※この作品はR-18です。

クローバーは爛れてる   作:コモヤモ

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祝・Ⅰ~Ⅲリマスター発売!




ツグミの性癖開発計画(百合、電気責め)

 飛行都市であるマギニアは、その性質上、保有できる国土に限りがある。

 人口に対して土地が足りないという意味ではない。むしろ元々の人口密度は低い方だ。レムリア探索に際して数千人規模の冒険者を新たに都市へと迎え入れるのが可能だったことからもそれがわかる。

 だけど、いくら現状に不足がないとはいえ、古代文明の遺産である飛行船を都市の土台にしているという構造上の問題がある限り、これから先もマギニアは国土の拡張を行うことができない。その純然たる現実が、マギニアの行政府を都市内の土地運用に対して神経質にしているのだ。

 だからこそマギニアにおいて大規模な不動産を所有している人間というのは、他の都市における同規模の地主以上に莫大な富と権力を保有している、というのが私の見立てだ。

 

 眼前にそびえる豪邸を見上げながら、私――クローバーのツグミはそんなことを考えていた。

 

 煉瓦造で二階建ての洋館だった。歴史を感じさせる古風な佇まいだけど、寂れた雰囲気ではない。玄関へのアプローチを兼ねる前庭は、瑞々しい緑と鮮やかな赤を織りなすバラの生垣で彩られている。手入れの行き届いた植栽は、この豪邸が過去の遺物ではなく、今なお所有者の居宅として利用されていることを示していた。

 

「こういうのってある種のステイタスシンボルなのでしょうけど……、ここまで立派なお屋敷ともなると、維持するだけでもとんでもない経費が掛かりそうね」

 

 前庭を通り抜ける間もついついお金のことを考えてしまうのは一種の職業病だろうか。

 そもそもマギニアは、都市そのものが高空を飛行するため、頻繁に土地の標高が変わってしまうという特性がある。そのためこういった植物庭園を管理するためには高度な知識と豊富な資金が必要なはず。そんじょそこらの資産家では、手入れどころか植え込みの準備をする段階で財布がスッカラカンになってしまうのがオチだろう。

 

「アイツ、取引相手がこんな大金持ちだなんて、一言も言わなかったじゃないの……」

 

 前庭に漂うむせ返るようなバラの香りに辟易しながら、小さくため息。

 脳裏に浮かんだのは今回の話を持ってきたファーマーの少年のわざとらしいにやけ面。今さらながらあの少年の「お姉さんのためにオ(・)イ(・)シ(・)イ(・)仕事を見つけてきたよ」なんていう甘言に乗ってしまったのは失敗だったかもしれない。

 

「……そんなのホントに今更だけどね」

 

 前庭を抜けて玄関扉の前に立つ。ここまで来て引き返すわけにはいかない。土壇場で面会の約束を反故にすれば、自分だけでなくクローバーにまで悪評が及ぶかもしれない。豪邸の中でどんな人物が待っているのかはわからないが、もう腹をくくるしかないだろう。

 ドアベルを鳴らしてしばらくすると、両開きの玄関扉がゆっくりと開いた。黒いスーツをピシリと着込んだ白髪の老執事が姿を見せる。老齢だけど背筋がまっすぐに伸びていて、いかにもベテランの使用人といった風情だ。彼はこちらの姿を認めると、扉を開いた状態に固定してから恭しく一礼した。

 

「ようこそいらっしゃいました、お客様。失礼ですが、お名前をお伺いしても?」

「はじめまして、クローバーのツグミです。本日は仕事の依頼を受けるために参りました」

「ツグミ様ですね。はい、お話は聞いております。どうぞ邸内にお入りください。客間にて主様(あるじさま)がお待ちなっておられます」

 

 老執事に招かれて豪邸に足を踏み入れる。玄関の先には長い廊下が続いていて、大枠の窓から太陽の光が燦々と差し込んでいた。足元のカーペットは恐ろしいほどふかふかで、こちらの足音を完全に消し去っている。

 廊下を二度曲がり、依頼人が待つという客間に辿り着いた。老執事が扉を開けると、まず部屋の中央に置かれた応接セットが目に入る。マホガニーの重厚なテーブルと、それを囲む臙脂のソファ。そのひとつに、整った顔立ちの美しい女性がお行儀よく腰掛けていた。

 

「主様、クローバーのツグミ様をお連れしました」

「ええ、ありがとう、爺や。ツグミさん、お待ちしておりましたわ。どうぞ、こちらにお掛けになってください」

 

 ソファから立ち上がった女性が、鈴のような声で言った。

 意外なことに、この女性が屋敷の主人のようだ。背が高く、胸も大きいが、腰は細い。抜群のスタイルを黒地のドレス姿で彩っている。スカートに刻まれた深いスリットからは惜しげもなく太ももが覗いていて、どこか妖しい色気を振り撒いている。年のころは20代半ばから後半といったところだろうか。

 良家の女性にしては大胆なファッションだったけれど、着こなしはスマートで、下品な印象はない。そして、なによりも私の目を惹いたのは、彼女の顔の横から突き出した笹の葉のような長い耳だった。

 

(ひょっとして、ルナリア族……?)

 

 マギニアではめったに見かけない種族だ。北方の雪国シドニアにルーツを持ち、特に魔術の研究に秀でた種族であるとは聞いたことがあるけれど……。

 促されるままに彼女の対面のソファに座る。腰掛けたソファは驚くほど柔らかく、信じられないほど深くまでお尻が沈み込んだ。なんというか、ゆったりとしすぎて逆に落ち着かない感じだ。

 

「ようこそ、ツグミさん。私(わたくし)の招待に応じていただき、改めて感謝いたしますわ」

「あ、いえ、こちらこそお招きいただきありがとうございます」

「ふふ、そう固くならなくて結構よ。貴女のギルド、クローバーの噂はかねがね聞いておりましたの。マギニアでも一二を争う有力なギルドだ、と。それに貴女自身のことも彼(・)から聞いておりましたので……私、是非ともお会いしてみたいと思っていたところなのよ」

 

 テーブルを挟んで、ルナリアの女主人が艶然と微笑んでいる。

 彼女の細められた目が舐めるような視線を私に送っていた。値踏みされているような気がして、なんだか居心地が悪い。

 

「その、彼、というのは」

「貴女もよく知っているでしょう? ファーマーの彼よ。彼は仲の良いお友達……、いえ、もう少し正確に言うなら、そうね、私と彼は同好の士のようなものなの」

「…………そ、そうなのですか」

 

 にっこりと笑みを深める彼女に、悪い予感が倍増した。

 同好の士? 自分のペットのセフレになれと誘ってくるような、あの少年の? 

