絶え間なく全身を駆け巡る快感──しかしながら絶頂直後の敏感な肉体とあっては、それらも過度なノイズでしかない。
止むことなく繰り返される絶頂の連続も、しまいには呼吸すら止めさせる。
その感覚に目を見開き、陸の魚のよう口唇の開閉を繰り返しては声にならない声を上げるアリアを目下にしながら、それでもドネは責めの手を緩めなかった。
それどころか見返してくる視線に許しを懇願する様が窺えるや、更にドネは前後する速度を速めては苛烈にアリアを責め立てる。
まだ性的快感を知ってから日の短いアリアにしてみれば、この激しすぎる感覚で一方的に責め立てられ蹂躙されるなどといった経験は初めてであった。
常日頃から求めて止まなかったドネとそして快感が、いまやこれまでに経験したどんな衝撃よりも大きい苦痛となって自身を責めしかってくる現状は、さながら無害だと信じていた愛玩動物が存外の暴力を以て牙を剥いた驚きに等しい。
その中においてアリアはやがて、強制的に大きな絶頂へと導かれる。
肉体は波打つように痙攣し、頭にも朦朧と脱力による霧がかかるがしかし……やはりそれでもドネの責めの手が静まることは無かった。
新たな絶頂によって感覚の一新された肉体へ更なる性の暴力を加える。
互いの膣口を掻きあうようそれぞれの陰唇が膣口をくすぐり、更にはクリトリスへと押し付けられてはそれをひしゃげさせる。
胎内より生じた愛液は擦り付け合う膣同士の狭間で撹拌されては白く泡立ち、潮の香にも似た蠱惑的な香りをそこへ漂わせてもいたが、それでもドネの責めの手は止まない。
しまいにはそれら苦痛の再来に怖気ては、愛液とは明らかに性質の違う失禁など激しく漏らしては互いの間に熱の飛沫を撒き散らしたりもしたが、それでもかまわずにドネはアリアを責め続けた。
もはやいつ果てるとも分からないそれら連続の快感に晒され続ける中、遂にアリアは慟哭を上げる。
その何よりも悲痛なその響きを聞きとがめ……ようやくにドネは擦り付けていた動きを止めた。
その後も幼児のよう鼻頭に深く皺を刻み込んでは嗚咽を漏らすそんなアリアを前に小さく鼻を鳴らすと、改めてドネは今回アリアが取った行動の軽率さを言い諭して聞かせた。
それは今の自分達の立場を分からしめるものだ。
主にそれはドネが日陰者であることの再確認であり、もし自分達の深い付き合いが表立って露見した場合、ドネも然ることながらアリアへも非難の目は向くこととなるのだ。
ゆえに今回の暴走を窘めるドネではあったが──依然として泣きじゃくるアリアの様子が、今の説教に対する悔悟とは弱化気配の違うことに気付き、ドネは彼女を見る。
しばしそうして泣いていたアリアは改めて視線を合わせるや、嗚咽のなかドネを困らせたくないという胸の内を呂律も回らぬ口足らずで告げてきた。
彼女にしてもようやくに欲情の発散が為され、更には普段に無いドネの剣幕に触れることによって、ようやくに事の深刻さへ気づいた様子であった。
見た目は自分よりも遥かに大人びていて背丈も高いアリアの、そんな子供じみた仕草を目の当たりにし……ドネもまた一度に毒気を抜かれては、胸の内の苛立ちや不安の全てが沈静化してしまう。
やがて大きくため息をついて自分の中に一区切りをつけると──ドネは依然として泣きじゃくり続けるアリアを抱きしめては、その涙を拭うよう眉間へと深く熱く口づけをする。
それを受け、依然としてその表情は曇らせてはいても何処か窺うよう上目遣い三見上げてくるアリアと改めて視線を交わすと、「今後は慎むよう」言葉を掛けてはその胸の中に抱きしめて、ドネのお仕置きは一区切りとなった。
それを受け、アリアもまたドネの背へ大きく腕を回して抱きすがると、小さな彼女の胸元へ鼻先を埋めては幾度となく謝ってはそこを涙と洟で濡らした。
そうしてしばし抱き合って過ごしていると──いつしかアリアはドネの胸元へ体を預けたまま小さな寝息を立てている様子が伺えた。
斯様にして幼児のような友人をそれでも愛しく思い撫ぜていると、自然とドネの口元にも苦笑が綻ぶ。
しかしながら、そんな彼女を労るほどにドネの表情は暗く沈んだものへと変わっていった。
しばしして、遂にはアリアの後ろ頭に手を置いたまま動きを止める。
この時のドネの胸中には言いようもない不安とそして、アリアへの心咎める想いとが綯い交ぜになっていた。
それこそは遠からず訪れるであろう、アリアとの別れを思い出しての感情であった。
近くドネは、この場所からの出奔を画策していた。
それは単なる願望や思い付きによる突飛な行動ではなく、何年も前より綿密に計画してはその下準備に労力を費やしてきたものであった。
商家の主を始め、周囲はドネが文盲であることを信じて疑わなかったが、その実彼女は人以上に文字の読み書きや多言語への造詣に深い一面を秘めていた。
それゆえに主の元を訪れる各国からの商船の航路や定期便の積み荷を把握しては、いかに自身の逃亡に対し、その発覚を遅らせつつも尚、逐電後には主の手の届きようもない場所へと逃げ仰せられる条件を満たした船の選定にまで目星をつけていた。
来たるべき計画の日は既に5日後の早朝と迫っている──それを前に『最後の仕上げ』を仕込めば、ドネは一切の不安も無く晴れて自由の身となれるのだ。
ただ唯一の心残りはと言えば……それこそが、このアリアの存在に他ならなかった。
ある日突然に自分が目の前から消えてしまえば、さぞこの箱入り娘は驚いて嘆き悲しむことだろう。
おそらくはこんな自分の消失こそが、アリアにとっては人生初の『他者との離別』になるはずである。
とはいえしかし、身元もしっかりしとした保護者の元においては彼女が理不尽な搾取や暴力に晒されることも無い。
ドネとの別れは一時アリアの心をかき乱しはすれども、その後も彼女は恙無く平和に暮らしていけるのだ。
それこそは数少ないドネの安堵のひとつでもある。
悲しくともいつしかその傷は時が癒してくれよう。
そして今日に至るまでの思い出と、さらには『ドネ』というキルリアがいた事を忘れずにいてくれるのなら、いつかこの別れすらも良き思い出となるはずである。
少なくともドネはそう思い、そして自身もまたアリアとの別れに際する悲しみをそう思い込んでは乗り越えようとする。
斯様な愛しさと切なさの元、ドネは手持無沙汰に自身の膝の上で眠るアリアの額を撫ぜた。
そんな気持ちを知ってか否か依然として眠り続けるアリアもまた、さも愛し気にドネを抱き返しては……その膝元に鼻先を擦り付けてくるのだった。