※この作品はR-18です。

郷に入っては郷に従えっ!   作:ナカムラ ハト

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第三幕 お風呂でシちゃって、ごめんなさい。

1.裸の付き合い

 急行電車を穂都(ほと)駅で降りて、そこから山側へ向かうバスに乗り換える。目的の小穂都地域は温泉地として名が知られている。今日は初日の慰労を兼ねてここの旅館に宿泊することになっているのだ。

 仕事で来ているのでもちろん部屋は別々だが、夕食は一緒にとろうということになった。いま二人は悠一郎の部屋にいる。二人とも旅館備え付けの浴衣姿である。

「夕食って、結構遅い時間だったよね、何時だっけ」畳に寝そべりながら瞳が声を掛ける。

「えっと……七時半です」

 瞳はテレビの脇の置き時計を見た。まだ一時間以上ある。

「じゃ、先にお風呂入ってみようかなあ。露天らしいし」

「ああ、いいんじゃないですか」

「橘君も行ってみれば」

「うーん……ちょっと疲れてるので、ご飯の後にします」

「ふうん」

(疲れてる……か)

 他意はないのだろうが、その言葉は瞳に、先ほどの電車内でのセックスを思い出させた。更に思い返すと、彼はその前にも一度、アーケード街でエリのフェラチオを受けて射精までしていたのだった。

(あ、ダメ、またヘンなこと考えちゃう……)

 瞳は思念を散らすようにすっくと立ち上がると、

「じゃあ、私ちょっと行ってくるわね。鍵掛けないでね」と言った。

「はい、行ってらっしゃい~」悠一郎は畳にごろんと横たわろうとしながら、瞳にひらひらと手を振った。

 

 案内図に従って一階の大浴場の前まで来た瞳は、暖簾が掛かった入口が一つしかないことを訝った。てっきり、女湯の赤い暖簾と男湯の青い暖簾が並んでいるものと思ったが……見回すと、入口の横に小さな看板が立っており、

「当館の大浴場は男女混浴となっております」

 と記してあった。

(これも地域色ってやつかしら……)

 数秒の躊躇の後、瞳は暖簾の中へ入っていった。

 

 露天風呂。

 石を重ねた浴槽、その脇の洗い場。床にタオルを縦に二枚敷いた上に、全裸の瞳は仰向けになっていた。脚は大きく開かれている。そのさらけ出された女陰に、二十代半ば、悠一郎と同世代くらいのすらりとした体つきの男が、正常位の姿勢で隆々とした陰茎をズチュッ、ズチュッと突き立てている。

「あっ、あっ、ああんっ!」

 子宮口に当たるかと思うほどに深々と陰茎を挿し込まれる、その度に瞳はあられもない声を上げた。

 しかし、その快感に身を委ねっぱなしというわけにはいかない。左右に投げ出された彼女の手にはそれぞれ、屈強な体格の男性二人から突き出された肉棒が握られていた。瞳はその二本のペニスを丹念にしごきあげて、次の挿入に備えさせているのだ。その間にも、陰部では肉棒の抽送が激しさを増していく。

「あぁんっ、イイっっ!」

 瞳の快楽の声が湯けむりの中に高く響いた。

 

 ――遡ること約十五分。

 瞳が脱衣所で浴衣を脱いでいると、浴場の方から、パンッパンッという肌を打つような音と、男の呻く声が小さく聞こえてきた。

(まさか……シてる?)

 浴場で出会っての性交となると、ひょっとすると三人以上でといったことも考えられる。実際、男の声は複数聞こえてくるようだ……ただ、逆に女の声は聞こえない。

 脱衣所と浴場を繋ぐ出入口からそっと顔を覗かせると、思った通り浴場では性交の真っ只中であった。洗い場の石床の上で、ラガーマンのような大柄な男性が二人、四つん這いになった女性と前後から交わっている。真ん中の女性は、前に立つ男のモノを丹念にフェラチオしながら、後ろではもう一人からズチッ、ズチッと猛々しく突き立てられている。

 三人の交わりを瞳はしばらくの間息を呑んで注視していたが、不意に彼女は、自分が大きな見間違いをしていたことに気が付いた。

 真ん中で二本の陰茎を前後から突き立てられているのは――細身ではあるが、男性だった。その四つん這いの腰元には、勃起した陰茎がビンと突き上がっていた。その部分が、昂奮を誇示するように細かくぷるぷると震えている。

(えっ、三人とも男の人、なんだ……!)

 男性同士がキスをする様子は昼間のアーケード街で何度か目にしていたが、挿入行為を――しかも三人で――しているのを見るのは瞳にとって全く初めてのことで、思わず体が硬直した。

 どうすべきか、と少し考えた。普通だったら当然そそくさとその場を立ち去るところだが、ここは那珂田市、そして自分は――今は仕事後とは言え――その視察のためにここに来ているのだ。

 数瞬の逡巡を経て、瞳は前を向いた。裸の体の前に、タオルを縦に垂らして持つ。勇気を振り絞って、しかしこそこそと、浴場へと入っていった。

 なるべく存在を気取(けど)られぬように、洗い場の端まで行って静かに掛け湯をする。とは言うものの、もちろん三人はすでに闖入者に気が付いた。性交の動きを止めて、こちらを見る。瞳は彼らとは距離を取って湯に浸かり、腰を下ろした。タオルを胸の前に添える。

「あ、すいません……うるさいですよね?」仁王立ちでフェラチオを受けていた男がこちらを見て言った。

「いえっ、こちらが途中で入ってきたんですから……どうぞ、お構いなく続けて下さいね」思わず目をそらし気味にしながら、瞳は早口で答える。

「そうですか? ……じゃあ、遠慮なく」三人は顔を見合わせると、プレイを再開した。バックで挿し入れた男の腰が、前後に動き出す。両手をしっかりと相手の腰にあてがって、重みのあるピストンをアナルに叩き込んでいく。