 無意識に頬が引き攣った。今すぐ回れ右して、お暇(いとま)したくなる衝動に駆られてしまう。

 

「あらいやだ、ツグミさん、そんなドン引きしないでくださいな」

「えぇと、そのぅ……参考までに教えていただきたいのですが、彼からは私のことをどんな風に聞いているのですか?」

「それはもう、とっても可愛い女の子で、ベアくんにドハマりしてセフレにまでなっちゃった変態ちゃんだよ、と」

「うぇっ!?」

 

 どストレートな発言に変な声が出た。アイツってばなにを喋っちゃってるのよ!

 慌てて部屋を見回すと、ここまで案内してくれた老執事が、壁際で虚空を見つめている姿が目に入る。女主人のトンデモ発言にも完全完璧なノーリアクションだ。まさか、こんな会話がこの屋敷では日常茶飯事だとでもいうの!?

 

「ああ、ごめんなさい。そんなことよりまずはお仕事の話をしないとね」

「え、いや、むしろさっきの話がどこまで広まっちゃってるか、すごく気になるのですが……」

「爺や、保管庫から例の物を持ってきてちょうだいな」

「かしこまりました、主様」

 

 ちょっと。いや待って。待ってってば。なんでそんな淡々と話を進めようとしてるの?

 私? 私のほうがおかしいの?

 というか、さっきから女主人の私を見る目が、妙に生温かくなっているような気がするのだけれど。いや、生温かいというか、もっと言っちゃうと、湿っぽくてねとねとしてるというか……。

 

「さて、単刀直入に言っちゃいましょう。ツグミさん、貴女に依頼したい仕事はとってもシンプルです。――今から明日の朝まで、私(・)と(・)遊(・)ん(・)で(・)い(・)た(・)だ(・)く(・)こ(・)と(・)。たったそれだけですの」

「あ、遊ぶ? あの、それって……」

「もちろん、エッチなことをしましょう、というお誘いですわ♡」

 

 言葉が見つからない、というのはこういうのを言うのだろう。

 目を丸くして、ぱくぱくと口を開け閉めしながら、私は彼女の言葉を反芻する。

 

 実のところ、もしかしたら、という予感は最初からあった。なにしろ、あ(・)の(・)ファーマーの少年が持ってきたクエストなのだ。ベアくんをけしかけられたという前例がある以上、ピンク色な仕事を押し付けられた可能性は考えてしかるべきだった。

 けれどまさか、こんな開けっぴろげにお誘いを受けることになるとは。しかも相手はお金持ちで美人な年上の女性。さすがに予想外にも程がある。

 

「貴女のことは彼から話を聞いたときからずっと気になっていたのですが……こうして実際にお会いしてみたら、私、一目で気に入ってしまいましたの。ねえ、ツグミさん、どうか私の依頼を受けてくださいな……」

「う……あ、いや……」

 

 たぷんと大きな胸を揺らしながら、女主人が身を乗り出して迫ってくる。大きく開いた襟の開いたドレスから、胸の深い谷間が覗き見えていた。

 まずい。完全にペースを握られている。

 どうにか落ち着こうと息を整える。このまま流されるままに仕事を受けてしまっては冒険者の名折れだ。告げられた仕事の是非は……まぁともかく……せめて仕事の対価くらいは確認しなくては。

 

「主様、お待たせいたしました」

「ああ、爺や、いいところに。ささ、ツグミさん、こちらが準備させていただいた報酬ですわ」

 

 ふと聞こえた老人の低い声。それに返事をして女主人がソファに座りなおした。

 いつの間にか客間に戻ってきていた老執事が、応接テーブルの上に小さな宝石箱を置く。飾り気のないシンプルな箱だった。老執事の皺だらけの指が恭しく箱の蓋を開ける。開いた蓋から覗いた中身に、私は思わず息を呑んだ。

 

「実は私、本業は発明家でして。お見せしているこ(・)れ(・)も私の発明品なのですよ」

 

 女主人がどこか自慢げにそう言った。

 箱に収められていたのは小さな石だ。波打つ縞は瑪瑙のものだろうか。ブローチサイズのそれに複雑な文様が浮き彫りされている。カメオと呼ばれる工芸品だ。

 美術品としての価値は残念ながら私にはわからなかった。けれど、多少なりとも魔術を齧った人間として、その石に今まで見たこともない複雑な魔術が刻み込まれていることは理解できた。

 緻密で繊細な匠の魔術。その怜悧な美しさに、私は言葉を失ってしまっていた。

 

「ドロップカメオ、と名付けました。身に着けることで、倒した魔物の素材を回収しやすくなる(ドロップ率が100%になる)効果があります。ああ、副次的な効果として装着した人間に幸運をもたらしたり(LUCをえげつなく上昇させたり)もしますが、まぁ、そちらはついでということで」

 

 のろのろとカメオから視線を外し、どうにかこうにか発明家の女主人の顔を見る。

 狼狽した私の顔を満足げに眺めて、彼女はにっこりと微笑んだ。

 

「依頼を受けていただければ、報酬としてそちらをお渡ししますわ」

「っ、これを、譲っていただけるのですか?」

「ええ、もちろん。私もひとりのマギニアの民として、樹海探索に励む冒険者を支援したいと常々考えておりましたの。私の発明品が強豪ギルドであるクローバーの役に立つのであれば、それに勝る喜びはありませんわ」

