いざポケモンウォッシュを始めるにあたり、俺達の最初の仕事は彼女・ルナフレアの警戒を解くことだった。
アイドルとはいえそれは箱庭の中だけのことであり、今まで一切として人前に出てこなかった彼女の人見知りぶりは生半なものではなかった。
カメールさんと一緒にどうアプローチしても彼女の緊張をほぐしてやることは能わず、最後は彼女の楽曲で踊るなどという暴挙に俺は出た。
もはや完全に方向性を見失っての行動ではあったが──思いもよらずこれが功を奏した。
ルナフレアはそんな俺に興味を示したかと思うと、ついには一緒に踊り出したのだ。
こうして一応の信頼関係は築くことに成功した俺。……それを理解できない面持ちで観察するカメールさんの視線は堪えたが、ともあれこれにて前に進める。
そうしていざ彼女の洗体をするにあたり、改めて俺達はその汚れの具合を確認する。
しかしながら想像以上のそれに愕然とする結果となった。
遠目からは太陽を思わせる淡いオレンジのそれも、いざ至近距離で観ればもはや茶色に近い汚れ様だ。
皮脂汚れなのには間違いないが、一体どのくらい放っておいたものか表皮にこびり付いた垢が層になってしまっている。
試しに膝の一部にカメールさんが爪を立て剥しにかかってみたが、僅かに爪の先に老廃物が付着するばかりで一向にそれが取れる様子もない。
「水と洗剤ぶっかけた程度じゃどうにもならなさそうだな……」
手強い現状を前に次の一手を考える俺の傍らで、カメールさんは今居る部屋の構造を確かめるよう視線を上空へ巡らせていた。
その動きに俺の口元も緩む。さすがはカメールさんだ、すでに俺と同じ結論へと達している。
「……気密性はどんなものかな?」
尋ねる俺にカメールさんも視線を戻してくれると大きく頷く。加えて『ルナフレアが「ボイラー」になってくれるならば申し分も無い』との返事。
これにて方向性は定まった──俺はルナフレアへと向き直る。
「ルナフレアちゃん、まずはサウナからだ。キミの炎でこの部屋を熱してくれ」
俺達の作戦……それこそは彼女ルナフレアの熱でこの部屋をサウナにし、発汗させることで最初の垢を落とそうという考えだった。
一方のルナフレアはというと、このやり方を理解した様子でもなさそうだったが、それでも言われるままに彼女は部屋の温度を上げ始めた。
尻尾の炎を燃え上がらせ、さらには口中からも熱気も吐き出すと、見る間に部屋の温度は上昇していく。
ある程度それが上がった段階でカメールさんがハイドロポンプで大量の水を宙空に散布する。すると室内には爆発したかのごとくに蒸気が沸き上がり、途端に視界一面は蒸気に包まれた。
その中においてルナフレアも苦しげな呼吸を繰り返す。
いかに熱に強いとはいえ、大量の水分を伴った蒸し釜の中とあっては話が違うようだ。その独特の暑さに負けて炎の温度を下げてしまう彼女を励ましては、さらに高温になるよう部屋の温度を調整する。
そうしてサウナの下で蒸し続けること30分──ついに限界を迎えてか、ルナフレアは横に寝そべっては伸びてしまった。
見れば肌の表面には大量の汗が玉となって浮いている……もう十分だろう。
ようやく許しを出して彼女の火を止めさせると俺達は次の作業に移る。
横たわる彼女の足元に着け、カメールさんと二人で膝頭の表皮へ爪を立てると、案の定に俺達の指先はその中に食い込んだ。
そこから声を合わせ、上から下へと引き剥がすや──彼女の垢はまるで一枚の皮膚さながらにベロリと剥がれ落ちた。
作戦は大成功だ。
後は二人で手分けをして、この表皮の垢剥しに没頭する。
最初に始めた膝から始まり、カメールさんは背中へと回り俺は前面の処理をしていく。
腹から頭へと上りながら、脇の下を剥すべくルナフレアへと右腕を掲げるように指示を出した。
そうして緩慢と彼女が右腕を上げ閉じられていた腋を解放した瞬間──これまでとは比べ物にならない凄まじい芳香がそこから発せられた。
それの直撃を受けては思わず咳き込む俺。
普段は閉じられている腋の下は汚れや匂いが籠りやすいことに加え、ポケモンはそこに臭腺を持つ者も多くいる。
それは彼女の種族であるリザードンもまた同様で、そこから発せられる芳しい香りは皮脂汚れによるものだけではない、独特の匂いを帯びていた。
そこの垢剥しを行うと、場所が場所だけに彼女はコロコロと笑う。
かくして同様に垢を引き剥がすと、その下の柔らかな皮膚が露となった。
筋繊維と脂肪の収束点である腋下は、皺によって折り畳まれた肉の隆起が段になっていてどこか艶めかしい眺めがした。
種族柄かその肉の盛り上がりには弾力があり、場所が場所だというのに見ていて歯を立てたくなる衝動に駆られる。
……と、こんな考えに思いが至ってしまうのはこの「臭腺」という場所柄ゆえだ。
かくいう臭腺とはフェロモンの発生源でもある。そこに蓄積された高濃度のそれを嗅ぐに当たり、種族違いとは言え俺も彼女に魅了され始めているのが察せられる。
──この規模のレベルは初めてだから効くな……気をしっかり持たないと!
そうしてなおも垢剥しに没頭していると、そんな俺を目下にふとルナフレアがイタズラ心を起こした。
俺に気付かれないようゆっくりと腕を下ろしていたかと思うと次の瞬間──彼女は完全に脇を閉じては、俺を腋の下に挟み込んでしまったのだった。
「んぐッ!? んぐぐぐぐ~~~~~ッッ!」
もちろん加減されているとはいえ、そこはこの体格差だ。彼女の柔らかく芳しい腋肉に顔面を覆われては、俺も苦しみにくぐもった声を上げる。
しばしして解放されたかと思うとカメールさんが心配そうに俺を引きずり出してくれていた。……どうやら異変を察したカメールさんが彼女に声を掛けて助けてくれたらしい。
同じサウナに籠っていた酸欠もあってか思わず尻もちをついてしまう俺の傍らではカメールさんがルナフレアへとこのイタズラを窘めている。
もっともこんな大げさに座り込んでしまうほどのダメージなどは微塵も無い。イタズラをした彼女自身も力加減はしてくれていたし、呼吸が塞がれたのだって本当に一瞬だ。
問題はそんな肉体的ダメージではなかった。
先にも言ったように、臭腺のあるリザードンの腋の下とはフェロモンの発生場所だ……そしてそこに挟まれることで零距離からそれを嗅がされてしまった俺の体には、とある変化が如実に表れていた。
一頻りルナフレアに説教をしたカメールさんが振り返り、改めて座り込む俺を見て目を見張った。
もはや俺にも隠しようも無い……ルナフレアのフェロモンに中てられた俺の肉体(ペニス)は、痛いくらいに勃起してしまっていた。