マスカーニャとポケモンセンターへ向かうすがら──僕達は辿る道の先に何者かポケモンの姿を見つけた。
『誰だ?』と目を凝らす僕達同様に、遠いシルエットのポケモンもまた身を屈めては彼方からこちらを注視している。
やがて向こうが先に僕達を特定するや、そのポケモンは足取りも軽くにこちらへと駆け出した。
凄まじいスピードで瞬く間に辿り着くと、そのポケモンはこちらが確認するのも待たずに僕を胸の中に抱き込んだ。
青い羽毛のふくよかな胸元に顔を抱き込まれながら、僕は件のポケモンがウェーニバルであることをようやくに知る。
親密に、そして僕に会えたことがよほど嬉しい様子で何度も抱き直しては額も押し付けてくるウェーニバルにもしかし……僕にはこのポケモンの素性が皆目見当もつかない。
元よりテンションの高いポケモンであることは知っていたから、もしかしたら人違いをしているのではないかとも考えたその時──僕の脳裏にとあるポケモンの姿が浮かんだ。
「も、もしかして……お前、ウェルカモか?」
息継ぎするように胸の中から顔を上げては確認する僕の声に、さらにウェーニバルの表情は喜びの輝きを増した。
どうやら間違いはなさそうだ……このポケモンは友人のパートナーポケモンである。
一番最後に会った時はまだ子供然としたウェルカモであったから、今の格段に大人びた姿に僕は気付けずにいたのだ。
そんな久しぶりの邂逅がよほど嬉しいのか、ウェーニバルはその後も様々な角度から体をすり寄せては僕に甘えた。
しまいには臀部の形が触感で分かるほどに、尻を僕の股間に押し付けて歓待してくる様子に……
──こいつもオスだったよなあ……
一方の僕は否が応にも冷静になっていく。
そんな矢先、傍らで事の始終を見守っていたマスカーニャが、突如として短い威嚇の声を発するや、勢いよくウェーニバルの尻をひっぱたく。
それに驚いては両手で臀部を覆っては跳ね上がるウェーニバルは実にコミカルで、かつ能動的だ。
ようやくにウェーニバルが僕から離れると、今度はマスカーニャが僕の膝元へと屈みこんだ。
そうして今しがたまでウェーニバルが尻を押し付けていたそこを一嗅ぎするや……あからさまに嫌悪に苦味走った表情を浮かべるマスカーニャ。
そして次の瞬間、マスカーニャは僕の股間へ何度か唾を吐きつけたかと思うと──あとは力の限りにそこを掌にて擦り始めるのであった。
「う……──うおあああああ!? なにすんだー!」
そのあまりの突拍子もない行動と、そして力任せに行われる行為の激痛に思わず僕のゲンコツがマスカーニャの頭に落ちる。
それでもしかし、今日のマスカーニャはそんな痛みにも一切動じない。
何度も首の角度を変えては覗き込む位置を直しながら、僕の股間を磨く行為に熱中していく。
その衝撃に立っていられなくなり、ついには仰向けに倒れる僕にもしかし、マスカーニャも猛攻の手を緩めない。
天を突くように尻をつき上げては鼻先を突き付けると、地に寝そべる僕の股間を更なる執拗さで責め立てていくマスカーニャ。
「やめろぉー! うわああぁー‼」
ついには声を上げてマスカーニャの頭をワシ掴むそんな僕達に……
『相変わらず仲いいな、お前達は』
聞き慣れた声が掛けられる。
背後からのそれに反応しては振り返るマスカーニャの後ろにいたのは──誰でもないウェーニバルのパートナこと、友人のトトであった。
『久しぶり。元気だった?』
「はぁはぁ……よくこれを見てそんな挨拶できるな……」
歩み出ては手を差し伸べてくれるトトに引き起こされながら僕も大きくため息をつく。……まだポケモンセンターにつく途中で良かった。
型通りに近況を報告し合うなどして挨拶を交わすと、暫しして僕は今日のアポを取った本題をトトに切り出していくのだった。
それは今日に至るまでのマスカーニャの奇行についてだ。
行動が行動だけに、それを聞くトトには引かれるか、あるいは僕やマスカーニャに侮蔑の視線のひとつでも送られるのではとも覚悟したが……
『別にいいんじゃない? お前のことが好きなんだろ?』
返されたトトの応えは、拍子抜けするほどにあっさりとしていた。
無理にこちらの心情を慮って平静さを装っているだとか、そういった気遣いは伺えない。……トトは心底からそう思っているらしかった。
『お前にとっては数あるポケモンの一匹かもしれないけど、マスカーニャにとっては世界に一人のパートナーなんだから、ちょっとはお前も譲歩してやれって』
そう結ばれて、僕は完全に言葉を失う。柄にもなくトトの言葉に感動してしまった。
チラリと傍らのマスカーニャを見遣れば、今はすっかりウェーニバルと意気投合してはニャゴニャゴと何か談笑をしている。時折り、縦にした拳を上下に振るなどジェスチャーを交わしながら話す二匹はとても楽しそうだった。
昼食後にトトと別れ、俺達は並んで帰路を辿った。
家について玄関をくぐっても、トトの言葉は頭の中を回っていた。
「世界に一人のパートナー、か……」
そんな台詞が思わず漏れる。
たしかにこのマスカーニャは、世界でただ一人『僕』だけが受けとめてやれる存在だ。
この先、相当に躾けも必要とはなるだろうが、それでもコイツのことを理解し受け止めててやろうと僕は思った。
そんな腹を決めた僕へとマスカーニャは短く声を発しては呼び掛けてくる。
いったい今度は何を申し出てくるつもりだ? 気持ちも新たに顔を上げる僕ではあったが──斯様な決意は早くも崩れ去ろうとしていた。
目の前には、これ以上になく勃起させたペニスを重たそうに両手で抱えるマスカーニャが……腺液の先走るその切っ先を僕の鼻先に突き付けていたからである。