※この作品はR-18です。

裏キル姫日記   作:やす、

28 / 44
アバリス・D.pulg・パズズ

 

千年王国は戦乱の世を迎えていた。トレイセーマ共和国、ハルモニア教皇国、ケイオスリオン帝国の三大国が千年王国統一の為血を血で洗う戦いを繰り返している。更に斬ル姫の投入により戦闘は過激になる一方。

 

 

『斬ル姫』それはキル姫に霊装支配(ギアハック)を施したキル姫の総称。

 

トレイセーマ共和国はキル姫に幻獣を霊装支配(プラント)し、ハルモニア教皇国は天使を霊装支配(ジェイル)し、そして俺の祖国ケイオスリオン帝国はキル姫に悪魔を霊装支配(ドミネイト)を施した。

 

ただでさえ人智を超えているキル姫に霊装支配を施し戦場へ投入する。その為戦場は控えめに言って地獄だ。斬ル姫に襲われた軍人の死に様はこの世のものとは思えない。つい先日も細切れになったハルモニアの兵士を見たし全身の骨を砕かれて死んでいるトレイセーマの兵士を見た。

 

そう言えばこないだ四肢をもがれたうちの兵士を見たっけか。

 

 

「おい、ここは禁煙だぞ」

 

「いいからいーから。いつ死ぬかも分かんねーのに細え事気にすんなって」

 

 

本日俺はケイオスリオンの軍事会議に呼び出されていた。せっかく今日は非番だっていうのに。ムカついたから会議室で喫煙をしていると他の集められている兵士から煙たい目で見られるのだがお構いなし。煙を吐き出しもう一口吸おうとした時、何かに撃ち抜かれ煙草が消えた。

 

 

「聞こえなかったのかしら、ここは禁煙よ」

 

 

煙草を射抜いた本人が冷めた目で俺を見る。その目線と小さい癖にデカい態度に煙草を吸うのを諦めた。

 

 

「んで、呼び出した理由はなんだよ」

 

「お前にトレイセーマへの工作を頼みたくて、その為に呼んだのよ」

 

「うぇ!マジかよ」

 

「この私が直々に命令を下しているのよ、もっと喜びなさい」

 

 

トレイセーマ共和国、完全なる公平制度で規律を保つ国。あまり全貌は知らないが良い噂は聞かない。まぁ敵国なので良い噂もクソもないのだが。そんな国に行けと皇帝は命令を出した。

 

 

「お断りだね、死にに行くようなもんだ」

 

 

何度も九死に一生を拾っているが流石に敵国に侵入となれば一生を拾う事はできないだろう、もし拾ったとしても奴隷かなんかの実験材料にされかねない。それはゴメンだ。

 

 

「そうね、お前の戦果にはある程度の評価はしてるしこちらとしても有能な駒を失いなくは無い。斬ル姫を1人お前の駒として付けるわ、これでどうかしら」

 

 

「交渉よ」そう言いながら皇帝は頬杖を付き俺を見上げる見下す。しかし死にたくないので拒否。

 

 

「断わ(ry「交渉は決裂ね。なら死ぬと良いわ」

 

 

皇帝が矢を構えるよりも早く俺は両手を上にあげ何度も頷いていた。このチビならマジで撃ちかねない。

 

 

「良い返事ね。ならお前の相方を紹介するわ」

 

 

皇帝の合図で会議室のドアが開き何かが入って来た。『何か』と言った意味として誰かが入って来た気配はあるのに誰も居ない。ただ人の気配のみが部屋に入って来た。

 

 

「お前の相方、アバリスD.pulgパズズよ。武器は私と同じ弓で霊装支配された悪魔は熱風と疫病を操る悪魔、パズズ」

 

 

そう皇帝が紹介するのだが未だに俺はアバリスの存在を見つける事ができていなかった。それは他の兵士も同じようで何もない空間を指差す皇帝を阿呆を見る目で見ていた。

 

 

「おいおい、これはなんかの冗談か?俺の休みを潰してこれ以上冗談に付き合わせるのなら帰るぞぉー?」

 

 

馬鹿らしくなり帰ろうと席を立った瞬間、一瞬だが皇帝の横に居る人物の姿が見えた気がする。

 

 

「このアバリスは完全に気配を消す事ができるの、隠密活動にはもってこいね」

 

 

ドヤ顔で説明する皇帝に目を向け再びアバリスに目を向けるともうそこには何も無かった。

 

 

「わーったよ。んで、その作戦はいつ決行するんだ」

 

「四日後よ。それまでにアバリスを手懐けておきなさい。それと3日間の休暇を与えるわ」

 

「そりゃどーも」

 

「詳しくは四日後の朝に話すわ。それまで余暇を楽しむことね」

 

 

適当な返事を返し俺は会議室から出てゆく。背後から付いてくる気配を感じながら。

 

 

 

それから俺は自宅へと帰って来ていた。玄関から入りリビングへと行きソファーにどっかりと座り煙草に火を付け付いてきた気配に話しかける。

 

 

「てきとーに座ってろよ」

 

「ありがとうございます…」

 

 

散らかっている物がひとりでに動き人が座れるスペースを作ると物は動かなくなった。ここにアバリスが座っているらしい。

 

 

「とりあえず自己紹介だ。俺はこの国の軍人。お前は?」

 

「私は…アバリスD.pulgパズズ。引きし弓は神弓、ケイオスリオンの斬ル姫なのですが…あまり戦闘は…得意ではありません…」

 

「マジかよ…」

 

 

アバリスの言葉に唖然とし煙草から灰が溢れ床へと落ちた。

 

それもそうだろう。戦いに行く、しかも敵地に乗り込むというのに戦闘が得意じゃない奴を俺に寄越した意味が分からない。

 

あっ、こないだ居酒屋で酔っ払って皇帝の事をチービノートとか言いながらバカにしてたっけ。

 

 

「ちょっと待て、まさかお前は皇帝をバカにした俺を粛清に来たのか?」

 

「い、いえ!決してその様な事は…ありません…!私は皇帝にトレイセーマに行くようにと言われただけです、、、」

 

「うーん?」

 

 

まぁ確かに考えて見れば皇帝は部下を寄こすよりも直接手を下しに来るはずだ。奴はそういうタイプだ。

 

 

「あの…」

 

「どした?」

 

「皇帝の悪口を言っていたのなら…伝えなくては…ならないのですが…」

 

「よし、忘れろ。良いか?俺は常日頃から皇帝に敬意を払いケイオスリオン帝国の為に日夜奮闘している勇敢な兵士だ」

 

「は、はい…」

 

 

アバリスが居るであろうところを見て話すと一瞬笑顔が見えた気がした。

 

 

「まぁそれは置いといて買い物行くぞ」

 

「お買い物…ですか?」

 

「あぁ、この家にはお前が使える物は無いし飯の買い出しにも行きたいからな」

 

「あの、、、」

 

「どうした?」

 

「お買い物に行く前にこの部屋を…掃除しませんか…?」

 

「…ごもっともです」

 

 

それからアバリスと部屋の掃除を行っていた。いつ死んでも良いようにとゴミを溜め込んでいた部屋の掃除に半日以上の時間をかけようやく人が住める程には綺麗になっていた。

 

 

「ふぅ、、やっと綺麗になりましたね」

 

 

全てのゴミは分別され袋に収まり長年使い続けた布団や枕、衣服は洗濯されベランダで夏風にそよぎ。なんとも清々しい気分だ。

 

 

「よし、じゃあ買い物行くか」

 

「待って下さい。いる物をメモしておかなければ余計な物まで買ってしまいます…」

 

「お前は俺のオカンか」

 

「い、いえっ!けしてその様な…ことは…っ!」

 

「ジョークだ。いくぞ」

 

 

玄関から出るとひとりでにドアが開き鍵を閉め俺の後へ付いてきた。

 

 

 

買い物をしながらアバリスを観察し分かった事がある。彼女は良い嫁になると。

 

 

俺の無駄遣いを徹底的に阻止し食べる物は栄養バランスを考えて選び自分が作ると言う。何度「オカンか」とつっこんだのか数えきれないほど。それと俺を含め他の人にもアバリスは見えないので1人で会話をしている俺を残念な奴を見る目で見られた。

 

 

「余計なお節介かもしれませんが…ちゃんとした食事を食べて戦場に赴いて欲しいのです…」

 

「控えめに戦場に行かすな」

 

 

やはりアバリスもケイオスリオンの斬ル姫のようで。

 

 

「兵士ってのはジャンクフードを酒で流し込んでりゃ良いんだよ。四日後死ぬかも知れないのに健康状態気にする必要あるか?」

 

「そうかも知れませんが…」

 

 

そんなこんなで俺達は家へと戻り俺は煙草を吸いながら料理を行っているアバリスの後ろ姿をみながら会話をしていた。そうはいってもキッチンがひとりでに動き料理を作っているというホラーな光景なのだが。

 

 

ちなみにアバリスが触れている物も存在を無くすようで。今起きている事を話すとアバリスが握っているとフライパンも消えるのだが手を離した瞬間に姿を表すのだ。イッツ・イリュージョン。

 

 

「お待たせしました。お口に合うか分かりませんが、どうぞ召し上がって下さい…」

 

「サンキューいただきます」

 

 

そんな訳でアバリスが作ってくれたご飯を頂くことに。サラダに味噌汁に焼き魚にご飯と見ただけで健康になれそうな料理だ。

 

 

「ん!美味い!」

 

「よかった…」

 

 

正直な感想を述べると安堵の声が聞こえふと見ると嬉しそうな顔が見えた。

 

 

「お前」

 

「はい、なんでしょうか…?」

 

「結構可愛いんだな」

 

 

黒いフードから見えた顔は可愛らしい少女の笑顔。

 

 

「〜〜〜〜っ!」

 

 

一瞬にして赤面し困った声が聞こえた時にはもうアバリスの姿は見えなくなっていた。

 

 

飯を食い終わってから交代で風呂に入り就寝前に酒を飲む。ソファーの前の机にがんっとセットを置き、かち割られた氷を入れたコップに並々と酒を注ぎ煽る。

 

 

「お前も飲むか?」

 

「いえ、私は戦いの道具なので、遠慮しておきますね…」

 

「まだ休みだし俺はお前の事を道具として見ちゃいないよ。まぁ付き合えよ」

 

「それなら…頂きます…」

 

 

俺からちょっと離れたところのソファーが沈み酒瓶が消えコップが消えて酒を注ぐ音が聞こえると酒瓶が見えるようになった。そして一口飲んだため息が聞こえた。

 

 

「あの、どうして私の事を道具として…見ないのですか…?」

 

「あっ?そりゃ俺とお前はペアな訳だし相方を道具扱いする奴の事を信じられるか?少なくとも俺はそう言う奴は信用できん」

 

「嬉しい…私にそう言ってくれたのはマスターが…初めてです」

 

「マスター?」

 

「えっと、斬ル姫は従う人の事をそう呼ぶのです。嫌だったでしょうか…?」

 

「マスターね、まぁ好きに呼んでくれ」

 

 

そう言って隣を見ると酔いで赤めた顔が見えた。今ははっきりと見える、水色の髪を腰まで伸ばし暑そうに手で顔を仰ぐ姿が。

 

 

「やっぱり可愛いな」

 

「えっ…?み、見ないでくださいっ!」

 

 

控えめに声を荒げるともうそこにアバリスの姿は無かった。

 

 

「その、なんでお前はそんなに存在感がないんだ?そういう訓練でも受けたのか?」

 

「それは…私は神器、アバリスの記憶を引き継いでいるからなのです」

 

「なんだそれ?詳しく頼む」

 

「はい…」

 

 

アバリスの話をまとめると斬ル姫というものはマナとキラーズでできててキラーズとは伝説の武器から抽出した物らしい。

 

なんだかよく分からんがアバリスの存在感がないのは生来のものであり神器の記憶からくるもの、らしい。

 

とりあえずよく分からんが酒の肴になるからよしだ。

 

 

「とりあえず分かった?」

 

「その返事は分かっていませんよね…?」

 

「次にお前に霊装支配されたパズズだが、皇帝が言うには熱風と疫病を司る悪魔らしいがお前にその能力は使えるのか?」

 

「はい、可能です…そうだ、試しに見てみますか…?」

 

「頼む」

 

 

アバリスが氷の入ったコップを持つ。それを見ていると顔の周りに熱を感じ思わず身を引いた。

 

 

「おいマジかよ…」

 

 

俺が見ているうちにコップに付いた結露が乾き氷は溶け中身は沸騰し天井に湯気が舞う。

 

 

「これがパズズの熱風の力です…。疫病はマスターにまで被害が行ってしまうので使いませんが…」

 

 

そう言ってコップを置くと机が焼け焦げ煙を放つ。しかし俺は思わずアバリスの手を取り顔を見た。

 

 

「きゃっ!?」

 

「お前はいつまで俺の所にいる?できればこのまま居て欲しいのだが」

 

「そ、そ、そんな事、急に言われましても…っ」

 

「お前が居てくれればお湯割りが無限に飲める。頼む!せめて冬を越すまで居てくれ!」

 

「おゆわり…ですか…?」

 

「毎回ポット準備するのめんどくさかったんだ」

 

「あはは……は…はぁ、、、」

 

 

 

 

………………………………………………………………

 

 

 

 

 

それから少し不機嫌になったアバリスの機嫌を取り寝ることに。

 

 

「あの、、」

 

「どうした?」

 

「眠るのは仕方のない事です。でも、どうして私と一緒に…寝る必要があるのでしょうか…?」

 

「あぁ、これはだな。アバリス、俺とお前はこれから共に敵国に行くペアだ、相棒だ。そうなれば共に行動をして親睦を深めるべきだとは思わないか?」

 

「それはそうとは思いますけど…」

 

「俺からの説明は以上だ。以下就寝っ」

 

 

