クローバーは爛れてる 作:コモヤモ
背後で鍵の掛かる音がした。
振り返ると、ついさっき入ってきた扉の前に恋人が立ち塞がっている。いつもと変わらない冷たい表情。けれど、私を見据える視線に普段以上の圧力を感じる。
七日に一度のデートの日だった。二人で街を歩いて、ゆっくりと食事をして、それから宿の部屋に入ったところだ。宿というよりも休憩所といったほうが正確かもしれない。宿泊もできるが、カップルが逢瀬を楽しむために利用することが主となる施設だ。
彼の紅い瞳がじっとこちらを見つめている。その視線に恐怖を覚えて、無意識に一歩後ずさりしてしまった。恋人のはずの彼は後ろ手で扉のノブを回して、しっかりと鍵が掛かっていることを確認してから、開いた距離を詰めるように私のほうへ歩み寄ってきた。
「見たね?」と彼が問う。曖昧な言葉だったけれど、意味するところはすぐにわかった。
大股で歩み寄ってくる彼には有無を言わせない迫力があった。圧力に押されてじりじりと後ずさるも、宿の個室は狭く、すぐに背中が壁にぶつかってしまった。咄嗟に横に逃げようとしたところに彼の腕が伸びてきた。逃げ道を塞ぐように私の顔のすぐ横の壁に手のひらが打ち付けられる。
思いのほか大きな音が聞こえて息を吞んだ。片腕で逃げ道を封鎖したまま恋人がこちらに身体を寄せてくる。一見すると細身だけれど、しっかりと鍛えこまれた胸板が目の前に迫ってきた。腕と身体で作られた籠に捕らえられて、私は震えながら彼の顔を見上げていた。
「答えてくれ、キティ」
「……、……はい、見てしまいました」
彼――フクロウさまに見下ろされながら、自分が見てしまったものを思い出す。
食事中、飲み物を取りにふと席を立った恋人。彼の座っていた椅子の背に掛けられたナイトシーカーの外套。そのポケットから顔を覗かせていた一枚の紙片……。
気づいたときには好奇心が私を動かしていた。そっと抜き取った紙片は走り書きのメモのようで、短い言葉がいくつも羅列されていた。そこに記された言葉が意味するところを咀嚼して、理解して……、私は慌ててメモを元のポケットに戻したのだった。
見てはいけないものを見てしまった。その意識が私を硬くしたのだろう。二人分の飲み物を持って席に戻ったフクロウさまは、明らかに私の所作に違和感を覚えた様子だった。
だからだろう、食事を終えて宿の個室に入った今、彼は抱いた疑念を確かめるべく、こうして私に詰め寄っているのだ。
「そうか、見たのか」
「……フクロウさま、あのメモに書かれていたのは真実なのでしょうか?」
「だとしたら、どうする?」
声を震わせながら言葉を搾りだしても、彼は眉ひとつ動かさない。
喉が引き攣るような感覚があった。細切れの呼吸を集めてなんとか言葉を続ける。
「マギニアが探している古代文明の秘宝。それを横から奪い取ろうだなんて……。立場上、私たち冒険者はマギニアに雇われるという形で都市からの便宜を受けています。その契約において、確かに迷宮で発見された資源については、マギニアも発見者の権利を認めています。ですが……」
「唯一、マギニアの最終目的である秘宝に関してだけは、その限りではない」
「はい……。ペルセポネ姫が語るところの
言葉を切り、上目遣いで彼の表情を窺う。
そんなことはわかっているとばかりに微塵も表情を崩さず、彼は言葉の続きを待っている。
「それを、最前線のギルドの一員であるフクロウさまが奪おうとしているだなんて、もしマギニアの上層部に知られたら、どうなってしまうか。……最悪、ギルドへの支援の打ち切りや冒険者としての活動の禁止だってありえるかも……」
「そうだな。秘密が漏れたら大変だ」
