※この作品はR-18です。

気持ちが通じ合った公爵令嬢と田舎貴族は契りを交わすそうです   作:品☆美

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第185.5章 My Wife Is Schoolgirl

「ねぇ!どうッ!?」

「…よく似合ってると思いますわ姉様…」

「姉上、さっきから同じ事を何度も聞き返さないでくれよ…」

「騒々しいですよ。貴方達、もう少し静粛になさい」

 

 広間に集った子供達の喧騒を止める為に敢えて声の調子をやや強めて注意を促す。

 尤も騒々しいのは一名のみ、他の子供達は先程から辟易した声を繰り返すばかりだ。

 普段から活発なリーアはもはや同じ言葉を繰り返す人形と化し、

 将来は見眼麗しい淑女になるであろうロクサーヌは既に興味を失い、

 知識欲が豊富なメラニーは視線さえ向けずに本に没頭している。

 

 この広間に居る子供達の中で一人だけ興奮している少女は私が産んだ長女のアリエルだ。

 数日前にバルトファルト伯爵家の屋敷へ届いた荷物の一つである王立学園の制服を見つけてから、ずっと制服を着たまま屋敷内の部屋を巡り歩き感想を求めている。

 普段は勉強や稽古事、或いは貴族特有の催しが行われていない限りは子供達は自室で好きなように過ごす。

 だが王立学園の制服が届いた途端にアリエルは制服を着用し屋敷に居る者達に感想を求めるようになった。

 母親の私や父親のリオン、そして兄弟妹達から使用人に至るまでだ。

 領主を務めるリオンやその補佐を務める私に何度も聞き返したら怒られると分かる程度には空気が読めるらしい。

 使用人達は仕事があると口実を作ればアリエルからの追及は避けられる。

 そうなると憐れな被害者はアリエルの弟妹達となってしまう。

 どうやら本日のアリエル除いた子供達は自室に居るとアリエルが訪れた際に逃げ場所が無いと察して広間で過ごそうと全員が思い至ったらしい。

 失点が在るとすればアリエルのしつこさを侮った事だろう。

 アリエルは広間に弟と妹達が集まっていたので先日と同じように制服の感想を欲しているらしい。

 流石に此処まで執拗だと母として注意せざるえない。

 

「げっ、お母様……」

「何ですか、その物言いは。まるで邪魔者が訪れたように聞こえましたよ」

「そ、そんな訳ないじゃない…。あははは……」

「随分と燥いでいたようですが、誂えたばかりの制服を入学前に汚されては堪りません」

「分かってるわよ…」

「そもそもの話、上級クラスに入学できなかった貴女にはバルトファルト伯爵家の令嬢として更なる精進が求められるのですよ」

「うぅ……」

「少しはライオネルを見習いなさい。あの子は今も自室で勉学に励んでいます」

 

 私とリオンの子供は合計で六人、アリエルと同じ日に生まれた長男のライオネルも今年度に於ける王立学園の新入生だ。

 しかもライオネルは入学試験に於いて優秀な成績を修めた者だけが在籍できる上級クラスへの編入が決まっている。

 今から約二十年程前、私が在籍していた頃の王立学園では上級クラスの在籍条件は貴族の出自のみであった。

 即ちどれだけ品性下劣な輩であろうが、無知蒙昧な輩であっても王侯貴族の血を受け継いでいるなら何の努力をせずとも国内最高水準の教育が受けられたのだ。

 このあまりに不平等な制度が王国の人材育成、並びに国力増進にどれだけの弊害となっていた事か。

 教育制度の改革前後であまりに若い閣僚の能力差に『貴族の威信を保つ事がどれほどホルファート王国の国力を衰退させてきたか』と王家と上層部が揃って嘆く程だった。

 今では王国の重職に就く為には王立学園在籍時の成績が新たな評価基準になりつつある。

 それはそれで現場を知らない頭でっかちが我が物顔で闊歩するという弊害も齎しているが変革期という時代はそういった物だろう。

 

 とにかく、我がバルトファルト伯爵家の嫡子である長男のライオネルはその狭き関門を通過し次期党首に相応しい力量を持つ事を周囲に示した。

 そして今も自室で勉学に励んでいるライオネルに比べて屋敷内で燥ぐ長女のアリエルはバルトファルト伯爵家にとって頭痛の種だ。

 別にアリエルは貴族特有の特権意識で平民を見下す訳でも、気に入らない他家の子女へ謂れの無い誹謗中傷を行う訳でもない。

 ただ只管にあまりに活発過ぎて自分の興味ある事には無類の集中力を発揮はする。

 しかし興味の無い事柄を前にすると同年代所か年下の妹達にさえ劣りかねないほど手を抜いて関わり合いを避けたがるのだ。

 別に私はアリエルをかつての己の如く次期王妃候補として不都合が無いほど完璧な才媛に育てようとは思っていない。

 領主貴族筆頭のレッドグレイブ公爵家の令嬢に生まれ、幼少期から王家の嫡子と婚約を結ばされた娘など例外中の例外だ。

 ただバルトファルト伯爵家の令嬢として社交界で無難に過ごせる程度の貞淑さと温厚さを備えて欲しいとは思っている。

 そういったある程度の教養や振る舞いは巡り巡って己を救う一助となる、若い頃特有の無謀な全能感を持つ思春期の子供には無理な話かもしれないが。

 

「な~にやってんだ?」

「……貴方、いつから其処に」

「アンジェがアリエルに小言を言い始めた辺りからだな」

 

