気持ちが通じ合った公爵令嬢と田舎貴族は契りを交わすそうです 作:品☆美
私がバルトファルト領を訪れ一年が経つ頃、正式な婚姻が行われ私はアンジェリカ・フォウ・バルトファルトとなった。
レッドグレイブ家は王都での挙式を提案したが私達は固辞した。
私の評判は未だに回復しきれていないし、公爵家の娘婿になったリオンが周囲から受ける嫉妬を避ける為だ。
貴族同士の結婚としては身内だけの小規模な式でリオンは申し訳なさそうだったが私は満足している。
リオンと夫婦になれるなら形式に拘る必要は無い。リオンが私の隣にいるのが最重要なのだから。
結婚して三ヶ月ほど経った頃に急な体調不良に襲われた。
慌てたリオンが領内の医師を総動員させた結果、私の懐妊が判明する。
バルトファルト家は喜びに満ち溢れたが私とリオンの内心は冷や汗が流れていた。
何せ婚姻前から私達は情交に耽溺していたのだから。
一応は避妊していたが私もリオンも盛り上がるとつい羽目を外してしまいがちなので、挙式前に孕まなかったのは単なる幸運に過ぎなかった。
何とか誤魔化す為に『バルトファルト領の温泉は不妊に効果がある』等の噂をさり気なく流した結果、これが功を奏したのか女性客が増えた。
まさか領主の正妻自身が広告塔になるとは思わなかったが、こうした事情もあって私の懐妊はすんなりと周囲から受け入れられた。
レッドグレイブ家からは勿論、周辺の地方領主からも祝いの品を贈られたがその品々に混じってホルファート王家からの祝辞があった。
王家に対し蟠りが無いと言えば嘘になる。
それでも産まれてくる我が子に私の怨讐を引き継がせたくない。だから敢えて私は返礼の手紙を送った。
今の私は国母に為れずとも幸せだから。
もう殿下や聖女と関わる事は今後無いのかもしれない。それで良い。
互いに誤りどうしようもなく擦れ違ってしまった殿下と私だけれど、いつか思い返し笑える日が訪れる事を切に願う。
彼らには彼らの人生があるように私達にも私達の人生があるのだから。
華麗な舞台から退場したその後にも人生は続いてゆく。
もし私が悪夢に魘され目を覚ましても隣を見れば其処にリオンがいてくれる。
それだけで私は涙が出るぐらい幸福だから。
※
「小麦の収穫量は予想通り。今年開拓した農地が上手くいけば来年は倍近い生産を見込めると思う」
「だとすると問題なのは輸送手段の確保だな。レッドグレイブ家の伝手を頼り続ける訳にもいくまい」
「近くの領主と協力して流通ルートを作った方が良いかもな。上手くいきゃ安くて便利な販売網が出来る」
「だからと言って急に変えれば職を失う者が出る。王都向け商品の輸送を任せつつ徐々に移行しよう」
「また空賊対策に金がかかるなぁ」
バルトファルト邸の領主夫妻の寝室で行われる夫婦の会話としては些か色気の足りない話題。
婚姻して以来、私達の本拠はバルトファルト邸に移った。
政務を執り仕切るのに別宅は手狭で移動が面倒だったし、領主が子育てをするにも適さない。
別宅はそのままに、機能だけはバルトファルト邸の執務室に移した。
そして夫婦共同の寝室で私達は今後の領地経営に頭を悩ませる。
だが、これは我々バルトファルト子爵夫妻が就寝前に行う日課のような物だ。
リオンは領主としてまだ未熟であり、私自身も至らぬ点が多い。
そうして自然と就寝前にその日に行った政務を報告し合い今後の方針を定めるのが習慣になった。
「空賊をまとめて一掃できるロストアイテムとか欲しい」
「そんな都合の良い物が存在するものか」
「じゃあ未来を見通す予言者。来年の正確な情報が欲しい。楽して稼ぎたい」
「未来を予測できる者が実在したら真っ先に王家が確保している」
「いっそ兵士じゃなくて冒険者を目指すべきだった」
リオンは仕事がつらくなると愚痴が止まらなくなる。それを慰めるのも私の大事な仕事だ。
「冒険者になってたら私と出会う機会はなかったぞ」
「そりゃ困るな、アンジェが居ないと俺は生きていけない」
ロストアイテムを入手して素直に国へ献上する方が稀だ。リオンは私と出会う事なく一生を送るだろう。
リオンと出会わない人生など御免蒙る。
「それと王都の父上から陞爵の意思確認が来た」
「またか?」
心底嫌そうな顔をするリオン。普通の貴族なら飛び上がって喜ぶぞ。
「何で
「そもそもリオンの功績や領地の大きさを鑑みたらむしろ子爵という地位が低過ぎる」
敵軍に囲まれても奮闘し司令官を討ち獲った英雄に然るべき地位を与えない王家なら貴族からの支持は下がり謀反の危険性が高まる。
