気持ちが通じ合った公爵令嬢と田舎貴族は契りを交わすそうです 作:品☆美
バルトファルト領に於ける宿泊施設はニ種類に分かれる。
傷病者向けの湯治施設は医療目的として王国から補助金を受けて運営される。
観光客向けの宿泊施設は外貨の獲得を目的にバルトファルト家が中心となって運営する。
その宿泊施設も大衆向けの一般的な宿と富裕層向けの高級宿の二種類がある。
観光客向けの宿泊施設もリーズナブルな大衆向けは現状に於いて稼働率が高いが富裕層向けの稼働率はそれ程高くない。
現状は湯治施設に注力し、いずれ観光客向けの歓楽街を設立する・何らかの特産品を開発し集客を行う等の構想が存在する。
リオンは勿論、王妃教育で経営学や政治学を学んだ私自身も実際に運営するのは初めてなのであらゆる事が手探りだ。
そんな高級宿の一部屋をバルトファルト家は常にキープしている。
主な目的は稼働率の底上げと賓客が突然来訪した場合に備えての対応策だ。
ただキープして使わないのも勿体ないのでバルトファルト家の皆が無料で宿泊できるようにしてある。
男爵夫妻やリオンの姉妹は既に幾度か泊まったらしい。
だからリオンと私が宿泊しても問題は無い。そう、問題無いはずだ。
なのに従業員達からの視線が妙に気になる。
いや、これまで視察としてリオンと共に幾度も訪れたのだから変化は無いだろう。
高級宿の従業員は高位貴族や富豪をもてなす場合に備え徹底的に吟味し、レッドグレイブ家の推薦で身元が確かで口が堅く優秀な者を雇用した。
それでは何故?と考えた結果ある事実に気が付く。
私とリオンの関係性の違いだ。
当時の私はあくまでもリオンをビジネスパートナーと考えていた。
領地経営を円滑に行う為に必要だから世話をしていると自分では思っていた。
しかし、それを傍から見た者はどう考えるか?
婚約者である病身の領主に甲斐甲斐しく付き添う令嬢と思われなかったと断言できるか?
もしそうなら一緒に宿泊施設を訪れた所で今更だ。
変わったのは私、変わってしまったのは私。
私は自覚するずっと前からリオンに惹かれていた事になる。
その事実がひどく恥ずかしかった。
※
宿の受付で借りた入浴に必要な品々を収めた籠を携え宿の廊下をリオンと共に歩く。
新築された建造物の香りから温泉特有の匂いへ湯殿に近づくに連れて移り変わる。
「男性浴室」「女性浴室」と大きく書かれた扉が見えてきた。
「それでは入るか、終わったら部屋で待ってて欲しい」
リオンにそう告げて女性浴室に入ろうとするが背後の気配が消えない。
振り返るとリオンが扉の向こう側に備えられた女性脱衣所に入ろうとしている。
「男性浴室はそっちだぞ。忘れたのか?」
「いや、一緒に入ろうかなと思ってさ」
「……はぁ?」
口から思わず奇妙な嘆声が漏れる。突然何を言いたすんだこの男?
「他の客がいるだろう。変質者として爵位を剥奪されたくないなら男性浴室に入れ」
そう言って男性浴室の扉を指を差す。
「俺達以外に宿泊客はいないってさ。今日は俺達の貸し切り」
「…………」
そういえば外履きを借りる為に先に宿へ向かっていたな。受付で宿泊客の情報を仕入れたか。
いや、旨い話がそう都合よくあるか?