「っ、きゃっ」
突然だった。肩を掴まれ、身体を横抱きにされて、そのままベッドの上に放り投げられる。
木製のフレームがぎしりと鳴った。スプリングの反動で身体が小さく跳ねる。そこから立ち上がるよりも早く、彼が私に覆いかぶさってきた。
頭の上で手首を押さえられる。膝の間に腰を挟まれた。身を捩ろうとしても抵抗できない。
彼の顔が近づいてくる。互いの吐息が触れるほどの距離。怯える私を見下ろして、フクロウさまが囁いた。
「だが、漏れなければ秘密は秘密のままだ」
「んっ、むぅ!?」
唇を塞がれた。いつもの優しいキスとはまるで違う、押し付けるような荒々しい口づけ。
目を見開く。視線が彼の紅い瞳とぶつかった。鋭く暴力的な彼の目に気圧される。
唇をこじ開けて彼の舌が侵入してきた。迎え入れる心の準備などどこにもなかった。あっという間に私の舌は彼に絡めとられ、根元から舌先に至るまでこねくり回され、何度も何度も執拗に嬲られてしまう。
「んぅ、む…ぅ、うぁ、ぁ…ん、ん…ん"ん"んぅっ」
彼の唾液が舌を伝って滴り落ちてくる。冷たくてほのかに甘い舌ざわりにぼうっとしてくる。
呼吸が苦しくて顔が熱い。目には涙が浮かんできた。視界が潤んでぼやける。混じり合った二人の唾が口の端から零れている。
「ちゅ…ぅ……んぶ……ぅぅ……ぐ……」
苦しい。けれど、彼はまだ解放してくれない。こんなに長い口づけは初めてだった。
自分の心音が聞こえる。ばくばくと大きな音を立てて悲鳴を上げている。
必死になって鼻で息をしているけれど、深く息を吸い込めない。呼吸のたびにたっぷりと口の中に溜まった唾液でむせそうになる。それを飲むたびに、彼の一部が私の中に入り込んでくるような気がして、お腹の奥が熱くなってきてしまう。
「ぅ……ぷはっ……、……けほっ……はぁ、はぁ……」
時間の感覚が曖昧になるほど長く唇を吸われて、意識が朦朧としてきて……。
けれども意識が暗転する寸前に、彼は私の口を解き放ってくれた。咳き込み、喘ぎながら、胸を上下させてなんとか新しい空気を肺に送り込む。
視界の四隅がちかちかと明滅している。掴まれていた腕がいつの間にか離されていたけれど、私は仰向けのまま起き上がることさえできていなかった。
ベッドの上でぐったりと脱力していると、今度は彼の腕が脇の下に潜り込んでくる。なにを、と考える暇もなく、私はうつ伏せになるように身体を転がされてしまった。
「うっ、ぁ……」
視界が180度ぐるりと回る。平衡感覚が狂うような眩暈がして声が漏れてしまう。
無意識にシーツを握ってじっとうずくまる私の上から、フクロウさまの声が落ちてくる。
「キティ、尻を上げるんだ」
「え……」
「聞こえなかったか? 尻を上げるんだ」
言葉の意味を理解するより早く、彼の腕がお腹の下に入ってきた。そのまま脱力した腰を掴まれて、足を引き寄せながらお尻を突き出すように持ち上げられる。
顔をシーツに埋めたまま、お尻だけが高々と掲げられた姿勢。彼の前にお尻をアピールするようなポーズ。その恥ずかしさを意識して、私は咄嗟に手足をばたつかせて抵抗しようとした。
「やっ……待ってください、フクロウさ――ひんっ!?」
「暴れるな。反論もなしだ。君は黙って言うことを聞いていればいい」
下半身で乾いた音が響いた。一拍遅れてひりひりとした痛みが肌に張り付いてくる。
お尻を叩かれた。そのことに気づいて、羞恥心に顔が熱くなる。両親にだってそんな折檻をされたことはない。だというのに、私の恋人は、さも当然のように恥ずかしい方法で私を躾けようとしている。その現実を認識して心臓が痛いほど早鐘を打っている。
「どうして、こんな……」
「キティ、