レッドグレイブ家からすれば娘の嫁ぎ先の爵位があまりに低ければ面子が保てない。
この点に於いてホルファート王家とレッドグレイブ家の利害は一致している。
「未だ王国の政情は不安定だ。共和国や神聖王国の動きも怪しい。父上と兄上に何かあれば公爵家を継ぐのは私達の子になる。いや、王家に何かあれば王に為れるだけの家格を持つのが公爵家という存在だ」
「きな臭い話に関わり合いたくねぇ。何とか誤魔化して」
「しかし陞爵すれば義務は増えるが保有する権力も増す。領地の発展には有利だ」
レッドグレイブ家は政治方針として幾度もホルファート王家と婚姻してきた。
私自身も末席ながら王位継承権を有している。
「レッドグレイブ家は国祖の時代から王家と近しい家系なので余計な柵が増える。根回しも進んでいるからおそらく数年後には否応なく陞爵するだろう」
「
レッドグレイブ家が私とリオンの縁談を勧めたのは案外そうした裏事情もあるのかもしれない。
まぁそんな眉唾物の出自を騙る下級貴族は後を絶たない訳だが。
「今の俺にとっちゃ嫁と子と領地が重要さ。中央で出世なんて考えたくない」
私が懐妊してからリオンは随分変わった。
産まれてくる我が子の為に率先して政務に取り掛かるようになっている。
その事が誇らしいのと同時に寂しい。身重の体ではどうしても無理が出来ない。
私はリオンと共に歩みたいが愛の結晶と言える我が子が重荷になるのがもどかしい。
そんな心中を隠しつつリオンの頭を抱いて撫でる。
「リオンはよく頑張ってる、えらいえらい」
子供をあやすような口調だが此れがリオンに一番効く。本人が言ったように私の胸が触れる程度でやる気を出してくれるなら安いものだ。
「明日の仕事は?」
「無いよ、半月ぶりの休日。皆がいい加減休めって言ってた」
むしろ身重という理由で夫に仕事を押し付け三食昼寝付きの生活をしている自分が申し訳ない。
明日はうんとリオンを労ってやらねば。
一緒にのんびり温泉に入り、一緒に美味しい料理を堪能し、一緒にぐっすりと眠る。
「じゃあ、そろそろ寝るか」
「そうだな」
懐妊してから体調面で様々な変化がある。
寝返りを打つのも一苦労だし、横になるとすぐに寝入ってしまう。
姿勢を変えようとする私の背と腰をリオンが支える。
リオンが過剰なぐらい私の世話を焼きたがるのが最近の悩みだ。
初子なので心配も期待もあるのだろう、領主が使用人に任せるような世話さえ手ずからやりたがる。
領主として成長していくリオンに対し懐妊してあまり手伝えない我が身が厭わしい。
彼に相応しい妻と為りたいのに際限なく甘えてしまう。何処までも愛に溺れ堕落してしまう自分が怖かった。
敢えてリオンから顔を背けて横に臥す。
「おやすみなさい」
いちいち悩むのは胎教に悪い、我が子には健やかに産まれて欲しい。
目を閉じて呼吸を整えれば眠りに落ちてしまうだろう。
明日を楽しみにゆっくりと力を抜いて私は微睡の狭間に落ちた。
※
人間は眠っていても完全に意識を失わないものらしい。
深く寝入っていても意識の一部は危険を感じられるように働いている。
覚醒している意識の一部が私の体と違う何かに触れられたのを察知する。
不快感はない、むしろ心地良くてもっと触れて欲しいと願ってしまう。
……いや、どうもおかしい。夢にしてはあまりに感触が気持ち良すぎる。
ゆっくりと目を開ける。眠りに落ちる前と寸分変わらぬ光景だ。
視線を下ろすの見覚えのある腕が私を体に絡まっている。
やや呆れたように嘆息し、私を捉えて離さない相手に声をかける。
「どうしたリオン、眠れないか?」
最近のリオンは寝ても悪夢に魘される事がほぼ無い。むしろ政務に勤しんでいるので横になるとすぐ眠りに落ちる。
リオンがこうした行動をする意味を私は理解している。
理解した上で敢えて問うているのだ。
「アンジェ」
「ん?」
「抱きたい」
その言葉を聞くだけで秘裂が熱く潤ってしまう。
なのに私が発する返事は己の願望と正反対だ。
「明日は休みだろう?ゆっくり寝ておけ」
「休みの前だからお互いの体調に気兼ねせず抱けるんじゃん」
ああ言えばこう言う。本当に悪知恵と口の上手さに関しては類を見ない優秀さだ。
「それにイチャイチャした方が子供の胎教に良いと思うぜ」
「性交する方が教育に悪い」
口では言い訳をしつつも私の体を撫でる手は随分と優しい。
これが私達夫婦の睦言。リオンが欲望を口にして私が許可を与える。
幼児が母親に菓子や小遣いを強請るように私との情交を求めるリオンが可愛らしくつい甘い顔をしてしまう。