 背中越しに声を掛けてきた相手はこの領地を治める領主であり、私の夫でもあるリオン・フォウ・バルトファルト伯爵だった。

 周囲へ気を配っていたはずだがリオンは若き日の訓練と長年の実戦経験で気配と足音を気取られず接近する方法を取得している為に心臓に悪い現れ方を行う。

 それがまた世間一般が考える上位貴族の人物像と違うから頭が痛くなる。

 私とリオンの間に生まれた子供達の多くが典型的な貴族の令息や令嬢から逸脱した性格なのはおそらくリオンからの遺伝だ。

 後に聖女となったオリヴィアに決闘を挑んで婚約を破棄された私の行動はあくまで上位貴族が採る行動の範疇であるはず、そう思いたい。

 二十年近く経った現在でもいまいち確証を持てないのだが。

 

 ともかくだ、母親である私の説教がアリエルに対し効果が薄いなら父親であるリオンを頼れば良いと普通なら考える。

 だが我がバルトファルト伯爵家の御当主は子煩悩と評判の男なのだ。

 寧ろリオンが子供達に対して甘いからこそ、私が厳しく躾け育てる為により一層の叱責をしなければならないとさえ言えよう。

 私とて好きで我が子を説教したい訳ではない、十月も胎内で育て腹を痛めて産んだ息子と娘に愛着を持つのは当然だ。

 しかし貴族の家に生まれたからには相応の義務と振る舞いが要求される、それを拒否するのなら民衆の上に立って領地を治める資格は無い。

 リオンにそうした意識が欠如しているのは幼少期の育ちが主な原因だ。

 元々が下級貴族の出身で家督を継ぐ予定も無かったリオンは貴族としての教育をほぼ受けていない。

 満足な貴族の教育を受けていないリオンが自分の子達に教育を施すのは難しい、そうなると必然的に私が子供達の教育を受け持つ事になってしまう。

 乳幼児期はあれだけ私に懐いていた子供達なのに、歳月の経過と共に私を徐々に恐れるようになっていく光景は寂寥感に心が苛まれそうになる。

 その一方で子供達が落ち込んだ時を見計らったように慰める役目を務めるのはリオンだ。

 これでは叱ってばかりの私だけが悪役ではないか、いずれリオンとしっかり話合わなくてはいけないな。

 

「ほらほら、落ち着けアンジェ。そんな顰め面をしてると顔に皺が出来るぞ」

「……無用な心配です。それより貴方はどうして此処に?」

「ディランがアンジェに会いたがってたからさ」

「……ははうえ」

「ほら、大好きなお母さんだぞ~」

 

 そう告げたリオンの後ろから出て来たのは末息子のディランであった。

 まだ十歳にもならない年頃の子供にとって親に甘えるという行為は愛情の充足感を得る為に必要不可欠だ。

 高位貴族は自ら子育てをせずに家も乳母や教育係に我が子を任せ仕事を熟す多い。

 バルトファルト伯爵家も忙しい時や子供がある程度は成長した後はそうしてるが、それでも意図的に親子の交流する機会を増やしていた。

 これは元々リオンが下位貴族の出身であり子沢山な環境で育った事に起因する。

 ホルファート王国の辺境に領地を持ち、バルトファルト伯爵家が新興貴族だからこそ為せる状況だろう。

 私自身、これほど子供達へ深い愛情を持つ母親に為るとは思ってもいなかった。

 柔らかく小さなディランの体を抱き締めていると次第に体の内にあった憤懣が和らいでいくのを確かに感じる。

 

「それで、何でイライラしてたんだ?」

「アリエルがもうすぐ王立学園に入学するのに勉学や淑女教育から逃げ続けて、しかも制服姿を何日も屋敷の者達に見せびらかすのを咎めただけです」

「ふぅん。まぁ、もう怒る必要は無くなったな」

「…えっ?」

 

 振り返って室内を見渡す、先程まで部屋の中央で制服を見せびらかしていたアリエルの姿は影も形も無い。

 何処から逃げたかは然程問題ではない、身体能力に秀でたアリエルはその気になれば屋敷の壁の装飾や突起を伝って下の階や庭へ降りられる。

 リオンに気を取られた百秒にも満たない僅かな時間、その隙にアリエルは脱出を終わらせていた。

 この状況は決して偶然ではない、おそらくリオンは意図的に私の隙を作り出しアリエルを逃がしたのだろう。

 思わず感心してしまうほど鮮やかだが同時に苛立ちも生まれてくる。

 ならば苛立ちを解消する役目はアリエルではなくリオンにしっかりと果たしてもらおうとするか。

 

「謀りましたね、貴方?」

「何の事かさっぱり分からないなぁ」

「子供達を甘やかしてばかりではいけません、幼い内に苦労した方が後で後悔するよりも遥かに本人達の為になります」

「それは分かってるよ。でも俺はアンジェと子供達が言い争いをしてるのを見たくないんだ」

「別に私とてアリエルが他の子達が憎くて厳しく接してる訳ではありません」

「うん、アンジェが素敵な嫁さんで素晴らしい母親なのは俺も知ってる。だから今だけ俺の顔に免じて許してくれないか?」

「……仕方ないですね」

 

 リオンにそう言われてしまうと此方が悪いように感じてしまい強気に出れないのは私の弱点だ。

 結婚してから既に十五年以上も経過したが、私とリオンは互いが相手の抑止力になるという絶妙な力関係で成り立っている。

 これも惚れた弱味という物だろうか?