そう思い始めると急速に頭が働き始める。
そもそも温泉に誘ったのはリオンだ。私が逃げられないように靴を履かせずお姫様だっこで運んだのもリオンだ。
全てリオンが仕込んだと思えば辻褄が合う。
「嵌めたなリオン!」
「さぁ?一体なんの事?」
口元がニヤついてるのを隠しきれてない。何でそういう所だけは異常に智慧が回るんだ貴様。
最初から私に逃げ道など存在しなかった。このままリオンの為すがままにされる運命なのか。
それは別に構わない、リオンが私を求めるのなら受け入れる覚悟はある。
だが搦手を用いて私の逃げ道を塞ぎ陥れるような性根が腹立たしい。
なので少しばかし揶揄っても罰は当たるまい。
「そうか、リオンは私を籠の中の鳥のように囲いたいのだな…」
「そんなつもりはないって」
「いい、分かってる。リオンが体を求めるのなら私に拒否権は無い。甘んじて受け入れよう」
「違うって、話を聞いてくれ」
「殿下との婚約を破棄された私と結婚しようとわざわざ思うのは色狂いの好色貴族ぐらいなものだ。純潔でなくなった私ならリオンに嫁ぐしか生きる道は残されていない」
「ちょっと待て!」
「心が通じあったと思っていたのは私だけだったのか。手籠めにされてもうレッドグレイブ家を頼れずリオン以外に縋れる者が存在しないのに…」
「違うから!!」
そう言うとリオンは頭を下げ始めた。
「ごめん、アンジェを驚かせたかっただけ。疚しい気持ちは誓ってない。ちょっとしたお祝いのつもりなんだ。傷付いたなら謝るよ」
リオンの慌てる姿に笑いを堪えて体が震えるのが泣いてるように見えたらしい。
少々やり過ぎたかもしれない。我ながら底意地が悪いが元はと言えばリオンの行動が発端だ。
これに懲りて今後は控えて欲しい。
「………プっ」
「アンジェ?」
「くふふふふふ」
「なんだ、嘘泣きかよ…」
漸く気付いたらしきオンは安心すると同時に拗ね始めた。
「すまない。だがリオンで裏でコソコソと謀をするも悪いんだぞ」
「だって直接言ったらアンジェは嫌がるだろ」
「そんな事はない。リオンの要求なら受け入れる度量はあるつもりだ」
「本当に?」
「本当だ。だが女には相応の準備が必要だ。特に私は見栄っ張りだからリオンが他の女に目移りしないように一番綺麗な姿で私だけを見て欲し…」
……何を言い始めているんだ私は?
リオンを揶揄うのに夢中でとんでもない惚気を口走っている。
「あの、だからな、私はリオンが他の女に目移りする事に耐えられない」
「あぁ、うん」
「その、リオンが私だけをずっと見てくれるよう常に綺麗でいたい」
「大丈夫だから、分かってるから」
「せめて、何かする時は心の準備が出来るように事前に教えてくれるとありがたい」
「これからは気を付けるよ」
「決してリオンに求められるのが嫌ではないんだ。ただ、どうして良いか分からなくて」
「なんか、ごめん…」
「いや、私の方もすまない…」
自分の言葉が照れくさい。好きな男児へ独占欲丸出しの女児か私は。
リオンの方も若干顔を赤らめて私から視線を逸らす。
なんとも居たたまれない空気が周囲に満ちる。
「温泉、入るか…」
「うん…」
先程までと打って変わり、何とも気恥ずかしさを抱えたまま私達は同じ脱衣所へ入った。
※
脱衣所に入り一枚一枚衣服を脱いでいく。
全て脱ぎ終わった後に備え付けの姿見鏡で全身をチェックすると体のあちこちに赤くなった箇所が見つかった。
それはリオンが昨夜の情事で私に遺した痕と分かると恥ずかしさがこみ上げる。明日は服装に気を付けなければ。
盥を湯で満たし体に浴びる。何度も浴びて体にこびり付いた汚れを清めると漸く人心地がついた。
湯に浸かる前に丁寧に体を洗おうとすると背後からリオンが近づいてきた。
「洗おうかアンジェ?」
どことなく楽しそうなリオンに嘆息する。この男は本当に懲りない。
「いやらしい事をするつもりは?」
「無いぞ」
「本当は?」
「少しあるかな」
「………」
「ごめん、かなりある」
正直に言ったから許すが、そうまで私の体に執着するのはいただけない。
それでも求められるという事実に悪い気はしなかった。
「いやらしい事は無し、きちんと洗ってくれるならお願いする」
「わかった」
そう言うとリオンは石鹸を泡立て私の体に塗る。
首から肩、肩から腕と胸、胸から腹、腹から足と順々に洗われてゆく。
意外な事にリオンはきちんと洗ってくれる。時折体を揉むがそれは筋肉が凝り固まった箇所に限っている。
逆に私の方が物足りなさを感じている。泡に塗れゴツゴツしたリオンの手が触れる度に昨夜の愛撫の記憶が呼び覚まされ体の最奥で眠っていた情欲の炎が少しずつ起き始める。