「口や手で満足できないか?」
「無理」
「胸は?」
「おっぱいは別腹」
「その、準備に時間がかかるがお尻は?」
「待てない」
リオンと出会って二年近く、体を重ねるようになってから一年と数ヶ月が経った。
人生にとっては僅かな時間であるが、その短期間に私の体はすっかりリオンによって開発されていた。
もはやリオンが私の体で触れてない箇所は存在しない。
彼に求められるのが嬉しくて余程の変態的な行為でない限りは許可を与えて爛れた愛欲の閨を堪能した。
その結果が懐妊なのだから笑うに笑えない。後悔は一切ないが。
「腹に私達の子が居るんだ。優しくな」
「分かってるさ」
舌を絡めた情熱的な口付けを交わす。情交を慎もうという考えは更々無かった。
むしろ腹に子を宿したまま情交を行う背徳感に酔う私達は淫猥な獣としか言いようがない。
口付けを交わしながらゆっくりと寝間着を脱ぐ。
妊娠してからというものゆったりとした服装を愛用してるので手間がかからない。
布擦れの音だけが寝室に響き渡る。ベッドの天蓋を下ろすと其処は世界から隔絶された私達の愛の巣だ。
バルトファルト邸に移り住んだ当初、情事中に別宅にいた頃と同じように大きな声で喘ぎバルトファルト家の面々にそこはかとなく注意され赤面した記憶が懐かしい。
それ以来は寝室の防音対策や寝具の調達に苦労した。
仄かな灯りに照らされて私の裸体が夜の闇に浮き上がる。
乳房は授乳の為に懐妊前より一回り大きくなり同時に臀部も肥大、何より我が子を宿した腹部。
懐妊前と違い過ぎる体型は本当に己の体かと疑問に思うほど別物だった。
こうした体型の変化に戸惑い情交の回数が減り出産後も数年間は夫婦の営みが行われない方が多い筈なのに、リオンは回数こそ減ったが私との情事を控えるつもりは無いらしい。
「リオンは孕んだ私の体を見て萎えたりしないのか?」
「全然」
服を脱いだリオンの股間で陰茎が力強く脈動している。
どうやら我が夫は生粋の性倒錯者らしい。
「むしろアンジェが俺の妻だって事実に興奮する」
そう言つつも枕や毛布を敷き詰めて簡易な台座を作るリオン。私の体に負担が無いようにする為だ。
その台座の上に私が横たわると愛用しているストールを被せられた。
「妊婦が腹を冷やしちゃマズいからな」
むしろ全裸なのに腹だけ丁寧に隠されてる方が卑猥ではないのか?
準備が整うとリオンは私の乳房に手を添わせる。
荒々しい情事の手付きではなくマッサージするように優しく丹念に。
掌から伝わる温かさが心地良い。性感を刺激するのではなく体を労られるような心地よさ。
懐妊する前よりさらに大きくなった乳首に触れられる度に安心感と快感に悶える。
そうして揉まれ続けられ血流が流し込まれた乳房の先端から熱い疼きを感じる。
まるで愛情が沁み出したかのような錯覚を覚えた瞬間、乳首からトロリと何かが湧き出した。
私の母乳だった。
優しく揉まれるせいで緩やかに母乳が噴き出てしまう。私の興奮が母乳に変換されたように溢れる母乳が乳房を濡らす。
天蓋の内に漂い始めた母乳の匂いがひどくいやらしい。
我慢できなくなったリオンが私の胸に口を付ける。噛み跡が残りそうなぐらい強い力で乳首を噛まれた。
「俺がこのおっぱいを独占できるのもあと少しかぁ」
私の胸をしみじみと吸いながらリオンが阿呆な事を呟く。
実際、あと二ヶ月もすれば私達は母親と父親になる。二人きりの夫婦になれる残り時間は僅かだ。
「リオンは後悔してない?」
「何が?」
「私を娶って孕ませた事。結局はリオンが領主の務めから逃げられなくなってしまった」
彼は初めて会った時から領主になどなりたくなかった。
ただ心優しい女性と結ばれ夫婦となり悠々自適な生活を送りたかったはず。
私と婚約した為に領主として務めを果たし義務が生じ、産まれてくる子の為に領地の経営に苦慮しなければならなくなった。
貴族という地位に縛り付けているのは私と子なのだ。
「後悔はしてないな。綺麗な嫁さんと可愛い子供の代償としては安いだろ」
「私が公爵家に生まれなければもっと楽になれた」
懐妊して仕事から幾分遠ざかり時間を持て余して気付いたのは私自身の自活能力の無さだ。
我が子の産着を繕う事も、夫が好む料理を作る事も、掃除や洗濯で身の回りを整える事も。
全てが人任せ。如何に政治や経営に詳しくてもその力を発揮する場を失えば何も出来ない小娘に過ぎない。
なまじ平民出身の義母が家事能力に長けているのでより己の至らなさが分かる。
もし私が平民に生まれていたらリオンは私を好きになってくれただろうか?