 

 さきほどの恥ずかしい暴露が吹き飛ぶような衝撃だった。

 彼女の語った性能が確かなものだとしたら、このカメオの価値はいったいどれほどのものか。

 魔物から回収できる素材の多寡に一喜一憂するのが樹海に挑む冒険者の常というもの。たかだかアクセサリひとつを装備するだけで素材回収が捗るようになるというのは、すなわち、探索で得られる利益がたったそれだけで劇的に増加するということと同義なのだ。多くの冒険者にとってこの発明品は、まさしく喉から手が出るほど欲しくなる逸品であることに間違いあるまい。

 

 当然、私もこのカメオの価値を正確に理解しているつもりだ。

 クローバーだって、目当ての素材がなかなか手に入らず、魔物を探して迷宮の通路を無為に往復したことが何度もある。その苦行を報告するヒバリたち探索部隊の徒労に塗れた表情は、報告を受ける私のほうまで胃が痛くなりそうなものだったのをよく覚えていた。

 その苦労をアクセサリひとつで解決できるだなんて、ヒバリやカナリアが聞いたら、それこそ小躍りして喜びそうな話だった。

 

「いかがです? たった一晩のお仕事で、この先ずっとギルドのお仲間たちが無駄な戦闘に労力を費やすのを省くことができる。ふふ、悪くない報酬だと思いますが」

「そう、ですね……」

 

 誘惑の声は蜜のように甘い。割に合わない仕事なら毅然として断ってやろう、などという当初の意気込みは、もはや土台からぐらぐらと揺らされていた。

 だけど、報酬のために身体を差し出すだなんて。それではまるで、冒険者というよりは……。

 

 頬を朱に染めて悶々とする私を眇めた女主人がソファから立ち上がる。応接用のテーブルを回り込んだ彼女は、自然な所作で私の隣に腰を下ろした。

 肩を抱かれる。香水だろうか、薔薇の香りが鼻をくすぐった。

 耳元に口が近づいてくる。耳たぶの吐息が触れてびくりと身体が反応してしまった。

 

「お仕事、受けてくださいますよね?」

「…………はい」

 

 彼女の囁きがぬるりと鼓膜をすり抜けて、拒絶の選択肢を砂糖のように溶かした。

 気が付けば、蚊の鳴くような声で、けれどもはっきりと、私は女主人に頷いてしまっていた。

 心臓がばくばくと鳴っている。あられもない妄想が頭の中を走り回る。

 女主人が舌なめずりした。赤くなった私の頬に彼女の手が添えられる。顔を横に向かされて、うっとりと目を細めた彼女と間近で目を合わされた。

 

「契約成立、ね」

「ぁ……んっ……」

 

 そのまま唇を奪われる。両手で頭を抱かれて、ソファに押し倒された。

 身体が密着する。女主人の巨乳が押し付けられる。彼女の膝が足を割って入ってくる。

 咄嗟に彼女の肩に手を当てたけれど、自分の意思で彼女を受け入れた事実が枷になって、押し返すだけの力を籠めることはできなかった。

 

「ん…むぐぅ…んんぅっ!」

 

 貪るような激しいキスを浴びせられる。唇を強く吸われ、僅かに開いた隙間から舌を捻じ込まれた。迎え撃つ準備もできないまま、舌を絡めとられ、ぐねぐねとこねくり回される。

 熱に浮かされて頭がぼぅっとしてくる。混じり合った唾液が甘い。

 とろけるような薔薇の香りが強くなっている。それが香水によるものではないと、ようやく気付いた。匂いの元は、口の中。彼女の唾液が花の香りを放っている。

 

「ちゅむ…ん、ぐ……あぅぁ!?」

 

 舌をねじ伏せられ、薔薇の唾液を飲まされる。

 瞬間、脳が揺れた。

 血液が沸騰する。平衡感覚がいきなり傾き、目に映るものすべてが輪郭を失う。

 眼前でキスをする女主人の表情さえわからない。彼女の肩に置いた手がだらりと脱力してソファに落ちた。頭に回された相手の腕は外されないまま、ぐちゅぐちゅとキスで精気を貪り取られる。

 

「うぁ…ちゅ…や…ぁ…んぅ……ぁ…ん……」

 

 意識が朦朧としているのに、口の中の感覚だけは妙に鮮明だった。

 どろどろの口内は悪夢のような甘さで満ちている。舌を使って責められるたび、棘のような快感がちくちくと神経を這い上がってきて、そのたびにびくびくと全身が震えてしまう。

 唾液に混ぜて、クスリを飲まされた。今さらそんなことを理解しても遅すぎた。

 抗うこともできずに身体が発情してしまう。ローブの上から膝で押さえつけられたおまんこがしくしくと泣き始めていた。頭の周りには暗い靄がまとわりついている。興奮しきった身体とは裏腹に、その靄が私を眠りに誘っているのがよくわかった。

 

「ふふ……ちゅっ…ちゅっ……、ちゅぅぅぅぅ♡」

「んん"ん"ん"ん"っ!?」

 

 女主人の強烈なキス。トドメと言わんばかりの暴力的な吸い付き。

 完全に出来上がっていた身体があっさりと絶頂してしまう。腰が浮いて、カクカクと無様に上下する。マウントを取られた私の身体が、女主人の下で打ち上げられた魚みたいに震えている。

 

「……ツグミさんも迂闊な娘ね。私みたいなアヤシイ発明家に身体を委ねてしまうだなんて。それとも、はじめから責められるのを期待してたのかしら? そうだとしら……今宵はとぉっても楽しい夜になりそうですわ♡」

「ぁ……ぅ……」

 

 絶頂の余韻に溶かされるように意識が暗闇に落ちていく。眠りに就くような安らかさだった。

 クスリと熱烈なキスでこちらの意識を刈り取った女主人が、戯れに指を口の中に突っ込んでくる。その指でくちゅくちゅと舌をかき混ぜられながら、私は、ふっと意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ツグミさん、起きてくださいませ。もう準備は整っていますのよ」