「っ、フクロウさま! そんなことをしなくても、私は絶対に――はうっ!?」
「反論はなし、と言ったはずだが」
またお尻を叩かれた。乾いた音に身を竦ませて、痺れるような痛みに震えながら、ぎゅっとシーツを握りしめる。半端に開いた口から涎が垂れているけれど、それよりも彼の言葉で私はいっぱいいっぱいになってしまっていた。
調教。そう言った彼の声が頭の中で反響していた。
心臓はいよいよ爆発しそうなくらい高鳴っている。冷たいように見えて本当は優しい普段のフクロウさまと、淡々と仕事のようにオンナを扱う今のフクロウさま。愛しい人の見せたそのギャップに、私は自身の危うい状況さえ忘れて、ドキドキしてしまっている。
気づいたときには、フクロウさまに促されるまでもなく、私は自分のお尻を目一杯高くして、彼の顔の前に突き出していた。自分の呼吸が荒くなっているのを意識する。ちらりと背後に見えた彼の目はぞっとするほど冷たくて、思わず背筋を震わせてしまった。
「そんなに尻を振って、何を期待している?」
「……っ」
「ずいぶんと物欲しそうだ。意外だな、そういう趣味があったのか」
フクロウさまにそう言われて、けれども否定の言葉は出てこなかった。ただただ死にそうなくらい恥ずかしくて、際限なく頬が熱くなっていくばかりだ。
彼は片手で私の首根っこを押さえている。東方の国のドゲザのように頭を下げさせられたまま、お尻だけが持ち上がっている。その恥ずかしい姿勢から私は逃れることすらできない。
何の前触れもなくスカートがぺろりとめくられた。ロングスカートの裾が私の視界を遮る。そのカーテンの向こうで、彼が私のお尻と下着を観察しているのがわかる。彼の視線が熱を持ったかのように、じりじりと私の大事なところを焦がしている。
「濡れているな。本当に期待していたのか。変態だな」
「や、ぁ……言わないで…ください……」
彼の指先が下着の上から割れ目をなぞった。冷たい湿り気を感じて、自分がはしたなく蜜を滴らせていることを意識してしまう。恥ずかしさから逃れようとお尻を左右に振ってしまい、それがまるで誘うような仕草だと気づき、もっともっと恥ずかしくなってしまう。ひどいループだ。
そんな私の羞恥など知ったことではないと言わんばかりに、彼はあっさりと私の下着をずり下ろした。晒されたお尻の素肌に風が当たるのを感じる。ごくり、と無意識に生唾を飲み込んでしまった。
またお尻を叩かれるのだろうか。首根っこを押さえられたままなので、後ろを振り向くことはできない。けれど、彼の手のひらがお尻のすぐそばにあるのだとなんとなく気配でわかった。
触れるか触れないか、ギリギリのところだ。空気を介して彼の手の体温がお尻に伝わってくるような気がする。錯覚かもしれないけれど、触るのを焦らされるほどにお尻の感覚が敏感になっていることは間違いなかった。
「ひくひくと欲しがりそうに入り口を震わせて。まったく、躾け甲斐がありそうだ」
「……はひっっっ」
予想していた痛みはやってこなかった。代わりに、彼の指がつぷりと割れ目に入ってきた。
不意打ちの快感に頭が跳ねそうになった。けれど、がっしりと首を押さえた彼の片腕がそれを許してくれない。身動きひとつできず、私はフクロウさまの指が膣壁を擦るのを感じることしかできない。それがまるで、ペットが主人に立場を教え込まされているようにも思えて、ぞくぞくと暗い心地良さを覚えてしまう。
「軽く指を入れただけで、もう洪水みたいだ。そんなに待ち遠しかったのか?」
「あっ…あ…だ、だって、フクロウさまが、焦らすから……ひんっ♡」
「この期に及んでヒトのせいにするとは、本当に悪い子だな」