 どれだけ厳しく接しようとしてもついつい甘い裁定を下すし、夫婦喧嘩も長続きしない。

 何より妾や側室が居ないのに当主の子が六人というのは他の貴族と比べてあまりに多過ぎる数だ。

 お陰で私達の仲睦まじさは他領でも評判になっているのが実に悩ましい、これでは子供達が私に対する印象にまで影響してしまう。

 

「アンジェだって新しいドレスを仕立てたら真っ先に俺に見せに来るだろう?アリエルもそれと同じさ」

「失敬な、見せるのは貴方だけです。それに何日も見せ続けたりしません」

「何にせよ学園に入学するのを楽しみにしてるのは良い事だ。普通クラスでも学べる事は大いにある」

「まぁ、そうですね。嘗て私が在籍していた頃よりは授業の質や生徒の意識も向上しているでしょうから」

「って事はアンジェも昔は学園の制服を着てたのか?」

「ええ、細かい意匠は変更されてますが大まかな部分はそのままです」

「ふ~ん……」

 

 リオンの視線が私の頭頂から足元までゆっくりと移動する。

 長年に渡って生活を共にしてきたのだ、彼の考えなど手に取るように分かってしまう。

 足の脛辺りを蹴ってやりたい衝動を我慢して軽く足を踏みつける。

 何しろ両手はディランを抱く為に塞がっていた、まぁこの程度では大した痛みも無いし苦境なリオンの体なら大した傷にもならないだろう。

 

「アンジェ」

「何でしょうか?」

「痛い」

「邪な考えを抱くからです」

「別に変な事は考えてないぞ」

「ならば具体的に仰ってください」

「まぁ、学生時代のアンジェも綺麗だったんだろうなぁとか。俺も学園に通いたかったなぁとかだよ」

「……そうですか」

 

 リオンの言葉に少しだけ罪悪感を覚える。

 今は伯爵位と領地を賜っているリオンであるがその半生は悲惨な物だ。

 かつて王立学園は多くのホルファート王国貴族の令息令嬢のみが入学し、寮内で実家の権威を主張するかのように財を凝らした性格を過ごしていた。

 そんな中で辺境の貧しい領主貴族の庶子、しかも三男扱いだったリオンを王立学園に入学させるだけの経済的余裕がバルトファルト男爵家には全くなかったのだ。

 しかも危うく貴族未亡人の夫という名の奴隷にされかけたリオンは王国軍へ入り若くして功績を出す。

 だが彼の学歴と言えば下位貴族の父と平民同然な母からの教育、軍隊で学んだ様々な軍事学、そして婚約後に私が施した貴族としての教育に限られる。

 並みの上位貴族なら全く相手にならない才能を持ちながらもリオンは高等教育を受ける機会を与えられ続けなかった。

 自分より劣った同年代の貴族令息や貴族令嬢が怠惰な生活を送っていた時、リオンは領地で野良仕事をするか群で訓練を受け早熟する道しか与えられなかったのだ。

 世間一般で言われる青春といった期間を過ごす事無く兵士、そして領主貴族になってしまった彼の半生について考えてしまい憐憫の情が湧いてしまう。

 

「……何だよ?」

「いえ、特に何も」

 

 他愛ないやり取りを子供達と始めたリオンを見ながら、私は自分が酷く動揺している事に気付いた。

 

 

※ ※ ※ ※ ※

 

 

「……うむ、秘かに寸法直しを頼んで正解だったな」

 

 既に日も暮れ子供達が夕食を済ませ入浴や雑談に興じている時間帯。

 私は秘かに寝室にある姿見用の大鏡で自分の姿を確認していた。

 ゆっくり回転しながら糸の解れやボタンの喪失が無いが丁寧に確認、取り敢えず目立った異常は無さそうだ。

 

「しかしまぁ、こうして見ると私も存外に若いのでは?」

 

 そう自分へ必死に言い聞かせながら改めて自分の姿を確認する。

 前にこの服に袖を通したのは何年前だったか?

 記憶を辿ろうとしたが途中で断念する、考えるだけであまりに恐ろしい。

 自分の年齢を振り返るのが恐ろしくなった訳ではない、嘗て王立学園で起きた出来事を思い出すのを脳が拒絶したのだ。

 あの婚約破棄騒動は私にとって人生の汚点であり新たな人生の出発地点でもある。

 公爵令嬢であり王子の婚約者だった頃の自分と今の伯爵夫人の自分ではまるで別人のように思えた。

 もしも婚約破棄が起きなければ私はどんな人生を過ごしていたのだろう?

 まぁおそらく仕事に明け暮れ、産んだ子供達に自分が受けた教育を施し、恙無く国を治め王都で生を終える人生になるのは予想がつく。

 貴族令嬢が想像する最上位の夢だが、今の私にとっては何とも色褪せて見える。

 今の人生は確かに苦難も多く、王都の生活と比べ不自由な暮らしだろう。

 しかし心の安らぎは此方が勝る。

 果ての見えない権力闘争と国政の重圧とは無縁の辺境で私だけを愛してくれる夫に可愛い子供達。

 辺境で暮らす安穏とした生活はすっかり私から功名心や嫉妬といった毒気を抜いてしまった。

 

「こうして見るとアリエルより私の方が確実に美しいな。確かに若さは負けるが円熟した知性と色香は私の方が勝る」

 

