※この作品はR-18です。

娼館でTSエルフが働くのは間違っているだろうか   作:榊 樹

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ふたなり、若干のNTR(WSS)要素注意。


第三話:堕ちた正義

 

ギシギシ、とベッドが軋む音がした。

 

扉の前、自身の部屋のドアノブに手を掛けた所で、その音に手を止める。

少し思案して、中で誰が何をしているのかを当たりを着けたアナスタシアは、もう一度ドアノブに手を掛け、静かに開いた。

 

ゆっくりと、顔だけ覗かせ。ベッドの方へ目を向ければ、予想通り、枕元で全裸の金髪エルフがこちらを背に荒い息を上げていた。

それはアナスタシアの存在に気付かぬほど、夢中でヘコヘコと腰を振り、アナスタシアの名前を、切なそうに何度も呼んでいた。

 

それに、ニンマリ♡ と、とても嬉しそうな笑顔で、そろり、そろりとアナスタシアは近寄る。ベッドに上がり、背中越しから何をしていたのかと覗き込めば、そこにあるのは自身が愛用している枕だった。

 

そして、真っ白な枕を押さえ付けるように握り締め、枕とベッドに挟まれるようにして、腰を振って出し入れを繰り返していたのは、女性にはある筈のない猛々しい肉棒だった。

 

 

「こぉ〜ら♡ ダメでしょ♡」

「ッっ゛!!?♡」

 

 

耳元で囁かれたと同時に、おちんちんを包み込む手のひらに、そのエルフは一体どれ程の衝撃を受けたか。

これが初めてでは無いとは言え、こんな浅ましい姿を、絶対に見られたくなかった人に見られてしまった。

 

今の今まで全く気付かなかった己を悔いるも、しかし今己の身に起こってる現象に脳がパニックを起こし、頭が真っ白になってしまう。

 

 

「ぇ、ぁ・・・ァナッ・・・スタシァ、様・・・」

「前に教えてあげたでしょ♡ オナニーは、こうやってやるの♡」

「ぁ、ぃやっ・・・♡」

 

 

逃がさぬ様に腕でエルフを抑え、両手はしっかりと痛くない程度におちんちんを握り閉める。

左手で作った輪っかをカリ首に固定し、グリグリ♡と擦り。

右手は五指全てでおちんちんを咥え、肉棒をシゴき上げていく。

 

 

「ぉ、ぁ、ほっ♡ ぉあっ゛♡」

「ほら、前。辛かったら、手を着いて♡ 大丈夫、全部任せて♡」

 

 

最初に感じていた恥ずかしさも、申し訳なさもあっさりと消え去り、ただ快楽を貪ることだけしか考えられなくなったエルフは、指示された通りにベッドのヘッドボードへと手を着ける。

少し膝を立て、前屈みになるように。

そうすれば、おちんちんは完全に浮いて、最早無防備極まりない状態に。

 

アナスタシアの両手に対して、ヒクヒク動く腰が、けれどもそんな僅かな逃げすらも許さぬとばかりに、アナスタシアが覆い被さるようにエルフの背中へと身を乗り出して体重を掛けた。

 

 

「ふぉ゛♡ ぉ゛♡ ぉ、ほっ♡」

「ほら、イッて♡ イッて♡ 我慢しちゃダメ♡ 私の枕に♡ いつも寝てる枕に、好きなだけブチ撒けて♡」

 

 

敬愛している主人に、耳元で囁かれれば我慢出来る筈も無く。

元々、アナスタシアが来る前からおっ始め、今にもイきそうだったエルフは、そう長い時を経ることも無く。

上がってくる射精感と共に速くなる手コキに合わせて、全力でキンタマの中のモノをひり出した。

 

 

「ふぉ゛ォッ゛ォ〜〜〜〜ッ゛♡♡ ぉぉ゛ッおぉ゛ォ〜〜〜ッ゛・・・♡♡」

 

 

気持ち良さそうに。それはそれは気持ち良さそうに。

顎を上げ、口を突き出し、目はほぼ白目を剥いて、背筋も限界まで反らして、そのまま昇天してしまいそうな程に満たされた顔で、ドビュルルルッ♡♡ と白い枕へと白濁の滝を垂れ流す。

 

長く、長く、とても長い射精であった。

 

 

「ぉ゛ォッお゛ぉっ゛〜〜ッ゛♡♡ んぉ゛、ぉッ゛お〜〜ッ゛・・・♡♡」

「あらあら♡」

 

 