彼の指が前後に動くたびに、じゅぽじゅぽと湿った音が聞こえてくる。
ぞりぞりと大事な場所を撫でられる快感に喘ぎ声が漏れてしまう。
一往復ごとに角度や強さを変える彼の指が、まるで蛇のように私の弱いところを探している。
「んっ、ぁ……あ"あぁっ♡」
「ああ、なるほど。ここが良いのか」
「うぁっ…あっ…やっ、そこ、だめ♡ だめですっ♡」
何度目かの触診で、ついに自分でも意識していなかった弱点を擦り上げられてしまい、私は上ずった声をあげてしまった。そのわかりやすい反応を確認して、彼が重点的にそこを責めてくる。
あまりの快感に突き上げたお尻がびくびくと震えてしまう。腰を逃がすことも許してもらえず、それどころか彼は指で
「っ…あ"っ…っ…ぁあ"…これ…っ…す、ご……あぁっ♡」
「ずいぶんと気持ち良さそうだな。この調子だとすぐにイキそうか」
「っ、は…い……っ、イきますっ! イっちゃいますっ!!」
耐えられない。気持ちいい。我慢できない。弾けてしまいそう。
チリチリと頭のてっぺんが気持ち良さで明滅している。
フクロウさまの責めは容赦がなくて、硬くなったクリトリスをいじめながら、Gスポットをわざと水音を立てるように弄っている。
私は一瞬で高みに押し上げられて、無我夢中で叫びながら絶頂した。
「あ"っあぁあ"……イ、イクっ…ぅぅ!」
高く掲げた腰が跳ねた。頭の中が真っ白になる。全身がびくりと痙攣して、余すところなく快感に包まれる。
腰が砕けてうつ伏せに潰れそうになる。だけど、フクロウさまはそれも許してくれなかった。
崩れ落ちそうになるお尻を支えたまま、彼は何事もなかったように指を動かし続けている。
「まずは一回。さて、それじゃあもうしばらく続けようか」
「あ"っあぁあ、待っ…っ"…もう…イって…あぁぁあ……♡」
「言ったろう、これは調教だって。体に絶頂の感覚が刻み込まれるまで、何度でも繰り返すとも」
「そ、んにゃぁあぁっ♡ フクロウさま、許し…っ、ぁあぁ、だめ、イったばかりで、あそこっ、敏感で……ぁああ"ぁああっ!」
「二回目。いいペースだ」
押し寄せる快感から逃げることができない。
フクロウさまの指に踊らされて、何度も何度も絶頂する。
「イっ…ぐ、ぅう"う"ぅ…あっ…やぁあ"あっ!」
「三回。まだいけそうだな」
「うぁぁあ、ぁ、っ"…む、りぃ…ぅ…こ、んなの、知らにゃあああぁっ!」
だらしなく涎をこぼして、浅ましくお尻を振り乱して、淫らに彼の指を飲み込んで。
繰り返し、繰り返し、何度も、何度も絶頂してしまう。
イキ続けて、頭が気持ち良さでぐちゃぐちゃになって、もう何も考えられなくなって……。
「ぅ…ぁ……イ…っ……ぅ……」
「八回。そろそろ反応が鈍くなってきたか」
頭の上から機械のようなフクロウさまの声が降ってくる。
私は荒波のような快感に翻弄されて絶頂し続けていた。気持ち良すぎて、手足に力が入らない。ふわふわと浮いているような気分。お尻を上げていることももはやできずに、私は膝を折ってベッドにうずくまっている。
虚ろになった瞳で、ぼんやりとシーツを見つめている。意識が朦朧としていて、彼の指がようやく止まってくれたことに気づいたのも、しばらく経ってからだった。
絡みついた膣肉をじんわりとほぐすように、ゆっくりと時間を掛けてフクロウさまの指が私の割れ目から引き抜かれる。潮まで噴いて濡れそぼった秘裂がぐぽんと音を立てた。千々に乱れた思考によぎった名残惜しさと解放感とで、私はもう一度小さく絶頂してしまう。
「ぁっ…あぅ、ぅぁ…あ"ぁぁ……」
「顔を上げろ。見えるか? これが君の中に入ってた指だ。こんなになるまで汚して、よっぽど気持ち良かったみたいだな」