そんな訳でアバリスと共に寝る事に。一応言っておくがアバリスの事はエッチな目でもイヤらしい目でも見ていない。純粋に相棒として見ている。その証拠に俺はもう寝ていた。

 

 

 

 

 

次の日の早朝に俺は目を覚ましベッドから出ようとすると隣に違和感を感じていた。何かが俺の隣にあるのだが何もないのだ。

 

夢か?そう思いながら柔らかい物を布生地越しに触っていた。

 

もにゅもにゅとしていて手のひらに収まる大きさ、しかもそれは2つあり触っている内に何かがツンっと硬くなった。

 

 

「あの…んっ、マスター…」

 

「………………?」

 

「朝から…っ私の胸を揉まないで…下さい…っ」

 

「胸?」

 

「胸です…んんっ……マスターが触っているのはですね……ひゃ…私の、、胸です…っ!」

 

 

そこまで言われ俺は考えた。今俺が揉みしだいているものはなんなのかと。

 

 

「揉みながら考えないで早く手を離してくださいっ…!」

 

 

 

ようやく手を離すと顔を真っ赤にして目に涙をため俺を睨むアバリスさんが見えた。

 

 

「あぁ、、悪い」

 

「・・・存在感が無いので仕方ないと思いますが…その…やめてほしいです…」

 

「よし、朝のトレーニング行ってくるわ」

 

「えぇっ?」

 

 

そんな訳で俺はベッドから飛び降りて服を着替え日課のランニングをしに行くことに。決して気まずくなったから逃げた訳ではない。

 

 

「ただいまー」

 

「おかえりなさい。もうご飯の支度はできていますからね」

 

「ありがとな、シャワー浴びたら食べるわ」

 

 

汗まみれの服を脱ぎシャワーを浴びてパンイチでリビングへと行くとテーブルには料理が並べられており椅子にちょこんとアバリスが座っているのが見えた。

 

 

「待っててくれたんだ」

 

「はいっ、マスター…あのっ、服を…服をちゃんと着てくださいっ!」

 

「あぁ悪いわるい。ずっと1人だったからな」

 

 

そんな訳で上着を一枚羽織りテーブルへ。

 

 

「「いただきます」」

 

 

いただくご飯は純和風。すこし味付けは薄いが素材の味が引き立つというもの。それをぺろりとたいらげソファーへと行き食後の一服。

 

 

「俺が片付けるから置いときなよ」

 

「いえ、それだといつ片付けるのか分かりませんので…私がします…」

 

「お、おぅ、、」

 

 

返す言葉がないとはこの事だ。結局俺は煙草を吸いながらアバリスの後ろ姿を見ていた。

 

 

「なぁ」

 

「はい、どうしましたか?」

 

「なんか昨日より見えるんだけど」

 

「見える、とは?」

 

「アバリスの姿が」

 

 

昨日はたまに姿が見えるぐらいだったのだが今日は良くアバリスの姿を見かける。

 

 

「それは本当ですか?」

 

「あっ、見えなくなった」

 

「えぇ、、、っ」

 

「影が薄いのオンオフができるのか?」

 

「そのような機能は…ありませんが…」

 

 

アバリスへの謎は深まるばかりだ。それはそれとして今日をどう過ごすかを考えなくては。

 

 

「アバリスはなんかしたい事あるのか?暇だしどっか行こうぜ」

 

「そうですね…少し、お散歩に出かけるのはどうでしょう?」

 

「おけ、行くか」

 

「もう少しで終わりますので少し、待っていてくださいね」

 

 

それならと煙草に火を付けるのだが一口吸った時にはもうアバリスの準備は終わっていて俺に視線を向けていた。

 

 

 

 

「マスターはお休みの日は何をしているのですか?」

 

「あーっと朝トレーニングしてそれから本読みながら酒飲んで寝るだな」

 

「本を読まれるのですね」

 

「意外みたいな顔すんなよ。それと読む本はエロ本とかじゃないぞ?」

 

「では、どのような本を読んでいるのですか?」

 

「戦闘指南書や図鑑だったり医術の本だな。知識と芸は身を助けるからな」

 

「マスターも医学書をお読みになるのですね。私も良く読んでます」

 

「おっ!じゃあ捕虜を動けなくするならアバリスならどこを狙う?」

 

「ええっと、、医学書のお話でしたよね…?」

 

「だからだよ。人体の構造を知る事ができれば狙う場所が分かるだろ?動けなくするのなら俺は筋を切る」

 

「あはは、、本当は私、衛生兵を志望していたんです…でも影の薄さを皇帝にかわれてしまい…」

 

「まぁ、、そっち向きだよな。しかし、戦場に出るのなら甘っちょろい事を言うのはやめろ」

 

「それは心得ております。これでもケイオスリオンの斬ル姫ですから」

 

 

ふとアバリスの顔がフードから覗いた。それはしっとりとした殺意が渦巻く悪魔の表情。

 

こんな可愛い子でも戦場に行けば容赦なく人を殺す、それが当たり前の時代。俺自身も何人もの敵を殺めてきたが無性に寂しさを感じてしまった。

 

 

「今夜は飲みに行こうぜ。明日まで休みだから飲み過ぎても問題無しだ」

 

「そう、ですね」

 

「そうと決まれば財布取りに家戻るか」

 

「あの…もう少しだけお散歩を…しませんか?」

 

 

家に戻ろうとした俺のシャツをアバリスが掴んだ。そこまでされたら断る訳にもいかずお散歩続行。

 

 

「なぁ」

 

「はい、なんでしょうか?」

 

「いつまで掴んでるんだ?」

 

「迷惑…でしょうか?」

 

「シャツより、ほら」

 

 

アバリスに左手を伸ばすと遠慮気味に俺の手を握り歩く。本当に可愛い奴だ。

 

そんなアバリスと遠回りで家に帰り財布を取りに行って近所の居酒屋へ。

 

 

「うーっす。2人だけど良いか?」

 

「2人?誰か後から来るのかい?」

 

「居るんだよここに。ここ座るぞ」

 

 

やはりアバリスは他人からは見えないようで。適当な席に座り早速メニューを広げてゆく。

 

 

「とりあえず生で、アバリスは?」

 

「では私もビールを頂きます」

 

 

ビールを二つ頼みそれから適当なおつまみを頼み。乾杯してまろやかな時間。

 

 

「ふぅ、、少し熱いですね」

 

「酒弱いのか?」

 

「普段はあまり飲みませんから…でもマスターのお付き合いはできますよ」

 

「酔っ払ったアバリスが見てみたいのだが」

 

「酔ってもそんなに変わりはないと思いますが…」

 

 

そう言いながら被っていたフードを脱ぎメニュー表へと手を伸ばし次のお酒を頼んでいた。もちろんアバリスが店員を呼んでも気が付かれないので俺に飲みたい物を伝え俺が店員に頼んでいる。

 

 

「やっぱり私はビールよりも甘いお酒の方が好みです」

 

 

顔を真っ赤に染めながら両手でグラスを持ちカルーア・ミルクを飲む姿はなかなか心に来るものがある。

 

 

「なら明日買いに行くか?」

 

「そう…ですね。お家にあればいつでも好きな時に飲む事ができますし」

 

「休みの日に朝から飲む酒は美味いぞ。その代わりダメ人間になってく気がするけどな」

 

「あはは…流石に朝からはいいです…」

 

 

そんなどーでもいい話をしていると乱暴にドアが開けられ睨む様にドアの方を見るとそこにはうちの軍の兵士達の姿が。

 

 

「戦帰りでしょうか?」

 

「いや、訓練帰りだろ。血の匂いがしない」

 

 

見ているうちに何人かの兵士が入店し静かだった店内は騒がしくなる。

 

 

「ちっ、帰るか?」

 

「そうですね…少し落ち着かなくなってしまいましたし」

 

 

伝票を持ちレジへと行こうとするとまたドアが開き1人の女が入ってきた。その女を見て俺はすかさず挨拶を。

 

 

「先生お久しぶりっす」

 

「あぁお前か、久しぶりだな。皇帝からお前の事はよく聞いている。指導した私も鼻が高いというものだ」

 

「そりゃどうも」

 

「リットゥさんお久しぶりです」

 

「アバリスも居たのか。よし、久々の再開だ。私に付き合ってもらおうか」

 

 

ニヤリと笑うと俺達の手を引き座敷へと引っ張ってゆく。

 

 

「「リットゥさんお疲れ様です!!」」

 

 

そしてリットゥの入店により騒いでいた兵士は直立不動となり最敬礼を送る。

 

 

「すごい…さっきまで騒いでいたのに」

 

「この国で先生の前でバカやれる奴はいないよ、もし居るなら敵国の奴が変装して来ているか、ただのバカかのどっちかだ」

 

「私の地獄の訓練を受けた者なら当然の結果だな。どんなに歪んだ精神もたちまち真っ直ぐに叩き直してやる」

 

 

豪快に笑いながら生中を一気に飲み干すとおかわりと声を上げた。

 

 

こう言う俺も先生の地獄の訓練を受けた事がある。どれぐらい地獄かと聞かれたら思い出すだけで身が縮こまると伝えよう。しかしそこで学んだ事は多く今まで戦場で生きて帰る事ができているのは訓練の成果だと心から思える。

 

 

「先生にはアバリスが見えるんすか?」

 

「当たり前だ。斬ル姫ならアバリスの存在を認知する事ができる」

 

「なるほどね」

 

「お前達はペアだったな。もっと相方の事を知らなければ百戦危うからずだ」

 

「分かってるっすよ。ちとトイレ行ってきます」

 

 

煙草とライターを持ち便所へ。彼の姿が見えなくなるとリットゥの表情が変わった。

 

 

 

「アバリス」

 

「はい、なんでしょうか」

 

「あいつを頼む、あいつは私の可愛い生徒なんだ。本来なら私が着いて行きたいんだが皇帝はそれを許しはしないだろう。お前の弓の腕は信用に値する。必ず生きて帰ってきてくれ」

 

「リットゥさん…」

 

「なに、あいつの実力は私が保証しよう。何せこれまで多くの生徒を見てきたが私に一太刀入れる事ができたのはあいつだけだからな。普段はちゃらけているが本気になったあいつは強い」

 

「それは感じております。まだマスターが戦闘を行っているところは見ておりませんが」

 

「きっと驚くだろう。しかし、なんとも嫌な時代になったものだ。私は何度生徒を戦場へ送り出せばいいんだ」

 

 

そう呟くリットゥの瞳は悲しみを宿し遠くを見つめていた。

 

 

「なんの話してたんすか?」

 

「あぁいや、今日も酒は美味いと言っててな」

 

 

 

それからしばらくして俺たちは家へと帰って来ていた。

 

 

「あぁー飲んだ飲んだ。ねむてぇー」

 

 

帰るなりベッドに寝転がる俺の元へとアバリスが駆け寄り俺を見下ろす。

 

 

「そのまま寝るのはダメです…せめてパジャマに着替えて下さい…」

 

「いーからいいから。ほら抱き枕」

 

 

そのままアバリスの手を引きベッドへ引き込むと悲鳴をあげながらも俺の前にすっぽりとおさまった。

 

 

「マスター…っ!」

 

「アバリスの抱き心地最高だわ」

 

 

何度も逃げようと身をよじっていたのだが、やがて諦め素直に抱き枕になってくれた。

 

 

「だからといって…んっ、、胸を…触らないで下さい…っ!

 

「そこに胸があるなら触らないと失礼だろ」

 

 

よく分からん理論で俺はアバリスの胸を揉みしだいていた。手に収まる大きさでやたらと柔らかい胸。

 

しかし服越しなのがもどかしく鎖骨の上から服を捲り上げ直接揉みしだこうとした時、俺は寝た。

 

 

 

次の日、早朝のトレーニングに行こうと目を覚ますと俺の腕の中でアバリスが寝ているのが見えた。黒いワンピースの胸元は乱れなんとも唆る姿。布団をめくると腰上から入るスリットから魅力的な生足が伸びる。

 

 

少し考えて俺はおっぱいを揉みしだく事にした。胸元を繋ぐ金具を外し露わになった乳房を包む様に揉むと昨日かいた汗のためかしっとりと素肌が手に馴染む。

 

アバリスの顔を見るとまだ夢の中だ。安らかな寝顔に少しだけ罪悪感が沸いたが目は顔よりも胸を見ていた。お椀程の大きさの乳房は重力に逆らい形を保ち、つんとピンク色の乳首が立つ。思わず体を起こし右乳首を指の間に挟みくにくにとつまむ。

 

そしてアバリスを見るとごくりと唾を飲み込む喉の動きが見えた。

 

 

「起きてたのか」

 

「どうして…分かったのですか…?」

 

「寝てる人間は唾を飲み込まないんだよ。狸寝入りの見分け方だ」

 

「なるほど…ではなくてですね…っ」

 

「よし、じゃあトレーニング行ってくるわ」

 

 

ベッドから飛び降り服を着替え俺は玄関から家を出た。

 

 

 

‥……………………………………………………………

 

 

 

 

「ただいまー」

 

「おかえりなさい」

 

「風呂行ってくるわ」

 

「ご飯できてますからね」

 

 

どこか不機嫌そうなアバリスを見た後かいた汗をシャワーで流しリビングへと。

 

 

「「いただきます」」

 

「ご飯を食べたら私もシャワーを浴びますね」

 

「分かったよ」

 

 

それだけ会話しあとは無言で飯を食い食べ終わるとアバリスは浴室へと向かって行った。それを見届け食器を洗いそれが終わるとソファーに座り明日使う武器の手入れをおこなってゆく、

 

 

 

「ふぅ、、やっとさっぱりしました」

 

 

声が聞こえ見上げると灰色のスエットを着たアバリスの姿が。髪はまだ三つ編みに結ってなく水気を含む水色髪が腰付近まで垂れている。

 

 

「乾かさないのか?女ってのは髪質に気を使うんだろ?」

 

