以降、キスは二人の挨拶の基本となった。
覚えたての快感に溺れ自分へとすがるアリアの姿は、平素搾取されるばかりのドネにとっては新鮮な喜びがあった。
ドネ自身もアリアのことは憎からず思っていたし、普段の主に対する奉仕に比べれば彼女に求められることなど数億倍だってマシであると思えた。……がしかし、問題はその『頻度』にこそあった。
日の終わりに顔を合わす時、アリアは部位を問わずにドネへキスを繰り返し、時には直に横顔へと舌を這わせることすらあった。
その後二人きりで自室に籠ればそこからはもう、就寝の別れに至るまで二人の唇は触れ合ったまま離れずにいるといった始末だ。
会話をしようにも食事を摂ろうにもその口は常にアリアの唇によって塞がれ、口中には常に彼女の味が広がっているといった塩梅である。
それでも当初はそれだけ衝撃だったのだろうと微笑ましく思っていたドネも、最近ではアリアを確認すると僅かに心重さを覚えたりもした。
以前まではドネ自身の労働の都合から会えない日も幾度かあったが、今ではあの中庭の生け垣において、アリアはいつまでもドネの仕事上がりを待っているのだ。
そういう時はドネ自身も疲労困憊である場合が多く、一刻も早く横になりたいと思っているとそこに今度は爛々と目を輝かせたアリアがいて、それを確認するともうドネは絶望にも近い感情に心を支配された。
主は欲により、そしてアリアは愛により──双方はそれぞれの思惑を以てドネの支配を望んだのである。
そして斯様に旺盛なアリアが次なる関係の発展を望むのは至極自然なことと言えた。
ある時、二人きりで過ごすアリアは恋物語の戯曲に描かれる男女の関係について具体的な質問をしてきた。
察するにそれは閨房──いわゆるセックスの暗喩であることはそれとなく察せられたが、果たしてそれを教えてしまってよいものかドネは思案に暮れる。
ドネの危惧はアリアがそれを覚えた先にこそあったからだ。
今のキスですらこの有り様なのである。そこに、より具体的な性の交わりなど覚えてしまった日にはどうなってしまうことだろうか、と。
考えるまでも無くそれは今以上の負担を強いられることを意味し、それが分かっているのならば、ここは適当に誤魔化して場を濁すことが得策だとも思えたが……期待に目を輝かせては見つめてくるアリアの圧を前に、半ば押し切られる形でドネはそれに応えてしまう。
同じ不条理を押し付けられる関係とはいえ主との決定的な違いは、アリアに対しては愛情があるという事に尽きた。
いかに辟易しようと、ドネもまたアリアのことを愛してやまないのであった。………とりあえずはそう思うこととする。
もはや引き返せなくなることを覚悟の上でドネは次のステップのレクチャーを始める。
藁の上へ仰向けに寝かせると、まずはいつも通りにアリアとキスを果たした。
互いの唇を食み合いながら舌同士を絡ませるキスを受けながら吐息を荒くしていくアリア──そんな彼女の胸元へドネは右手を這わせ、なぞった掌に乳房の膨らみを確認すると、僅かに力を込めてそれを手中に包み込んだ。
瞬間その刺激に対し機敏なほど体を痙攣させると、依然としてキスの続く中アリアは目を剥いてはこちらを見つめてくる。
その視線は言わずもがな、今しがたの愛撫に対する己の肉体に対する疑問だ。
平素アリアは洗体以外で自身の乳房になどは触れたことも無かった。
辛うじて授乳のことは知っていたが、周囲にそれをしている人間がいない環境も災いしてか、今日までアリアは乳房への具体的な興味や疑問を持てずにいたのだ。
そんな価値観が今、たった一握りドネに力を込められただけで一変してしまった。
鼓動はいつものキスを交わす時以上に熱く脈打ち、視界は極度の興奮と期待に晒されては白くぼやける始末ですらある。
そんなアリアへと、今度は残る右胸にもドネは掌を被せた。
そして同様にそこへも力が込めるや、今度はパン生地でも捏ねるかのよう押し付けながら、弧を描くようアリアの乳房全体を揉みほぐすのであった。
この段に至り、アリアはドネの唇を振り切ると遂に高い声を上げた。
