もう何時間……否、何日間こうしているのだろう?
サドラとヌメルゴンは時を忘れてまぐわい続けていた。
文字通り寝食を忘れ、互いの排泄物を糧に命を繋ぎ合ってはひたすらに交尾を続ける日々は、サドラの短い人生においてはまさに絶頂の瞬間と言えた。
もはやこのヌメルゴンさえいれば何もいらない……どんな拷問よりも、彼女と引き離されることこそが最大の苦痛だ。
そしてそのことはヌメルゴンもまた同じらしく、そんな互いが確かめ合う愛の形は回を増すごとにエスカレートしていった。
互いの体から出されるものは余すことなく摂取したし、ヌメルゴンは自身の肉体を食するようサドラへと要求すれば、サドラもまた血が滲むほどに彼女の乳首を噛みしめては痛みと歓びの絶叫を上げさせた。
タブーを越えるほどに互いの愛が深まるその実感に、サドラは究極の愛の確認方法をヌメルゴンへと実践してほしく、幾度となく彼女の口唇へ自身の体のあらゆる部位を挿入させた。
サドラが最後に望むこと──それこそは、ヌメルゴンに食されては彼女の体と一体化することにあった。
それを知らされてからはヌメルゴンにも躊躇いや逡巡の気配が窺えた。
言うまでも無く、『食』とは他の生命に対する最終行為だ。二人にとっては愛を確認する『過程』であると同時に、それは死という『結末』でもあった。
そしてそれを知りつつも、ヌメルゴンもまたサドラを己の胎(なか)へと取り込むことを求めてやまない……愛ゆえに二人の想いは矛盾し、そして大いに苦悩するのだった。
しかし遂にはその決意を──否、もはや堪えきれずにヌメルゴンはその一線を越えた。
サドラの体を両手にするや、そのまま高く掲げてその下でこれ以上になく大きく口を開けた。
サドラからも見下ろすそこに開け放たれたヌメルゴンの咽頭が見えて生唾を飲みこむ。
心には僅かな恐怖と、そしてついにこの瞬間を迎えらえるのだという期待と悦びとがサドラの中に満ちていた。
一刻も早く彼女の中へと逝きたい一心でサドラはその身を左右にうねらせる。
そしてついに──ヌメルゴンは頭からサドラを飲み込んだ。
口中での咀嚼は一切せず、まさにサドラの形のまま飲み下す。
サドラを内包した喉元は胴体と変わらぬほどに肥大しては、その苦しみにヌメルゴンも涙をこらえて耐える。
一方でそんなヌメルゴンの食道を抜けるサドラは、その身を締めつけつつも粘液の滑りを全身に帯びて彼女の体内を行く快感に震えた。
もはや交尾(セックス)などとは比べようもない挿入感と一体感──体中のどの穴にペニスや腕を挿入した時よりも直接的なこの一体感は、身命を賭して味わうにふさわしい感覚であった。
やがてはそんな喉元を過ぎてサドラは胃の中へと落ちる。
そこに満ちる強酸が身を焼き、そして肉を溶かす痛みもしかし、それこそが彼女の一部に慣れるという実感をより強くしては更なる快感をサドラの脳へと伝えた。
思い付くかぎりの究極の愛情行為の達成に『自分の人生もまんざらではない』と、満足と達成感に満たされてはこのまま死を待つだけのサドラではあったが──ヌメルゴンからもたらされる愛にはさらなるその『続き』が待っていた。
その身を包み込む胃が激しく蠕動を始めたかと思うと、サドラは次なる場所へと送られた。
咽頭の時以上の狭所さを以てその孔を抜け、サドラの体は腸へと送られた。
以降は幾度となく体を折り曲げ、その内臓の形に身をひしゃげさせながらサドラはヌメルゴンの胎内を巡る。
だいぶ無茶な姿勢へと体躯を矯正されているにも拘らず、もはやサドラはそこに痛みや苦しみは感じていなかった。
それどころか胸中は、新たに湧いた期待に激しく高揚すらしていた。
それこそはこのヌメルゴンの体を巡る短い旅の終着点──再び胎外へと産み落とされるその瞬間を想像して、サドラは感動にも近い興奮を覚えていたのだった。
早く外の世界に出たい──そしてそこでもう一度君に出会いたい。
この愛を幾度となく繰り返せるなんて──なんて素敵なんだろう。
強くそれを願い、そして求めるサドラは自らもその身をうねらせてはヌメルゴンの胎(なか)を進む。
やがては幾重にも折り曲げられていた狭所が一本道となり、サドラは重力に落とされるよう最後のその道を辿った……──
一方で外界においては、直立したヌメルゴンが壁に諸手をつき──前傾姿勢に両足を開いては渾身の力を込めて息ばんでいた。
尻尾を背負う様に巻き上げては肛門を晒し、一刻も早くサドラを産み落とそうと躍起になる。
痛みと苦しみから上目に剝かれ瞳からは涙があふれ、苦し気に開け放たれた口中からは逆流してきた涎や胃液といった体液が溢れだしては足元に液溜まりの池を作っていた。
ヌメルゴンにしても一連の飲み込みとそして間を置かずしての排泄は肉体に深刻なダメージを負わせる行為であった。
それでもしかし、その苦しみの中にヌメルゴンは確かな愛を感じた。
想い人を体内に取り込み、そして再びに生み出せる歓びは、何事にも替えようのない愛の最終形態である実感がヌメルゴンにはあった。
そしてその仕上げとばかりに彼女は最後の力を振り絞って力む。
サドラを内包した肛門は、その直腸内部から尻尾と見紛わんばかりに外部へと延びる。
その延長の頂点において肛門の間口が僅かに開き、遂にはその隙間からサドラの頭が現れた次の瞬間──サドラは一思いに床へと排泄されては現世に産み戻らされたのであった。
各種の消化液で身を焼かれた痛みと、肺へ急激に流れ込む外気、さらには温かかった胎内から一変して外に放り出されるその寒気に震えては、サドラは声の限りに泣いた。
そんなサドラを抱き上げると、己がぶちまけた鮮血と排泄物のその中でヌメルゴンは幾重にもサドラの顔や体を舐めてはその身を労わってやる。
やがてはそんなヌメルゴンの手の中で痛みも苦しみも引いていき、改めてサドラはヌメルゴンを見上げた。
二匹の視線が絡み合うと、その間には自然と笑みが浮かぶ。
後は想いのままに抱きしめ合い、二匹は再びにまぐわい始めた……。
究極の一体化と、そして新生とを経験した二匹の絆を断てるものなどはもはやこの世に無かった。
サドラはヌメルゴンの中に、そしてヌメルゴンはサドラの中に在る──斯様にして一体化を果たした二匹の愛は、その命が尽きる瞬間まで永劫に共に在り続けるのだった。