 大鏡に写る自分の姿を確認する為に何度も体の向きと姿勢を変えながら見入る。

 日常的にこの制服を着てた頃は肌艶など気にしなかったが三十代に差し掛かれば否応無く要望の衰えが見え始めてしまう。

 規則正しい生活、栄養と量を考え抜いた食事、自分の肌質に合う化粧品。

 そして何よりもこの浮島の観光資源である温泉。

 これら全てを活用してどうにか若さを保っている、その精進のお陰で私の肌艶は二十代の頃と比べても遜色はほぼ無い。

 

 むしろ六度の出産を経験した影響で胸部と腹部と臀部に付いた肉が問題だ。

 暖衣飽食を貪れば貴族はすぐに堕落し若い内から肥満や成人病を患う。

 そうならない為にも考え抜かれた献立を調理人に指定し、運動を兼ねた散歩や乗馬を行ない、時には体操までして体型の維持に勤しんでる。

 だが涙ぐましい努力を続けても肉体の代謝は落ち、体に脂肪は蓄えやすくなる。

 これは明確な老化でありどんな人間でも避けられない問題なので仕方ない。

 寧ろそれをどう活かすかこそが女としての技量を問われると言えよう。

 なので私がこうして自分の容貌が十代の娘よりも美しいと思い込む事さえも痛々しい行為ではなく己の心を保つ為に必要な儀式なのだ。

 決して、私が愚かな中年女である照明ではない。

 

「これならリオンも私の魅力に気付くだろう。どうも近頃は私への扱いが子供達よりも雑然とし始めてるからな」

「…………そんな事は無いと思うぞ」

 

 突然、後ろから、男の声がした。

 それも私の人生に於いて最も付き合いが長い男の声だ。

 声の主が誰かなど確認するまでない、そもそもこの寝室に入れる男は私が産んだ子供達か最愛の夫だけ。

 振り向こうにも体が膠着して全く動かない、仕方なく視線だけを動かし鏡で私の背後に居る男を確認。

 いつも入浴後に愛用するバスローブを着込み、呆れた顔で私の後ろ姿を眺めているのはリオン・フォウ・バルトファルト伯爵その人だった。

 

「な、ななっ、何をしているッ!」

「いや、ちゃんと入る前にノックしたぞ」

「そ、そうか…」

「まぁアンジェが自分の姿に熱中してたから声を掛けるのも気が退けたんだよ」

「いっ、いつから見ていた?」

「確か『こうして見るとアリエルより私の方が確実に美しいな』辺りから」

「さっさと声を掛けんかッ!!」

 

 咄嗟に夫婦用のベッドに置かれていた枕を振りかぶって投げた。

 リオンは避けようともせず枕を体に受ける。

 彼が特に反論も抵抗もしないせいで寝室に微妙な沈黙が漂い始める、せめて驚いて戸惑うぐらいはして欲しい。

 床に落ちた枕を軽く叩いてベッドに戻し腰掛けるリオン、二十年近く前の制服を身に纏い鏡の前で燥ぐ私。

 余りにも痛々しい光景ではないか。

 

「だって声を掛けにくいじゃんか、アンジェも楽しそうに燥いでたし」

「べ、別に楽しくなど…」

「いや、どう見ても燥いでたぞ。何度も鏡の前でうっとりして、俺に気付かなかったぐらいじゃん」

「ぐぅ…」

 

 返す言葉も無い。

 我ながら浮かれていたのは紛れもない事実だ。

 それも己の娘に触発され若い頃の服を着込むなど爵位を持つ貴族の妻として恥じるべき行いなのは間違いなかった。

 気の迷いと思われても仕方ないが言い訳をさせて欲しい。

 ふと誰にでも昔を懐かしむ心はある筈だ、たとえどんなに忌むべき過去だろうともふと人生を振り返って当時の気分を味わいたくなる時が存在する。

 私にとってその切っ掛けが自分とよく似ている長女の入学だった、それだけの話なのだ。

 法を犯さず人道や倫理に悖る行いをしないなら咎められるべきではない。

 この制服は私の所有物だし、精々が制服の仕立て直しに相応の金銭を浪費した程度。

 それぐらいならリオンも目溢しをしてくれるに違いない。

 

「まぁ、アンジェが満足ならそれで構わないよ」

「……何でそうも味気無い答えなのだ」

「だって俺は王立学園に入学してないし。そういう制服を着れる身分の連中を羨んだ事はあっても制服はただの服じゃん」

「むぅ…」

 

 こうした制服を着た異性に性的嗜好を持つ者も居るらしいが、それは同じ価値観や場所を共有した経験に由来する物のようだ。

 様々な理由で王立学園に入学できなかったリオンはには制服に対しそういった思い出自体が欠如している為に明確な反応もしないのだろう。

 若き日にリオンと婚約してから結婚するまで制服を披露した事など一回も無かった。

 だから反応が無機質な物なのかと結論付けるしかない。

 

「ではアリエルと比べたらどうだ?私もまだまだ若々しいと思うのだが」

「いや、もう少し歳相応の格好をしてくれとしか」

「……何だ、何を言いたいリオン」

「流石に自分の娘と張り合うのは無理があるぞ」

 

びきッ

 

 私の頭の中でそんな音が聞こえたような気がする。

 普段から我が子達に感情を抑えろ、伯爵家の子息に相応しい振る舞いをしろと説いてる私が酷く心を掻き乱され腹の底に熱い物が込み上げてきた。

 そもそもの話、私がわざわざ若い頃の制服を持ち出した理由はリオンを慰めようとしたからだ。

 辛酸に満ちた青春を送って来たリオンにせめて学生時代の私の面影を断片的にでも見てくれればと思い、年甲斐も無くこんな格好をしたのに。

 もしもリオンが『綺麗だ』とか『アリエルより美しい』と言ってくれたら私もこうまで怒りを抱かない。

 まるで私自身を否定された気分になり、気が付くとリオンをベッドへ強引に押し倒していた。

 