 

 遠い声が暗闇から意識を引き戻した。

 夢は見ていない。時間だけがスキップしたような感覚だった。

 

 ゆっくりと瞼を持ち上げて、周囲に視線を飛ばす。

 目の前に女主人が立っている。けれど、先ほどの客間とは別の場所だ。床も壁も石組みで、ランプは灯っているが部屋の隅には薄暗さがこびりついている。薔薇の香りはもうしなかった。代わりに冷たい石の無機質な匂いを感じる。

 私は石造りのベッドらしきものに横たえられていた。重たい頭を振りながら、どうにか上半身を起き上がらせる。

 

「こ、こは……」

「当家の地下施設になります。日が昇るまでの間、こちらでツグミさんを歓待しようかと」

 

 喉に引っ掛かるような違和感があって、声が掠れ気味なってしまった。

 余裕綽々で微笑むルナリアの女主人を睨む。彼女の背後に錆の浮いた鉄格子が見えた。まるで、というか、まさしく牢屋だ。地下と言っていたけれど、個人の邸宅にこんな設備が存在しているだなんて悪趣味もいいところだ。

 

「そんな怖い顔をしないでくださいな。あのまま客間で楽しむのも無粋というものでしょう? せっかくツグミさんが仕事を引き受けてくださったのですもの。やはり契約を履行するには相応しい場所を選ばなくては」

「相応しい場所って、ここがそうだとでも? 私にはそうは見えないけれど」

 

 自然と敬語が抜け落ちて乱暴な言葉遣いになっていた。

 けれど、女主人は吐き捨てるような私の口調を咎めるでもなく、むしろうっとりと頬を緩ませてわざとらしく首をかしげている。

 

「お好きではありませんか? 逃げ場のない牢獄で滅茶苦茶にされる。泣いても叫んでも誰も助けに来てくれない。ツグミさんも一度はそんな妄想を抱いたことがあるのでは?」

「っ、誰が……!」

「ふふ、素直に認めるのは恥ずかしいご様子。ですが安心してください。動物とのエッチを心の底から楽しんで、ペットのセフレになってしまうような変態さんでも楽しめるように、私が誠心誠意おもてなしをしてさしあげますわ♡」

 

 女主人の唇が三日月を描く。その瞳に宿る狂気を垣間見て、ぞっとするような寒気を感じた。

 咄嗟に石造りのベッドから立ち上がろうとした私は、けれど、ガチャリと鉄の擦れる音とともに強制的に再びベッドの上へと戻されてしまった。

 

「なっ、鎖!?」

「よくお似合いですわよ、ツグミさん。白くて綺麗なお肌と冷たい黒鉄の鎖のコントラストが鮮烈で……、ああ、まさしく芸術的な美しさですわ」

「ふ、ふざけたこと言ってないで、早くこれを外してよ!」

 

 身体を捩るたびにガチャガチャと鎖が鳴る。拘束は固く、外れる気配はない。幸い、腕や足が雁字搦めに縛られているわけではなかった。身体に絡められた鎖は地下牢の壁にしっかりと繋がっているのだが、その長さには結構な余裕がある。抵抗を封じるためというより、逃走を封じるのが鎖の主目的のように思えた。

 でも、だからといって、意識を失っている間に拘束されるだなんて気分のいい話じゃない。抗議の気持ちを籠めて女主人を強く睨むと、彼女はすっと笑みを消して、今までにないほど冷たい声で告げた。

 

「お断りします。お仕事の契約(クエスト)は既に成立しました。ツグミさん、私の依頼に対して首を縦に振った以上、貴女には朝になるまで私に付き合う義務があるのです」

「そうだとしても、こんな扱いはっ」

「……はぁ。まったく、仕方ありませんね」

 

 呆れたような溜め息が地下牢に響く。表情を消した女主人が私に近づいてきた。

 思わず身体がこわばる。威圧感に上体をのけぞらせた私を追いかけて、彼女が人差し指を伸ばしてくる。その爪先にピンク色の魔力光が宿るのが見えた。ふわふわと綿毛のように灯されたそれが、すっと私の胸元に触れ、音もなく身体の中に沈み込んだ。

 

「なにを……? っ、ひぁっ!?」

 

 疼く。お腹の奥が疼いてしまう。

 まるで小さな種を植え付けられて、そこから全身に根が伸びていくように。

 下腹部からもどかしい気持ち良さが広がってきている。

 決して強くはない、焦らすような快感が、じわじわと……。

 

「魔法の達人(ルナリア族)との契約を甘く見ない方がいいですわよ。いやだいやだと駄々をこねるばかりでは、どんどんペナルティが積もっていって……いずれは、ドカン、ですから」

「そん、な……ぁっ…く…うぅ……」

 

 彼女が私の横に腰掛ける。気を失う前のキス責めを思い出して、私はびくりと震えてしまう。

 意地の悪い笑みを浮かべた女主人が、しなやかな指で私の下腹部に触れた。ぴたりと指の腹が張り付いて、さわさわと弱い力で肌を撫でてくる。たったそれだけなのに、私の身体は過剰なほどに反応してしまっていた。

 

「んっ……っ……」

「客間で飲んでいただいたおクスリもよく馴染んでますわね。すべすべの肌がほんのりと火照っていて、こうして触っているだけでも心地良いくらいですわ」

「く、ぅ…なん、で…触られてる、だけなのに……んっ」

 

 女主人の手つきはひたすらに優しかった。片手で私の腰を抱いて逃げられないようにしながら、彼女はもう片方の手で私の全身を愛撫してくる。デリケートなところには決して触らずに、お腹を、肩を、頬を、太ももを……ガラス細工を扱うような繊細さで撫でてくるのだ。

 触れるか触れないかのもどかしい触感。それに耐えられず、私は鎖を鳴らしながら身体を捩ってしまう。その反応を相手が愉しんでいるとわかっているのに、敏感になった身体を抑えることはどうしてもできなかった。

 