その要因として、溜めに溜めたキンタマの中の量以外にも、おちんちんの脈動に合わせてタイミングよくシゴき上げるアナスタシアの手腕と、そして何よりも大切な人の枕へ汚物をブチ撒けるという、得も言えぬ背徳感があった。

 

焼け尽きそうなほどの快楽に、根元から先端まで尿道を通う子種の快楽すらも知覚出来てしまうほど。

あまりに強烈な快楽を前に膝は笑い転げ、今にも崩れ落ちそうになるが、射精の快楽による筋肉の硬直がそれをギリギリで押し留める。

 

喉から振り絞るような嬌声は、しかし長くは続かず。少しでも快楽を逃がそうと声を出そうとして、喉が力み過ぎた結果声すら上げらなくなり。

その頃になって漸く、射精もひと段落着いたらしく、最後の一滴まで搾り取るアナスタシアの手に、数度大きく痙攣すると、エルフはガクりと一気に力を失った。

 

 

「おっと、汚れちゃいますよ」

「ぁ・・・♡ へぁ・・・♡」

 

 

アナスタシアに抱えられ、自分の子種の海に沈むという拷問をなんとか回避したエルフは、それでも意識はほとんど飛んでしまっており、虚ろな目で声にならない声が漏れ出る。

 

無理させちゃったかな、と。少し休ませてあげようとして、まだ無事なベッドの反対方向へと座り直す。

 

膝枕をして、そうして仰向けになったエルフに、アナスタシアは徐に胸を覆う前掛けのような衣服を捲ると、形良く勃った乳首をエルフの半開きの口へと差し込んだ。

 

 

「ん、ちゅぅ、んっ・・・」

「ぁ・・・♡ そう、上手♡ んふっ・・・♡」

 

 

それにほぼ無意識で逃すまいとエルフは口を閉じ、吸い始める。

愛撫ではなく、赤子のように ちゅうちゅう♡ と。

それが何故だか無性に愛おしくて、アナスタシアは左手を頭に、右手を再び天井を向いたおちんちんへと這わせ、優しく撫でていく。

 

 

「こんなに出しても、まだ消えないなんて・・・。今日もたくさん頑張ったんですね♡ 偉い、偉い♡」

「んふっ゛♡ んん、ちゅ、んんっ♡」

 

 

妊娠していなくとも、出るようになってしまった母乳が、エルフの喉を潤していく。ごくごく、と。両手で胸を支えて、一生懸命に飲んでいく。

 

 

「んきゅ、ごく・・・♡ ぷはぁ・・・♡ ぁ♡ ぁ♡」

「あら、もうイきそうなの? 大丈夫、ママが全部受け止めてあげるから、遠慮なく出しちゃって♡」

 

 

二度目の射精は、それから数分も開けることなく訪れ。

イきそうになったエルフが、思わず乳首から口を離し、それを察したアナスタシアが、徐々に右手の刺激を与えていく。

 

 

「や、ぁ♡ イく、ぁ、あっ♡ イクっ、イクッ♡ イッ゛ッ・・・〜〜ッ゛〜ッ゛♡♡」

「わっ♡ 凄い♡」

 

ビュルルルルッ♡

 

先程とは量も勢いも劣るが、それでも粘っ濃そうな白濁の液体が、アナスタシアの手の平目掛けて放たれる。

アナスタシアのおっぱいに埋もれていたエルフ自身、その光景が見えてはいないが、それでもなんとなくそれを感じ取ったのか、緩く、心地好い射精に、胸から覗く目元が恍惚とした表情を浮かべ、射精に合わせて腰を痙攣させていた。

 

 

「ぁ、ぁ゛ッ〜〜っ゛♡ ふっ、ほふぅ・・・♡」

「ふふ、たくさん出ましたね♡ ほら、見て♡ 貴女の子種で、手がこんなになっちゃっいましたよ♡」

「ぁ゛・・・ご、め・・・な・・・♡」

 

 

射精後の虚脱感。顔を覆うおっぱいは勿論、背中に感じる太腿や頭を撫でる手に、夢心地となっていたエルフは、しかし、見せられた主人の手の平を見て、自分が仕出かしたことを漸く理解し、謝ろうとするが、その口は上手く回らない。

 

それでもなんとか謝罪の言葉を出そうとして、その様に笑みを零したアナスタシアは、そのまま白濁に(まみ)れた自身の手の平へと、(おもむろ)に舌を這わせた。

 

 

