様なガルーラに襲われやしないかと気が気ではなかったのだ。

 そしてよりにもよってそんなガルーラが当面のルームメイトなのである。

 

 アルカンとガルーラを部屋へと案内し、しばし会話を交わすと職員は出て行ってしまった。

 後には彼女と二人きりという状況にどうしたものかと立ち尽くすばかりのアルカンは、ふいに自分へと向けられている気配に気付いては傍らを望む。

 それこそは……そんな自分を振り向きながら見下ろしているガルーラの視線であり、改めてアルカンも彼女と目が合うと、いよいよ以て腹の奥底が縮み上がる思いがした。

 

 が、しかし──そんなガルーラの見た目に慄いたのはそこまでであった。

 目が合うや、ガルーラは朗らかに微笑んでみせたのだ。

 鋭い目つきを柔和に細めて口角を上げるその表情は、存外に愛嬌があってアルカンも拍子抜けする。

 

「えっと……僕の言葉って、分かるかな?」

 

 試しに語り掛けてみればガルーラも小さく頷く。

 次いでガルーラは身振り手振りで挨拶を返しては、自身のことなどを説明してくれた。

 ポケモン語なんてまったく分からないはずのアルカンであったが、なぜか彼女の伝えんとすることは言葉でやり取りする以上に理解が及ぶのが不思議だった。

 

 その後は2人、ガルーラ用の大きいベッドに腰かけては色々なことを話して過ごした。

 

 そもそも金銭など無用のはずのポケモンがどうしてこのような場所にいるのかという問いに、ガルーラは自身の出産のための準備なのだと答えた。

 妙齢の彼女はまず、近く自分の子供を儲けたい旨をカルアンへと伝える。

 そもそもが『おやこポケモン』という分類をされているガルーラに子供の存在は不可欠であり、それ以前にも彼女は新しい自分の家族を求めてやまなかった。

 

 しかしながら近年──環境開発の進んだこの一帯は既に、ガルーラが従来の生態系に乗っ取った出産や子育てなど出来ない環境となっていた。

 以来彼女を始めとするこの地域のガルーラは、人の手伝いをすることで懐妊中に必要となる食料や、はたまた安全な出産場所の確保を労働の対価として享受すると言う仕組みが確立されていたのである。

 

「──っていうか、君って女の子だったのッ?」

 

 そこまでを聞いてアルカンは、改めて目の前のガルーラが雌であることに気付いて驚きの声を上げる。

 それに気付くや途端に、膝頭を揃えて淑やかにベッドへ腰かけているガルーラが可憐に見えてくるから不思議だ。

 そして同時に、異性同士が同室になってしまうことへの焦りもまた感じたアルカンではあったが、すぐに自分が馬鹿馬鹿しいことを気にしているのにも気付いては自嘲する。

 

──女の子って言ったって相手はポケモンじゃないか……

 

 この時アルカンは、今回の長期バイトにおいて何らかしらのロマンスも在り得るのではと夢見がちな期待もしていた。

 それ故に、性別違いと言うだけでポケモンに対し妙な意識をしている自分の滑稽さを笑わずにはいられなかったのだ。

 

 ともあれ、これから1ヶ月近い時間を共に過ごすルームメイトが温厚そうな人物……否、ポケモンであることの僥倖は素直に喜ぶべきであるとアルカンも受けとることとする。

 

「それじゃあ……しばらくはよろしくねガルーラ」

 

 改めて挨拶をしては右手を差し出して握手を求めるアルカンを次の瞬間──ガルーラは全身を以て抱きしめた。

 これこそがポケモンなりの最大級の愛情表現であり挨拶なのだと改めて実感するのと同時、

 

──体温が高いなあ……ミルクの柔らかい匂いもする……

 

 種特有の抱擁力を堪能しながら、アルカンもまた彼女を抱き返すのであった。

 

 

 

 

 

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