※この作品はR-18です。

三擦り半のマス☆カーニャ   作:たつおか

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第5話・知らない貴方

 

 

 ドネの危惧した通り、性的接触を経てからのアリアの行動は更に加速度を上げた。

 

 あの胸元への愛撫の翌日には自身から膣への感覚に興味を持ち、教えられずともアリアは自慰を覚え更なる快楽へのブラッシュアップを行っていった。

 その流れとしてドネもまたそれに付き合わされる形となり、当然ながらそちらを用いた性技にも長けていた彼女は存分にアリアを楽しませることとなった。

 

 口唇と舌を使った愛撫から始まり、指先を駆使しては膣口やクリトリスを存分に揉みほぐし、果ては互いの陰唇同士をすり合わせては相互に快感を醸成させる謂わば擬似セックスに至るまで二人の遊びは発展していった。

 

 それ受けるアリアもまた、砂が真水を吸収するかのよう貪欲にそれらを求めては学んでいく。

 元が聡明で根も真面目なアリアの学習能力は、その学びが斯様に下賤な性の知識であってもいかんなく発揮された。

 むしろ上流階級においてそういった知識から遠ざけられて育った反動も手伝い、アリアの性に対する希求心はもはや、その相手を努めるドネへ時に恐怖を覚えさせるほどの気配すらあった。

 

 上目を剥いて下瞼を歪め、口角を笑みさながらに吊り上げては時に本当に声を上げて嗤うアリアとの性交は、常日頃から主の変態性を知るドネを以てしても常軌を逸していると不安がらせたほどである。

 もはや彼女に一連の行為と快感を教えてしまった事の後悔と強い責任を感じてはいたが──こと平素におけるアリアは、一変して整然と振舞ってはドネを驚かせたりもした。

 

 こうした夜の邂逅以外で見かける昼のアリアは、それは折り目正しく執政官へ付き従っては卒なく仕事をこなす精励恪勤の典型ともいうべき振舞いを見せた。

 その極端なON・OFFの切り替えはもはや多重人格を思わせるほどの豹変ぶりであり、この一事においてはドネを感心させるとともに、アリアの強い克己心は同じ種としてどこか誇らしい気持ちにもさせしてくれた。

 

 しかしながら同時に斯様なアリアの生活とは、今の奴隷生活に身を窶している自分と何ら変わらない事であることもにもドネは気付く。

 自ずから強い責任と使命感を以て仕事に当たっているアリアも半面、その内部には相当のストレスをため込んでいることは明白で、その反動が夜の動物染みた痴態へと返ってきているのだと考えると、ドネも妙な納得と同時にある種の感銘すら覚えるのだった。

 辛い境遇に立たされているのは自分ばかりではないことをアリアのこの一事からも察することは少なからず、今の境遇を嘆くばかりであった自分を諫め、そして励ましてくれるように感じた。

 

 ならば二人でいる時ぐらいは存分に振舞わせてやろう、そして自分もまた彼女の良き友人や恋人として振舞おうと、アリアへの気持ちを少なからず安定させたドネであったが……そんな淡い想いを一変させる事件が後に引き起こされることとなる。

 

 

 その日──アリアを付き従わせた執政官は、ドネの主が切り盛りをする商家へと顔を見せた。

 隣近所の間柄であるのだからこういった訪問も珍しいものではないが、今日の執政官は本来の役割を果たすべくにこの場所を訪れていた。

 

 政府による市中見回りがその名目であり、一定以上の規模で商いをする商家を国の役人が回り、そこに不正な取引や違法性のある物品の売買がされていないかを抜き打ちで検査するのである。

 とはいえ、執政官の訪問については数日前よりそれとなく通知はされるので、仮に脱法的な商売に手を染めていたとしても、商家側は十分にその検査へ対応できる猶予は持てる訳ではあるが……。

 

 とはいえしかし油断は禁物だ。

 事実ドネの主は中毒性のある被子植物の輸入や奴隷売買といった商売にも着手しており、いかに表立っては巧妙にそれを隠そうとも、ふとした取引の齟齬や矛盾を発見されればそこから芋づる式にそれらが掘り起こされるとも限らない。