「おい、ちょッ、アンジェ!」

「どうしたリオン」

「流石にマズいだろ!」

「何がどうマズいのか正確に告げて欲しいな」

「まだ子供達が起きてる時間だぞ!」

「知らん、私の純情を弄んだリオンがいけない」

「そんな無茶なッ!」

「うるさい、そこで大人しくしていろ」

 

 バスローブの腰紐を解き強引にリオンを体を脱衣させる、前開きになったバスローブの隙間から鍛えられた男の裸体が露わとなった。

 今でも定期的に領軍の訓練を指揮し、時には自ら参加するリオンの体は三十代の半ばになっても筋肉で引き締まっている。

 体のあちこちに脂肪が付いた私の体とは正反対、そんな事実を突きつけられ一段と怒りが込み上げた。

 苛立ちはそのままリオンに対する手荒な行動に直結し、私はリオンの下着に指を掛けるとそのまま一気に引きずり下ろした。

 まるで男娼を買った貴族女性が手荒に行為を強制するような浅ましさ。

 自分の中にこんな感情が眠っていたのかと私自身も驚いてる。

 

 露わになったリオンの陰茎は既に硬く勃起していた。

 怒りのままに脱衣させたせいで確かめる時間が無かったせいだろう。

 いつもは下着越しにリオンの陰茎の状態を手で確認しているのだが今夜は行為前の愛撫さえもしていない。

 それなのにしっかりと勃起している陰茎はリオンが性的興奮を起こしている事実を伝えてくる。

 無性に腹が立つ。

 口ではあんな事を言っておきながらしっかりと興奮しているではないか。

 そもそもリオンは私以外の女性を抱いた経験が無い、少なくとも私の知る限りではそうだ。

 ならば最も褒め讃えるべき相手は私であり、どれだけ似合ってなくとも可能な範囲でお世辞を口にするべきであろう。

 

 その憤懣がいつもより過激な行動を引き出した。

 近くにあった椅子に腰掛けた私は、そのままリオンの陰茎を踏みつけるようにゆっくりと足を乗せる。

 当然だが靴は予め脱いでいる、流石に苛立っていてもリオンは愛しい私の夫だ。

 傷付けるつもりなど無い、ただ少しだけ仕置きするだけだ。

 

「どうした?あんな態度を取りながらお前の陰茎はしっかりと興奮しているではないか」

「いやいやいや、どんな男でも股間を弄り回されたらそうなるだろ」

「普通の男ならば妻に無碍にされても興奮しないはずだ。しかしリオンのここは熱を帯びて硬くなっているな」

「だから生理現象だって、アンジェが不機嫌になったなら謝るよ」

「謝っても許す気は無いぞ。これは折檻だ、聞き分けの無い夫を従順になるよう躾けてやる」

「そこまでするの!?」

 

 戸惑うリオンを放置したまま幾度も陰茎を足で弄る。

 ストッキング越しでも陰茎の熱さと硬さが私の足裏に伝わり、自分が途方も無く淫らな行為に勤しんでると実感してしまう。

 陰茎や睾丸が男性にとっての急所だからこそ、それを踏みつけ嫐る事で自尊心が回復するような気がした。

 嘗てのホルファート王国は女尊男卑社会だったがあくまでそれは当時の法で定められた下位貴族達の話であり、上位貴族は寧ろ男性主体で女性は家に繋がれる従属物扱いだ。

 当時は男を嫐る貴族女性を下卑た思考だと軽蔑したが、自分にこんな部分があったとは私自身も驚く。

 まるで陰茎から伝わる興奮と熱が私の理性を狂わせていくようだ、衝動的に制服とシャツのボタンを外してしまった。

 そのまま開いたシャツの隙間に腕を差し入れると背中側まで手を伸ばす。

 無駄に大きい私の胸部が邪魔をして困難を極めるが、今はそうした手間暇も中々に楽しい。

 何よりリオンの視線が私に注がれているこの状況は心が充足して堪らない愉悦となって私から理性をどんどん削ぎ落としていく。

 漸く指先に触れた金属の感触はブラジャーのホックだ、それを何度も動かしていくとやっと全てのホックが外れる。

 空いたもう片方の手で今度はブラジャーの前紐を引っ張る、そうすると制服を脱がずにブラジャーを脱ぐ事が可能となるのだ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「っ。おいアンジェ、何をするつもりだよ?」

「少しは黙っていられないのか」

「悪かったって。腹が立ったなら謝るからな、なっ?」

「ならば私の足に踏まれている節操が無いこれを鎮めろ」

「それは無理ッ!」

「変態め」

 

 リオンを詰るほど私の体が火照っていく、そして体が熱を発し内股からぬるりとした感触が伝わってきた。

 私の淫裂から愛液が迸ってスカートを汚しストッキングを湿らしていくのが顔を向けずとも分かる。

 此処で私は自分が不味い状況に追い詰められている事に気が付いた。

 どうせ直ぐに着替える、ストッキングに締め付けられたら暑苦しいと思ってパンティーを履いていなかったのだ。

 この体勢ではパンティーを履いてない事がリオンに分かってしまう。

 いや彼の陰茎を踏み躙りながら愛液で股を濡らした事さえ気付かれる、そんな内心の焦りを誤魔化す為に椅子から降りてベッドに腰掛けた。

 もしリオンに気付かれたらどうなってしまうのだろうか?