「ぇ・・・♡」

「れろぉ・・・♡ んちゅ・・・♡ んぁ♡」

「ぁ、ぁぁ・・・♡」

 

 

そのような事をしてはいけません、と平時のエルフは言ったであろうその光景。

高貴なお方が、自身の浅ましい欲望を美味しそうに舐め取り、一部が腕に滴り落ちていく。

 

それは、あぁ、それは。そのエルフにとってはあまりに扇情的で、情欲を煽り。力を無くして消える運命だったおちんちんに、ムクムクと力を与える。

 

 

「れろぉ・・・ん? ・・・あら、あらあら♡」

 

 

そして、自身の膝に寝かせている者の発情に、気付かぬアナスタシアはではなく。

こちらをジッと見詰めるエルフの視線と、元気に反り勃ったおちんちんを見て、嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

 

「それじゃ、今日はちょっと特別ね♡」

「ぁ♡」

 

 

膝枕をやめ、キングサイズのベッドにエルフを楽々横向きに寝かせ、下半身の方へと移動する。

そして膝を折り、エルフのお尻の下へと滑り込ませ、グイッとエルフの股を自身のお腹へと近付けると・・・。

 

 

「お゛っほ♡」

「ふふふ♡」

 

 

直立したおちんちんを、その大きな胸が挟み込んだ。

衣服を纏ったままとは言え、首元から胸へ二股に分かれた前掛けのようなそれはエルフの快楽の障害になることは無く、柔肌が包み込むようにエルフのおちんちんを全て飲み込んだ。

 

 

「ぁ゛♡ ふぉ゛♡ ぉ♡」

 

 

もう二度もイッたばかりのおちんちんにとって、それはあまりに極楽な空間であった。

激しく擦る訳でも、弱点を優しく責め立てられる訳でも無い。

 

ただおちんちん全体を優しく包み込み、ゆっくりと左右交互に上下される胸の内側がおちんちんの形に歪み、余すことなくおちんちんに至福の時を齎してくる。

 

 

「ぁ゛♡ はっ゛♡ ほぉ゛♡」

「んっ♡ んっ♡」

「ほっ♡ おっ゛♡ ・・・ふぉ゛おぉ゛ォッ〜〜〜っ゛・・・♡♡ ぉ゛♡ ぉ゛♡ ォォ゛ッ〜〜ぉ〜〜ッ゛・・・♡♡」

 

 

長く、重い絶頂。傍からでもそう分かってしまう程に、野太く、低く唸るような嬌声に合わせて、おちんちんから・・・否、胸の谷間から湧き出すように、白濁の液体が飛び出していく。

 

 

「わっ♡ わっ♡」

 

 

目の前で、自分の胸の谷間から液体が飛び出るというのは、例え身構えていても存外ビックリするもので。

驚きと嬉しさが混じった声が、アナスタシアの口から漏れる。

 

 

「ほっ゛・・・♡ ぉ゛ほ・・・♡」

「はぁ、はぁ♡ ・・・わぁ、凄い♡ 見て、ルイ♡」

 

 

金髪のエルフ、ルイと呼ばれた少女は、意識が薄れる中で、最後の力を振り絞ってアナスタシアの声に応える。

頭を少し持ち上げ、視線を下に。

 

すると、そこには満面の笑みで、白濁に染まった胸を見せ付けてくる主人の姿が。

 

 

「ぁ゛♡ ぁぁ゛♡」

 

 

そんな不意打ちに、ルイのおちんちんは強制的に力を取り戻され。

最後の最後、根元に残っていた子種をドピュり♡ と吐き出すと、その快楽がトドメとなり、ルイは意識を手放した。

 

 

 

 

目を覚ます。

疲れが洗い流されたような、心地好い微睡みのような目覚めだった。

 

もっと寝ていたい。ずっとこのままで居たい。

寝返りを打ち、柔らかく、肌触りの良い何かに顔を埋める。すると、目覚めから感じていた匂いがさらに濃くなり、一呼吸だけで肺全体がその匂いで満たされる。

 

あぁ、落ち着く・・・♡

 

甘く、蕩かされてしまうような、とても好きな匂いだった。

ルイが主人と仰ぎ、敬愛するお方の匂いだった。

 

 

「すぅー・・・はぁー・・・・・・♡♡ ・・・・・・っ!?」

 

 

もう一呼吸して、唐突に頭が冴え渡る。

起き上がり、自身を膝枕していたアナスタシアの方へと向き、身を正して(かしず)こうとし・・・力が入らない足腰にバランスを崩して、頭が柔らかな何かに受け止められた。

 

