※この作品はR-18です。

三擦り半のマス☆カーニャ   作:たつおか

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エピローグ

 

 

 よもや10代に満たぬ新チャンピオンの誕生すらもありうると注目された今期のリーグではあったが──その結末はリーンの棄権という尻すぼみな結果で幕を閉じた。

 

 この棄権には各方面から非難と、そして様々な憶測とが飛び交う。

 曰く『強運だけで勝ち続けてきたことに気づいて怖気づいた』や『その天才性ゆえリーグ戦などには興味を失くした』という説、中には『「リーン」と今季リーグの存在自体が業界が作り上げた壮大な自作自演』……など、噂話の例を挙げれば枚挙にいとまがない。

 

 しかしながら真実は意外かつも、少なからずリーンにとっては真っ当な理由からであった。

 

 その日──リーグの棄権を告げたリーンはその足でポケモンセンターへと赴き、手持ちのバシャーモをそこへと預けた。

 そして彼女の体に何らかの異常が起きていること、あるいはこれから何かが起こるであろうことを告げて、バシャーモを緊急入院させたのであった。

 

 これには相談を受けた医師も、そしてバシャーモ本人ですらもが首を傾げた。

 見たところ表面的には深刻な外傷は見受けられない。バシャーモも至って健康そうだ。

 ともあれ休養させるということであればとセンター側もバシャーモを預かったが……その夜、事態は急変する。

 

 突如としてバシャーモが昏倒したかと思うとそのまま意識を失ったのだった。

 見る間に彼女は衰弱していき、センターはあわや騒然となった。

 しかしながら医療機関の本拠地で、なおかつ迅速な処置が為されたことによりバシャーモは一命をとりとめ、その後は小康状態のまま絶対安静とされた。

 

 この事態にリーンはバシャーモの身を案じたものの、慌てたり取り乱すようなことは無かった。

 おおよそ予想通りの結果であり、そしてともあれ無事に事態が収拾してくれたことに安堵もした。

 

 ならば何故にリーンはこの結末を予期し得たのか……それこそはワカシャモ時からの、あの異常な打たれ強さに疑問を感じたのが始まりであった。

 

 リーグ本戦におけるワカシャモの働きは、まさに無敵と言っても過言ではないタフネスと膂力とを見せつけたものであった。

 しかしそれらは完全にワカシャモの実力から逸脱した力であり、極度の興奮状態である今は感じずとも、遠くない未来においてそのツケが体に還ってくるであろうことをリーンは予想したのだ。

 そしてその予測は違うることなく、事態を今へと至らしめた。

 

 しかしその2日後にはバシャーモも意識を取り戻し、リーンとセンターの介護の下で休養すること1週間──彼女は無事に退院の運びとなった。

 ようやくに二人きりになれたのが嬉しいのか、モンスターボールには収まらずに一緒に歩いて帰ることを希望したバシャーモを連れてリーンは帰路につく。

 

 今回のリーグ棄権を周囲は惜しむと同時に、『最年少チャンピオンの栄光をみすみす取り逃した』と口さがなく言う者もいた。

 しかしながらその考えこそが的外れなものであることを、噂話に現を抜かす者達は気付いていない。

 目指すべきは『最年少チャンピオン』ではなく『リーグチャンピオン』であり、そこに年齢は関係ないのだ。

 むしろそうした不純物が混じることで、トレーナー本来の強さや持ち味が失われてしまうことこそが、危惧して然るべき問題なのである。

 

 その意味でリーンはそこを見誤らぬ冷静さがあったし、何よりも彼には自信があった。

 

 今後も研究と研鑽を重ねることで今以上に強いトレーナーになれる自信と、さらにはこれから先もなお頼り甲斐のあるポケモン達と出会える確信とがあったのだ。

 そしてそんな自分の目標を支えるべくに最も重要な存在となるのは誰でもないこのバシャーモであり、そんな彼女を失うかもしれないリスクを考えれば今回の棄権は考えるまでも無い。

 

 そして何よりもバシャーモは──今となってはリーンの愛しい恋人でもある。

 それを思う時、『最年少チャンピオン』程度の名誉などはリーンにとって取るに足りないことであったのだった。

 

 

 そんなことを考えながら傍らのバシャーモを見上げると、その視線に気付いてバシャーモもまたリーンを見つめ返す。

 その視線から彼女の喜びが手に取る様に窺えて、ただこうして見つめ合っているだけでも幸福であるというバシャーモの純粋な思いが伝わってくるようだった。

 

「退院のお祝いしないとなー。何か食べたいものとかあるか?」

 

 そう訊ねるリーンに対し、バシャーモの下瞼が妖艶に上ずった。

 そうして口先をキスの形に窄めて唇を打ち鳴らす仕草に、彼女がリーンそのものを求めていることに気付いて思わず赤面する。

 

「病み上がりにそれは無いだろ。……まあ、少しなら良いけど」

 

 そしてそんなバシャーモの仕草に照れては視線を振り切るリーンのいじらしさに辛抱たまらなくなると──バシャーモは肩にリーンを担ぎ上げては、その巨乳を振り乱して走り始めるのだった。

 

「バカ、落ちつけ! また倒れるぞお前!」

 

 注意するもしかし、リーン自身もまた僅かに興奮し始めている自分に気付くとそんな注意の声も尻すぼみになる。

 

 

 かくして波乱のうちに幕を閉じたリーンのリーグ挑戦──しかしながらこれは、彼の長きに亘るトレーナー人生における最初の一歩でしかない。

 後に伝説のトレーナーとして名を馳せるリーンとそのパートナー・バシャーモの……これが一番最初のエピソードであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【 御褒美☆バシャーモ!・完 】

 

 

 

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