 そんな事さえ考えながら淫らな行いを止める気など一切無い。

 滾る淫熱に酔い痴れて私はブラジャーを丸めてリオンの陰茎に被せる。

 私の人一倍大きなブラジャーはリオンの陰茎を包み込んで余りある程の大きさだ。

 すっぽりとまだ私の体温が残るブラジャーに覆われた陰茎は全く見えなくなってしまう。

 それでも握ればブラジャーの生温かさを上回る淫熱と確かな硬さが伝わる。

 私の処女を散らし、何回も何十回も何百回も秘裂を割って胎内を穢し、あろう事か四度の妊娠と六人の子を孕ませた愛しくも憎たらしい陰茎め。

 

 けしからん、全く以ってけしからん。

 貴様如きに屈してなるものか。

 たとえ今夜の私が淫熱に浮かされていようといつものように容易く受け入れてやらんぞ。

 モジモジと内股を擦り合わせながらリオンの体に圧し掛かる。

 鍛えられたリオンの硬い胸板に乗せられた私の柔らかい乳房は容易くその形を変えてしまう。

 リオンの筋肉質で傷痕が幾つも残った体へ寄りかかると不思議と心が安らぐ。

 きっと逞しい体を持つ私の夫は妻と子供達を護る為に傷付く事を躊躇わないはずだ、そう考えるだけでも愛おしさが込み上げ淫裂から愛液が漏れ出てしまう。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 いつしか私はブラジャーを巻かれたリオンの陰茎を激しく愛撫しながら彼の体を舐め始めていた。

 既にブラジャーはリオンの陰茎の先端から零れた体液と私の汗が混じり湿っており、どれだけ強く握ってもブラジャーが緩衝材の役目を果たしきつく締め上げる程度の強さなってしまうだろう。

 これなら激しく動かした所で然程の痛みはない筈だ、そう考え陰茎をまるで自分の性器のように上下へ動かし掌に伝わる熱と硬さを思う存分に愉しむ。

 同時にリオンの体にもたれかかるとちょうど彼の乳首が視界に入った。

 ふと今まで行ってきた性交を思い返すとリオンはよく私の乳首を舐め、口に含み、時には母乳さえ吸って事実を思い出す。

 胸の大きい女性が余程好きなのか、常日頃から私の胸を揉んだりさり気なく触るような行為を繰り返してきた。

 妊娠出産の影響はあったかもしれないが此処まで私の胸が豊満になった一因がリオンにあるのは間違いない。

 だから、ついリオンの乳首を衝動的に含んでしまったのだ。

 

「おい、アンジェ」

「どうした」

「流石にそれはどうかと思うぞ」

「嫌か?」

「そもそも乳が出ない男の乳首を吸って何が良いんだよ」

「私が愉しい」

 

 そう告げて行為を再開する。

 いつも体格差と力の差で性交に於ける優位を保っているリオンが悶えさせると心が充足していくのが分かった。

 別にリオンが主導する性交その物は嫌いではない、性交中も彼は気遣いを見せてくれ手荒に扱われた事も数える程度だ。

 故にと言うべきか、いつもと違う状況に凄まじく興奮してるのが自分でも分かる。

 制服をきた若い女性に興奮する特殊性癖を持つ男の存在は知っていたが、まさか自分が若い頃の制服姿になって興奮するような性癖を持っていたとは思いも寄らなかった。

 

 私が果ての見えない愛撫を続けてる一方で、リオンの表情が曇っていく事に気付く。

 先程からリオンの陰茎は私の足に踏まれ、ブラジャーに包み込まれて愛撫されているが射精には至っていない。

 男性にとっては最大の性的快感が伴うのは射精を於いて他に無い。

 それを禁じられたまま為す術無く私からの愛撫を受け続けているリオンの姿にとても興奮していた私は忘れていた。

 リオンがこれまで私を抱き潰す程に激しく交わっても平気だった過去を。

 

「よッ」

「ぁ!?」

 

 突然、天地が逆転した。

 気付けば私はベッドの上に寝転んで、リオンはまるで覆い被さるように私の体の真上に居る。

 興奮し過ぎたせいで今の状況を再確認し、最適な行動を採る為の思考が覚束ない。

 加えて焦りにより思考と動作が更に緩慢となる、そして私の隙を見逃してくれるほどリオンは甘い男ではなかった。

 あっという間にリオンの唇が私の唇と触れ合うと彼の舌が口内に侵入する。

 長く分厚い舌は私の舌と比べても遥かに大きい、まるで大型肉食獣に食べられる小動物のように私の体は為す術無く捕らわれた。

 いや、抵抗する気さえ起きなかったのだ。

 情熱的な接吻によって手足に力が全く入らない、腕で彼の体を押し退ける事も足で蹴り付ける事も不可能。

 きっとリオンはそんな私の状態を見てほくそ笑んでいたに違いない。

 接吻したまま両手を器用に動かして私が着ている制服のボタンと迅速に外していく。

 これは不味い、そう考えても手足がまだ思うように動いてくれない。

 結局は百秒も経たない間に私はあっという間に着用していた制服を全て脱がされてしまった。

 そもそも脱がされたというのも語弊がある、寧ろ私はリオンの手に体を近付け何処を脱がせるべきか誘っている。

 腰を浮かせスカートを脱がすのに協力さえしていた。

 今の私は裸体にストッキングだけを履いているあられもない格好だ。

 パンティーを履いてなかった事を此処まで後悔した夜は今後訪れないだろう。

 