 

「あらあら、しょうがない子♡」

「ぁ、いや、違っ・・・これはっ・・・!」

 

 

頭上から聞こえる声に、主人のおっぱいに頭から突っ込むという、不敬も甚だしい行為をしてしまった事実に、ルイは弁明しながら身を離そうとするが。

頭に添えられたアナスタシアの両手がそれを許さず、またボフりと胸の中に顔を埋めさせられた。

 

 

「謝る必要なんてありません♡ 貴女は(コレ)を好きにしていいんですよ♡」

「ぁ♡ ぁ♡」

 

 

同性の、中でも見目麗しいと言われるエルフから見ても、息を飲むようなお方に、そう言われ。何よりも、不遜だと分かっていても、密かに想いを寄せている人にそこまでされて、ルイは抵抗出来るような人間ではなかった。

 

そうでなくとも、人を堕落させる魔乳に逆らうことなど出来ず。両手で、両胸を鷲掴みにし、押し込むように揉んで、感触を確かめるようにグリグリと円を描くように揉みしだき、自分の顔を挟むようにぱふぱふするなど、結構好き放題堪能した。

 

 

「〜〜♪♡」

 

 

それを嬉しそうに。子供のようにおっぱいに夢中になるルイを、アナスタシアは鼻歌を歌ってしまうほど上機嫌に眺める。

 

そうして、暫く。

漸く正気に戻ったルイが、自身の痴態に顔を真っ赤にさせ、バッとアナスタシアを見上げると、力が入らぬ足腰に喝を入れて距離を取り、無意識に東方に伝わる謝罪方法である土下座をかましていた。

 

 

「も、もももも、申し訳ありませんアナスタシア様ァ! 高貴な身である貴女様に、む、むむ、胸を、揉みしだくなどという、不敬極まりない行為をしてしまって・・・! か、かくなる上は、今この場で腹を斬りっ・・・!」

 

 

え、謝る所そこなの? と。

どこで影響を受けたのか、それとも偶々そうなったのか。丸っきり東方の謝罪方法で頭を下げるルイを見下ろしたアナスタシアは可愛らしく頬を膨らませた。

 

怒らせてしまった、と。顔を青くするルイは、しかし彼女が思っていたような理由でアナスタシアは怒っていたのではなく、もっと別のところ。

これまでの数々の無礼と言うか、おおよそ人様にすべきでは無い行為の数々を差し置いて、アナスタシアはたった今ルイがしでかした行いに、腹を立てた。

 

 

「ダメでしょ」

「ぇ、は・・・?」

「今は二人っきり。人払いも済ませてます」

 

 

後は、言わなくても分かるでしょ? と無言の圧を掛けてくるアナスタシアに。

むぅー! と覗き込むように顔を寄せ、必然的にドアップになる胸に目を奪われながらも、ルイは主人の意図を察し、謝罪と共にその名を口にする。

 

 

「も、申し訳、ありません・・・ぇ、エミリア・・・様・・・」

 

 

うん、よろしい、と満面の笑みで頷くアナスタシアは、それ以外の諸々はどうでもいいとばかりに、再びルイを胸に抱き寄せた。

 

 

「わっぷ・・・!? ぇ、エミリア、様・・・!?」

 

 

今更純情振って抗議しようとするルイに、しかしその口は頭に乗せられた慈愛の籠った手の平によって閉じてしまう。

先の少し愉快な、怒りと悪戯心を混ぜた可愛らしい声ではない。

 

心の底から悲しそうな、ルイの胸を締め付ける涙混じりの声が、頭上から零れてきた。

 

 

「本当に、本当に・・・心配したんですよ・・・」

 

 

その言葉に、ルイは何も言い返せない。

今は既に消えた、ルイの股の間で反り勃っていた男性器は、先天性のものではなく、スキルの副作用による後天性のものだった。

 

一時的な強化を齎す代わりに、使用量に応じて代償も重くなる代物である。つまり、普通なら既に干からびてもおかしくない量を連発して出したということは、それ相応のスキルを酷使したという事であり、それ程の強敵とやり合っていたという事でもある。

 

無理をして欲しくない。傷付いて欲しくない。それが自分を慕ってくれる少女であるのなら尚更その想いは強くなる。

しかし、それはルイとて同じこと。

 

まだこのオラリオに来て日が浅かった頃だ。

姉のようになりたいと、そう憧れて訪れたこの地で、しかし姉が所属するファミリアの館を前に気後れしてしまっていた頃の話。

酒場で気を落としている時に、娼館で働く同族の話を小耳に挟んだ。

 