首を押さえていた彼の片手が、首の下に回って顎を持ち上げた。目の前にぬらぬらと体液にまみれた指を見せつけられる。自分自身の痴態の証明が部屋のランプに妖しく照らされている。
「そうだな、せっかくだから君に綺麗してもらおうか」
「ぁ…え……?」
「キティ。なにをすればいいのか、言わなくてもわかるだろう」
「…………は、ぃ……。……ん…れろ…ちゅ……ちゅる……」
促されるままに彼の指に唇で触れて、舌で舐めて、口に含んだ。
ちょっぴりしょっぱい自分自身の体液を、力の入らない顎を使って丹念に舐めとっていく。
本当に綺麗にできているのか、それとも涎で余計に汚してしまっているのか、よくわからない。
そんな当たり前を考えるだけのまともな思考はどこかに置き忘れてしまったようだ。
「ちゅ……っ…うぁ…あぐ…ん、んぅぅ……」
「また膣が引くついているぞ。指を舐めさせられて興奮しているのか? やっぱり変態だな」
「ふ、ぐぅ…ぅん…ぁ、うぅ……♡」
なすがままに舐められていた彼の指が、口の中でいきなり動き出した。
舌を摘まんでこねくり回され、歯茎や口蓋を撫でまわされて……。口の中だろうと自分のものだと主張するように、フクロウさまは私を言葉で責めながら弛緩した口内を思うままに嬲っている。
「……まぁいい。前戯はこのくらいにしておくか」
「あ、ぅ……ぜ、ん……、え?」
「舌を止めるな。いいと言うまで舐め続けろ」
「むぐっ…ぅ…れろ……、っ"……」
口の中を乱暴にかき混ぜられる。それだけで再び思考が霧散してしまう。
片手の指を口に突っ込んだまま、フクロウさまが位置を変えた。うずくまった私に背後から覆いかぶさるような恰好だった。背中にうっすらと彼の体重を感じる。もう片方の手で肩を掴まれた。ぐちゃぐちゃに濡れた秘所に彼の腰が触れる。固くて熱い肉棒をあてがわれるのを感じて、私はぶるりと身震いした。
「挿入れるぞ。下半身を意識しろ。自分が何を咥えこんでいるのか、身体で覚えるんだ」
「ぁ…ぁ…あぁぁあっ! …かた…いのが…はい、っ…て……ぅぁああ♡」
さっきまでの指での責めとはまた違う、膣内を満たすような充足感が背筋を突き抜けた。
太くて固い性器が、上下左右の膣壁を押し広げながら、ずりずりと奥に入ってくる。
速さはない。激しさもない。だから、苦しさもない。ただただ気持ちが良い。
ぐずぐずに溶かされて無地になったココロとカラダに、じっくりと彼のカタチを覚えさせるような、そういうセックスだった。
「は、ぐ…ぅ…ぁ、あぁぁ…フ…クロウ……さまぁ……♡」
「あれだけイったのに切なそうに絡みついてくるな。そんなにコレが好きなのか」
「はひぃ…すき、すきですぅ……フクロウさまのおちんちん、だいしゅきなのぉ♡」
一国の姫であることも忘れて、私は蕩けた思考のままにそう言っていた。
口の中に突っ込まれた彼の指が、馬の轡みたいに私の顔を持ち上げている。口の端を引っ張られて、淫靡でだらしない笑顔を作ってしまっているのがわかる。
膣内の弱いところもとっくにフクロウさまにばれてしまっている。さっきまで指で責められていた弱点を、今度は逞しい肉棒がごりごりと刺激している。
「あっ…ぁあっ! こんな、の…また、イっちゃ……ぁあっ♡」
「いいぞ、何度でも、好きなだけ絶頂しろ。いやだと言ってもイかせてやる」
エビみたいに背中が反りかえった。きゅんきゅんと膣が啼いているのがわかる。
あんなにイったのに。あんなにへとへとだったのに。フクロウさまに抱かれてしまうと、どこまでも際限なく気持ちよくなってしまう。
屈服している。支配されている。隷属することさえ厭わない……。そんな被虐的な思考が頭の中を塗りつぶして、私の気持ちを否応もなく昂らせている。