「や…ぁっ…さすさすしないで、よぉ……」

「可愛らしい声。いけませんわねぇ、夜はまだ始まったばかりだというのに、そんな顔を見せられるともっと鳴かせたくなってしまいますわ」

 

 吐息が荒くなる。触れられてもいないのに、乳首とクリトリスが硬くなっているのを感じる。

 女主人の手がお臍から胸へと昇ってきた。乳房の形に沿って円を描きながらゆっくりじっくりと中心に近づいてくる。期待を煽るようなその手つきに、勃起した乳首がぴくぴくと震えてしまう。

 

「あらあら、こんなに物欲しそうにしてしまって。いいですわよ、触れられたときの気持ち良さを想像して、もっとこ(・)こ(・)に集中してくださいませ。ほらほら、あとちょっと、あとちょっとで触っちゃいますわよぉ♡」

「う…あ…あぁ……」

「ふふ、素敵な表情ですわよ。期待と不安で頭がいっぱいという感じで。わかりますわ、もう我慢できないのですね? では、ご期待に応えるとしましょう。――えいっ♡」

「ぴぎぃっ!」

 

 乳首を軽く弾かれる。それだけで私は軽い絶頂に至ってしまった。

 細くて鋭い快感が胸から脳へと貫通する。鎖を激しく鳴らして、上半身が大きく反った。

 

「は…あはは! ぴぎぃ、って! ツグミさんてば、すごい反応ですわね。そんなに良かったのかしら? でしたらその調子で、もっともぉっと、気持ち良くなってもらいましょうか」

「うあっ…ま…やだ…乳首、イッったばっかりで…あ"ぁぁっ!」

「たくさんイジメてあげますからねー。思う存分よがってくださいな♡」

 

 無意識に逃げようとした身体が鎖と彼女の腕に絡めとられる。

 敏感になった乳首を彼女の指がツンと摘まんだ。さらなる快感の追撃に頭がまた跳ねる。

 

「カリカリされるのがお好き? それとも、コネコネされる方がお好みかしら?」

「それ…っ…だめ…ちくび、はじけちゃ、ぁああ"あ"!」

 

 爪先で先端を軽く引っ掻かれるのも、指の間に挟まれてコロコロと転がされるのも、気持ち良くてたまらない。痛いほどに背中を反りながら、ピンと突き出した胸を彼女に弄られるたびに、快感が波のように押し寄せてくる。

 

「さっきから、ダメやらイヤやら、そんなことばかり。ひょっとして、わざと言ってらっしゃいます? 抵抗する姿勢を見せるふりをして、本当は契約のペナルティを、お仕置きされることを期待してらっしゃる? まぁ、なんてことでしょう。ツグミさんたら、想像以上の変態さんなのね」

「なっ…ぁっ…ちが――ひぃんっ!」

 

 反論の直前、乳首をキュッと摘ままれた。甘い快感が突き抜けて、言いかけの言葉が形にならずに消えていく。私の上擦った声を聞いて、女主人がにんまりと笑っている。

 ちがう。ちがうの。期待だなんて、そんな、そんなの……。

 

「ふふ、変態さんは乳首だけでは満足できないのかしら? そうね、そろそろコッチも弄ってあげましょうか。痛そうなくらいに勃起したクリトリス、私が優しく責めてさしあげますわ♡」

「ひっ! だめ、だめだめだめ! 今そっちまで触られたら、私っ……!」

「怯える表情も可愛いわぁ。――そういう顔をされると、もっと歪ませたくなっちゃう♡」

「や…ぁ…ぃ、ああ"あ"あ"あ"っ!」

 

 蛇のように腰に巻き付いた彼女の腕が、下腹部に伸びてクリトリスを摘まみ上げる。

 くちゅ、とお豆が絞られた瞬間、あっけなく私は絶頂した。

 びくびくと腰が跳ねて、パチパチと目の奥で光が弾ける。

 快感の奔流に身体が痙攣して、ガチャガチャとうるさいくらいに鎖を鳴らしている。

 

「っ、ぃ……あ、ぅぅ……」

「思った通り敏感なのね。切羽詰まった悲鳴もとっても素敵。ねぇ、もっと聞かせてくださいな」

「ひぃっ!? また…あぐっ、や、だめ、あ、んぎぃぃっ!」

 

 女主人がぎゅっと身体を密着させてくる。

 体温の高い巨乳を押し付けながら、私の胸と腰の突起を容赦なく指で責めてくる。

 

「カリカリっと表面をイジメてあげて~」

「はぐっ…うぁ、ぁ…ぁ…あぁ……」

 

「クリクリっと根元から転がしてあげて~」

「んぐぅ……ぅぅ……くはっ…い…ぁ…」

 

「キュッキュッと絞ってあげる♡」

「ぎっ!? が、あが…あ、や、ぁああ"あ"あ!」

 

 手足をピンと伸ばして、ガクガクと身体を震わせながら、何度も何度も絶頂する。

 おまんこがぷしゅっと潮を噴いて、口からだらだらと涎が零れて、ぴくぴくと指が痙攣する。

 見開いた視界は四隅が白く霞んでいて、絶頂のたびに焦点が激しく揺らいでしまう。

 

「かひゅっ…は…ぁ……はぁ、はぁ……」

「ふふ、いっぱいイケましたわね。もう息も絶え絶え。とっても可愛いですわ♡」

 

 イキっぱなしで呼吸が苦しい。

 全身がとっくに脱力していて、もはや拘束のはずの鎖に支えられている有様だ。愉しそうに私を抱き寄せる女主人に抗うこともできない。顔を近づけてきた彼女が、ぐちゃぐちゃになった私の顔に舌を這わせる。だらしなく弛緩した口元の唾液を舐めとられて、虚ろになった目元の涙をちゅっと吸い取られる。彼女の赤い舌が蛇のようにちろちろと霞みがかった視界に蠢いている。

 

