翌日──私はどんな顔をしてゾロアークとエースバーンに会えばいいのか分からなかった。
結局あの後……逃げるようにその場を立ち去った私は、ベッドに飛び込むなり頭からシーツを被ってはそのまま眠ろうとした。眠ろうと躍起になったが、脳裏に先の光景が焼き付いているうちは目が冴えてとてもじゃないが眠れなかった。
それからどのくらい経った頃か、傍らに誰かの気配を感じた。
シーツの中に籠っていたから確かめようもないが、その気配が間違いなくゾロアークであることは確信できた。
まるで殺人鬼から逃げ隠れるホラー映画のように、そんなゾロアークを傍にした私はただ何もされないことを祈るばかりだ。
しばしして、ゾロアークがベッドへと上がってきた。
一体何をするつもり!? ──私の不整脈はゾロアークに伝わるんじゃないかと言うほどに昂る。
しかし……彼女がそれ以上なにかしてくることはなかった。
私の傍らで身を丸くしたかと思うと、しばししてゾロアークの寝息が聞こえてきた。どうやらここで寝ているようだった。
その様子に安堵もするが、そもそもどうして私の隣で寝ているのだろう? というか、もしかして普段からこうなのだろうか?
そんなことを取り留めも無く考えていると、いつしか私も眠りに落ちていた。
そして翌日……私は就寝した時と同じようにシーツの中で覚醒したが、それでもその中から外へと出ていく勇気がなかなか持てなかった。
どんな顔をしてあの二人に会えばいいんだろう?
それでもやがては窮屈になり、仕方なしに起床してはシーツから頭を出す。
そうして息を吸い込んでは大きく溜め息をつくその傍らに──
「はぁー………ん? ッ──ひぃッ!?」
そのすぐ傍ら──ベッドサイドに屈みこみこんでは私を凝視していたゾロアークと目が合い、私も悲鳴を上げてしまう。
しばし見つめ合ったまま固まってしまった。
お互いを目の前に、おそらく私は幾重にも引きつらせた表情を万変させただろうが、ゾロアークだけは上目遣いの射るような鋭い視線で私一点を凝視し続ける。
「おッ………おは、よう……」
やがて辛うじて挨拶のひとつもすると──途端にゾロアークは顎を上げ、下瞼を上ずらせたあの嘲笑を浮かべながら私を見下ろすと、満足げに鼻を鳴らした。
立ち上がり、何事も無かったかのようベッドを後にするゾロアーク。
彼女が立ち去りしばしして、私は潜水から浮上した時さながらに大きく息をついた。事実、この瞬間まで私は息を止めていた。
「な、なんなのよぉ……もぉ~………!」
もはや昨晩から私の情緒はぐちゃぐちゃだ。このままでは何らかの精神病すらも発症しかねない。
それから朝食を摂るためにキッチンへ向かうすがらにエースバーンとも会った。
ゆいいつ何も知らない彼は、昨日と変わらない笑顔で微笑んでくれた。あんなことがあった翌日ではあるが、そんなエースバーンの仕草にはなんとも癒される。
手持ちのポケモン達も出して朝食を摂ったその後は恙無く過ぎて行った。
午後になり、私はトレーニングの一環として擬似バトルをさせようとゾロアークとエースバーンを連れて外に出た。本来はこの目的のために借りた彼だ。
「試合形式でやってもらうからそのつもりでね。エースバーンの指揮は私が執るから、ゾロアークはそれに対応して」
ゾロアークと対立すると、私はしばしエースバーンとバトルの打ち合わせをする。
もとよりバトル巧者の先輩から借り受けたポケモンだけに、エースバーンは私の伝える戦略を実に要領良く理解してくれる。
ゾロアークが単独で戦い始めて以降、こうしたポケモンとのやりとりに飢えていた私には本当に楽しい時間となった。事実エースバーンと話していて、私は何度も笑顔がこぼれてしまう。
そんな私達の様子を……少し離れた場所から無言で観察していたのはゾロアークだ。
片膝を曲げながら立ち尽くしては、腕組みにそんな私達を凝視していた。……というか眉間に険をこめては上目づかいに放たれるその眼光たるや、憎悪の念すら感じられるほどだ。
さては待たされてイラ立っているのだろう。
私もようやくにエースバーンとの打ち合わせを切り上げると、改めてゾロアークと対峙した。