「く、る…っ…また、きちゃい、ます…っ"…あ、あぁ、ぁあ…!」
「っ、ああ、俺も、今、キティの中に……っ」
「うぁ…ぁ…イっちゃ、ぁ、イっ…っ"ぐ、ぅぅぅっ!」
「っっ!」
どぷん、と溶鉄のような精液の塊がお腹の奥を殴りつけた。
灼き切れそうな快感が足の先から頭のてっぺんまでを焦がしつくす。
全身を痙攣させながら、喉を震わせてわけもわからず叫び声をあげて……、
「あ……ぅ……」
ぷつんと糸が切れたように意識を手放した私は、恋人の腕に抱かれながら崩れ落ちた。
「…………」
「えへへ、フクロウさまぁ♡」
それから数十分後。
私はベッドの上で恋人の腰に抱き着いてだらしなく相好を崩していた。
絶頂を重ねた身体は完全に腰が抜けていて、しばらくは立ち上がることさえできそうにない。だから、私はベッドに寝転がったまま、寝台の縁に腰掛けた恋人の腰に腕を回して、その温かくて筋肉質な腹筋に子猫のように頭を押し付けていた。このまま喉を撫でられたらごろごろと鳴いてしまいそうだ。
「ねぇ、フクロウさま?」
「ああ」
「すっごく、良かったですね♡」
「…………」
満面の笑みを浮かべて私が言うと、彼は言葉を探すように視線を彷徨わせた。
数秒後に、諦めたような溜め息。彼は私の頭をぐりぐりと撫でると、渋々といった様子で口を開いた。
「そうだな。俺も、良かったよ」
「フクロウさまってば、想像以上に素敵なサディストでしたよ」
「言うな、マゾ娘め」
「ひゃんっ♡」
ぺちん、とお尻を叩かれた。じゃれ合うような軽いスパンキングだ。小さな痛みに甘く痺れるような気持ち良さを感じてしまうのは、きっとフクロウさまに調教されてしまった証だろう。
「まったく……『今日は激しく責められてみたい』なんて言ったかと思えば……」
「えへへ。こんなお願いするのは、フクロウさまにだけですよ」
「当たり前だ。誰彼かまわずに言っていたらそれこそ大問題だ」
抱き着いた身体を引き寄せられて、今度は優しく頭を撫でられた。
全身の気怠さがひどく心地良い。
首を捻って彼の顔を見上げると、紅い瞳と目が合った。冷たさの奥に慈しみの色が見える彼の目を見つめながら、私は探るように自分の中の疑問を口に出した。
「フクロウさま、こういうシチュエーションをお願いしたのは私からですけれど……あの外套に挟んであったメモは、ただの演出じゃありませんよね」
「どうしてそう思う?」
「だって、
私は、小さく息を吸って、願望のような推測を言葉にした。
「本当の意味で、あなたの秘密を共有させてくれたから、ではないでしょうか」
「……あんなに乱れたあとなのに、よく頭が回るものだな」
「それ、褒めてます?」
「もちろん褒めているつもりだが」
いつもの仏頂面を崩して、彼が小さく笑みを浮かべた。
非常に珍しい表情だった。思わず私は目を奪われてしまう。
「確かにそうだ。魔が差したんだろうな。君にも知っておいて欲しいと思ってしまった」
「……フクロウさまのお気持ちは嬉しいです。でも……」
「大丈夫だ。実際のところ、それほど大きな秘密というわけでもないから」
「そうなのですか?」
彼の意外な言葉に目を丸くする。
「
「それは、マギニアと対立している海の一族とは別として、ということですか」
「そうだ。マギニアに雇われた冒険者の中には、少なからずそういう考えの人間が混じっている。ことによっては秘宝が雇い主の手に渡る前に掠め取って、都市から隔離してしまおう、なんて考えの連中がな」
「俺もそのひとりのわけだが……」と私の目をまっすぐに見据えながら彼は言った。