 

 だからこそ丁重に執政官達一同へ付き従いつつも、常に彼らの一挙手一投足に目を光らせていた訳ではあるが……そんな一行の中に、作業中のドネは不意にアリアの姿を見つけては息を飲んだ。

 

 言わずもがな彼女は執政官の補助として随行をしていた訳ではあるが、いつもの中庭とは違って互いの仕事中にその姿を見止めるのは何とも新鮮な気持ちがした。

 思わず作業の手を止めては、官士の外套に身を包んで屋内を闊歩するアリアを見つめていたドネであったが、ふと先方もそれに気付き、アリアもその視線をドネへと向けた。

 そしてアリアもまたそこに普段見ることのない労働中のドネを見つけ、それとなく微笑んではアイコンタクトを図ってくる彼女と目を合わせた瞬間──アリアの眉元には、今までに見たことも無い形相で深く皺が寄った。

 

 眉元を強張らせてはこちらを凝視してくるその表情たるや、まさに威嚇の表情それである。

 それに気圧されては表情を失くし、僅かに身を引くドネにもしかし、一向にアリアはその視線を外そうとはしなかった。

 むしろより一層に眼を見開いては凝視してくるその剣幕に怖気るドネではあったが、そんな場を仕切り直すかのように、

 

『アリア、お前はそこのキルリアに案内してもらって店内を視察しなさい』

 

 ふいにアリアの背後から駆けられたのは、彼女の父替わりでもあるその執政官の声であった。

 幸いにもアリアの背後から声を掛けていることからも、彼に娘の尋常ならざるあの表情は見えていない。

 むしろ常日頃から密かにドネとアリアが会っていることを知っていた執政官が、その気を利かせて彼女達を二人きりにしてやろうと取り計らってくれたのがこの命令の真意である。

 

 彼にしてみれば気を遣っての好意ではあったのだろうが、今のアリアと二人きりにされることにドネは不安を抱かずにはいられない。

 自分を見るアリアの目は依然として……否、既に食いしばった歯齦をむき出しにして音が漏れるほどに呼吸を荒くして両肩を上下させている彼女たるや、どう見ても尋常ではない。

 

 やがては主からもアリアを接待するよう命令されると、ドネも進退窮まってはアリアを連れだして建物内を歩きだした。

 アリアの前に立って歩き出しながら、一体彼女をどこへ連れて行ったものかと考えた次の瞬間──唐突にドネはその肩をワシ掴まれると、半ば放り投げられるようにして引きずり込まれた。

 

 その勢いのまま床へと打ち捨てられては何事かと顔を上げれば、そこは食糧庫の一室であることが分かった。

 なぜにこんな場所へ引きずり込まれたのか訳も分からずに顔を上げれば、そこには閉じた出入り口のドアに、閂の内鍵を通しているアリアの後ろ姿が窺えた。

 

 そうして完全に二人きりの密室となった食糧庫内において、アリアはゆっくりとこちらへと振り返る……。

 そしてそこから見下ろしてくる視線とそしてその貌とを確認した瞬間──ドネは先ほどまでのアリアの険しい表情の理由を察するのであった。

 

 あの瞬間、アリアは抑えようもない興奮に心を捕らわれていたのだ──。

 

 互いの職場において、普段付き合いの友人同士ではない仕事中のドネを確認した瞬間、アリアはその非日常のドネに一気に発情を促されていた。

 それを堪える為の表情こそがあの威嚇の顔であり、そして呼吸を荒くさせていた理由であった。

 

 そして今、念願叶い二人きりとなったこの場においてアリアは新たな表情をドネへと向けていた。

 威嚇ではなくなったその表情にもしかし、ドネは新たな不安をそこへ覚えずにはいられない──

 

 

 見下ろしながらに襟元を解いて外套を脱ぎ捨てるアリアの貌は、欲望の赴くままに下瞼と口元を歪めては──……大きく嗤っていた。

 

 

 

 

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