一線を越えてしまったあの日以来──二人の生活は一変してしまった。
共に過ごす時間の大半は性交か、あるいはそれに類する行為に集約されることとなる。
それは朝の目覚めからして始まる。
大抵の場合、アルカンの起床はガルーラにペニスをしゃぶられることで果たされた。
覚醒して意識が定まると既に勃起へと導かれたペニスそこには、頬の形が変わるほどに口唇を吸い付かせたガルーラが腰の上に陣取っていて、目が合うやその下瞼はあいさつ代わりに妖艶に上ずる。
それにより朝一番にアルカンの尿道より廃される体液は尿ではなく精液であり、そしてガルーラにしても寝覚めの最初に摂取する水分は精液という尋常ならざる始まりを以て二人の一日は始まる。
前夜は気絶する様にまぐわい続けては就寝に着くことからも朝のシャワーを共同浴場にて流すわけではあるが、そこにおいても他の住居者が利用しない時間帯であるのを良いことに、二人は同じ個室においてシャワーを済ませる。
当然それが洗体のみで留まる訳もなく、そこにおいて二人はこの日最初の性交を交わす。
滝の如くに降りそそぐシャワーの下、壁面に両手をついて腰を突き出させるガルーラの巨尻をワシ掴んでは、朝食になる時間いっぱいまでアルカンは彼女を犯し、そしてその膣(なか)へと射精を果たすのだ。
三々五々、他のメンツと共に朝食を済ませて一同は各自の作業場へと散る訳ではあるが、日中においても二人は隙を見つけては互いを求め合った。
他の目を盗んで行われるそれの大半はフェラチオとクンニリングスであり、道具や材料を取りに行くわずかな時間、そして積藁の影や倉庫といった僅かな空間において、双方は立たせたままのパートナーの股座へ屈みこんでは、そこを舐め尽くして情欲を慰める。
昼食時においては、各自は配給される弁当を持ち出してキリの良い時間帯を見つけてはそれぞれに休憩する訳ではあるが、その僅かな時間でさえ惜しんでは体を重ねた。
都合よく二人が仕事に従事する作業場は離れた場所に有り、そこの倉庫においてアルカンとガルーラの昼食を兼ねたセックスが繰り広げられる。
仰向けに寝そべるガルーラの胸元へ二人の弁当をぶちまけるや、騎乗位にペニス挿入を果たしたまま、アルカンは動物の如くに彼女の胸の上の食料へと鼻先を潜らせる。
口いっぱいにそれらを含んで幾度か咀嚼すると、後は口の中のそれをガルーラへと口移しに与えるのだ。
彼女もまた受け取ったそれを咀嚼すると再びアルカンへのキスを介して返してくる。
それを続けていると、どちらが食したものか口中の食べ物はいつの間にか消えていて、後はひたすらにそれを繰り返すのだった。
夕方になって寮へ戻ると、他のメンツと揃っての入浴と食事を挟むことにより、ようやく2時間ほど二人は離れ離れとなる。
そんな間であっても大浴槽に浸かって熱と蒸気に蒸らされる脳裏には常にガルーラの肉感的な後ろ姿や霰もない姿で膣口を広げる姿がありありと繰り返されたし、ガルーラもまた食事中において口中に感じる食べ物の食感や香り、そして塩気の中へペニスに少しでも似た気配を感じるとそこにアルカンを想像しては人知れず小さな絶頂を繰り返した。
かくして20時には各々の寝室へと引き上げると──そこからは腰を据えた子作りの始まりであった。
あれだけの行為を日中に繰り広げたアルカンとガルーラであっても、二人にとってはあれでも周囲にバレてしまうことを気にしては精一杯に配慮をした行為であった。
そのフラストレーションが一気に解放される寝室での行為はもはや、壮絶の一語に尽きた。
他のメンバーと共に寝泊まりをするこの棟においてアルカン達の寝室は角部屋にあり、加えて畜舎が隣接するとあっては多少の声漏れなど気にすることも無かった。
家畜の鳴き声に加え、盛夏のカエルや虫達の大合唱に紛れてはガルーラの嬌声などは掻き消されてしまう。
それを知ってか、この寝室において声を解放するガルーラの乱れ様は、もはや動物のそれと照らし合わせても対比のしようが無いほど下劣かつ本能的なものであった。
ポケモンの言語など理解できぬアルカンであっても、激しく膣壁を突きえぐかれる際に彼女の発する声が男性器や女性器を思わせる単語であり、そしてそれを受け入れる自身の絶頂を申告したり精液の供与を求める部類の内容であることは容易に察することが出来た。