「どうしてそんな考えを? 横取りしてでも秘宝が欲しい、というわけではありませんよね」
「その手の考えを持つのは、別の都市の別の世界樹で、迷宮探索に深く関わった人間がほとんどだ。つまり、
「ろくでもない事態、ですか……」
「俺の故郷、タルシスでは戦争と民族浄化が引き起こされる寸前だった。よその出身のベテラン冒険者に聞いた話では、他の都市の世界樹でも古代文明の遺産が惨劇の引き金になっていた事例があるらしい」
そう語る恋人の顔には苦い感情が浮かんでいた。
私自身はレムリアの樹海が初めての探索の舞台で、他の都市の迷宮とその地の古代文明の顛末については詳しく知ってはいなかった。マギニアが求めているという古代文明の秘宝に関しても、ただ漠然と、多分すごいものなのだろうな、と思う程度の認識だ。そこに、彼や他のベテラン冒険者との温度差がある気がする。
「当然、というべきか、マギニアの上層部もそういう考えの冒険者がいることは把握している。開けっぴろげに考えを言いふらす冒険者はいないだろうが、色々なところから漏れ伝わっているんだろうな。しかし、だからといって、マギニアも該当する冒険者をいきなり排除したりはしない。各地の古代文明に詳しい人材は同時に熟達の冒険者でもあるから、その技能を丸ごと捨ててしまうのは彼らにとってもマイナスだからだ」
「……つまり、フクロウさまもひとまずは安全、ということですか」
「実際に行動は起こしていないし、あくまで内心で考えているだけだからな。そもそもこちらの考えを知られているかもわからない。それに、俺の心配がただの杞憂で、マギニアが件の秘宝を上手く使いこなす可能性だってある。もしそうなるのなら、俺も今までと変わらず、粛々と探索を進めるだけだしな」
なんでもないことのように肩の力を抜いて、彼はそう語っている。
けれど、言葉の調子とは裏腹に眼差しは真剣で、腰の辺りから彼の顔を見上げる私は、その真摯な視線にまっすぐ射抜かれていた。
「なにかが起こるのだとすれば、もっと探索が進んで、秘宝の姿が見えてきてからだ」
「今、クローバーは……」
「第八迷宮。世界樹を囲う列島をようやく半周ほどしたところだ」
まだ、半分。それとも、もう半分?
このまま環状列島のすべてを探索しきれば、古代文明の遺産に手が届くのだろうか。
保証はないけれど、レムリアの地の全容が明らかになるのだから、その可能性は高いはず。
もしフクロウさまの言うように、古代文明の秘宝が危険なものだったりしたら、果たしてそれを発見したときにマギニアの探索司令部はどういった対応を取るつもりなのか……。
「キティ。君は以前、この地を離れるときに、それ以降も君と関係を続けるのか、俺の返事を聞きたいと言っていたね」
「……はい」
「だけど、もしかしたら。それよりも早く、俺は君に、選択を突き付けないといけないかもしれない。都市につくか、俺につくか、だ。……あのメモを見せたのは、それを知っておいて欲しかったからなんだ」
・現時点でのギルドメンバーの目標
ツグミ(ゾディアック・ギルドマスター)
「このギルドの名声を高めて、故郷の連中を見返してやるわ!」
ヒバリ(ヒーロー)
「
カナリア(ガンナー)
「もっと強くなりたって、一流の冒険者として胸を張りたい」
ヒナ(メディック)
「一生懸命に頑張るカナリアちゃんを、一番近くで支えてあげたいの」
オオトリ(レンジャー)
「今度こそトップで迷宮を制覇してやろう。いずれはアーテリンデにもリベンジだ」
フクロウ(ナイトシーカー)
「レムリアの秘宝の正体とは。危険なものなら、マギニアにも渡せないが……」
全員
「「「「「「それはそれとして未知への挑戦と冒険って楽しいよね」」」」」」