「先行はアナタからでいいわ! 練習だけど、本気で来て!」
改めて彼女とのバトルに胸を躍らせる私。
手前みそではあるが、ゾロアークの実力は知っているだけにそんな彼女が私に対してどう対応をしてくるのかは非常に興味深かった。
……が、異変はその時すでに起きていた。
依然として腕組みのまま戦闘態勢に入ろうとしないゾロアークに私は気付く。
そうして真面目にやるように檄を飛ばす私にもしかし、一方でこちらのエースバーンもまた何の構えも取っていないことに気付いた。
明らかに戦闘する意思のないゾロアークとは違い、エースバーンは茫然自失としては心ここにあらずといった様子だった。
何かがおかしい……そう思い始めた時、ゾロアークが動いた。
右手を腰に当てたまま、裾のまとめられた頭髪の毛先を振りながらモデル顔負けの優雅な足取りでエースバーンへと近づいていくや──辿り着くなりに屈みこんでは、彼のペニスを口に咥えてしまった。
「ちょ……ちょっと! 何してるのよッ!?」
まるで昨晩の再現だ。それを目の当たりにし、私の声も大きくなる。
昨晩と違うところは、悪びれもせずに堂々とその行為を私に見せつけていること──そして、彼エースバーンのペニスを完全に勃起させるやゾロアークは立ち上がり、背を彼に向けては大きく尻を突き出した。
カーテンのように垂れていた毛髪の裾が小刻みに振られながら上昇していき、やがては完全に天へと跳ね上がってその下の濡れた膣を晒すや──エースバーンは我を忘れてそこへと食らいついていった。
背後から抱き着き、前戯も無しにゾロアークの膣へと己のペニスを挿入してしまう。
その怒張した一物を一息に根元までぶち込まれてはゾロアークも天を仰ぎ、愉悦の表情を浮かべた。
しかしながら私には分かっていた……ゾロアークが今みせた貌は、けっして快感に根差したものではないことを。
それこそは、私からこのエースバーンを奪い取ったが故の満足からくる哂い顔なのだと。
「や……やめて……やめてよぉ……ッ」
その後も我を忘れてはゾロアークへと腰をぶつけ続けるエースバーンの、そんな二人の姿を目の当たりにし、私は腰砕けてはその場にへたり込んでしまう。
「やめて……そんなマネしないでよぉ……ひどいよ……こんなのッ」
もはや誰に訴えているのかも分からずに、ただ私は懇願してはそして泣き崩れてしまった。
依然として犯されながら、そんな私を背の峰越に見遣るゾロアークの貌は一見苦し気に眉元を歪めながらもしかし、その口元は裂けた口角が耳へ届くのではないかと思うほどに吊り上がっては満面の笑みをそこへ湛えていた。
やがて低いうめき声と共にエースバーンが絶頂を迎える。
押し付けて静止した尻はまるで別個の生物のように痙攣を繰り返しては、この小さな体躯に詰め込まれた精液の全てをゾロアークの膣(なか)へと吐き出していく。
しばしそうして打ち込んでいた射精が終わると怒張の解けたペニスはゾロアークから抜け落ちて、さんざんに掘り穿たれた膣口からは粘性に富んだ大量の白濁液が溢れ出してくるのだった。
その眺めにもはや見ていることすら耐えられなくなっては頭を垂れてすすり泣く私。
そんな私へと追い打ちをかけるように、目の前には影がひとつ立ちはだかった。
いうまでもなくそれはゾロアークだ。
やがてゾロアークは私の前に屈みこむと、今しがた精液の注がれた膣をこれ見よがしに指で掻き回しては、精液特有の青臭い香りを私の鼻先へと撒き散らす。
そうまでして私に嫌がらせをしたいのか……この段に至り、私の絶望は静かな怒りへと変わり始めていた。
そしてその情を宿した視線で見上げると、
「私は……あなたを許さないからね……!」
私はきつくゾロアークを睨めつけた。
その視線に驚いたのかその一瞬、ゾロアークはこの混沌の場には似つかわしくないほどのあどけない表情を見せた。
しかしそれも一瞬のこと、次の瞬きの直後には──彼女の顔には再びあの、吊り上げた口角の端で下瞼を上ずらせる強い悦びの貌が浮き上がっていた。
掠奪と愉悦──その果てに得た私の感情と視線とを一身に受けるゾロアークは、心の底から嬉しそうだった。