自身でも聞いたことのない高く切なげな声が漏れたことにアリア自身も驚きを禁じ得ない。
しかしながらそんな感情も、すぐに押し寄せる次なる衝撃にかき消されては流されてしまう。
アリアの口唇を離れたドネの唇はいつしか下降し、やがては握り上げては血流を凝縮させた乳房の頂点へと吸い付いていた。
絞られることによって敏感となっていた先端そこをピンポイントで吸い付けられる感触に再びアリアも声を上げる。
乳首そこに感じる感覚の全ては、今やそのことごとくが性的な快感としてアリアの価値観を塗り変えていった。
それは、乳房は快楽を得る為の器官であるという誤った情報ではあるのだがしかし、そう思い込むアリアは途端にそれの虜となっては更なる快楽を求めるかのよう胸元のドネを強く抱きしめる。
一方でドネも一進化上(うえ)の膂力に晒されながらも献身的に愛撫を行った。
握り上げた両乳房を中央へと寄せ、互いに近づけさせた左右の乳首を交互に舐めつけては、時にそれらを同時に口中へと咥えたりもした。
いつしかドネもまた、そんなアリアの乳房に夢中となっていた。
愛撫を始めた当初こそはリードを心掛けていたはずが、いまやドネもまた興奮の赴くままに強く吸い付き、そして乳首へと牙を立てる激しい愛撫を躍起になってアリアへと施している。
しかしその手荒な愛撫もまたアリアには新鮮であったのだ。
今日に至るまで過保護に過ぎる扱いを受けてきた彼女は、あらゆる痛みや苦しみとは無縁の立場にいた。
そんなアリアが今憶えている乳首への感覚はむしろ、その痛みこそがさらなる快楽を昂らせるアクセントとなっているのだった。
その中においてアリアは、性的絶頂を予期し背を震わせた。
キスの時にも幾度と迎えて入れてきた感覚ではあるが、肉体そこへの愛撫によって導かれようとしているそれは明らかに感覚の度合いが違うように感じられる。
そのことに思わず恐怖を感じてはドネを抱きしめると、先方もまたより強く乳房への愛撫を激しくしてはアリアに応える。
そしてそんな肉体の中心にドネを感じた瞬間、途端にアリアの恐怖は霧散した。
今この未知の快感を与えてくれているのが、誰よりも愛して止まないドネであることを思い出したからである。
ならば、一切の遠慮や恐怖も無くその全てをドネにゆだねようとアリアもまた感覚を解放する。
そして子宮の芯から突き上げてくる快感が全身を駆け抜けて脳を貫いた瞬間──アリアは史上経験したことも無い激しい感覚の波にさらわれては絶頂を迎えた。
抱き込むドネの後頭部がその形を変えてしまうほどに彼女を抱きしめ、声を押し殺して喉を反らせると、アリアは幾度となく全体を痙攣させてはその余韻に打ち震える。
しばしそうして身を硬直させていたアリアではあったが……やがては一度に肺の中の空気をすべて吐き出すと、後は溶けるかのよう脱力しては寝藁の中へと沈み込むのだった。
そんなアリアの胸元から、ようやくに拘束を解かれたドネもまた身を起こし大きくため息をつく。
見下ろすそこには焦点の定まらない視線を虚空へ投げ出しては、時折り来る絶頂の余韻に身を痙攣させるばかりの浅ましいポケモンが目に入る。
普段の知的で好奇心旺盛な少女などではない、性的絶頂に悶え苦しんだ直後の雌ポケモンが横たわる様子を目の当たりとし、改めてドネは自身が取り返しのつかないことをしてしまったことを自覚する。
それでもしかし……そんなアリアの姿は今まで見たどんな瞬間の彼女よりも愛らしく、そして愛おしかった。
もはや見つめているだけでは辛抱がならなくなり、ドネはそんな彼女へ覆い被さると荒々しくその唇を奪ってしまう。
舌先を脱力したアリアの口中へと侵入させ、後戯としては乱暴に過ぎる愛撫で彼女の唾液を貪ると、いつしかアリアの舌先もまた力なくそれに応えてはその身を蠢かせてきた。
そんなアリアの舌を絡めとると、ドネはいつまでも彼女と濃厚なキスを交わし続けた……──。
その傍らで、自分がこうまで他人に対し執着を持てていることにドネは、我ながら望外の驚きもまた禁じ得ないのであった。