「すぐ乾かせるので大丈夫です。それより何をしているのですか?」

 

「明日使う武器の手入れだよ。いざという時に使えなかったら死ぬしかないからな」

 

 

テーブルの上に広げられている武器は大剣にナイフ、十徳ナイフだ。それらを研ぎ油を差し万全の状態へと。

 

 

「お前は手入れしないのか?」

 

「私は大丈夫です。いつでも万全の状態ですから」

 

 

部屋に一陣の風が吹くとアバリスの手には弓が握られていた。

 

 

「こいつはすごいな。しかし、部屋でそれはやめろ」

 

「あぁっ!ご、ごめんなさい…すぐ片付けますから…っ!」

 

 

部屋の中を風が舞ったため灰皿の中身は飛び散り本は吹き飛びとなかなかの被害だ。

 

慌てながら片付けるアバリスを手伝い一服。

 

 

「そうだ、後でお前の弓の腕を見せてくれて。この国のはずれに魔獣が出現する森があるんだ」

 

 

そう言ってアバリスの顔を見るとニヤリと口角が上がるのが見えた。

 

 

それから少ししてから俺達は町外れの森へとやって来ていた。人の侵入を拒む様に森への入り口は薄暗く妙にしっとりとした空気が身体に纏わりつく。

 

 

「知ってるとは思うがここに居る魔獣は人を襲い食う。油断すれば任務前にお陀仏だ」

 

「心得ております」

 

「ルートとしてこの獣道を進むと森の奥にある広場へと出る。そこで一休みして帰還だ。良いな?」

 

「はい、それでどうすれば良いのでしょうか?」

 

「俺と一緒に居てくれれば良い。しかし自分の身は自分で守れ」

 

 

しっかりと頷くのを見て俺は煙草を咥え火を付けると剣を引き抜き構え歩みだした。俺の後ろにしっかりとアバリスが付く。

 

弓使いらしく左右、後方をしっかりと目を向け異常を探し出す。

 

 

「左右後方問題ありません」

 

「オッケ、前も問題無しだ」

 

 

全方向に気を向けながら歩むが異常は無い。それでもいつ魔獣が襲いかかってくるか分からない緊張感にたらりと汗が流れおちる。

 

 

「着きましたね」

 

「そうだな」

 

 

そんな警戒を嘲笑うかのように俺たちは目的地である広場へと辿り着いていた。

 

この広場だけは何故か木々が生えず見上げれば太陽が拝める場所。聞く話だと珍しい山菜が季節によっては生えるようでたまに山菜を摘みに来る人も居るようだ。

 

 

「良い風ですね」

 

 

木々を通り抜ける風がアバリスの髪を揺らす。そんなアバリスをついつい見てしまう。

 

 

「どうしましたか?」

 

「ちょっと尻かせ」

 

「お尻をですか…?」

 

 

不安気になりながらも俺にお尻を向けるとそれを俺は鷲掴みにした。

 

 

「きゃっ…!ま、マスター…?」

 

「静かに、今考え事をしているんだ」

 

 

アバリスの尻を揉みながら俺は考える。三つ編みか、髪を流すか。どちらのアバリスが可愛いかと。

 

 

「あ、っ…の…私の…お尻を揉みながらっ…考え事をしないで下さいっ…」

 

 

幼さを残す三つ編みか、大人感漂うストレートか。

 

 

「アバリス!」

 

「は、はいっ!」

 

「日替わりで髪型を変えてくれ」

 

「分かりましたからお尻を揉まないで下さいっ…!」

 

「もう少し待ってくれ」

 

「えぇ…」

 

 

それからしばらくアバシリを堪能しているとある事に気が付いた。尾てい骨付近に何かがある事に。

 

 

「アバリス、これはなんだ?」

 

「それは…私、尻尾があるんです…霊装支配されたパズズの影響なのですが…きゃっ」

 

「おーほんとだ、すげー」

 

 

尻尾と聞けば触らずにいられない。尾てい骨から伸びる尻尾をスエット越しになでなでしていると2本尻尾がある事に気が付いた。

 

 

「ちょっと尻尾見せてよ」

 

「だめです…本当に…恥ずかしいので…ダメです……」

 

 

結構マジで泣きそうに言われたので諦める事に。

 

 

「よし、休憩もしたし帰るか」

 

「私は全く休憩にならなかったのですが…」

 

 

それからもう少しだけ休み帰る事に。もちろん帰り道も警戒を怠らない。

 

 

「何も出てきませんでしたね…」

 

「そうだな、、」

 

 

結局出るはずだった魔獣は現れず肩透かしをくらってしまった。

 

 

「まぁ魔獣はおまけみたいなものだからな。あの木を的に矢を射ってくれないか?」

 

俺が指を刺すのは約200メートル先にある一本の木。「はい」っと返事をするとアバリスは弓を構えギリギリと弦を引き絞る。その横顔は可愛らしさはなく凛と張り詰める緊張感を放つ。

 

 

「やっ!」

 

 

手を離した瞬間矢は風を切りながら的の元へと飛来する。しかし素人の俺が見ても矢の軌道は的を外してしまいそう。

 

 

「マスター聞こえますか?この風が、木々の間を吹き抜ける風鳴りの轟音が」

 

 

確かに耳を澄ませると風が鳴る音が、それは木々を揺らし葉を散らせ豪風となる。

 

 

そして矢は的を通り越した。しかし、矢は豪風に乗り軌道を変え一度通り過ぎたはずの的へと突き刺さった。

 

 

「ふぅ…どうでしたか?見てもらえましたでしょうか?」

 

「確かに凄いな。まさか風で軌道を変えるなんて」

 

「それと、今のは自然の風でしたが熱風にしたり風に疫病の菌を乗せる事もできますよ」

 

「ちなみに外したのはわざとか?」

 

「はい。ではもう一度」

 

 

そう言い終わる頃には弦が風を切る音が響き的の木にはもう一本の矢が突き刺さる。

 

アバリスは拳銃にも劣らない速さで矢を放ち正確に的に当ててみせた。いきなり人智を超える技を見せられかける言葉が見つからずアバリスの顔を見ると不敵に口角をあげた。

 

 

「アバリスとなら生きて帰れそうな気がするよ」

 

 

そう言うと彼女はにっこりと笑顔を見せてくれた。

 

 

それから帰りにコンビニに寄って夕飯を買い家へと帰って来ていた。

 

 

「ごめんなさい、作ると言っていたのに…」

 

「明日から任務だしな。無理はさせたくないよ」

 

 

早速買ってきた物をテーブルへ広げ夕飯の時間。もちろんサラダを買う事となり食前に食べていた。

 

 

「結構サラダって美味いんだな。今まで食ってなかったけど」

 

「お野菜も美味しいんですよ?ちゃんと味がありますし歯応えも楽しめます」

 

 

大きなレタスが口からはみ出さないように手で押さえながら食べる姿が可愛い。

 

それから風呂に交代で入り寝る前に晩酌。先程コンビニで買った缶チューハイを2人して開けていた。

 

 

「ふぅ、、熱い…」

 

 

アバリスはお酒を飲むとすぐ顔を赤くさせる。しかし弱い訳ではなく昨日も結構飲んでいたがけろりとしていた。

 

 

「そう言えば髪どうやって乾かしてるんだ?うちにドライヤー無かったろ?」

 

「パズズの熱風で乾かしています。初めは温度調節に苦労しましたけど今では自在に操る事ができるんです」

 

「けっこう便利なんだな」

 

 

そんな話でけらけらと笑いながら酒を飲み2人の缶は空となった。

 

 

「寝るか」

 

「そうですね」

 

 

ベッドに入り壁際に寝転がるとアバリスがそっと俺の横に寝転がり俺と向かい合った。

 

 

「この姿勢なら胸を揉む事はできませんよね…?」

 

「甘いぜアバリス」

 

 

そう言って尻に手を伸ばそうとしたのだが視線を感じ尻に伸びるはずだった手は頭をわしゃわしゃと撫でる。そこには心地良さそうなアバリスの顔。そんなアバリスを目を細めながら見ていた。

 

 

すると一瞬唇が柔らかい物に触れた。それがアバリスの唇だという事に気が付いた時にはもうアバリスは布団にくるまり顔を隠していた。

 

 

「アーバーリースー」

 

「もう寝ました…」

 

 

可愛らしい丸わかりの嘘を笑いながら聞いているとそのまま俺は寝た。

 

 

 

次の日の朝に俺達は皇帝の元を尋ねていた。王城を護る兵士に声をかけ王室へと続くレッドカーペットを上を歩み王室へ。

 

 

「ようやくね。休暇は楽しめたかしら」

 

「お陰様でな。詳しい話を聞かせてもらおうか」

 

「えぇ、もちろんよ。雑賀」

 

 

皇帝が名を呼ぶと奥の部屋から雑賀が姿を見せた。

 

 

「おっす雑賀久しぶり」

 

「久しぶりっすね、また飲みにでもいくっすよ。っと、挨拶はこの辺にして作戦を伝えるっすよ」

 

 

雑賀D.pulgハルファス。この国の軍師であり雑賀の立てた作戦に負けは無いと言われる程の頭脳派斬ル姫。

 

 

「2人にはトレイセーマ共和国首都、グラヒハイトに潜入し十三議会をぶっ潰して来て欲しいっす」

 

「良いねーその分かりやすい作戦。さいこーだ」

 

「手段は問わないわ。燃やすなり爆破するなり好きな方法で破壊しなさい」

 

「十三議会はトレイセーマの要ともいえる重要な機関。そこを叩けばしばらくは再起不能って訳っす。流石に大軍率いて行くのはきびぃんで少数精鋭ですがあんたとアバリスなら上手くやってくれるって信じてるっすよ」

 

「よし分かった。それと皇帝に一つ頼みがある」

 

「何かしら?」

 

「耳貸せ耳」

 

 

皇帝に耳打ちをすると少し考えた顔をし、やがて良い返事をくれた。

 

 

「えぇ、作戦を成功させれば対価は出すつもりだったし。ただ、本人がどう返事をするか保証はできないわ」

 

「良いってことよ。行くぞアバリス」

 

「はい、必ずや朗報を手に戻ります」

 

 

雑賀から渡された地図を取り目指すは敵国、トレイセーマ。そうはいってもケイオスリオンからトレイセーマまではかなり距離があり1日は歩かなくてはならない。その間にアバリスの情報をまとめたいと思う。

 

・人には姿は見えないが、気配を感じる事はできる。

 

・斬ル姫には感知される。

 

・アバリスが触れている物も気配が消える。

 

・弓を主軸とし熱風、疫病を操る能力を持つ。

 

 

これぐらいか?

 

 

「あのですね…私の能力を書き出すのはっ…良いのですがその間に…私のお尻を触らないで下さい…っ」

 

「あぁすまん。アバシリを揉むと知能が上がるんだ」

 

「嘘です…それは絶対に嘘です…それと私のお尻を、変な呼び方しないで下さい…」

 

 

こんな調子で半日程歩き少し休憩をとることに。視界が効く草原の為寝転がりながらの休憩。

 

 

「敵が居ないので少し、ピクニックに来た気分ですね」

 

「そうだな」

 

 

爽やかな風が吹く草原に寝転がり煙草を吸い飲み物を飲む。こういうと確かにピクニックに来た気分だ。

 

 

「そう言えばマスターは軍服は着ないのですか?私服、の様ですが」

 

「敵国に侵入するのに軍服は着てけないだろ。それに俺はあの服が嫌いだ」

 

「あはは…確かに少し無骨ですからね…」

 

「よし、そろそろ行くか」

 

 

咥えていた煙草を地面でもみ消し立ち上がるとアバリスも続き立ち上がり再び歩み出す。

 

 

「見て下さいマスター、トレイセーマが見えてきました」

 

 

それからしばらく歩き太陽が沈みかけた頃、自然に囲まれたトレイセーマの城壁が見えてきた。うちの国とは違い環境に優しそうな国だ。

 

そうは言ったが中身は完全なる管理体制が敷かれ民は全て平等という政治を行っている変わった国だ。

 

 

「潜入といきたいところだが日が落ちる、今夜はここで野宿して明日の朝にトレイセーマに入るぞ」

 

「闇に紛れないのですか?」

 

「そうしたいところだが俺たちはトレイセーマの内部を知らない。迂闊に侵入して迷子になれば不審者扱いされるだろ」

 

「なるほど、分かりました。野宿は慣れておりますので大丈夫ですよ」

 

「それと睡眠は交代で、飯はお互い背を向け合い行う」

 

「了解しました」

 

 

さっそく座りお互い背を預け合い携帯食料を食べる事に。

 

 

「しっかし、パサパサして不味いな」

 

「保存食ですからね、でも栄養はしっかりと取ることができます」

 

「そうかもしれんが味の無いクッキーだぞ」

 

「確かにそうですね…」

 

 

文句を言っても食う物はこれしかないので口の中の水分を飲み物で補給しながら完食。

 

 

「素敵な景色ですね…あんなにも太陽が輝いています」

 

 

アバリスの方を見るとそこにはトレイセーマに沈みゆく太陽の姿が。日没間際の閃光が眩い程に輝き、やがて地に沈む。

 

 

「戦いが終われば身の危険を感じる事なくこの光景を見る事ができるのですね」

 

「そうだな…」

 

 

切なく呟くアバリスの言葉に上手く返す事はできなかった。きっと、誰もが戦いが終わる事を望んでいる。しかしそれは叶わない願いなのも誰もが知っている。

 

 

「先に寝ろよ。見張ってるから」

 

「…分かりました。では、お先にお休みをいただきますね」

 

 

地面に寝転がったアバリスを見て煙草に火を付けると交代の時間まで周囲に警戒を行ってゆく。

 

 

 

 

 

 

 

……………………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、アバリスに起こされ目を覚ます。目を開けると微笑みながら俺を見る顔。

 

 

「おはようございますマスター」

 