「いやぁ、いい格好になったなアンジェ」

「……やけに制服を脱がすのが手馴れているな」

「そりゃアンジェがいつも着てるドレスより楽だし、そっちもその気になってただろ?」

「知らん」

「やれやれ、俺の奥さんは素直じゃないなぁ」

「くぁッ!?」

 

 突如、股間に電流のような物が走って悲鳴を出す。

 悲鳴と言うよりも嬌声に近いか。

 リオンの太い指が何の予告も無しに突然淫裂を撫で回し始めたのだ。

 既にストッキングの股間部分はどうしようもない位に濡れている、パンティーを履いていないから隠す事も出来ない。

 それを分かっていてリオンはこのような方法を選択した、それが非常に腹立たしい。

 

「っく、 こらッ、 止めろリオン」

「え~?止めていいの」

「そんなに撫で回すなぁ!この愚か者ッ!」

「怒るアンジェは綺麗だけど素直なアンジェはもっと好きなだな」

「ふぁッ!?」

 

 ビリッ

 

 突然布が切れたような音がする。

 もしや制服が切れてしまったかと慌てたが脱いだ制服はベッドの上か床に落ちてる筈だ。

 先程の音と同時に股間は少し肌寒い、視線を下半身に向けるとリオンの手が強引にストキングを破いてる光景が目に入る。

 このままでは一方的に嬲られる、そう思って体を捻ろうとした矢先にリオンの指が私の淫核を抓んだ。

 最も感覚が鋭い性感帯を抓まれては逃げる事も叶わない、何より下半身に齎された快感は蕩けるようで足腰から力を奪ってゆく。

 更に分泌された愛液が股間を濡らしベッドに染みを作り始めているだろう、拒否しようとしても抗う術など無い。

 漸くリオンが淫核を抓むのを止めたと思えば今度は淫裂に太く節くれだった硬い物が膣内に侵入してくる。

 ゴツゴツと硬いのに上下左右に曲がるそれがリオンの指だとこれまでの性交経験から判別できた。

 荒々しさを感じられない優しく丁寧な指が膣内で動くと私の肉襞が潤い蠢いて指を締め付ける、まるで私の本心を告げるように。

 何度も何度も僅かな距離をゆっくりと往復するだけの抽挿、それだけで私の膣は彼を迎える準備を終えてしまった。

 

 ここまでくれば後は陰茎を挿入するだけ、なのにリオンは一向に陰茎を挿入しない。

 それなのに淫裂に赤黒く膨れた亀頭を入念に擦り付けるのだけは止めない、蕩けた陰唇が咥え込もうとする度に腰を退いて逃げていく。

 まるで悪戯のように私を昂らせるだけ昂らせ、煽っていく癖に挿入だけはしない。

 その態度に再び怒りか込み上げてきそうだ。

 

「いい加減にしろリオン」

「別に構わないだろ?アンジェが嫌がるなら無理にしないから」

「意地でも言わん!」

「……全く、素直じゃないなぁ。学生時代もこんな風にツンケンしてたのか?」

「余計なお世話だ」

「分かったよ、それならやり方を変えるから」

「んッ!?」

 

 リオンの体が急に大きくなる。

 いや、私との距離が縮まっているのか。

 同時に陰唇を掻き分けて熱い何かが膣内に満ちていくような感覚に陥った。

 それが何なのか推察する必要も無い。

 リオンの逞しい陰茎が何の予告もしないまま突然挿入されたのだ。

 既に十分な愛液が分泌されて潤んでいた私の膣内は容易くリオンの陰茎を受け入れる。

 いや、寧ろ自ら率先して迎え入れようと肉襞が陰茎に絡みつき蠢いているのが自分でも分かった。

 何より私の両手はリオンの背中に回され、両足は大きく開かれより深い抽挿を行なおうとリオンに腰を挟み込む。

 どの角度から見ても私がリオンを求めている事は明白だった。

 

「ほら、ちゃんと挿入(はい)ったぞ」

「いきなり何をする!?」

「悪かったよ、俺が悪かった。アンジェは何を着ても美人だよ」

「そうやってリオンはいつも誤魔化してばかり…」

「俺も悪いけど素直になってくれないアンジェも悪いぞ。そのくせ俺を煽るような事ばっかしやがるから」

「煽ってなどいない」

「アンジェの制服姿が魅力的だからこんなに興奮してんだろ」

 

 リオンが体を押し付けると腰が前へ突き出される。

 その結果、更に膣奥まで挿入された陰茎が絶対に指では届かない性感帯へ触れてしまう。

 ゴリゴリと膣奥を削るような抽挿に私の理性は容易く蕩けていく、逆に位置を調節する為に腰を動かす始末だ。

 絶え間無い抽挿にいつしか口から漏れる声がリオンに対する嫌味では無く嬌声へと変わっていく。

 頭の中が多幸感で埋め尽くされ反抗する意思自体が削がれてしまう。

 私はいつもこうしてリオンに蕩けされられ孕まされる、その事実を甘美な物と感じてしまう程に体の隅々まで彼に絆されていた。

 

