※この作品はR-18です。

三擦り半のマス☆カーニャ   作:たつおか

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第2話・二人の関係

 

 

 樹海を抜けると途端に周囲の環境は岩場の雪景色に一変した。

 

 ルート開拓の先駆者もおらず、電子機器等の通信にも頼れない状況も相成っては、ここでもパーモットの通訳能力がいかんなく発揮された。

 一見厳しい環境ではあるが、そんな地にも原住ポケモンは多い。

 その道すがらで出会うポケモン達から得られる情報は単なる目的地までの道順に限らず、キャンプ設営に適した洞窟や雨風を凌げる倒木の隙間などもまた教えてもらえたりと、この極限の環境においてはまさに俺達の命を繋ぐ生きた情報と言えた。

 

 そして斯様な通訳をしてくれるパーモットの仕事ぶりもまた充実していた。

 出会った頃以上に意欲的に仕事をこなしてくれるその理由こそは……

 

『ダンナさん♡ ボーナスちょうらい。きょうノお手当♡』

 

 他でもない俺からの『特別ボーナス』にある。

 

 一日終わりのキャンプにおいて、パーモットは俺と『極めて親密に』過ごすことを求めた。

 俺の膝の上に陣取ると、そこから幾度となく口や頬を問わぬキスを繰り返す……ことさら食後のペッティングを彼女は好み、特にコーヒーを飲んだ直後のディープキスを殊更に求めた。

 

『コーシーのあじ、好き……♡ いい匂イ……これ好きぃ♡』

 

 あまりに激しく舌同士を絡めるあまり、もはや俺の口中に残るコーヒーの残滓を直に吸い上げてくるようなその濃厚さに、ならば直接にコーヒーなど飲んでみてはとも勧めたが、コーヒー自体はあまり気に召さないようだった。

 あくまでこの『キス』の際に残り香を感じられるのが良いようである。

 

 一方の俺はと言えば、そんなパーモットからの求めに対し、未だに戸惑いを拭えずにいる。

 それまでの俺にとって、ポケモンとは一動物でしかなかった。

 せいぜいが賢い犬程度の認識であった存在がしかし……今現在俺と彼女の関係たるや、もはやビジネスパートナーの枠をとうに超越した男女のそれへと昇華しつつある。

 

 そして俺がこの現状において一番に危惧することそれこそは、この関係を俺自身もまんざらになく思い始めていることにあった。

 有り体に言わせてもらうならばこの時──俺もまたパーモット(ポケモン)に恋愛感情を抱き始めていたのだ。

 

 しかし同時に、彼女を一個人として認めつつもまだ、心の何処かでパーモットを『ポケモン』として一段下の存在に見下しているだろう己の心の内に、心底俺は自己嫌悪にも陥るのだった。

 

 そんな戸惑いもまた胸に抱き続けたまま、いつしか俺達の旅は佳境へと差し掛かっていった。

 遂に当初目指していたヤミラミの山へと辿り着き、俺達はそこにある洞窟の一角において最後のキャンプを張る。

 入り組んだ構造の洞窟内は、内部へ入り込むことで完全に風雪から免れることが出来た。

 とはいえしかし、氷点下を下回る環境はそれでも過酷の一語に尽きた。

 

 食後は少しでも体力の消費を抑えるべくすぐに就寝に着いた俺達ではあったが……今度はその寒さゆえに眠れない状況へと陥る。

 幾度となく寝返りを打ち、いつまでも眠りにつけない感覚に苛立つ俺はふと傍らで身を丸めるパーモットへと視線を投げた。

 

 毛布にくるまってうつ伏せに身を縮こませているパーモットもまた眠りには至れていないようで、その眉元に深く皺を刻み込んでは震えていた。

 ただ寒さに反応してか頬の電気袋が暖色に赤く発光している眺めはなんとも心が落ち着いて、俺はいつまでもその柔らかい輝きを見つめ続けた。

 

 そんな中、不意にパーモットもまた片瞼を開くとそこにおいて俺と視線を交わす。

 極限状態もあってか、こんな状況で目が合う俺達はつい微笑み合ってしまう。

 

「パーモットも眠れないのか?」

『ウン……寒いの、ニガテ……寝れないミタイ……』

 

 応えながらもぞもぞと体を蠢かしては寝相を変える彼女を前に、つい俺も後先を考えない思い付きを提案してしまう。

 それこそは、

 

「なあ、こっちに来ないか? ふたりで抱きあえば少しは暖かいかもしれない……」

 

 同衾を誘う言葉だった。

 この提案は俺自身にしても以外で、発してから自分が何を口走っているものかと自問したほどである。

 しかしながら一方でそれを受け止めるパーモットの反応は明るいものであった。

 その提案を聞くなり表情を輝かせるや、

 