「おはよ。飯食って行くか」

 

 

携帯食料をかじり水を飲み最後に一服をし、俺たちはトレイセーマに潜入する。

 

 

「あの、本当にこれを付けるのですか…?」

 

「あぁ、俺も付けるから安心しろ」

 

 

そう言ってアバリスに渡したのはうさ耳のカチューシャ。この装備の理由としてトレイセーマは完全平等であるからだ。

 

獣人を模す事によりどれ程に違和感があろうと口を出せば差別主義者として罰せられる。その為、侵入は容易だ。

 

 

「おはようだぴょん」

 

「おはようございます…ぴょん…」

 

 

このトレイセーマの穴をついた完全完璧の変装で城門から堂々と潜入する。

 

 

「………おはようだわん」

 

 

トレイセーマ兵士の鋭い目線を掻い潜り俺たちはトレイセーマへと乗り込んだ。

 

 

「国内も素敵ですね…ぴょん」

 

 

アバリスの言う通り外観だけでなく国内も自然が豊かだ。簡単に伝えるのなら自然と人類の共存。大自然に囲まれながらこの国の人々は生活をしている。

 

目を向けると獣人達が日常生活を送る姿が見える。俺たちはこの営みをぶっ壊しに来た。

 

 

「とりあえず首都を目指すぴょん。適当に聞き込むかぴょん」

 

「あの…無理にぴょんを付けなくても良いと思いますが…」

 

「こういうのは慣れなんだぴょん。今から語尾にぴょんを付け口を慣らしておかないといざという時に普段の口調になってしまうぴょん」

 

「それとですね、うさぎの鳴き声はぴょんでは…ありません…」

 

「こまけー事気にするなぴょん。ほら、うさぎに成り切ってぴょんっと言ってみるぴょん」

 

「…ぴょん」

 

 

とりあえず近くに合った売店へと行き地図と飲み物を購入し現在地の確認と首都の位置を。

 

 

「今俺たちはここに居るぴょん。このまま西に進み首都を目指すぴょん」

 

「分かりました…ぴょん」

 

「君、見ない顔だぞぉー」

 

 

売店で地図を見ていると象人に話しかけられてしまった。しかしここで怯むわけにはいかない。

 

 

「俺は田舎から来たぴょんね、観光だぴょん」

 

「ぞぉー良い時に来たぞう。もうすぐグラヒハイトで祭りが行われるんだぞぉー」

 

「ほんとかぴょん!良かったら案内して欲しいぴょん」

 

「付いてくるぞぉー」

 

 

完璧すぎる対応を不安気に見ていたアバリスに親指を立てて見せるとため息を吐く姿が。

 

 

「それで君はどこから来たぞぅー?」

 

「俺はド・イナーカから来たぴょん。あんたはここの人かぴょん?」

 

「僕は生まれも育ちもここ、カント・リーだぞぉーここは首都も近く生活し易いぞぉー」

 

「羨ましいぴょんねぇ」

 

 

象人と世間話をしながら進んでゆくが方角は首都がある西では無く南に向いている。

 

 

「どうして南に行くぴょん?地図で見たら首都は西だぴょんよ?」

 

「こっちが近道なんだぞぉ。地元道というやつだぞぉ」

 

「なるほどぴょん」

 

 

しばらく着いて行くと広場に出た。そして広場の真ん中まで歩いた時、象人が振り返った。

 

 

『ぞぉぉぉぉーーー!!!侵入者だぞぉぉぉお!!!』

 

「なっ!?」

 

 

象人が叫ぶと瞬く間に俺たちは多くの獣人に囲まれた。四方八方に殺気立ち武器を持つ姿。

 

 

「俺達獣人は鼻が効くぞぉ!お前、悪魔の国の奴だな!それに…斬ル姫を連れていやがるぞぉ!!」

 

「バレていたならしょうがない。アバリス!!」

 

「はい」

 

「狩るぞ、一匹残らずだ!」

 

 

大剣を引き抜き獣人へと駆ける。

 

 

 

 

「悪魔人舐めんじゃねーよ」

 

 

戦闘の後、そこには無惨に散らかる獣の姿が。広場はおびただしい血に濡れ肉片が転がり。

 

そして何よりアバリスに射抜かれた奴の死に様は恐ろしい、射抜かれた場所は疫病に罹ったのか変色しもう肉が腐り初めていた。

 

 

「匂いは盲点だったな。流石獣と言うべきか」

 

「熱風で血を乾かします。そうすれば臭いは収まるはずです」

 

 

パズズの力を使い熱風を起こし死体を乾かす姿を見ながら煙草を火を付ける。

 

 

「そうだ、お前の熱風を使えば上手く進めるぞ」

 

「熱風ですか?」

 

「あぁ、熱風だ」

 

 

しばらくし完全に乾燥してしまった死体を森に隠し俺たちは首都を目指し歩く。しかしさっきの反省を活かしアバリスの熱風を使いながら。

 

 

「なるほど、熱風で上昇気流を作り匂いを空に流すのですね」

 

「そういう事。これなら匂いで気が付かれる事はないだろ」

 

 

暖かい水や空気は上に登る。この現象を活かしながら進む。ただ難点をあげるのであれば、ちと暑い。

 

 

「あんまり急ぎたくはないがさっきの騒ぎに気付かれる前に首都へ乗り込むぞ」

 

「はい、首都に行けば斬ル姫も居るはずです。私のそばを離れないで下さいね」

 

 

もう一つこの作戦の難点があった。それは地図を開くと熱風に煽られ読みずらい。それは家の壁に抑えながら読む事で対象したのだが。

 

 

「あと少しで首都だ。その、十三議会があるのは首都の中央だな」

 

「了解です。斬ル姫の気配はまだ感じられません」

 

「よっしゃ、行くか」

 

 

地図をしまい首都を目指し歩む。

 

 

 

そうして辿り着いたのはトレイセーマの首都、グラヒハイト。トレイセーマは自然に囲われる国だが首都は違うだろうと思っていたのだが首都の方が自然が濃い。住宅は木の上に建てられていたりと自然を利用し共存をしている。

 

 

「ツリーハウスと言うのですよね。昔本で読んだ事があります」

 

「俺も読んだ事あるぜ、あん時はどんな家なのか心踊らせたが実物を見ても心踊るな」

 

 

しかしこのツリーハウスは木の上に建てられ一見不便そうだが身を守る術でもある。家へと続く入り口は一つしかないので防犯対策も容易であり、さらに上から物を投げたりと攻撃もし易い。一つ弱点をあげるとすれば火災に弱いのだが生木に建ててある為初期なら消火も可能だ。

 

 

異国の文化に心を踊らせながら進んでゆくとようやく十三議会の近くまで来る事ができた。

 

 

「本当にお祭りがあるのですね」

 

「みたいだな」

 

 

あの獣人が言っていた事は本当だったようで十三議会に近づくと屋台や晴れやかな服を着た住民達の姿が多く見えてきた。

 

 

「しかし好都合だな。あれに紛れて進む事ができる」

 

「人を隠すのなら人の中、ですね」

 

「それと熱風は止めてくれ。人混みで熱風を使えば違和感になる」

 

「分かりました。もし、気付かれたらどうしましょう?」

 

「一匹残らずだ」

 

 

熱風を解き俺たちは何食わぬ顔で祭りへと混ざり込んでゆく。これだけ人が居て料理の匂いも混ざり鼻も効かないだろうと。

 

 

俺の推測は的中し祭り会場に混ざると俺たちに不審な目を向ける人はおらず堂々と道を進む事ができていた。時折り地図で調べると十三議会まではあと少しだ。

 

 

「あの建物がそうでしょうか?」

 

「だろうな。でけー建物だ」

 

 

少し進むと何本と重なり生える大樹の上に建てられた大きな建物が見えてきた。地図で照らし合わせてもあの建物が十三議会で間違いないだろう。

 

 

「そこも木の上に建てられているのですね」

 

「みたいだな、もう少し近づこう」

 

 

人混みの中を歩きようやく抜けると目と鼻の先に目的地である十三議会が見える。遠くから見ても巨大な建物は間近で見るとその迫力に圧倒されてしまうほど。

 

 

「アバリス。あの建物に熱風は送れるか?」

 

「可能です。どの辺りに熱風を送れば良いでしょう?」

 

「木の葉へ向かってだ。しかしここだと人の目に付く。場所を探すぞ」

 

 

周囲に視線を送りその後人混みから抜け出し俺たちは十三議会を時計回りに回ってゆくと裏手に人の気配が無い空き地を見つけた。

 

 

「よし、ここにするか。頼むぞアバリス」

 

「分かりました。私に霊装支配されたパズズの熱風、その本領をお見せします」

 

「葉に満遍なく熱風を当ててくれ。乾かすようにな」

 

 

アバリスに指示を出すと途端に雰囲気が変わった。穏やかな表情は凛と張り目付きは獲物を狙う悪魔のよう。

 

そしてアバリスの近くに居れないほどに熱を放ち十三議会に向け熱風を放つ。それを見ながら煙草に火を付けた。

 

 

瞬間、何かの気配を感じ抜刀し後方を向き振り下ろされている一閃と鍔迫り合う。

 

 

「村の様子が変だったので見回りをして正解でしたね。そこに居るのはアバリス、、それならお前は」

 

「どうも、悪魔人Bです!」

 

 

そいつは剣を押し勢いを付けるとバク転をしながら下り剣を向けた。桃髪のポニーテールに白銀の甲冑の女騎士、アロンダイト・獣刻・ユニコーンか。

 

 

「我が国へ何用でしょうか。いえ、問う必要はありませんね」

 

「あぁ、問われても簡単に話すと思うか?」

 

「侵入者は捕えエドゥーへ連行致します。アロンダイト参る!」

 

「マスターっ!アロンダイトの相手はこの私がっ!」

 

「お前は黙って風を送れ!いいか?俺はこんな女騎士、剣を使わずともこの、咥えている煙草があれば勝てるんだよ!」

 

「ぬかせ!」

 

 

一瞬目を離した隙にアロンダイトは俺の目の前に立ち剣を振るう。それを回避し反撃の一閃。

 

 

「剣は使わないのでは無かったのですか?」

 

「身を守るために剣は必要だろ。それとも丸腰じゃないとビビっちまうか?」

 

「本当に減らない口ですね」

 

「獣ってのは強い相手にはビビるからな。ユニコーンだかポップコーンだが知らんが俺が手懐けて馬場に放り込んでやる」

 

 

チラッとアバリスの方を見ると熱風を送り続け生い茂っていた葉は枯れ茶色く色付く。

 

 

「エドゥーへ連行すると言いましたがこの場で殺します。覚悟!」

 

「それはアロンちゃんが勝ったらだろ?そうだな、俺が勝ったらお前はケイリオスリオンへ連れて帰る。んで、お前の処女膜ぶち抜いて俺の子を孕ませる。孕ませるまで種付けしてやる!」

 

「「なっ!!」」

 

 

俺の発言に2人が同時にドン引きした顔で俺を見た。しかし俺は止まらない。

 

 

「ユニコーンってのはな、処女にしか懐かない獣だ、そんなもんを獣刻されたアロンちゃんは処女だ。これは確定している!俺は処女を自分好みにするのが好きでね!あぁ、楽しみだよ!処女散らせると同時に孕ませるのはよっ!!くっころは大好物さ!」

 

 

俺の発言により軽蔑する視線を二つ感じる。完全に軽蔑されている。だが、それで良いんだ。

 

 

「殺す!我が国の敵、いいえ、全世界の女性の為に私はお前を殺すっ!!」

 

「おっと、俺に向かうよりもっと行かなくては行けない場所がお前にはあるぜ」

 

「何を…」

 

 

俺は咥えていた煙草を指で弾きアバリスが放つ熱風へと乗せた。熱風に舞い上がり煙草は枯れた葉へと飛び火を燻らせる。

 

 

「俺に構ってる間に勝利は決まってたんだよ。アバリス、決め台詞を言ってやれ」

 

「聞こえていますよね、この熱風に煽られ燃え盛る炎の轟音がっ!!」

 

 

指を刺す方を見れば燻った火は熱風により酸素を取り込み火炎となり十三議会を焼き尽くそうとする。

 

その悲惨ともいえる光景にアロンダイトの顔はみるみる青ざめてゆく。

 

 

「さぁ、どうするアロンちゃん?このまま俺たちと戦うか今頃クーラーの下で火災に気が付いてない十三議会に行くか。好きな方を選べ!」

 

「くっ、、!」

 

「逃げるお前を背後から襲おうだなんて考えていないぜ?俺は悪魔だが祖国を愛する気持ちに国境は無いと思っている。選べ!このまま国の要を焼かれるか、騎士として立ち向かうか。答えは二つに一つだ!!」

 

 

唇を噛み締めながら何度も俺と議会を見比べ、やがてアロンダイトは剣を納め背を向けた。

 

 

「お前は必ず私が殺す」

 

「待ってるぜ。それまで処女でいろよ」

 

 

走り出したアロンダイトへ軽口を叩いた。そして、次には叫んだ。

 

 

「やめろヤグ!!」

 

 

アロンダイトが走り抜けた木々の間で透明な何かが動きそれはジワり姿を表した。

 

 

「もぉ、なんで止めたの!せっかくヤグが手柄を立てようとしたのに」

 

「あいつは自国の為に走ったんだ。保身の為に走るのなら俺は止めなかったよ」

 

「かんじわる〜い。どっちも一緒だよ!」

 

「や、ヤグルシさん…?どうしてここに?」

 

「どーせ皇帝の差金だろ、俺たちの監査役か討ち損じのフォローだ」

 

「せいか〜い♪ヤグは皇帝に言われて跡を付けて来てたんだ♪万が一の為にって、皇帝らしいよね」

 

「それじゃあ報告に行く手間が省けたな。俺たちの戦果を皇帝に伝えておいてくれ。十三議会はしっかり燃やしておいたってな」

 