「ねえ、ツグミさん。今、何時くらいかわかりますか?」

「…はぇ……?」

「ぐったりしているところ申し訳ないのですが、実は、まだ日付も変わっていませんのよ」

「……え……う、そ……」

「地下にいるとどうしても時間の感覚が曖昧になってしまいますからねぇ。喜んでくださいな、まだ夜明けまではたぁっぷり時間がありますから」

 

 沸騰した頭に女主人の言葉が冷たく突き刺さる。

 明日の朝まで――。それが、彼女との契約。イカされ続けて疲弊した身体が、快感とは別の感情でガクガクと震えてくる。

 怖い。このまま責められ続けたらどうなってしまうのか。壊れる。壊される。戻ってこれなくなる。そんな言葉が足元から這い上がってくる。

 

「ゆ……」

「はい? なにかおっしゃいましたか?」

「……ゆる、して…ください……。こ、んなの…続けたら…壊れちゃい、ます……」

 

 カタカタと震えながら彼女に懇願する。力の入らない指で必死に彼女に縋り付く。

 なんて無様で情けない姿だろう。女主人はそんな私を興味深そうに見つめると、不意に雰囲気を和らげて優しく微笑んだ。

 

「ねぇ、ツグミさん」

「はい……」

「口元が緩んでますわよ」

「…………え?」

 

 彼女の指が私の唇をなぞる。

 緩やかに、三日月のカーヴを描いて。

 ……笑っている? 私が? ……そんな。そんな、はずは……。

 

「変態。変態、変態、変態。ツグミさん、貴女ってば、期待以上の変態さんよ。自由を奪われて、無理やり気持ち良くされて、壊されるかもって考えながら……心の底では興奮しているのね」

「う、そ…ちがっ…そんなの、ちが…っ、んむぅ!?」

 

 否定の言葉を叫ぼうとした口をキスで塞がれる。

 絡められた舌を強く吸われて、それだけで軽くイってしまう。

 弱い。弱すぎる。あまりの惨めさに涙がぽろぽろと落ちてくる。

 

「ちゅっ…ぷはっ。またイったのですね、変態さん。ふふ、安心してください。もちろんこんなぬ(・)る(・)い(・)責めを朝まで続けるつもりなんてありませんから。夜はまだこれから。愉しくなるのはここからですわよ」

 

 その宣言は私にとって絶望でしかなかった。

 ……そのはずなのに、下腹部の奥がきゅんと疼いてしまう。

 その事実に気づいてしまって、頭がおかしくなりそうだった。

 

 女主人の指が再び突起に伸びる。乳首とクリトリスをそっと摘ままれた。けれど、彼女の動きがそこでぴたりと停止する。それ以上の刺激を与えるでもなく、私の突起をただただ固定している。

 彼女の口から囁きが漏れた。聞き覚えの無い異国の言葉だった。意味は理解できないのに、その言葉に不思議な力が籠っていることだけはわかる。

 ……魔術語だ。

 撹拌された思考がそう思い至った瞬間、薄暗い地下牢が白い閃光に染め上げられた。

 

「あ"ぎい"ぃぃっ!?」

 

 痛み。剥き出しの神経を突き刺すような激痛。

 バチリと激しい音が響く。一瞬で全身に汗が浮き上がった。身体が跳ねる。膀胱が緩んでちょろちょろと失禁する。

 突然の激痛は、けれどたったの一呼吸で遠のいていく。突風が通り過ぎたかのように、痛みの余波だけが私の身体に刻み込まれている。

 悲鳴をあげた喉が引き攣っていた。胸と股の突起がじんじんと痺れていた。漏らした尿と、噴き出した汗と、撒き散らした愛液の匂いが混じって、むんむんと地下牢に漂っている。

 

「電撃責めは初めてだったかしら。噂に聞いた話ですけれど、冒険者の中には電気を操る魔物と戦っているうちに中毒になっちゃう娘もいるのだとか。その辺り、ツグミさんのご感想は?」

「う…ぁ……」

「返事もできないくらい良かった、と。うふふ、私の魔術を気に入ってくれたようでとても嬉しいですわ。それではご希望に沿って、もうしばらく続けてみましょうか」

「……ひっ! やだ、やだやだ、もうやめ"てよぉ!」

 

 バチバチと見せつけるように女主人の指先がスパークする。

 怯え切った私の表情を堪能しながら、彼女は激しく光る指を再び突起に接触させた。

 

「ひぎぃっ! いっ、ぎぃぃ!!」

「あは! 素敵な啼き声ですわよ!」

 

 細くて鋭い針で何度も突き刺されるような激痛が私の大事なところを蹂躙する。

 目の前が白くフラッシュする。痛み以外の感覚が真っ黒に塗り潰されていく。

 痛い。苦しい。なんで。やめて。助けて。やだ。だめ。ひどい。痛い。痛い。痛い。

 喉からほとばしる悲鳴を止めることができない。痛みから逃げようと暴れ回る身体を制御できない。ガチャガチャと鎖を鳴らして藻掻きながら、私は女主人の指先で無様に踊らされてしまう。

 

「じぬ"っ! じんじゃうっ! もうむりだがら"ぁあ!」

「そんなはずありませんわ。きちんと威力はセーブしてますから。冒険者がこの程度で死に至ることはありません。ツグミさんの気のせいですよ」

「ぎぃぃぃ!? ぞんな"、あが、がぁあ"あ"あ!」

「……とはいえ、辛いのは本当みたいですしね。苦しみに悶えるお顔も素敵なのですが、仕方ありません、痛くするのはこの辺りにしておきましょうか」

 

 半狂乱で叫ぶ私を呆れたように目を細めて眺めながら、彼女は不意に魔法を解除した。

 地下牢を真っ白の染め上げていたスパークが一瞬で消滅する。それと同時に、電撃から解放された身体がぺたりと崩れ落ちた。上半身が地面に墜落する寸前、身体に絡んだ鎖がそれを受け止める。ゆらゆらとブランコのように鎖に揺られながら、私は必死になって呼吸を繰り返す。

 

「がは…ぁ…ぅ……はぁ…はぁ…げほっ…うぅ……」

 