リオンが爵位と領地を剥奪、或いは全てが嫌になって出奔したら私は重荷にしかならない。
つい、そんな事を考えてしまう。
「んっ……」
突然股間に快感が走り身悶えする。膨れた腹のせいで股間が隠され何が起きたか把握できない。
視線をずらすとリオンの右手が私の下腹部へ伸びていた。
どうやら考え事をしてる隙に手を這わせたらしい。
「アンジェは生真面目過ぎ」
そう言ってリオンに唇を奪われる。
口中に唾液以外のほんのりと甘い味が舌に残る。私の母乳の味だ。
リオンが舌で私の口中を、左手が乳房と乳首を、右手が秘裂と陰核を嬲り始める。
「不安なのは俺も一緒だけどさ、そんなに頼りない?」
「そんな事はない」
既にリオンと共に生きると覚悟を決めている。
その覚悟はあった筈なのに懐妊して産まれてくる子を想うとどうしても心が騒めいてしまう。
「母さんに聞いたけど妊娠してると不安になりやすいらしいぞ」
「そうかもな、やる事も無くついつい考え込んでしまう」
「だから不安にならないように俺がいっぱい愛する必要がある」
「単に私を抱きたいだけだろう?」
「ダメかな」
「ううん」
再び唇が重なる、不安は和らいでいた。
リオンに求められるとすぐ蕩けて良いように翻弄されてしまう私は扱いやすい女なのだろう。
それでも良い、彼が私を見てくれるだけで心が安らぐ。
ゆっくりと唇を離したリオンは次に私の股間に顔を埋める。
湿った音が鳴り響くと新たに齎される快楽に腰が抜けそうになる。
舌で膣口を責められ、唇で陰核を吸われ、膣内を指が抜き差しされ続ける。
感触はあるのに山のように膨らんだ腹で秘所がどんな様子になっているか見えない。
己の股間で起きている事を想像するだけで背徳的な快感が押し寄せる。
「アンジェのここも随分変わったな」
「そ、そうか?」
「襞がビラビラして黒ずんでる。弄り過ぎじゃない?」
「嘘ッ!?」
そもそも股間の処理は懐妊して腹が膨らみ始めてからリオンがするようになった。
私自身では上手く剃れないし、バルトファルト家の者に頼む訳にもいかず、侍女に任せるなど言語同断である。
一緒に入浴しながら嬉々として私の下の毛を処理するリオンに呆れたものだ。
まさかリオンにそんな事を言われるとは思わずショックを受ける。
「ほ、本当?」
「……」
「もう私を抱きたくなくなった?」
リオンが何も言わないので不安に陥っているとリオン頭を上げた。
楽しそうに笑っていた。
安心と羞恥と怒りで顔から火が噴き出そうになる。
「騙したなリオン!!」
「ごめん、アンジェが可愛くてつい」
「許さん!もう今夜は寝る!」
もう知った事か、さっさと寝てやる。一人寂しく夜を過ごせ。
そう思っていたのにリオンは秘所への愛撫を再開し始めた。
「んッ!止めろ!弄るなァ!」
「お詫びにきちんと気持ち良くするから」
「そう意味じゃない!ァアッ!」
頭は拒んでいるのに体は愛撫に狂おしいほど反応してしまう。
乳房は母乳を、膣は愛液を分泌するのを止められない。
身を捩って逃げようとしても快感に翻弄されて腰をカクカクと無様に振るうしか出来ない。
やがて来る絶頂に体を竦めて耐えるしかない。
そう思った瞬間、陰核に歯で噛まれた。
「――――ッ!!」
股間から痛みとも快楽とも判別できない衝撃を感じ私は絶頂した。
後日談の後日談。(別名:妊娠END
とりあえず妊娠後も書いてみようと思ったのですが、書いてみると結構な分量になったので前後編に分かれました。
令嬢モノのラストは結婚式・妊娠・温かい家庭が多いので妊娠ENDを選択。
単にボテ腹エッチが書きたかっただけとも言う(エロゲ脳