『ウン! 一緒に寝ル! ダンナさんと、おなじオフトンで寝るッ』

 

 互いに一メートルも無い距離だというのに、パーモットは飛び跳ねるように起き出してはその勢いのままに俺の寝袋へと頭を潜り込ませた。

 そうして完全に寝袋の中へ納まってしまうと、その中で互い違いになっていた体位を忙しなく変えて俺と向き合う様に調整をする。

 

 入り込まれた瞬間こそは冷えた体毛に冷気を感じたが、それでも正面から抱き合って前面を密着させ合うと、すぐに互いの体温が溶け出してはじんわりと熱が染み入ってくるのが感じられた。

 一人寝の時はあれほどに寒かったにもかかわらず、こうして誰かと抱き合うだけで今まで苛まされていた寒さが途端に気にならなくなるのが不思議だった。

 しかしながらこれは俺だけが受けている恩恵なのではないかと申し訳なくなり、俺は懐のパーモットも見下ろす。

 

「パーモットは寒くないか?」

『ウウン、ヘイキッ。すっごくあったかいヨ♡ ダンナさん、いいニオイ♡』

 

 俺の胸元へ横顔を押し付けながら瞼を細めるその表情に緊張した様子は見られず、彼女もまた俺から暖を取れている様子に安堵する。

 彼女の頬と、そして両掌に存在する電気袋がまるで熱線さながらに熱を帯びては俺を温めてくれる。

 その熱源は彼女が顔を押し付けてくる胸元とそしてしがみ付くよう両腕を回す背中に感じられた。

 

 一方で斯様な電気袋など持っていない俺も、少しでもパーモットを温めてやれればと包み込むようにその背を両腕で抱き包んでさすってやる。

 左腕を背に回してやり右腕で尻を抱えるようにして抱き込むと、より一層に俺達の密着度は増した。

 

 こうして体を押し付け合っていると、俺の胸元にはパーモットの肉付きが直に感じられる。

 普段は体毛に覆われている球体然な彼女の体も、実際は中々の存在感を思わせる乳房の膨らみがそこに感じられた。

 その重量感は尻にしても然りで、肉付きの良い臀部の質感が手に心地いい俺は、無意識にそこを揉みしだく動きを見せていた。

 

 期せずして愛撫のように彼女へマッサージを施していると、パーモット側の動きにも変化が現れる。

 押し付けていた頬の電気袋を身悶えるように左右に擦り付けては俺の胸元を広範囲に熱くさせる。

 そして背に回されていた両手の熱源にもまた変化が生じたかと思うと──彼女の両手は徐々にその位置を背中から下降させ始めた。

 

 熱源は背を下りてやがては俺の尻を抱えるよう移動していく。

 やがて右手のそれが腰元へ添えられたかと思うと次の瞬間、その熱は俺の股間一点において熱く咲いた。

 言わずもがなそれは、故意に彼女の手の平が俺の性器へと触れてきた瞬間でもあった。

 

 一方で俺もまた彼女の尻を揉みしだく動きに力と変化とを持たせる。

 緩急織り交ぜながら臀部そこを握りしめては解放するを繰り返す俺の右手は遂に、その中指の先端をそんな尻のクレバスへと潜らせてしまう。

 同時に、指先にはぬるりとしと粘膜による潤滑の感触が広がった瞬間──パーモットは何とも獣めいた呻き声を漏らした。

 普段聞く、あの軽やかな声の響きとは違う明らかなポケモンの発声にもしかし……彼女の発情を如実に感じ取った俺も興奮の度合いを深めていく。

 いつしか俺達は寒さすら感じなくなっていた。

 それどころかこの瞬間には倫理観すら失われていたように思う。

 

 もはや種を越えてまぐわろうとしているその禁忌を互い危ぶみつつもしかし、今や俺達は激情に流されるままその一線を越えようとしていた。

  

 そして更なる刺激を与えようと彼女を抱き直したその瞬間──俺は不意に枕元で生じたその気配に気付いては我に返る。

 

 砂利を踏みしめるその音は明らかな第三者の存在を知らせるものであり、同様にそれに気付き頭を上げたパーモット共々俺達は……目の前に広がるその光景に慄いては息を飲むのだった。

 

 つい先ほどまで一面を暗闇に覆われていた天井には、夜空の如きに無数のきらめきが灯されては俺達を照らしていた。

 同時、そしてその光の照射が単なる光源でないことにもすぐ気付くこととなる。

 

 枕元に立つその者を含め、この空間の各所から俺達を捉えていた光とは、爛々と輝く大量のヤミラミ達による視線に他ならなかった。

 

 俺達はいつの間にか──彼等のテリトリー内に囲われていたのだった。

 

 

 

 

 

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