「それはダメだよ。ヤグにはまだやる事があるから、ちゃんと自分で皇帝に報告しておいてね」

 

「分かったよ。アバリス、帰るか」

 

「はい。その前に少しだけお時間を貰っても良いでしょうか…?」

 

 

アバリスの問いに頷くと燃え盛る十三議会へと深く頭を下げそれから俺の方へと来た。きっと彼女なりの慰霊の気持ちの現れなのだろう。

 

その姿を見て俺も一度だけ会釈を。

 

 

 

帰り道に見た光景は地獄そのものだった。十三議会の火災は燃え広がりグラヒハイトまで火の手が回りついさっきまで祭りを楽しんでいた奴らは慌てふためき、逃げる者、消火活動をする者、ただ泣き叫ぶ者。

 

楽しかった日常は悪魔の手により地獄に変わり果てた。

 

そして騒ぎに紛れヤグルシが暗躍する。ヤグルシに霊装支配された悪魔はバエル、その能力は透明化。不可視の悪魔が斧を振るい、祭りは血祭りへと変わる。

 

 

地獄絵図の方がマシな光景から目を背け俺たちは入ってきた関所に向かい歩んでいた。

 

グラヒハイトからしばらく歩いたというのにまだ風に乗り血生臭い臭いが鼻に付き微かに悲鳴が聞こえる。

 

 

「さて、帰ったら飯だな。携帯食料は食った気にならん」

 

「そう、ですね…その前にお風呂に入りたいです」

 

 

全身にかいた汗は身体をベタつかせる。アバリスの言う通り早いところ汗も流したい。

 

 

「どうやらそうはいかねーみたいだな」

 

 

視界に関所が見えて来た頃、後方より大勢が走る音が聞こえ振り返るとトレイセーマ兵の姿が。

 

 

「おいおい、敵兵のお見送りにしては随分と大所帯だな」

 

「黙れケイリオスリオンの悪魔め!十三議会に火を放ち住民を皆殺しにした罪はこの場で断罪する!」

 

「裁判すっ飛ばしていきなり死刑とはこの国の司法はどうなってるんだ?だが、その方が俺たちにとっても都合が良い。アバリス!」

 

「はい、準備はできています…っ!」

 

「1匹残らずだ」

 

 

俺の指示によりアバリスは矢を放つ。風を切り1人の兵士へと向かう矢は当たる直前に弾かれ、そこには桃色のポニーテールが揺れる。

 

 

「識別番号A02、アロンダイト戦列に加わります」

 

 

そいつは自身の事を識別番号とか言いながら俺たちに向かい剣を向けた。

 

 

「マスターは下がって下さい!アロンダイトは私が討ちます!」

 

「いや、お前の相手はあいつだ」

 

 

トレイセーマ兵の間から姿を見せたもう1人の少女。栗色のショートカットに着物のような服着た可愛らしい少女。だが、両目を塞ぐ様に包帯が巻かれておりただの兵士ではないと思わせる。

 

 

「あれは…梓弓、、?」

 

「知り合いか?」

 

「いえ、梓弓も斬ル姫です。何を霊装支配されているかは分かりませんが…」

 

 

俺たちが見ている間にトレイセーマ兵達は2人の斬ル姫を先頭に隊列を組んだ。

 

アロンダイトに15人、梓弓に15人。

 

 

「アバリスは梓弓を頼む。俺はアロンダイトを討つ」

 

「…分かりました。どうかご無事で」

 

「お前もな、後で関所に集合だ」

 

 

一瞬目と目を合わせ頷きあいアバリスは梓弓へと向かう。

 

 

「さて、アロンちゃん。その様子だとまだ処女みたいだが俺に抱かれに来たんだな?」

 

「黙れ!我が国への非道の限りを尽くしたお前を討ち同胞への弔いにする為に私はお前を殺す!」

 

「やれ、識別番号A02!本来なら敵前逃亡をしたお前はエドゥー送りにするところだがあいつを殺せばお前の失態は挽回されエドゥー送りはやめてやろう」

 

 

部隊の長と思われる兵が叫ぶとアロンダイトは身を震わせ、顔を振り俺を見据えた。

 

 

「アロンダイト、参る!」

 

 

そして両手で剣を持ち俺の元へと駆け、一閃を振り下ろす。

 

 

「っ!!」

 

 

アロンダイトの一閃を正面から受け止め重なった剣から重たい金属音と火花が散り身体が後方へと下がった。

 

身体は鍛えているつもりであったが流石斬ル姫、完全に力は俺を上回っている。

 

 

「良い一撃だ。一発で手が痺れたのは先生以来だぜ」

 

「黙れっ!!」

 

 

鍔迫り合う剣は力尽くで押し切られ上へと跳ね上がりがら空きとなった腹部への一閃が迫る。

 

 

「あぶねぇ!」

 

 

素早く剣を縦に構え一閃を防ぎ後方へと飛び、迫るアロンダイトと再び鍔迫り合う。

 

 

「流石だ、強いっ!」

 

 

さっき剣を合わせた時よりも力は増し、両手で持つ剣は腕ごと押され両刃が眼前へと迫る。

 

 

「このまま自らの刃で押し斬る!覚悟!」

 

 

重なる剣の向こう側には目を血走らせ鬼の形相のアロンダイト。

 

剣は押され遂に俺の剣の刃は自らの額に当たり鋭い痛みが走り勝利を確信した笑みを浮かべた。

 

 

「ぐっ!」

 

「甘いぜアロンちゃん!」

 

 

腹へ膝蹴りを入れ怯んだ腹を前蹴り押し除け、一閃。それは切先が僅かに鎧を掠めたのみでアロンダイトは後方へと飛び退き、お互いが睨み合いながら呼吸を整える。

 

 

「早くそいつを殺せ!役立たずが!」

 

「エドゥー送りにするぞ!」

 

「こっちはお前に賭けているんだ!」

 

 

そんなアロンダイトへ向かい兵士からの罵声が飛ぶ。

 

 

「んだあいつらは、、」

 

「大方、この勝負の結末で賭けているのでしょう」

 

「はぁ?」

 

 

意味が分からない、祖国の為に戦う騎士の勝敗を賭け事に使う意味が。それに奴等は前線をアロンダイトに任せて1人たりとも戦闘に加わろうともしない。複数で攻めればもう決着は付いているはずなのに。

 

 

「アロンちゃん、いや、アロン、、アロンダイト。お前はそれで良いのか!騎士として国の為に走った自分を貶され挙句お前の命を賭けに使われてんだぞ!!」

 

「私は・・構いません。どうであろうと私は祖国の為に戦う、それが私の騎士道。恥ずべき事は何もありません、、!」

 

「あぁそうだろうな!お前は立派な騎士だ!だから俺はお前を蔑ろにするあいつらが許せねぇ!獣は所詮畜生だがあいつらは獣以下だ。兵士の風上にも置けねぇようなゴミ共め!」

 

 

剣を構え直し目はアロンダイトから騒ぐ兵士へと向く。そして一歩、また一歩と兵士へと向かい歩む。

 

 

「何をしようというのですか!」

 

「あいつらをぶっ殺す。目障りなんだよ、祖国の為に戦えないゴミが」

 

 

遂に俺はアロンダイトの横を通り過ぎアロンダイトへ背を向け兵士へと歩む。

 

 

「待って下さい!お前の相手はこの私!あの人達には指一本触れさせません!!」

 

「あぁ?やってみろよ」

 

 

アロンダイトを向くと迷う目が俺へと向けられ、一閃が振るわれ鍔迫り合い剣と剣を挟み睨み合う。

 

 

「この国を守るのが私の騎士道っ!絶対に私は負ける訳にはいかないのです!!」

 

「ならお前もぶっ殺してゴミの骸に添えてやるよ!」

 

 

叫び交わる剣を押し除け踏み出しながらの一閃。それは空を斬った。

 

 

「甘いっ!!」

 

 

完全に伸び切った両手。視線は左から迫る剣を見た。

 

 

「っ!」

 

 

腹部を狙った一閃は瞬時に腰のフォルダーから取り出したナイフにより防がれ火花を残し剣は通り過ぎた。

 

 

「第二ラウンドといこうぜ」

 

 

大剣を大地に突き刺しナイフを逆刃に持つ。

 

 

「その身のこなし、、それが得手のようですね」

 

「あぁ、先生に一発入れたのもこのナイフだ。お前に真打ちを見せてやる」

 

 

ナイフを構え腰を落としアロンダイトの動きを見据える。リーチでは圧倒的にナイフが不利だが得手を手にし負ける気はしない。

 

 

「では、最後の戦いを始めましょうか。覚悟!」

 

 

言葉と共に迫り剣を振り下ろされその刃はナイフの上を滑り軌道を逸らす。

 

逸らされた剣が振られる前に懐へと潜り込みアロンダイトを斬りつける。

 

 

「っ!」

 

 

一度斬りつけ後方へと飛び距離を取るとアロンダイトの脇腹から一筋の血が流れ落ちるのが見えた。

 

 

「なるほど。しかし間合いに入らせなければ良いだけの事!」

 

 

再びアロンダイトが迫る、片手剣を両手に持ちながら。

 

その意味を俺は知る事となった。

 

 

振られた剣を逸らし再び斬りつけようと懐に潜った瞬間、腕を縮め剣の柄が背中を刺す。たまらず叫ぶと前蹴りをくらい身体が宙へと浮き。一閃が迫る。

 

 

「ちっ!!」

 

 

着地と同時に大地を蹴り後方へと飛ぶが一呼吸間に合わず切先が腹部を掠め右へと走る。痛みを堪え5歩下がりナイフを向けた。

 

 

「流石だ。もうナイフの弱点を見切るとは」

 

「同じ轍は踏みません。それはあなたも同じでしょう」

 

「へっ敵国の騎士なのが惜しいぐらいだ」

 

 

一つ仕込みをして俺はアロンダイトに向かい駆ける。俺を迎え撃つ為に繰り出された剣を躱し突き刺した剣の元へと走る。

 

 

「剣を取るつもりでしょうがそうはさせません!」

 

 

逃げる俺を追いアロンダイトは走り後一歩で追い付くというところで足を止めた。

 

 

「これはっ!!」

 

「十徳ナイフだ。仕込ませてもらったぜ」

 

 

アロンダイトの右足の甲から顔を出すのは地面に落とされ刄が上を向いた十徳ナイフ。

 

右足から走る痛みに動きを止めた瞬間にナイフはアロンダイトの右肩関節へと深々と刺さり絶叫と共に手に持つ剣を大地へと落とした。

 

 

「ここを通らせてもらう」

 

 

大地に突き刺さった大剣を引き抜き俺はアロンダイトが負け、狼狽える兵士達へと駆け出した。

 

 

「クソ共が」

 

 

屠殺の跡には悪魔が1人立つ。

 

 

「アロンダイト。お前俺の国へ来い。お前がこんな奴等の下で剣を振るうと考えただけで反吐が出る」

 

「勧誘など一体何のつもりでしょうか」

 

「お前はトレイセーマには勿体無いって言ってんだよ!プラントだがプランターだが知らんがうちに来ればお前は必ず名を上げる。皇帝にも俺が説得をする。だからお前も悪魔の国に来い」

 

「私は、、」

 

 

アロンダイトへの勧誘は俺の本心だ。こんなクソみたいな国の為に戦う誇り高き騎士が俺は許せなかった。

 

 

「いえ、お断りします。どうであろうと私はこの国の騎士。愛する国の為に剣を振るう。ただそれだけです」

 

「そうか」

 

「ですが、最後にあなたと戦えて良かった。力は及びませんでしたが国の為では無く私は騎士として戦えた。騎士としての誇りを持ち戦う事ができました」

 

「・・・」

 

「もし、私がケイオスリオンの兵であったならあなたの部下としてこの身を捧げられたでしょう」

 

「あぁ」

 

「さようなら。いつかまた会えた時は、次は私が勝ちます」

 

 

騎士は左手で剣を掴むと刃を支えに立ち上がり俺に剣を向け、闘志を魅せた。その姿は誇り高き1人の騎士。

 

 

「アロンダイト、、参るっ!!」

 

 

大剣が騎士の胸を貫いた。その顔は穏やかで晴々としていて。

 

崩れ落ちた騎士に向かい十字を切り煙草を取り出すと口に咥え火を灯した。

 

風に吹かれる事なく立ち昇る煙が目に染み、涙が止まらなくなる。

 

 

 

 

 

 

 

………………………………………………………………

 

 

 

 

 

 

「逃すな!必ず殺せ!」

 

 

梓弓を先頭にした兵は弓を放ち15の矢が空を裂きながら降り注ぐ。

 

 

「パズズの熱風よ!吹き荒れよ!」

 

 

注ぐ矢を熱風の上昇気流に乗せ空へと逃しながら荒野を駆け木を茂らせる森へと逃げ込んだ。

 

一本の木に身を隠しながら反撃の矢を放ち1人の兵士を撃ち抜く。

 

 

「伏せろ!」

 

 

号令と共に残りの兵士は地面に伏せ硬直状態へと。この状態でも梓弓は伏せる事なくただ大地に立つのみ。それはあまりにも不自然な光景。

 

何か策がある。そう思わせるのには充分。

 

 

「識別番号A01!早くあいつを見ろ!」

 

「おい黙れ!」

 

 

緊迫する状況で叫ぶ兵士に兵士が叫んだ。『見る』それは包帯で隠された瞳を意味するのだろう。しかし梓弓に霊装支配されている幻獣が何か分からない以上迂闊に攻める訳にはいかない。

 

木に姿を隠しながら一本の矢を構え矢に疫病を纏わせ兵士へと向かい打つ。

 

 

「ぐおっ!!」

 

 

狙い通り放った矢は兵士の肩へと当たり悲痛に叫び患部を押さえ込む。

 

 

「大丈夫か!?」

 

「傷は浅いぞ!」

 

 

打たれた兵士を前線から下げる為に2人の兵士が向かい奥へと引きずってゆく。

 

 

「ぐごごごごごご」

 

 

そして、矢に纏った疫病が感染し3人の兵士が命を落とす。15人の兵士のうち4人が死んだ。だが、依然として兵士の士気は高いまま。

 

よほど梓弓に信頼を置いているのか。

 

 

「識別番号A01!敵はどこに隠れている!?」

 

「1時の方向、あの木の裏側に」

 

「打てっ!!」

 

「!?」

 

 

兵士とはいえ私の姿は見えていない。そして、梓弓は目を塞いでいるにも関わらず私の位置を正確に把握し兵士へと伝えた。

 

飛来する矢から身を守る為に木の影に身体を隠し矢が止むと同時に移動を開始する。

 

 

「動きました。12時、11時、11時半の方向」

 

 

草木に身を隠しながら移動をしているにも関わらず梓弓は正確に位置を把握し兵士へと伝達する。

 

『視えている』完全に私の動きが。風はこちらに向いている、匂いではないし、感知が早すぎる。なら一体どうやって私の動きを捉えている?

