その後もユウキとの交流は続いた。
子供ゆえの天真爛漫さか、あんなことがあった翌日であってもユウキはこれまでと変わらない友情を示してくれた。
そのことにリオルは感謝した……事実リオル自身があの経験を経て、僅かながらも今後の付き合いに躊躇を覚えたほどである。人たるユウキならば尚更に深く考えてしまうのではないかという懸念がリオルにはあった。
それゆえに、以降も変わらぬ付き合いを維持できたのは嬉しいことではあった……が、そこにはあの行為前には無かった付き合い方の変化もあった。
こともあろうかユウキが交尾にのめり込んだ……。
それは単に膣へのペニス挿入だけに限らず、何処で得てくるものやらあらゆる婬猥な知識を反映させた遊びにも興じるようになった。
住処でのそれは元より、森の中や河原、果ては他者の往来だって在り得る森の入り口でさえそれを敢行し、数度かはユウキの家に招かれてそこの彼女の寝室にて求められたことすらもある。
さらには年月が過ぎ、成長に合わせて格段に情報の収集能力が高まっては金銭的な余裕も生まれると、何処から購入して来るのかそういう行為を盛り上げるためのオモチャすらもユウキは持ち込むようになった。
そんなユウキの求めに、時にはリオルも辟易としてしまうこともあったが、それでも二人は楽しく青春時代を謳歌した。
そしてユウキが12歳になったその日──リオルの家に遊びに来た彼女はあることを告げる。
「ボクさあ、ポケモントレーナーになってみようと思うんだ」
リオルから飲み物の入ったマグカップを受け取るとユウキはそう言った。
その言葉にリオルはしばし固まる。……その時が来てしまったかとも思った。
ユウキと付き合ううちにリオルの生活様式にも変化が現れていた。
どうしても住処で彼女と過ごす時間が長くなることから、その中には他所で調達してきたりあるいは自分で作った家具や調度が取り備えられている。
各種の食器や調理道具はもとより、簡易ながらベッドも材木を組み合わせて作っては、人がここで過ごすのに不自由がないように設えられていた。
加えていつ頃からか「波動」の力もまた制御できるようになってからは、それを上手く利用した火起こしによって、リオルは遊びに来たユウキに飲み物を振舞えるほどにまでにまで生活水準も進化させていた。
同時に……リオルはその過程で様々なこともまた知る。
自分達が『ポケモン』という種であり、ユウキ達『ヒト』とは生物としての有り様が決定的に違うことも。
聡明なリオルはそれを知ることで、同時にこれがいつか来るユウキとの別れもまた示しているのだと悟った。
それでもこの頃のリオルはもう、そうした不安に潰されてしまうことはなかった。
ならばその時までは最高の思い出を彼女に作ってやろうと決意もしたのである。
それから数年──ついに今日、その時を迎えてしまったのである。
ベッドの上で素肌にシーツを纏った彼女はマグカップのココアを息を吹きかけながらすすった。
既に数度の情交を済ませた後の話である。
その隣にリオルも腰かけるが、ユウキの座高は既にリオルの頭一つ分は大きい。
自分は依然として出会った頃のままのリオルであるから、それに気付くとユウキの成長を実感しては感慨深くもなる。
そんなリオルの感傷など気付かぬ様子でユウキは話をつづけた。
「今まで興味なかったんだけど、このあいだテレビ見てたら伝説ポケモンの番組やっててさ。それ見たら一気に引き込まれちゃったっていうか……」
語りながらユウキは一度としてリオルを振り向かなかった。
その態度は理解できる。
別れを告げる瞬間なんて気まずいものだろう。それでもきちんとそれを告げに来てくれたユウキをリオルは嬉しく思う。
そんな中、突如としてユウキがこちらを向いた。
顔を向ける程度のものではなく、体ごと向き直ってはまっすぐにリオルを見つめてくる。
その勢いに羽織っていたシーツが落ち、再び彼女の肌が露となる。
正面から真っすぐ見つめてくるユウキをリオルは純粋に美しいと思った。
もはやリオルが思い出と感傷の中に閉じ込めていた幼きユウキはそこにはいない。
目の前には、自身の意志をまっすぐに告げてくる大人の彼女が居た。
またしてもそんな感傷に浸っていたから、そこから告げられるユウキの言葉を危うくリオルは聞き漏らしかけた。
ユウキはまっすぐにリオルを見つめながら言った。
「リオル……一緒に来て! ここを出て、二人で世界を回ろう」
手を取り、真剣なまなざしでそう告げてくるユウキとは対照的にリオルはあっけにとられた。
ともに旅立つ──この発想は無かった。
永くこの森に居続けたせいか、自分だけはいつまでもこの森にいるものだと信じ込んでいた。
そして彼女も今、そこからリオルを解き放とうとしている。
「ボク一人でなんか嫌だ……最高の瞬間は、いつだってリオルと一緒に迎えたいんだ」
次々と語り掛けられてくるユウキの熱い思いに触れ、ふとリオルは初めてユウキと出会った時のことを思い出す。
勇気を出してあの一歩を踏み出した時の光景が、今のユウキと重なった。
そして誰よりも強く求められているのだとリオルもまた理解した瞬間──彼にもまた変化が現れる。
突如として体が発光した。
それに驚く間もなくリオルの小さな体は光に飲まれ、その中で輪郭を失う。
そして拡散していたエネルギーが凝縮を始め、その光の輪郭を再び別のポケモンの姿に形成させた次の瞬間、さながら超新星を思わせる勢いで光と虹の粉をその場に弾けさせた。
依然としてリオルの手を握りしてめいたままのユウキはその光の爆発に眼を閉じて衝撃に耐える。
そうして全てが収まり、恐る恐るに瞳を開けたその先にあったものは……──
「ッ……リオ、ル?」
リオルから進化したルカリオの姿であった。
しなやかに伸びた強靭な手足と頑強な胸元の角──座高もいつしかユウキよりも頭一つ大きくなっていた。
ユウキから共に森を出よう・共に在ろうと告げられたあの時、神様は次なるステージを彼女と歩むための新たな体と強さをルカリオに与えてくれたのだった。
そんな自分の変化に戸惑うルカリオを──
「その進化、OKの返事ってことだよねッ♡」
ユウキは正面から抱きしめた。
強く抱きしめてくる彼女との体格差に、改めてルカリオは自分の進化を実感する。
正直この瞬間、やれやれとも思った。
どうやらユウキとの付き合いはまだ続くらしい。
それでもしかし、今のルカリオには気力がみなぎっている。
ユウキと一緒ならばどこにでもいけそうな……それこそ、彼女の言う伝説にだって本当に手が届くような気がした。
そんなあらためての『よろしく』を伝えるようにルカリオもまたユウキを抱き返した。
この時まさに、二人の旅は幕を開けたのであった──。
【 リオルの幼馴染・完 】
「それにしても……カッコ良くなったねぇ、ルカリオ?」
抱きしめながら、ユウキの湿った声が耳元でささやかれる。
同時にルカリオは両肩を跳ね上がらせた。
いつの間にやらユウキの右手が股間をまさぐっていたからである。
「こっちの方はどれくらい進化したのかな~♡」
そして次の瞬間には体を預けられては押し倒されるルカリオ。
進化してすぐのこの現状に……ルカリオは自分の行く末を案じずにはいられなかった。