「素直になれない公爵令嬢のアンジェリカ様は学生なのに下賤な輩と淫行に耽っていました、って所か」

「……学生の頃の私は勉学に励んでいた真面目な令嬢だったぞ」

「そんな名家のお嬢様ならきっと俺と会話するどころか顔を合わせる機会もありえないだろうなぁ」

「かもしれないな、だから私の制服姿をその目に刻み込め」

「もう制服は着てくれないのか?」

「どうかな?リオンが私を満足させるなら考えなくもない」

「じゃあ頑張るとしますか。だけど今も結構ヤバいんだけど俺」

「安心しろ、私もだ」

「なら頑張りますかね」

 

 リオンはそう告げるとより一層深く、強く、早く腰を動かし始める。

 愛情表現として優しく女を抱くのではない、女に我が子を孕ませる為に犯すような荒々しさ。

 そんな激しい抽挿にさえ百を優に超える回数を抱かれ続けてきた私の体は十分に耐えきれてしまう。

 この世界で彼を受け入れられる女は私だけ、そんな事実に優越感さえも感じてしまう。

 何時しか私の体はリオンの動きに同調するかのように淫らな舞を思わせる動きを始めた。

 無論、接吻も忘れない。

 既に言葉さえ失った私達は獣のようにお互いの体を求め合い繋がる、貴族としての地位も親としての立場を捨てて雄と雌に為り果ててしまう。

 

 やがて膣内に収まっていたリオンの陰茎が硬さを増し痙攣した事を敏感な私の膣は感じ取る。

 おそらくあと数往復で限界に到達する、そう察した私は腕と足をリオンの体に絡めた。

 それを切っ掛けにリオンは勢いよく腰を前へ叩きつけた。

 

「……ぁ」

 

 次の瞬間、膣の奥に生温かい感触が広がっていくのを感じる。

 失禁ではない、リオンの亀頭から勢い良く精液が膣内へ放出されたのだ。

 同時に私の女性器から脳を遡るように凄まじい快感が押し寄せていく。

 呼吸すらも覚束ないぐらいの快楽の奔流。

 為す術も無いまま私の体は痙攣し、唯一出来たのは膣口から精液混じりの新たな愛液を放出する程度だ。

 その快感に心に抱えていた不満や怒りは遠ざかってしまう。

 強張っていたリオンの体から力が抜け、私の体を強く抱いていた彼の腕が優しい抱き締め方に変わっていく。

 それだけで心が満たされるが、体は更なる交わりを求める欲求が募っていくのが分かる。

 きっと今日も二度三度の交わりで終わらない。

 そんな予想を心の何処かで期待しながら私の意識は遠のいた。

 

 

※ ※ ※ ※ ※

 

 

「いや、マズいだろこれ…」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 思わずそんな感想が口から漏れる。

 我ながら興奮し過ぎた、いつも以上に加減が利かなくて思いっきりアンジェを抱き潰した。

 何回も膣内射精を繰り返したアンジェの膣口から大量の精液が漏れ出してるし、当のアンジェは意識が朦朧として白目を剥いている。

 破けたストッキングは二度と履けないぐらいボロボロ、呂律の回らないアンジェの口からは意味不明の言葉が呟く無惨な状況だ。

 しかも精液はアンジェの女性器だけじゃなく体やベッドのあちこちまで飛び散っていた。

 誰がどう見ても複数人に強姦された状況です、婦女暴行事件で官憲が捜査を始めちゃうぞコレ。

 

 でも頼むから言い訳させてくれ。

 大好きで大好きで堪らない嫁が若い頃の格好をしてたら興奮するだろ?

 しかも胸とか尻とか太腿がパツパツなら仕方ないじゃん。

 これでも必死に我慢しようとしたんだよ、頼むから信じてくれよ。

 なのにアンジェがいきなり怒り出して迫って来たら拒めないじゃん、しかも妙に積極的でいつもとは違う方法で気持ち良くしてきたら我慢なんて無理ッ!!

 

 その結果が今の状況です、いや本当にどうしようコレ?

 でもなぁ、これだけ悲惨なのにアンジェは綺麗なんだよなぁ。

 何て言うか凄く大切な物が壊れた時の妙な解放感というか、必死に積み上げた玩具をわざと壊す快感というか。

 

 あ、いかん。

 ちょっと、またムラムラしてきたぞ。

 流石にあと数時間で夜明けだ、それまでにアンジェの服装を整えないとヤバい。

 

「……でも、その前にもう一回だけ」

 

 我慢できずにアンジェの膣口に亀頭を合わせると挿入を開始してしまう。

 結局ギリギリの時間までアンジェを抱き続けた俺は次の日の仕事をろくに熟せずアンジェに怒られた。

 俺に抱き潰されたアンジェはベッドから出られず寝室で過ごし子供達から心配され恥ずかしそうだった。

 でも何か、いつもより興奮したせいなのかしばらくは俺とアンジェの関係がいつも以上に情熱的になってくれたのは良かったと思う。




モブせかアニメ2期記念成人向けSSになります。
このシリーズのリオンは学園に進学していないので、アンジェが制服を着て迫るシチュにしました。
今までアンジェのコスプレやドレスを着たエッチは書いてきたましたが、各所で描かれた学生服姿でのエッチは書いてなかったのでこのシチュに。
制服萌えは制服を着る習慣の無い国や制服を着た事が無い人には萌え要素にならないという話を知って題材にしました。

今章の挿絵イラストはやむっ様とBOCA様に描いていただきました、本当にありがとうございます。

やむっ様 https://www.pixiv.net/artworks/12655430 https://www.pixiv.net/artworks/128280895(成人向け注意
BOCA様 https://www.pixiv.net/artworks/140200902(成人向け注意

ご意見・ご感想を戴ければ今後の励みにしたいと思います。
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