 

木影から覗き考えている間にも兵士は森へと入り込み戦う条件は同じとなる。お互いが木に身を隠し木影から狙撃し合うゲリラ戦へ。

 

ならば。

 

 

「パズズの熱風よ!」

 

 

叫び霊装支配された悪魔、パズズの熱風を起こし森に熱風の嵐が吹き荒らす。

 

敵が進む森の草木は枯れ、葉は熱風に飛ばされ身を隠す物は枯れ木のみに。

 

 

「そこっ!」

 

 

隠す草木を失い姿を現した兵士を2人打ち残りは9人。

 

 

「出てこい卑怯もぐぁ!!」

 

 

勇む兵士を打ち残り8人となりさらに森の奥へと逃げ込んでゆく。

 

 

「ここは私の間合い。残りの兵は下がって下さい」

 

「頼んだぞ識別番号A01!退却!退却っ!巻き込まれるぞ!」

 

 

見ているうちに兵士は退却し森に残ったのは私と梓弓の2人。木影から覗いていると梓弓は目に巻かれた包帯を取り塞がれていた両目を開いた。

 

 

「!!」

 

 

それは見ているだけで身がすくんでしまいそうな冷たい黄金の瞳。爬虫類の様に眼光は鋭く獲物を狙う様に視線が動き、やがて、目が合った。

 

 

「見ましたね、私の瞳を」

 

 

その瞬間、背筋に冷たい汗が滴るのを感じた。

 

 

「この瞳は私に獣刻されたメドゥーサーの瞳。動けますか?」

 

「身体が、、、!」

 

 

木影から梓弓を見たままの姿で私の身体は硬直し指一つとして動かす事ができなくなっていた。

 

そして、木々に隠れていたのに姿が見つけられた理由を知った、梓弓は獣刻されたメドゥーサ、蛇の様に体温で私を探し出していた。

 

見ている内に梓弓は弓を引き一本の矢を放つ。それは頭に被るフードを打ち抜き木に射止めた。

 

 

「これでアバリス、お前は動けません。迫る死の恐怖に怯えながら息絶えるといい」

 

 

一点の視界から梓弓は姿を消した。そして、耳には枯れた草木を掻き分け移動する音だけがはっきりと聞こえる。着実に、確実にこちらに近づいて来る足音が。

 

大口を開けた蛇を前にした蛙はこんな気持ちなのだろう。死の恐怖に足がすくみ捕食者が迫るにも関わらず動けずにいるその気持ちが。

 

森を動く足音と自分の呼吸の音だけがひどく耳に触る。

 

 

「・・・」

 

 

死、それは全ての生き物が怯え、誰もが克服する事ができない恐怖。生き物は産まれた瞬間から死という終着点へと向かい生きている。

 

どれ程に徳を積もうとお金を積もうと決して逃げる事ができない命の終着点、死。

 

死を私にもたらす者は背後に居た。

 

 

「さようなら。お前の死が我が国の弔いになりますように」

 

 

弦が引かれ張り詰める音が響く。その音は確実に仕留められるよう私の真後ろから響く。

 

 

「なっ!?」

 

 

放たれた矢はパズズにより吹き荒れる風に流されて頬を掠め飛んで行った。

 

 

「なぜ動く事ができるのですか!?死の恐怖に固まったはずでは!」

 

「はい、最初はそうでした。死の恐怖は私の身体を硬直させていました。ですが、私は‥できています!ケイオスリオンの斬ル姫として産まれた時から、、!マスターと共にこの国に来た時から‥!!」

 

『祖国の為に死ぬ覚悟が‥っ!!』

 

 

フードを射止める矢を引き抜き飛び上がると気流を起こし空高く舞い上がる。

 

 

「その心意気、見事です!ならば、私はトレイセーマの為、命を賭してお前を討ちます!」

 

「勝負です、、!梓弓っ!!」

 

 

上空を滑空しながら弓を引き絞り梓弓を探す。無防備な空中とはいえ森の上、視界は効かずお互い矢を放てば居場所を伝える事となる。

 

そして、熱風により辺りの気温を上昇させサーモグラフィーを狂わせ感覚による探知を防ぎながら森へと落ちてゆく。

 

 

「うまく探知を躱しましたが葉っぱの揺れでお前の居場所は分かります!」

 

 

木々を揺らしながら落ち葉を揺らす音が響く。

 

 

「死ねっ!」

 

 

落下地点を正確に把握しその場所へ一本の矢が飛来した。

 

 

「今のが外れた!?」

 

「私には尻尾があります。霊装支配されたパズズの尻尾が、、!」

 

 

尻尾を木に巻き付け宙吊りとなりながら弓を引き絞り一本の矢を放つ。

 

 

「聞こえていますよね‥!この、風鳴りの轟音が‥っ!」

 

 

風を纏う矢は寸分狂わずに梓弓の喉元を撃ち抜き風穴を開けた。

 

 

「私を甘く見ていましたね。これでも私はケイオスリオンの斬ル姫ですから」

 

 

着地し立ったまま息絶える梓弓に背を向けた瞬間、左腕に鋭い痛みが走った。

 

 

「っ!」

 

 

思わず悲鳴を上げ、飛び退き木々の影に身を潜めるとそこには地面に倒れてゆく姿があった。

 

 

「敵ながら恐ろしい、、しかし、見事でした」

 

 

死に際に放たれ腕に刺さった矢を引き抜き亡骸へと深々と頭を下げ来た道を歩いてゆく。

 

 

 

 

 

 

 

………………………………………………………………

 

 

 

 

 

煙草を吸い終わりアバリスとの待ち合わせ場所の関所へと向かうと建物の日陰に居るアバリスの姿を見つけ手を上げると俺の方へと走り寄って来た。

 

 

「マスターっ!ご無事で何よりです‥!」

 

「おう、お前もな!よし、帰るか俺たちの国へ」

 

「はいっ!」

 

 

2人並び堂々とトレイセーマから出国ししばらく歩いた頃、ふと振り返りトレイセーマ共和国を眺めた。

 

十三議会に付けられた火は消火されたようで煙の姿は無く爽快な青空の下に青々と茂る木々が見える。そして、この国での出来事が次々と思い出されてゆく。

 

 

「どうかしましたか?」

 

「いや、なんでもないよ」

 

 

視線を前へと戻し振り返る事なく祖国へと帰ってゆく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………………………………………………………

 

 

 

 

 

 

それから俺たちは祖国へと帰り戦果の報告を皇帝へとしていた。

 

 

 

「って訳だ。十三議会はヴェノム・ハザード(悪意の災害)でしっかりと焼け落ちたぜ。それと斬ル姫を2人潰した」

 

「えぇ、ヤグルシからも報告は受けているし煙はここからでも見える程に立ち昇っていたわ。上出来ね」

 

「そいつはどーも。んで、約束だが」

 

「もちろんよ、アバリス」

 

「はい、何でしょうか?」

 

「この男はお前の事がひどく気に入ったみたいなの。今回の対価としてお前をこの男に差し出す約束をしたのだけど、お前の意思次第では拒否もできるわ」

 

「それは本当ですか?マスター」

 

「あぁ、アバリス。お前が良ければ俺に付いてくれないか?もちろん武器ではなく相棒としてだ」

 

 

しっかりとアバリスを見据え告げるとやんわりとした笑顔を浮かべながら目に涙を溜めていた。

 

 

「返事はお家でしてもよろしいでしょうか…?」

 

「あぁ」

 

「それとお前達には休暇をあげるわ。その代わり呼び出しには応じる様、肝に命じておきなさい」

 

「そりゃどーも」

 

 

 

…………………………………………………………

 

 

 

 

皇帝との会話を切り上げ俺たちは家へと帰って来ていた。

 

 

「お前先に風呂入れよ」

 

「マスターがお先に入って下さい」

 

「お前の方が疲れてるだろ。俺は良いから先入りな」

 

「では‥お言葉に甘えさせて頂きますね」

 

 

浴室へと向かっていったアバリスを見送りソファーへとどっかりと座り込むと煙草に火を付けトレイセーマでの出来事を思い返していた。

 

人智を軽々と超える斬ル姫との戦い。獣とは所詮畜生だと思っていたが誇り高き生き様を見せられ俺の考えは少しだが変わった。

 

それとアバリス。普段は一歩引いているが、やる時はやる芯がある女だ。流石うちの斬ル姫といったところか。

 

 

「ふぅ、さっぱりしました。お先にありがとうございます」

 

「おっし、交代だな」

 

 

熱風で乾かした為か癖が付いた髪の毛をほわほわさせながら俺へと笑顔を向けてくれたアバリスと交代で風呂へ。

 

 

 

「やっぱ風呂入ると良いな。生き返った気分だ」

 

「もうすぐご飯ができますので少し待っていて下さいね」

 

 

お言葉に甘えソファーに座り煙草に火を付け料理を行うアバリスの後ろ姿を見ていた。灰色のスエットを着てキッチンを忙しなく動き回る後ろ姿を。アバリスがうちに来た時とは違いもう俺がアバリスを見失う事はない。

 

 

「どうぞ、召し上がって下さい」

 

「おっ、さんきゅー」

 

 

煙草を灰皿へと押し込みアバリスが待つテーブルへ。

 

 

 

 

 

 

…………………………………………………

 

 

 

 

夕食を頂き片付けを終え俺たちはささやかに一杯やっていた。かち割った氷を入れたコップに酒を注ぎカツンとぶつけ合い口へと運ぶ。

 

 

「ぷはぁーうめぇ。こうやって戦場から帰った後の酒が一番うめぇわ」

 

「ふふ、そうですね。暑い…」

 

 

一口飲んだだけで顔を真っ赤にし暑そうに顔を手で仰ぐ。

 

 

「それで、お前の答えは?まだ貰ってないのだが」

 

 

横目でアバリスを見るとコップを起き姿勢を正し俺の方を向いた。

 

 

「はい…こんな私でよろしいのなら…側に…おいて下さい…」

 

 

酒で赤い顔をさらに赤くして俺にそう伝えると俺の肩に寄りかかってきた。

 

 

「ほんと可愛いなお前」

 

 

髪をわしゃわしゃと撫でると心地良さそうに目を閉じ身を預け手を離すと俺を見上げた。

 

 

「そうだ。あの…マスターがあの時言っていた事は本心、なのですか…?」

 

「あの時って?」

 

「アロンダイトに言っていた事です…処女を、その…マスターの好みにするのが好きと言われてましたが…」

 

 

見上げる瞳はかなりの不安を感じる。

 

 

「あぁーあれは時間稼ぎと言うかハッタリというかなんていうかだ。まぁ気にすんな」

 

「では…マスターはどのような女性が好みなのですか…?」

 

「そうだなー、お前は俺の好みだぞ?手に収まる大きさの胸とか揉みやすい尻とか」

 

「あの…私が聞いたのは…身体の事ではなく…内面の、ことなの…ですが…」

 

「内面もだ。料理も美味いし家事もできる。気の利く良い女だ」

 

「嬉しい…」

 

「お前はどんな男が好みなんだ?」

 

 

そう訪ね肩に寄りかかるアバリスを見ると目が合った。その瞬間、そこ知れぬ淫靡さを感じ一度目を逸らしまたアバリスの顔を見ると普段と変わらない穏やかな笑顔だった。

 

 

「どうしましたか?」

 

「いや、何でもない。疲れたし寝るか」

 

「そうですね」

 

 

コップに残った酒を飲み干しベッドに寝転がるとアバリスは俺の前に寝転がり腕を枕にしていた。

 

 

「おやすみ」

 

「おやすみなさいマスター」

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、俺は妙な寝苦しさを感じていた。例えるなら全身を縛られている様な、身体の自由が封じられているような寝苦しさ。

 

アバリスの寝相が悪いのかと思い目を開けると悪魔と目が合った。

 

 

「目を覚ましてしまったのですね」

 

 

開けた視界に映ったのは窓から差し込む月明かりに照らされたアバリスの裸体。腰の上に座り俺を見下ろすように微笑む。

 

 

「アバリス・・・?」

 

「私、ずっと我慢をしていたのです。マスターが私の事を道具ではなく、相方と見ていると言ってくれた時から。私を選んでくれた事が嬉しくて。ごめんなさい…もう感情を…我慢できないの…です」

 

 

アバリスの言いたい事は理解したのだが俺が着ていたパジャマは脱がされ手足は紐か何かでベッドに結ばれている。状況は理解できない。

 

 

「何をする気だ」

 

「マスターは寝ていて下さい…私がしますので…」

 

 

アバリスが屈むと髪が垂れ胸へとかかる。そんなくすぐったさを感じると暖かいものを感じた。

 

 

「ちゅ…ちゅるるる…ちゅっ……」

 

 