 全身が鉛のように重い。頭は深い霧に包まれているかのよう。玉のような汗が全身に浮かんでいて星読みのローブをぐっしょりと濡らしている。下着を取り払われた下半身の割れ目は、尿なのか愛液なのかもわからない体液が混じり合ってぐずぐずに蕩けてしまっている。

 

「ツグミさん、残念ですが休んでいる暇はありませんわよ。夜明けまでの時間は有限。私が満足するまで、まだまだ付き合っていただきますからね」

「……おね、がい…しまぅ……せめて…やすませ…ぇ…くだ…さ、ひ……」

「ダーメ♡ そうね、次はこれで遊んでみようかしら」

 

 心底楽しそうに女主人が笑みを浮かべる。

 彼女が何事か呟くと、その指先が再びスパークした。

 バチバチとほとばしる激しい音に、脱力しきった身体がびくりと怯えて震える。

 恐怖が全身を縛り付ける。奥歯がかみ合わずにがたがたと鳴ってしまう。

 

「ひっ…やだ…それだけは…おねがい…もういたいのは……」

「うふふ。そんなに怯えなくても大丈夫ですわ。ほぉら、よく見てご覧なさい。稲妻の色が違うでしょう? これはさっきまでの電撃とはまた別の魔法なのよ」

 

 女主人の指が目と鼻の先に突き付けられる。その先端に宿る魔力の電撃は、確かにさっきまでとは色が違った。鮮烈な白一色ではなく、チリチリと弾ける桃色のスパークだ。だけど、その違いがなにを意味するのかなんて、私にはわかるはずもない。いくら彼女に言葉で説明されようとも、心に根を張った恐怖を振り払うことなんてできなかった。

 

「ひぅ…ぐす…やめて…おねがい……」

「あらあら、そんな子供みたいに泣かれてしまうと――もっと興奮しちゃうじゃありませんか♡」

「っっっっっっ!? か…はっ……!」

 

 桃色のスパークをまとった彼女の手のひらが、お椀のように乳首とクリトリスを覆い隠す。

 瞬間、暴力的なまでの快感が神経を突き抜けた。

 快感神経を丸ごと握りつぶしたかのような、重くて強烈な快楽の波。

 乳首から胸の奥へと向けてドスンと響くような低い快感が伝播していく。

 クリトリスがまるで溶けた鉄のように激しく火照り、ぎゅんぎゅんと快感を増幅させて全身に拡散させていく。

 

「うぁああ"あ"あ"あ"あ"あっ!!」

 

 考えるより先に思考が灼き切られる。絶叫が喉を飛び出した。

 子宮がきゅんきゅんと収縮を繰り返す。割れ目からぴゅっぴゅと本気の愛液が噴き出す。背中がのけぞって、びくんびくんと痙攣する。大きく見開いた瞳から、法悦の涙がぼろぼろと零れてくる。

 

「なに、ごれ"、しらにゃ、ごんにゃの、しらにゃあぁぁぁっ!」

「それはそうでしょう。なにせ私のオリジナルの魔法ですから。いかがですか? 神経のキモチイイところをダイレクトに刺激する快楽電撃魔法のお味は」

「あっ、ひぁっ…んぎ、ぃい"い"い"い!」

 

 電撃をまとったままの手のひらが、両方の突起を押し潰してこねくり回してくる。

 快楽電流とそれの相乗効果で、信じられないほどの快感が私に襲い掛かってきた。

 津波のように高くて激しくて、決して抗えない快感の暴力。

 割れ目から断続的に愛液が噴き出して、あっという間に石床に水溜まりを作る。

 はだけたローブの胸元にだらだらと涎が零れて筋を描いていく。

 子宮の奥底が熱く燃えて疼きに疼く。

 思考がピンク色にフラッシュして、気持ちいい以外のことが考えられなくなる。

 

「だめ、だめえええっ! ぎもぢよすぎで、おがじくなっぢゃうぅうぅ!」

「うふ。うふふ。いいではないですか。このままおかしくなっちゃいましょう? 安心してくださいな。もしツグミさんが壊れちゃっても、私がちゃーんと面倒を見てあげますから♡」

 

 絶え間なく快感を送り込まれながら、耳元で優しく囁かれる。

 耳たぶを食まれて、ちゅるちゅると耳の穴を舐められる。

 底なしの堕落への誘惑が蜘蛛の巣のように思考を絡めとってくる。

 頭の中をぐちゃぐちゃにされて、気持ち良さで全身をどろどろに蕩けさせられて……。

 

 それでも、私は、最後の気力を振り絞って首を横に振った。

 

「おや。自分の気持ちに素直になって、堕ちるところまで堕ちちゃえば、もぉっと気持ち良くなれるのですよ? どうしてそんなに頑なになって耐えようとするのですか」

「だっで、わたしは、ぁああっ、わたしはぁ! くろぉばぁーの、ますたーだからぁ!」

 

 気持ちいい。気持ちいい。気持ちいい!

 クリトリスに浴びせられる快感電流に狂いそうになる。

 乳首をこねくり回す女主人の指に屈服しそうになる。

 とめどなく溢れる愛液が太ももを伝って滴っていく。膣襞がぐぽぐぽと蠢いて、本気汁をだらだらと垂れ流している。おっぱいは母乳が出るんじゃないかってくらい張り詰めていて、電撃が肌を這うだびに過剰な快感を伝えてくる。

 許容量を超えた快感を叩きつけられた腰は完全に抜けてしまっていて、ぐらぐらの上半身を支えることさえできていない。びくんびくんと痙攣しながら跳ねまわる身体は敏感になりすぎていて、もはや空気の流れさえ気持ち良く感じつつあった。

 

 それでも……。

 頭に残った最後の理性のひとかけらが、私をギリギリのところで繋ぎとめている。

 

「だがら、ごわれちゃだめな"のぉ! ぎもぢよぐでも、ぎるどのみん"な"と、もっと、ぼうけんをつづけだいの"ぉ!」

「――――最高ですわ」

「あ"ひぃぃぃぃっ!」

 