リオンは確かに局所を洗う事を避けたが、逆にそれをもどかしく感じてしまう。
最後は髪を洗われ頭からゆっくりと湯をかけられ体に纏わり付いた泡が流れ落ちる。
先程まで体を覆っていた倦怠感が消え失せ清々しい気分で体が満たされる。
「凄いな、どこで習ったんだ?」
「子供の頃から小遣い稼ぎに仕事で疲れた父さんの体を揉んでたからな。あと軍に入ってた頃は先輩や上司に媚び売りの一環としてやってた」
何とも哀しい体得理由だった。
「じゃあ、今度は私の番だな」
「え?」
「子爵様に手ずから洗ってもらったんだ。報いるのが筋だろう」
「いいよ、しなくても」
心と体がリラックスしたからだろう。
いや、体に灯った情欲を誤魔化したかったせいだ。わざとらしいほど陽気に接する。
石鹸を泡立てリオンを床に座らせる。
「ほら、大人しくしろ。ピカピカにしてやる」
そう言ってリオンの体を洗い始める。
小さく細い私の手では拙い洗い方だがその分気持ちを込めるつもりだ。
ゆっくりと撫でるように背中に泡を塗りつけて揉む。
先程のリオンの洗い方を真似て緊張を解すように。そうして洗っているとリオンが体を揺すり始めた。
「大人しくしろ、洗えないじゃないか」
「もういいからさ、早く温泉に入ろうぜ」
何とかリオンを大人しくさせようと向き合った瞬間に彼の腰に巻かれたタオルが落ちた。
其処には猛々しく
何とも重苦しい空気が辺りに立ち込める。
恥ずかし気に目元を手で覆うリオンと対照的に陰茎はヒクヒクと蠢いていた。その陰茎が先端の方向には私が存在する。
『リオンが私に興奮している』
そう思っただけで私の秘所はヌルリと濡れ始め溢れ出た愛液が股を伝った。
「ごめん、いやらしい事をするつもりは無かったんだけどな…」
誠実に謝るリオンに対し自分がひどく淫蕩な女に思えた。
だが仕方ない。昨夜の交わりで私は変わってしまった。
愛する者に抱かれる喜びと快感を知り、それに耽溺する素晴らしさを味わった。
もう戻れない、戻りたくない。
「その、つらいのなら私が何とかしてもいい」
内に巣くう欲望を隠し、さもリオンを心配する体で話を進める。
もしリオンが肉欲に屈し私を押し倒した所で今の私は喜悦の声を上げ受け入れてしまう。
思わぬ返事にリオンの顔が綻び耳元に彼の口が押し当てられる。
「じゃあさ、して欲しい事がある…」
リオンから齎された提案に私は羞恥に身悶えしながらひどく興奮していた。
※
「これを初めて考えた奴は凄まじい性倒錯者だ」
そう悪態を吐きながら下準備を始める。
石鹸を泡立て幾度も胸の谷間に塗り付ける。乳房だけ泡塗れな姿が逆にいやらしい。
「それをやりたがるリオンも同じ位の変態だと認識する」
「文句を言いつつやってくれるアンジェも同罪だと思うぞ」
「何か言ったか?」
「いいえ、何も」
口を塞いだリオンはタオルを湯殿の床に敷くと仰向けに寝る。
床に沿って平行になったリオンの体の一ヵ所だけが垂直に佇む。そそり勃つ陰茎は奇怪なオブジェに見える。
私はリオンに覆い被さるようにゆっくりと体を下ろす。但し場所は私の胸がリオンの股間が当たる位置だ。
乳房に熱くて硬い何かが押し当てられるのを感じる。言わずもがなリオンの陰茎だ。
陰茎の硬さに屈した乳房が変形する。陰茎を押し当てられる度に左右の乳房を犯される気分になった。
「あ~~~ッ、気持ち良い。アンジェのおっぱいは最高だ」
乳房を犯す陰茎の快感が余程大きいのだろう。身悶えするリオンは本当に気持ち良さそうだった。
「リオンは本当に胸が好きだな。もし私の胸が小さかったら婚約しなかったのか?」
「アンジェの胸が偶々大きかっただけだよ。好きな女の子ならどんな体型でも気にしない」
そう言われると嬉しくなってしまう。
無駄に大きく、着られる服装が制限され、腕を動かす度に邪魔になり、重みで肩が凝り、運動すると谷間が汗で蒸れ、時にいやらしい視線で見られる私の乳房。
コンプレックスに近く自身にすら厭われる部分が最愛の人を喜ばせている。
その事実が私とリオンの関係を肯定してるようで笑みがこぼれた。
「これからリオンは私の胸だけを見ろ。他の女に目移りしたらダメだ」
「アンジェも露出が少ない服を着てくれ。助平な奴がアンジェの胸を見ていると思うだけで狂いそうになる」
互いに独占欲を隠す事なく所有権を口にする。
リオンは私の物であり、私はリオンの物。
そうして惚気る私の上半身の裏で下半身は情欲と嫉妬に濡れていた。
幾度も昨夜の情交で突かれ抉られ嬲られた私の雌としての部分。
乳房から齎される陰茎の感触をもし膣で味わえたら?