見るとアバリスが俺の乳首を舐めている。舌先をつっーっと滑らせねっとりと舌を乳首に絡ませて。思わず呻いた。

 

 

「良かった…気持ち良いのですね‥」

 

 

目を閉じ舌先だけで乳首を舐め転がす姿を眺めていると口に含み吸いながら舌でつつかれまた声がもれた。

 

 

「マスターのが当たっています…興奮、してくれているのですね…」

 

 

やっと口を離し俺の顔を見た。微笑んでいるのだが目は完全にキマっている。

 

 

「アバリス…」

 

「大丈夫です…行為が終わったら…きっと元の私に…戻っていますので…」

 

 

そう言うと再び乳首を口に含んだ。そして舐めながら右手を男根へと伸ばす。

 

 

「すごく…硬いです…嬉しい…」

 

 

ゆっくりと手で上下に扱きながら乳首を舐められて。未だ状況は理解しようとするのだが穏やかな快感に思考がまとまらない。

 

 

「手がぬるぬるして…います…こんなにも我慢汁が…」

 

 

そう言って男根を握っていた手を口へと運び我慢汁が付いた指を俺の目の前でしゃぶり我慢汁を舐め取り流し目を送る。

 

 

「ちゅ、ちゅぢゅるる♡少し、しょっぱくて美味しいです……♡」

 

 

そう言ってまた男根へと手を伸ばし我慢汁を付けると俺の目の前でしゃぶり舐め取る。

 

 

「そろそろ…直接…舐めますね」

 

 

言葉の後、アバリスは腰の上から退きベッドの下へと行った。そして男根へ顔を近づけてゆき、手で優しく握ると幹へと舌を伸ばした。

 

 

そこには目を閉じ男根に浮き出る血管、皺に丁寧に舌を這わせる姿。鈴口から垂れ落ちた我慢汁を舐め取り血管に舌先を這わせ皺の数を数える様に舐め。射精する快感を与えずただ気持ち良くさせる舌技に男根は今までにない程に張り詰める。

 

 

「アバリス・・・」

 

「はい…」

 

 

ようやく男根から舌を離すと舌なめずりをし、ゆっくりと俺の上へと這い登り男根の上に跨った。

 

 

アバリスが挿れようとする時、ぐっしょりと濡れた秘部が見えそこに男根が咥え込まれていった。

 

 

「んんっ…♡凄く…大きいです……♡」

 

 

根本まで咥え込むと少しの間硬直しやっと俺を見下ろした。

 

 

「奥まで…届いています…マスターに伝わります…でしょうか?」

 

「あぁ、、」

 

「マスターのおちんちんが…中で跳ねているのが分かります…でも…まだ我慢して下さいね…?」

 

 

そう言ってアバリスは腰を引き抜き鈴口のみを膣に残した。その行動の意味が分からず見ていると何かが男根に巻きつくのが見えた。

 

 

「なんだそれは・・」

 

「前にお伝えした尻尾です…この尻尾がある限りマスターは射精…する事はできません」

 

 

唖然とする俺をよそにアバリスは腰の動きを早めてゆく。俺を見つめ快感を得るためだけに。

 

 

「気持ち…良くて…っ♡腰が…止まりません…♡」

 

 

やや足を開き腰を振る姿を見ていた。流れる汗も、結合部から鳴る水音も気にもせず口をだらしなく開け快感に酔いしれる姿を。

 

 

「イっ…くっ…♡」

 

 

根本まで咥え込みアバリスは身を痙攣させ達した。それと同時に膣内も痙攣し射精へと導かれた。

 

しかし尻尾に縛られている男根は射精を行っているにもかかわらず精液は堰き止められただ空打ちする。

 

 

「一緒にイけたのですね…尻尾にマスターのおちんちんの…脈動を感じました…」

 

「マジで…尻尾を外せ…!」

 

「まだダメです…まだ我慢して下さいね…」

 

 

控えめな物言いだがアバリスは淫らに俺を見下ろす。そして俺はある事を思い出していた。

 

 

コイツの尻尾は2本ある事を。一本は巻き付いているがもう一本は‥?

 

 

「そろそろ…ですね。見えますかマスター…?」

 

 

アバリスが腰を上げると愛液に濡れた男根が見えた。その言葉の意味が分からずアバリスを見上げた。

 

 

「これだけ濡れていれば…慣れていなくても…這入りますよね」

 

「お前は何を……」

 

 

言いかけた言葉は男根を這うもう一本の尻尾を見て止まった。男根に付いた愛液を付けるように這う尻尾。色は黒く先端はうずらの卵程の大きさ。見ているうちに尻尾は愛液でてかてかと輝く。

 

それを見て一つの予感が浮かんだ。

 

 

「それはやめろ!!」

 

「気がついてしまったのですね…でも、もう遅いのです…」

 

 

アバリスの尻尾が俺の肛門へ入ろうと入り口をつつく。こんな得体の知れない物を受け入れたい訳も無く尻に力を入れ侵入を拒む。

 

 

「うぉっ、、!」

 

 

しかし愛液の滑りによりあっさりと侵入を許してしまった。

 

 

「あは♡マスターならこの尻尾の意味が分かります…よね?」

 

 

尻尾で体内を弄られ思考が騒つく。それでもこの尻尾の意味を微かに残る頭で考え思い付いた。

 

 

「ぐっ、、」

 

 

思い付いたと同時に尻尾はそこを刺激し、また呻いた。尻尾が刺激した場所は前立腺。

 

前立腺とは射精を促す器官である。ドライオーガズムという言葉を聞いた事がある人は多いと思うが簡単に言うとドライオーガズムは前立腺を刺激することによって引き起こされる射精を行わないが射精と同等の快感だ。

 

 

「中で跳ねてます…♡っ、、♡気持ち良いんですね♡」

 

 

この女はドライオーガズムを与えながら射精を行わせるという地獄の様な快感を与え俺を見下ろしている。

 

その快感を与えられている俺は意識を持ってかれてしまいそう。

 

 

「おま、、、っ!!マジで・・・・」

 

「マスターをこんなに…気持ち良くできるのは…私だけですからね…♡」

 

 

優しく囁くのだがこの言葉はもう聞こえていなかった。

 

 

「ではそろそろ…私の中にマスターの精液…注いで下さい…♡」

 

 

最後に前立腺を一撫でし尻尾は抜け、もう一度精液を堰き止め尻尾は解かれ。見上げると蕩けた顔のアバリス。

 

 

「っ!!」

 

 

ねっとりと絡む膣壁により射精へと導かれた。何度も堰き止められていた精液は蛇口を捻った様に膣内へと精液を注ぎ込む。

 

 

「あっ…♡すごい…♡たくさん出てます……♡」

 

 

全身を硬直させ子宮へと注がれる精液を堪能するアバリスを見た後意識はぷつりと切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

‥………………………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の昼頃にようやく目を覚ますとそこには今にも泣き出してしまいそうなアバリスの姿があった。

 

 

「本当にごめんなさいマスター…」

 

「・・・・で?どうしてあぁなった」

 

「それは…」

 

 

ポロポロと泣きながら説明をしてくれた。存在感の無いアバリスの存在を認知してくれる事が嬉しくてあの様な事に及んだそうで。感極まってってやつらしい。

 

 

「他の人に真似できない事をすればマスターは私だけを見てくれると思いまして…」

 

「あぁそうだな。騎乗位しながら前立腺攻めて一回の射精で精巣空っぽにできるのは千年王国の何処探してもお前ぐらいだよ!」

 

「怒ってます…怒っていますよね…」

 

「まぁ良いけどよ。せめて許可取ってからやれ」

 

「許可してくれますか…?」

 

「無理だな」

 

 

そんな話をしながらベッドから身体を起こすとやたらと気怠い。トレイセーマに行った疲労と昨日の疲労が混ざり最悪の気分だ。それでも今俺の目の前でおどおどしているこの女をどう犯すかで頭がいっぱいだ。

 

 

「とりあえず俺に逆レイプされる趣味は無いと言っておく。飯食うか」

 

「はいっ…準備はできています…」

 

 

その日1日アバリスはずっと挙動不審で常におどおどしていた。俺が何かをしていれば心配そうに物陰から見ていたり飯がいつもより美味かったり。完全に機嫌を取ろうとしているのが丸わかりだ。

 

しかし、この女、どう犯してやろうか。

 

 

そんな事を考えていたらあっという間に陽は落ちてしまい気が付けば夕食を食べ風呂上がりののんびりとした時間。

 

 

「……」

 

 

ソファーに隣同士に座り酒を飲んでいるのだかずっと不安そうな視線を感じる。

 

とりあえず俺が考えたプランはアバリスのアナル開発か拘束してバイブ入れて放置。

 

しかしアナルに興味はないしバイブは持っていない。さて、どうしたものか。

 

 

「ど…どうしましたか?…さっきから目が…怖いのですが…」

 

「ちょっと考え事してた。そろそろ寝るか」

 

 

コップに残った酒を飲み干しベッドへと行くとアバリスも後に続きベッドへと。

 

 

「さてアバリス」

 

「はい…」

 

「俺は結構昨晩の事根に持っているのだが」

 

「………はい」

 

「それで、痛いお仕置きと気持ち良いお仕置きがあるのだがどっちが良い?」

 

「えっと…それは…」

 

 

おどおどしながら返答を考え、やがて返答をくれた。

 

 

「気持ち良い方で…お願いします…」

 

 

そう言いながら俺を潤んだ瞳で見上げた。その表情は怯えた小動物の様だが、何処か期待しているよう。

 

 

「じゃあここ来なよ」

 

 

そう言ってベッドの上で壁を背に座りアバリスに前に座るようにと言う。

 

 

「し、失礼します…」

 

 

遠慮気味に座った背を抱き寄せると小さな悲鳴をあげながら俺の腕の中へと収まった。

 

抱きしめたアバリスの体温は高く背中越しでも聞こえる程に心臓が強く鼓動している。

 

 

「緊張してるのか」

 

「少し…」

 

「よく言うよ」

 

 

伸ばした両手はアバリスの乳房をゆっくりと揉みしだきスエット越しでも手のひらに柔らかさと温もりを感じる。

 

 

「ふぅ……んっ…」

 

「ほんと乳首弱いよな」

 

 

少し乳房を揉んだだけでスエットの上からも分かるほどに立っている乳首を撫でると吐息を漏らした。

 

 

「もっと?」

 

「………はいっ」

 

 

二つある尖る乳首を指で挟みくにくにと刺激するとアバリスはまた吐息を漏らした。

 

 

「やっ……あっ…」

 

「やならやめるぞ」

 

「いやでは……んっ…ありません…」

 

「じゃあなんだ?」

 

「もう少しだけ…強く…っ…」

 

 

指に僅かに力を入れ乳首を挟むとアバリスは喘ぎ、投げ出された両足を擦り合わせる。

 

 

「邪魔だな。脱がせるぞ」

 

 

スエットを引き抜くとスエットに引っ張られ髪が掻き上げられ火照った肌を晒す。

 

髪が垂れると肌は隠れたが妙な色気を感じる。

 

 

それに。

 

 

「んんん……っ♡」

 

 

直に触れる乳房は手に吸い付くように汗ばみ淡く色づく乳首は硬く尖り男を誘うよう。

 

 

「ほんとに…っ…ダメですっ…」

 

「お仕置きだからな。大人しくしてろよ」

 

 

そう言って乳首を摘むと短く喘いだ。

 

 

「ほんと敏感だよな」

 

「マスターに…っ…されているから…ん…です…」

 

「だからこんなに乳首立ててるんだ」

 

「んんっ…♡」

 

 

ふと疑問が湧いた。こいつはどんな顔して感じているのかと。背後からだと顔が見えない。

 

 

「ほら、寝転がれ」

 

 

そっとアバリスをベッドに寝かせ腰に跨り見下す。恥ずかしさで真っ赤になった顔を両手で隠しもじもじと両足を擦る姿。

 

 

「おっぱいは隠さないんだな」

 

「隠したら…触れませんよね…?」

 

 

こいつは人を欲情させるのが上手い。

 

 

「お前の尻尾はどうした」

 

「ありますけど…」

 

「ちょっとかせ」

 

 

そう言うと尻尾が2本下から這い出てきた。さて、この尻尾どうしてやろうか。

 

少し考えある事を思い付きニヤリとするとアバリスが目を晒すのが見えた。

 

 

「ひどいです…」

 

「良い姿だぞ」

 

 

俺が思い付いたのは尻尾でアバリスの両手を縛る事だった。今現在アバリスの両手は縛られ顔も胸も隠す事はできない。

 

それに白い肌に巻きつく黒い尻尾はやたらとエロい。

 

 

「あっ……やっ……♡」

 

 

そして乳房を揉むと目を閉じ半開きの口から吐息を漏らす。乳房に指がめり込む度に敏感に反応し声をあげる姿は理性を溶かす。

 

 

「あぁクソ、可愛いな」

 

 

尻尾に縛られ胸を好き放題にされ潤んだ瞳でこの先を期待するアバリスが可愛くて仕方ない。

 

ふと右手でズボン越しに股間を撫でるとぴくんと跳ねた。

 

 

「ここも触って欲しいのか」

 

 

問いかけにコクリと頷くのを見て俺はズボンを引き抜き脚を開かせる。そこにはじっとりと染みを作った紺色の下着。

 

 

「パンツに染みができてるぞ」

 

「み、見ないで…下さいっ…」

 

「お仕置きされてるのに良くそんな事が言えるな。しっかり開いてろ」

 

 

言い付けると脚をM字に開き顔を枕に埋めた。それを良い事にじっくりと見学させてもらう事に。

 

 

むっちりとした太ももの先にある紺色の下着。それは大きな染みを作り、染みは息遣いと共に広がってゆく。

 

ふとアバリスを見ると手を縛っていたはずの尻尾を解き自ら乳房を揉み尻尾を乳首に巻き付け吐息を漏らす姿。

 