 次の瞬間、女主人が感極まったかのように私に抱き着いてきた。

 わけがわからない。快感と混乱で思考が千々に乱れてしまう。

 彼女は豊満な身体を密着させて、頭一つ小さな私の身体をぎゅっと抱きしめていた。彼女の両手の指は敏感な二つの突起から離れている。だというのにその手は魔法をまといっぱなしで、抱き着いた勢いのまま今度はわき腹のあたりに快感電流を流し込んできている。さっきまでとは別種の気持ち良さとこそばゆさに、私は彼女の腕の中で暴れながら身悶えしてしまう。

 

「そうです。そうでなくては推(・)す(・)価値がありません!」

「にゃにを言って…あひっ…ひゃ、ぁあああ!」

「気高くあってください。誇り高くあってください。最強のギルドを率いて、最高の功績を歴史に刻み付けてください。ツグミさん、あなたがその偉業を志す限り、私は支援を惜しみませんわ」

 

 狂愛の念を隠しもせずに女主人は私に覆いかぶさってくる。

 脚と脚とを絡められた。体液の水溜まりでドレスが汚れるのにも構わずに、彼女は快感で暴れ回る私を全身で受け止めている。

 

「英雄になりましょう。希望になりましょう。誰もが羨望する星となりましょう。並み居る冒険者の頂点に立って――だけど私には、その奥に秘められた変態さんの顔を見せてくださいね♡」

「ふぇっ……?」

 

 その言葉とともに彼女の指先から稲妻がふっと消えた。受け続けていた刺激が消滅して、私の身体がふわふわと浮遊するような余韻に包まれる。

 霧散した魔力がそろそろと肌を這う感触があった。全身が生ぬるい粘液に漬かるような感触だ。私を抱きしめる女主人と目が合う。微笑みを湛えた彼女の表情の中で、その瞳だけが狂気に濁っている。

 

 ぞくぞくと背筋に悪寒が走った。気づいたときには、彼女の全身が桃色の魔力を纏っていた。

 私を抱きしめる彼女の全身が、だ。そして、その魔力の気配には覚えがある。ついさっきまで私を責め苛んでいた魔力と同質の気配だ。

 今、彼女がいったい何をしようとしているのか。一本の線を繋ぐように、私はそれを予感できてしまった。

 

「さぁ、祝福です。今日という日の素晴らしき出会いを祝して。最高の快楽で乾杯しましょう」

「ま、まっへくだひゃい……っ!」

「壊れないでくださいね。狂わないでくださいね。けれど、二度と忘れることの無いように、しっかりと私の存在を心に刻み込んでくださいね……♡」

 

 その瞬間。

 世界のすべてがピンク色に染め上げられた。

 

「はにゃああああぁあああぁああっ!」

 

 女主人の全身から迸った快感電撃が、抱き締められた私を一息に吞み込んだ。

 頭のてっぺんから足の先っぽまで、気持ち良さの大嵐が吹き荒れまくる。

 身体中の穴という穴から体液が溢れ出す。涙がこぼれて、愛液が噴き出して、ぱっくりと開いたアナルからは腸液までがだらだらと染み出てくる。

 神経の束を直で撫でまわされるような信じがたい快感が全身のデリケートゾーンを犯しつくしている。乳首をイジメられて、クリトリスを嬲られて、膣内の襞の一枚一枚を電流でほぐされるような異常なまでの快楽。肌も、お尻も、耳も、指も、髪の一本さえもが気持ち良さに包まれている。

 

「~~~~~っっ!!」

 

 ぱくぱくと口を開け閉めしながら、大きく目を見開いて、大粒の涙を流す。

 喉が引き攣って声が出ない。肺を膨らますことさえ難しい。

 女主人の腕の中で、びくびくと危険な痙攣をしながら快感にのたうち回る。

 脳が灼き切れるような気持ちの良さに、ついにぶつんと意識が吹き飛んだ。

 ぐるりと視界が暗転して、すべての音が遠くなる。

 自分の身体がどこにあるかもわからない真っ暗な世界の中で、刻み込まれた快感だけが何度も何度も反響して神経を犯し続けていた。

 

 

 

 

 

 

「あ、かは…はひゅ…ひ…い、ぁあ…あ…♡」

 

 数分か、それとも数十分か。意識を手放した身体はその間ずっと痙攣しっぱなしだった。

 人形のように踊り狂っていた私の身体は、やがて糸が切れたかのようにぴたりと動きを止めてぐったりと脱力してしまう。

 それまで我儘な赤子をあやすように私を抱きしめて電流を流し続けていた女主人は、そうなってからようやく私のことを手放した。

 

「……ぁ……ぅ……♡」

 

 べちゃり、とゴミのように私は体液の水溜まりに倒れ込む。

 息は絶え絶え、視界は虚ろ。意識は朦朧としていて、何も考えることができない。

 だらしなく開いた口に、地面に溜まっていた自分の愛液が流れ込んでくるのさえ、もはや認識することはできなかった。

 全身がドロドロでグチャグチャの肉人形。ひくひくと微かに震える割れ目から、とろとろと搾りかすのような愛液が流れ出している。

 

「なんて、美しいのかしら……♡」

 

 その惨状を見つめながら女主人がうっとりと声を漏らす。

 彼女の言葉の意味するところもわからないまま、私はゆっくりと瞼を閉じた。





マギニアの発明家
 DLC専用クエストで言及される人物。
 いわゆる救済クエストのクライアントで、ちょっとしたお使いをこなすだけで莫大な経験値や大量の通貨を報酬としてプレゼントしてくれる。さらには本文中にも登場したドロップカメオや経験値が3倍になるアクセサリまで無償で渡してくれるという至れり尽くせりっぷり。しかもそんな美味しいクエストを回数制限なしで何度も受けられるという……。

 ……これ、もうプレイヤーギルドのパトロンなのでは?

 なお当然ながら濫用するとヌルゲーと化すので、ご利用は計画的に。
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