『何故お前が愛されてる。本来愛されるべきは私なのに』
内股を濡らす分泌液が膣の嫉妬と愛欲の深さを表すようだった。
反対にリオンの陰茎に愛されてる乳房は与えられる快感に酩酊する。
その乳房の中心に存在する乳首は陰茎のように硬く大きくなっていた。
乳房に揉まれる陰茎に乳首が当たった瞬間に胸から途方もない快感が伝わってさらに膣の嫉妬を煽る。
やがて私自ら胸を差し出すような体勢になったのを見届けたリオンは私の双丘に手を伸ばす。
「うぅん!?」
いきなり乳首を抓まれた。自分で触れるのとはまた違った快感が押し寄せる。
許容できる以上の刺激に思わず身を捩って逃れようとするがその度に乳首を引っ張られる形となり逃げられない。
「こら、止めないか」
「嫌だった?」
嫌ではない。むしろ良すぎて私の方が先に達してしまいそうだ。
意地が悪い口調で責めるリオンに視線で訴えると名残惜しそうに指を離してくれた。
解放された乳房をリオンから逃がすように仰け反ると今まで胸の谷間に隠れていた陰茎が姿を現す。
亀頭から分泌液を垂らし痙攣する威容が私の目に焼き付いて離れない。
「咥えて」
拒否を認めぬ口調でリオンが告げる。
無論、拒否するつもりは毛頭ない、むしろ私の方からしたかった程だ。
チュッ…
陰茎の先端である赤黒い亀頭にそっと口付ける。
唇への接吻と同等、或いはそれ以上の熱情を込めて。己の陰茎に嫉妬したリオンがさらに私とのキスを求めるように。
亀頭、幹、根本、睾丸へ順々に接吻していく。その度に呻くリオンが愛おしい。
満足すると舌を出し陰茎に絡める。舌に伝わる熱さと重さ、鼻腔を焼く性臭、視界を覆う肉欲の権化。
口を窄め舌を添われると陰茎をゆっくり口内へ導くが全てを収める事は不可能だった。
ゆっくりと前後に頭を動かし何とか咥えられる範囲で必死に快感を与えようとする。
視線は上げずただリオンの股間のみを見つめていた。
快楽に蕩け嬉しそうに陰茎を舐める表情を見られてしまったらどうなるか?
背徳的な想像はより昏い情欲を生み出した。
私は無意識の内に左手で乳房を、右手で股間を撫でていた。
右手に触れた秘所は失禁したように熱く濡れていた。
親指で陰核を撫でながら秘裂に人差し指と中指を挿れる。
だが足りない。全然物足りない。熱も硬さも太さも長さも圧倒的に足りてない。
私の欲望を鎮めてくれる存在は口中に在る。己の口を膣に見立てて自涜するのを止められない。
「アンジェ、そろそろ
リオンの言葉と痙攣する陰茎から終わりが近い事を察しより口淫の動きを速める。
胸を触る左手と秘所を弄る右手の動きも同様に加速する。
いやらしい湿った音と私達の獣じみた呻きだけが湯殿に響き渡る。
終局までほんの数十秒だったのかもしれないし数分間だったのかもしれない。
「うぅ!」
リオンが一際大きな呻き声を出すと口の中で何かが弾けた。
そして彼が達したと当時に私も絶頂を迎える。
舌に絡む精の味は苦いとも塩辛いとも言えない味の筈だが快楽に犯された脳は美味と感じた。
「エ゛ホッ、ゴホッ」
口から漏れ出し床に落ちた子種を慌てて受けようとするが上手くいかない。
「大丈夫かアンジェ?汚れるし無理すんな」
良くはない。
もし膣に出され子宮に到ったら私達の子になったかもしれない子種。
それを受け止めきれなかった事に対し罪悪感がこみ上げる。
「その、気持ち良かったか?満足できたか?」
「すごく」
スッキリした顔で告げるリオンとは相反し私の秘裂に宿った情欲は些かも衰えていなかった。
「汚れちまったから洗い直しだなこりゃ」
「………そうだな」
そう言って私達は自分の再び己の体を洗う。
欲望を洗い落とすようにどれだけ湯を浴びても興奮は冷めなかった。
愛情と性欲の境界線は何処にあるんでしょうか?
という訳で温泉でのエッチ回(前半)となります。
ちょっとエッチシーンが長めになったので本番は次回。
アンジェさんがかなりエッチな女の子になったのは、初心な子がエッチの時にノリノリだと楽しい私の性癖です。
本日はコミカライズ10巻発売日。アンジェさんが表紙にいたら絶対零度の視線で睨まれる所でしょう。
追記:依頼主様のおかげでDepo様に今章のイラストを描いていただきました。ありがとうございます。
Depo様 https://www.pixiv.net/artworks/110031275