 

「おい」

 

「えっ…?ひゃあっ……!!」

 

「何自分で胸揉んでるんだよ」

 

「…待ち切れないの…です…もう…疼いて…」

 

 

快感で溜まった涙で瞳を潤まし腰をくねらせながら悲願する姿に理性がどっかに行きそうになる。

 

それをグッと堪え下着の染みを指先でなぞると下着越しでも分かるほどにクリトリスが尖っていた。

 

 

「あっ…イっちゃ……」

 

「・・・えっ?」

 

 

たった一度、軽く下着越しにクリトリスに触れただけでアバリスはイッた。

 

その証拠にアバリスは未だに腰を跳ねさせ快感に浸っている。

 

もし今、この下着を脱がせ男根をぶち込んだら。

 

 

快感に蕩け虚な瞳のアバリスを見ているとそんな想像をしてしまう。

 

 

「マスター……お願い…しますっ…マスターの…おちんちん…入れて…くだ…さい…」

 

 

可憐な少女にここまで言われ我慢できる奴が居るだろうか?いや、居ないね。もし居たとしたらもう勃たないジジイかこの光景を見る前に10回抜いた奴ぐらいだ。

 

 

俺は鼻息荒くズボンと下着を同時に脱ぎ足首にかかった両方を蹴り飛ばしアバリスの腰骨に引っかかる下着に手をかけ脱がしにかかる。

 

 

(・・・)

 

 

その光景は今まで抱いたどの女の下着を脱がした時より卑猥な光景だった。太もも半端まで膣口から下着に愛液の糸が引き、明るみに晒された秘部は尻の穴まで愛液がたらりと溢れている。

 

そして見上げれば目を閉じ挿入を心待ちにする姿。その姿に理性は跡形も無くなり発情した獣の様に聳り立つ男根をアバリスの秘部へと押し付け、有無を言わさず根本まで突き刺した。

 

 

「あぁ……っ♡深いっ…♡」

 

 

その瞬間背を仰け反らせ快感に浸り尻尾を俺の腰へと巻き付け抱き寄せた。

 

 

「おまっ…!」

 

 

言い掛けた言葉は唇に塞がれ最後まで言えず、次に口を開いたのはアバリスの舌が俺の口に入った時だった。

 

 

 

「あっ…♡んんんっ…♡気持ち…いいです…♡」

 

 

舌を絡めながら快感を囁き勝手に腰を揺らし気持ち良くなってて。本心から快感を求め快感に染まる姿にお仕置きとかどーでも良くなって。

 

 

「ほんとお前はエッチだな」

 

「マスターだからです…っマスターだからっ……♡」

 

 

顔にかかった髪を退けてキスをすると本当に嬉しそうな顔をして。

 

 

「もっと…動いて…下さいっ……♡おまんこ…もっと…♡」

 

 

普段のお淑やかな姿は今は無く、ただの女みたいに。

 

 

「マスターの……っおちんちんで…満たして下さいっ…♡」

 

 

人の気も知らないで甘美な言葉を囁き。

 

 

「あ…んっ…♡奥にっ…届いてますっ……♡」

 

 

最奥を突き上げる度に中を痙攣させて。

 

 

「っ、、!」

 

「くださいっ…♡」

 

 

抜くはずがないのに両手で、両足で、そして尻尾で密着させて。

 

 

「熱いっ…すごい…出てます……」

 

 

射精の脈動を子宮で受け止め全身を震わせ最後に大きく息を吸って息を一つ吐いて、俺に向かい微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

……………………………………………………………

 

 

 

 

 

「なぁ」

 

「はい、どうしましたか?」

 

「やっぱやめとくわ」

 

「私も…マスターに伝えたい事があるのですが…やめておきます…ね」

 

「もし戦争が終わったら伝えたい事を言ってくれ」

 

「はい。ですが…」

 

「?」

 

 

ふと、キスをしてくれて。照れている顔にキスをし返した。

 

 

 

………………………………………………………………

 

 

 

 

それから数ヶ月が過ぎた頃、呆気なく戦争は終わりを告げた。何年も続いていた争いが終わった理由は末端の兵士である俺には詳しく聞かされなかったが風の噂によると千年王国第四の国、ティルヘルムの斬ル姫が終焉の笛とかいうやつを手にしたかららしい。

 

 

「なぁアバリス」

 

「はい、どうしましたか?」

 

「俺たちは笛を奪い合って戦争してたのか?」

 

「さぁ‥?私には分かりませんがきっと、それほどに重要な笛だったのでしょう」

 

「まっ、どーでも良いけどな」

 

 

そんな今日、俺たちはケイオスリオンの慰霊祭へと来ていた。理由はどうであれこの戦争で散った奴は大勢居る。戦乱に飲まれた魂の安寧を祈り慰霊碑が築かれ国中で黙祷が捧げられた。

 

 

「さて、アバリス。俺には行きたいところがあるのだがお前もついて来てはくれないか?」

 

「当然お供はしますけれど、一体何処に行くつもりでしょうか?」

 

「ちょっとトレイセーマまで」

 

「ダメですマスターっ!戦争は確かに終わりましたけど敵国を恨む人は大勢居ます!それに私たちはトレイセーマに攻め込んだのですよ!?絶対に‥ダメです、、!」

 

「だから行くんだよ。もう戦争は終わったんだからな」

 

 

半泣きになりながら俺を説得するアバリスを逆に説得しアバリスと共に再びトレイセーマへと。

 

関所から堂々と入国し街中を歩き見つけた花屋で大きな花束を買った。

 

 

「マスターも感じていますよね…」

 

「あぁ、トレイセーマに来た時からな」

 

 

この国に入国した時から住民から刺す様な目線を感じていた。花屋の亭主に至っては客に向かい唾を吐き表示されていた10倍の値段で花を売りやがった。

 

 

「おい、お前。この辺に慰霊碑は無いのか」

 

「死ねにゃ!悪魔め!」

 

「うっせバカ!さっさと教えろシバくぞクソ猫」

 

「ダメです…これ以上問題を起こすのは絶対に…ダメです、、」

 

 

心優しい住民に真心を込め接しようやく慰霊碑の場所を知りその場所へと向かった。

 

 

辿りついた慰霊碑の元にはすでに多くの花が手向けられておりそこに花束を添え黙祷を捧げた。俺たちが殺した住民、そして、強敵の魂の安寧を祈り。

 

 

「よし、帰るか」

 

「このためにここに来たのですか?」

 

「あぁそうだ。戦争中だったとはいえ命を奪ったには代わりないし、生きている者として死者を弔わないとな」

 

 

そう言ってアバリスの顔を見ると穏やかな笑顔を見せてくれた。

 

 

「住民から通報を受け参りましたが、我が国へ何用でしょうか」

 

 

聞いた事がある声が聞こえ振り返ると見た事がある奴がそこに立っていた。

 

 

「うぉ!?アバリス!塩だ!塩を撒け!それかお経だ!」

 

「えっ、えぇっ、、?」

 

「早くしろ!取り憑かれるぞ!」

 

「あの、生きていますが、、」

 

「騙されるな!あいつは処女のまま死んだ事が未練となり化けて出たアロンダイトだ!」

 

「あの、そろそろ怒りますよ」

 

「なんまんだぶなんまんだぶ!悪霊退散っ!」

 

「…アバリス、何か言ってやって下さい」

 

「あの、マスター‥アロンダイトは生きてます…死んでいません、、」

 

「はぁ?まさか、、アバリス、お前もそっち側だったのか、、」

 

「「いい加減にして下さい!」」

 

 

2人に怒鳴られアロンダイトの話しを聞く事に。

 

 

確かにアロンダイトはあの場で死んだ。しかし。

 

 

「私の血で蘇らせたのですよ」

 

 

そして梓弓がひょっこりと顔を出した。

 

 

「ま、、マスターっ!梓弓が化けて出ました…っ!」

 

「落ち着け」

 

「あの時、私はアバリスに討たれました。しかし、蛇の生命力を甘くみていましたね」

 

「確かに蛇の生命力は凄まじいが」

 

 

首を酒に半年漬けられた蛇が飲もうとした人に噛み付いた。という話がある程に蛇の生命力は凄まじい。

 

 

「それに私に獣刻されたメドゥーサーの血は死者を蘇らせる力があります。私自身を蘇らせるた後、アロンダイトを甦らせました」

 

「んだよそのチート」

 

「そちらの国にもグリダヴォルが居ますよね?」

 

「返す言葉がありません、、」

 

 

グリダヴォル・D.pulg・ムルムル。奴は死者を使役する能力を持つ。それに比べたらまだマシなのかもしれない。

 

 

「それで、お二人は一体何をしにトレイセーマへ来たのですか?」

 

「・・・それ聞くか?」

 

「はい、不義な理由で入国したのであれば追い返す必要がありますので」

 

 

結構マジなトーンで言われたので入国した理由を話していた。しかし、弔いに来た奴に弔いに来たというのは不思議な気分だ。

 

 

「わざわざ足を運んでいただき感謝します。お気持ちは十分に伝わりました。しかし、来るのであればもう少し時期を考えて下さい」

 

「私は止めたんです‥絶対に反感を買う事になるって、、」

 

「しかし、見事な心意気です。良きマスターに会えましたねアバリス」

 

 

梓弓にそう言われてれてれと笑う顔をフードで隠していた。

 

 

「よし、帰るかアバリス」

 

「はいっ」

 

「お気を付けて下さい。次は私たちがケイオスリオンへと行きますので。その時は、私が勝ちます」

 

「あぁ、また勝たせてもらうよ」

 

 

2人に最敬礼で見送られ最敬礼を返しトレイセーマを後にした。

 

 

 

「見て下さい、太陽があんなにも輝いています」

 

 

アバリスが指を指す方を見るとトレイセーマへと沈みゆく太陽の輝きが見えた。

 

日没前の黄金の輝きを手で目を覆いながら見ていると左手に何かが触れ、しっかりと握られた。

 

 

「もう、身の危険を感じる事なくこの景色が見えるのですね」

 

「そう、だな」

 

 

戦争が終わり戦う理由は無くなった。あと数年もすれば国同士の交流が始まり互いに行き来し合うだろう。

 

 

アバリスの手を握りながら輝きが消えるまで太陽を見送った。

 

 

 

 

 

……………………………………………………………

 

 

 

 

「マスターは何かしたい事があるのですか?」

 

 

ある日、アバリスに尋ねられていた。

 

 

「したい事?」

 

「はい、もう戦争は終わりましたので軍は退役されたのですよね?」

 

「正しくは追い出されただけどな」

 

 

戦争が終わりケイオスリオンの軍はある程度の数を残し解体された。俺はちゃっかり軍に残ろうとしたのだが外に放り出されていた。

 

それでも現役時代の貯金があるし手厚い年金が毎月入るため働く理由はなく毎日ぐーたらと。

 

言ってしまえば燃え尽き症候群。命を賭けた戦いから解放されその反動でやる気を失ってしまっていた。

 

 

「アバリスは何かやりたい事あるのか?」

 

「私は…」

 

 

煙草を吸いながらアバリスの言葉の続きを待つ。三口ほど口に煙草を運んだ頃、アバリスは口を開いた。

 

 

「私は…マスターのお側に居られればそれで良いです、、」

 

 

不安気に見上げながら告げられたこの言葉は燃え尽きていた俺の心に再び火を付けた。

 

 

「そう、だな。ちょっと待ってろよ」

 

 

煙草を灰皿へ押し付け立ち上がりアバリスを見た。

 

 

「出かけてくる」

 

「えっ、えぇっ、、?」

 

 

そう言って俺は家を出て行った。目的地はケイオスリオンの城、そして皇帝だ。

 

 

「私に仕事を紹介しろですって?」

 

「あぁ、なんでもやるからなんか良い仕事紹介してくれよ」

 

「そうね、ならパラケルススが新しい検体を探していたからそちらに回すわ」

 

「おい、それ死ぬやつじゃねーか」

 

「冗談よ。近々ケイオスリオンに賭博場を建てるつもりだから職人を探しているの。未経験者も大歓迎よ」

 

 

玉座に頬杖を付きながら言われその姿に敬礼を向けた。

 

それからその会社を紹介してもらい職は確保できた。

 

 

「それと皇帝にもう一つ頼みがある」

 

「なにかしら?」

 

 

 

 

………………………………………………………………

 

 

 

「ただいまー」

 

「お帰りなさい。どこに行っていたのですか?」

 

「仕事探しだよ。それと」

 

「それと?」

 

「明日指輪買いに行こうぜ」

 

「指輪、、ですか、、?」

 

「本当は買って渡したかったがサイズが合わなかったら格好つかんだろ」

 

「指輪ってどういう意味で、、?」

 

「結婚指輪ってやつだ。その、言わせるな恥ずかしい」

 

 

アバリスの顔が見れずそのままソファーへと行きどっかりと座り煙草を吸おうと箱から一本取り出し口に運ぼうとしたその手は抱き付いて来たアバリスによって口に届くことはなかった。

 

 

「マスターっ、、」

 

「前言えなかった言葉の続きだ。アバリス、大好きだぞ」

 

「私もです、、大好きですマスター、、」

 

 

指に挟んでる煙草を弾きしがみ付くアバリスの背中を抱きしめ胸の中で嗚咽を漏らすアバリスを包み込んでいた。

 

 

 

 

 

 

 




ここまで目を通していただきありがとうございました!

今回はアバリス・D.pulg・パズズの登場でした。戦乱の千年王国を舞台に霊装支配の力を用いて立ち回る姿、戦闘で結ばれた絆、言えない気持ちをテーマにつらつらと書き綴られてあります。

作中にありました※は戦闘シーンを後日追加する予定です。2人に潰された2人の斬ル姫との戦いもよろしければ目を通して下さい。


本作品の1ページ目を飾るアバリスと読み比べて貰えれば幸いです。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。