最初はただの正義感からだった。聞くにその娼婦は、幼いエルフの少女だと言う。ステイタスは無くとも、森で鍛え、Lv.2相当の実力はあり、そしてまだ姉と同じく純粋だったルイが、それを聞いて黙っていることなど出来るはずも無く。

 

その日の夜の内に繁華街へと忍び込み、果たしてそこで目にした光景は、明らかに普通のエルフとは異なる気品と覇気を兼ね備えた自分と同じくらいの少女だった。

 

ルイは激怒した。まさか、まさか、ただのエルフではなく、寄りにもよって王族(ハイエルフ)を捕らえ、穢れた男の慰み物にしていたなどと。

人一倍正義感の強いルイでなくとも、全世界のエルフがブチ切れにブチ切れ、神だろうがなんだろうが肉の一片にまで残らず消し去るような前代未聞の事態だった。

 

だからこそ、怒りと正義感に駆られ、若く純粋だったルイは彼女を連れ出した。

エミリアと名乗る、美しいエルフの姫をその手に連れて。

 

それはまるで、御伽噺の一幕だった。

囚われのお姫様と、それを救い出す騎士の物語。

 

そんな自分の状況にルイは酔っていた。

 

酔っていたからこそ、目を覚まさせられた。

目の前に立ち塞がる、山のような一人の大女によって。

 

エミリアに付けられた首輪が、センサーの役割をすると知ったのは、全てが手遅れになった後の話。

神イシュタルの前に引きずり出され、魅了され、逆らうことも、エミリアの存在を他者に漏らすことも出来なくなった時に、自身を下した大女フリュネによって知らされた。

 

それからの日々は彼女、姉に憧れて正義を志したルイ・リオンにとって、地獄のような日々だった。

 

魅了されたルイによってエミリアの素性が明かされ、そうしてその価値を理解した神イシュタルによって、エミリアは名を変え、一介の娼婦から金持ちの好事家たちへの慰みものとなった。

 

逆らうことは許されず、下衆な笑みを浮かべる汚物とともに扉の向こうへと消えるエミリア。

彼女が相手をする客が客なだけに、その情事を見ることは叶わず、ただ部屋越しに聞こえてくる獣のような嬌声に、歯を食いしばるしかなかった。

 

憎かった。何もかもが。エミリアにこんなことをさせる神イシュタルも、自身を下したフリュネも、何も知らず呑気に日々を過ごす他のエルフ共も。

そして何より、目を合わせただけで魅了されてしまった、あまりに弱く、情けない自分自身も。

 

力を、もっと力を。

物語の英雄のようにはなれない、愚かで浅ましい自分が招いた悲劇から、姫を救い出せるだけの力をルイは求めた。

 

幸い、イシュタル・ファミリアは、探索系ファミリアとしても名を馳せている。

そして神イシュタルは、ルイに娼婦としての一切を要求する事無く、ただ強さだけを求めた。

 

娼婦になる必要は無い。その代わり、強くなり、金を稼ぎ、貢献しろ。そうすれば、エミリアを解放してやる。

 

ニヤつく神にそう脅され、否と言える筈も無く、ルイは毎日のようにダンジョンへ潜るようになった。

 

目につくモンスターを殺して、殺して、殺し続けて。

誰と共にすることも無く、ただ一人、ダンジョンに潜り続けて。荒々しい戦闘を表すかのように、毎日全身返り血を浴びては、ダンジョン探索を続けた。

 

その凄惨さを物語るかのように、ステイタスは瞬く間に上がり、魔法や新たなスキルも取得し、数年でLv.3までランクアップを果たした。

ファミリアでは上位に位置する実力をその手にして、【緋色の妖精(スカーレット)】の二つ名で畏れられるようにもなった。

 

力を手に入れた。

全てとはいかずとも、おおよその冒険者相手では束になっても蹴散らせる程度の力を。

しかし、それでもまだ足りないことは他ならぬルイがよく知っている。

 

そして、自分がノロノロとダンジョンに潜っている間にも、エミリアは誰とも知れぬ男たちに穢され、汚され続けている。

それを示すかのように、エミリアの身体は日に日に変貌していった。

男に抱かれる為だけに育ったかのような豊潤な肉付き。エルフという潔癖な種族的美意識から差し引いても尚、露出過ぎな服装。

所々に滲み出る、他者の情欲を煽る、なんて事ない仕草の数々。

 