部屋に入るなり、その場で立ち居のまま後背位からの結合を果たし、その足元に頽れては体を重ね、射精や絶頂を交互に繰り返しつつも一度として挿入したペニスを引き抜くことなく移動をしてはやがてベッドへと至る──その後は時間の感覚も忘れ、互いの汗や排尿で喉を潤しつつ、二人は気絶するかの如く眠りに落ちるまでそれを続けた。
これが──あの日以降の二人の性活であった。
当然ながら休日は朝から晩までひたすらに交尾を繰り返す。
二人とも若い体力に任せて、ただ憑りつかれたかのよう互いの体液交換を望むのだが、 斯様にして尋常ならざるまぐわいを続ける理由は、単に有り余る体力と性欲の発散のみに依るものではなかった。
この限られた生活があと数日のうちに終わってしまうことをアルカンもガルーラも気付いていたからという事もある──そう、バイトの期間が終われば二人は強制的に今の関係を終わらせなければならないのだ。
「………ねぇ、ガルーラ」
ある時、ふと互いの絶頂がシンクロして同時にインターバルを取ったアルカンは、熱を持った頭へ到来した僅かばかりの理性の瞬間を以て彼女へと語り掛ける。
仰臥するアルカンの胸板に横顔を預けていたガルーラは依然として荒い呼吸のまま、まともな返事はしなかったが、その耳先が小刻みに動いたことからその語り掛けが届いていることは明らかだ。
そんなガルーラへ腕枕に預けていた右腕を掻い繰ると、アルカンは彼女を抱き寄せる。
そうしてしばし愛撫した後、
「ここのバイトが終わったら、僕と一緒に来ないかい?」
アルカンはそんな誘いをガルーラへと打診した。
それを受け、ようやくに呼吸を落ち着かせたガルーラはしかしすぐに応えることも無かった。
依然として薄く瞼を閉じた視線をアルカンの胸元へと結んだままの横顔からは僅かな逡巡の気配が見てとれる。
しばししてそんな瞳も完全に閉じ、物思いに耽るかのような表情を見せた後──ガルーラは再び瞳を開くと、静かに上体を起こした。
依然として仰向けになったままのアルカンを見下ろすとそこへ鼻先を寄せ、ついばむよう頬へキスをしてはまた小さくそこを舐める。
今日まで幾度となく繰り返してきた交尾中のそれとは違い、今ガルーラから施されるそれは何処までも親愛の籠った穏やかなものであった。
一頻りそんなキスを繰り返し、そして再び身を起こしてアルカンを見下ろすと──ガルーラは小さく頭(こうべ)を振った。
同時に彼女は告げる……自分はこの土地のガルーラである、と。
この地において根付き、繁殖し、そしていつかは土に帰るのだと……拙いながらにガルーラはアルカンへと告げた。
同時にアルカンも悟る。
謂わばこの素晴らしいガルーラを産み、育んでくれたのもこの土地であり、それは彼女の一部なのであった。
ならばここを離れた瞬間に彼女は彼女ではなくなる──故に『この土地のガルーラ』であるのだった。
そんな彼女からの答えを受け、アルカンもまた何か言おうとするその口を──ガルーラは口づけにおいて塞いだ。
そこからはまた、互いを求め合う瞬間が繰り返される。
結局この話題はこれ以降交わされることも無く……ほどなくしてアルカンのバイトは終わりを告げた。
最後の日、見送りに出てくれたのは世話になった農場の職員達とそして6匹の同僚ポケモン達(……ちなみにあのV字頭のポケモンは2日目でリタイヤしたとのこと)──。
一方でアルカン達人間のバイトも当初の13人から9人にまで減っていた。
それぞれがこの一ヶ月近い期間の中で友情を深め、その別れに際して涙を見せぬ者はいなかった。
それぞれに別れを交わす中、アルカンは最後にガルーラの前へと立つ。
しばし言葉無く見つめあった後──二人は惹かれ合うようにして口づけを交わした。
周囲からはその様子に驚きと、あるいは好奇の声も上がったがもはやアルカンがそれに気を止めることは無かった。
かくして激動のひと夏が終わりを迎え、アルカン達は岐路のバスに着く──。
その窓から振り返る農場には、遠くなりゆくガルーラがいつまでもそこに立ち尽くしてはアルカンを見送ってくれた。
アルカンもまたそんなガルーラから目を離さなかったし、とうに彼女が見えなくなり、いつしか車窓に街の無機質な光景が流れ始めても──アルカンはいつまでも遠くに過ぎ去ったあの農場から目を離すことが出来なかった。