あぁ、あぁ・・・汚れていく。穢されていく。

自分が弱いばかりに。大切な物が、この手から零れ落ちていく。

 

酷い喪失感を味わった。耐え難い無力感を味わった。

 

それでも、どうすることも出来なくて。

ただ指を銜えて見ていることしか出来なかった。

 

 

「・・・ッ・・・申し、訳・・・ありま、せん・・・」

 

 

だから逃げて下さい、と。

自分の力では助ける事が出来ないから、せめて貴女だけでもと。

そう言葉に出来ない自分を、ルイは心の底から呪った。

 

魅了の影響では無い。

これは、この感情だけは、自分が自ら抱き、そして捨てることの出来ない醜いモノだと、他ならぬルイが知っていた。

 

変貌していくエミリアの肉体。

透けて見える下衆どもの厭らしい笑み。

それによる喪失感と絶望感。

だがそれ以上に・・・そんなエミリアを見て、欲情している自分が居た。

 

女の身で、しかもハイエルフを相手になど、恐れ多い筈なのに。なのに、ルイは、思ってしまった。

 

他の者が抱いているんだ、ならば私だって・・・。

 

壁に頭をぶつけて振り払った。

煩悩を消し去ろうと、余計にダンジョンへ入り浸った。

 

しかし、その想いは日に日に増して行き、遂にはその想いがスキルにまで現れた。

 

妖精騎士(フェアリー・ナイツ)

主人のことを想えば想うほどにステイタスを一時的に向上させ、その反動で自身に男性器を生やすという、皮肉を詰め込んだような最低なスキルだった。

 

それでも、最初は力が手に入るならばと喜んで使ったし、実際にその性能は凄まじく、一時的にLv.4を圧倒出来る程度には、ルイに力を与えた。

 

だが、その反動は気力一つでどうにかなるものでは無かった。

穢らわしいが、それでも自分で処理してしまえばいい、と。そう楽観視していたルイだが、元より女の身体でも経験の無いルイにソレを一人で上手く出来るはずもなく、行為中に常に頭の中にあるエミリアの姿に、想いは募るばかり。

 

そして、そんな状況を見てしまった、見られてしまった事で、エミリアはそのお手伝いをし、ルイは意図も容易く心の髄までグズグズに溶かされた。

 

あぁ、あぁ、逃げられない。逃がしたくない。

気持ち良い、幸せ、絶対に手離したくない。

 

善意で行ったエミリアの行動は、ルイをさらに縛り付ける事となり、甘く木綿のような鎖は、ルイを瞬く間に雁字搦めにしていった。

 

 

「申し訳、ありませんッ・・・エミリア、様・・・!」

 

 

だから、謝ることしか出来ない。

最早自分には、エミリアを助ける資格も、救う資格も無いのだから。

 

だから、あぁ、どうか。

誰でもいい。この地獄のような世界から、救い出してくれ、と。

 

 

別に苦痛を感じてる訳でも、ルイが想ってるような下衆な行為をしている訳でも、()してや男に抱かれてる訳でも無く、寧ろ手玉にとってストレス発散してるエミリアの心など知る由もなく。

 

エミリアの胸に抱かれながら、いつか訪れるかもしれないまだ見ぬ英雄に、ルイはそう願った。




【ルイ・リオン】
神イシュタルと目を合わせただけで堕ちちゃった純情エルフ。二つ名は【緋色の妖精(スカーレット)】。毎日のように血塗れでダンジョンから出てくる様子からその名が付けられた。強い正義感と種族としてのプライドからアナスタシア(エミリア)を助けようとするが、首輪の効果を知らずフリュネに鎮圧され、以降はイシュタル・ファミリアの団員となる。戦闘娼婦ではなく、生粋の冒険者。卑猥な肉付きになると共に布面積が小さくなっていくエミリアを見て来たため、肌を晒すのを極端に嫌う。寧ろエッチだと神の間では評判なことを本人は知らない。姉のリュー・リオンとは異なり、雷系統の魔法が発現している。また、自分の醜く浅ましい欲望を詰め込んだかのようなスキルは、平時であれば決して使わないくらいには嫌悪しているが、強くなるためならと言い訳をして、なんやかんや毎回エミリアのお世話になってはスッカラカンになるまで搾り取られている。次こそはエミリア様のお手を煩わせないようにと意気込むが、やっぱり欲に流されてグズグズに溶かされる。もうエミリア無しでは生きていけない。
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