「くうっ……」

「んむぅ……」

「おぁあ……」

 男たちの喘ぎ声が低く交わる。瞳は塀から覗く楓の枝ぶりを眺めるような仕草をしながら、視線の端で三人の交わりを具に観察している。

 最初こそ面食らったものの、男性のみでの3Pの光景は、意外にも瞳にとって違和感を与えるものではなかった。男性が前後双方からペニスを突き立てられて快感に静かに悶えている様子は、未知のエロチシズムを彼女に感じさせた。後ろから突き上げる男と前で口淫をさせている男とは、四つん這いの男に隔てられながらも、器用にも時折顔を付き合わせて口づけを重ねている。舌を絡ませ合う二人の大男の恍惚とした表情は、瞳の欲情をも熱く刺激した。

 その合間にも、後ろの男の怒張した肉棒は、四つん這いの男の中を勢いよく往復運動している。

(すごい……お尻の穴に、あんなに太いのを、激しく……)アナルセックスの経験がない瞳には、その点が殊に目新しく映った。

 やがて、後ろから突き上げている男が、

「んおっ、おっ、おおっ!!」

 と雄々しい声を上げると、上を見上げながらがむしゃらに腰を振り始めた。目を閉じて歯を食いしばっている。

(イってるんだ……)

 果たして、動きを止めた男がペニスを引き抜いた途端、ひくついた肛門からどろりと精液が垂れ落ちた。挿入を受けていた側の男のペニスが、中出しされた昂奮にビクビクと震えている。

 彼はなおもフェラチオを続けている。と、咥えられている方の男も、

「ああっ、イクっ! 飲んでっ!」

 と叫ぶと、両手で相手の頭を抱え込んで、腰をグイッ、グイッと押しつけた。

「んんっ……」ペニスを咥える男からくぐもった声が洩れた。

「ああっ……」口内に射精する男の顔が、快楽に歪んでいる。

 しばらくして口からペニスが引き抜かれると、精子を注ぎ込まれた男の喉仏が大きく動くのが、瞳からも見えた。四つん這いのままの彼のペニスが、先ほどと同様にビンビンに勃起したまま、ピクッ、ピクッと脈打っている。

(あの人のは、どうするんだろう……)

 目新しいことばかりの光景に強い昂奮を覚えながらも、瞳はふとそんなことを考えた。順繰りに、今度はあの人が二人のどちらかに挿入(い)れるのかな。

 と、後ろから突いていた男が四つん這いの男の方へかがみ込んで、彼の耳元に何かを囁いた。相手の男は、瞳の方をちらりと見ると、小さく頷いた。

(なんだろう……? 私に用があるとは思えないけど)こちらには会話までは聞こえない。

 前後から二発の射精を続けざまに受けた男は、手桶で体を流すと、瞳の方にぺたぺたと歩いてきた。タオルで前を隠してはいるが、射精をお預けにされた股間が猛々しく突っ張っている。男の後ろに、残りの二人も続いて来る。

(やっぱり私、お邪魔なのかしら……)

 退場を請われるのかと予期していた瞳に、先頭の男は思いがけないことを言ってきた。

「すみません……」

「はい……?」

「あの……もし良かったら、お姉さんも、ご一緒にいかがですか?」

 瞳は驚いて、

「えっ、でも、皆さんは……」とまで言うものの、続く言葉が出て来ない。三人の男は照れたように笑っている。やがて、一人がこう明かした。

「あの、僕たち……女性も大好きなんです」

 

 ――そういうわけで、いま瞳は一人のペニスを膣内(なか)に挿し込まれながら、すでに一度射精を済ませた二人の男のモノを両手で《励まして》いるというわけだった。

「ああっ、あんっ、いいっ、いい~~!!」

 すらりとした男の体躯には不釣り合いなまでに張り上がった陽物に激しく貫かれて、乳首をビンビンに勃たせた瞳は自制を失ったようによがり声を上げ続ける。

「お姉さん、すごく反応がいいですね……市外の人だって言ってたけど、こういうの、初めてじゃないんじゃないですか?」正常位で突き上げてくる男は嬉しそうに言った。

「んっ、そんなこと、ないです……はんっ!」

「でも、オマンコがぐっちゅぐっちゅ鳴ってますよ……ほら」男が角度を付けて腰を挿し入れると、瞳の潤った陰部が卑猥な音を立てた。

「あんっ! そんなに激しく突くから……」

「それに、随分熱心に手コキしてあげてるじゃないですか……チンポ、いっぱい欲しいんでしょ?」

「あぁん……欲しい……」握りしめた左右のペニスを見つめて、瞳は甘えた声を上げる。

「大丈夫、ちゃあんとその二本も、後でしっかりお勤めしますから……でもまずは、いま挿入(はい)ってる僕のをしっかりイかせてくださいね」

「はい……あ……ズコズコ気持ちいい……」

「ああ……すっごいスケベな顔してますよ……見てたら、射精(だ)したくなっちゃうな……お顔にぶっかけちゃっても、いいですか?」

「うん……かけて……」

 瞳を突き立てる男の腰の動きがぐんと速まった。

「はあっ、お姉さん、気持ちいいよぉっ……うっ、んっ、んんっ!!」

 男は愉悦の声を上げながら性急に肉棒を瞳の中から引き抜くと、立ち上がって自分で激しくしごき上げる。(来るっ……!)赤黒くぷりぷりとした亀頭を、瞳はうっとりと見上げた。

「ああぁっ!!」

 先端から、精子が勢いよく射出される――その第一陣が、大きく弧を描いて瞳の頬に掛かった。男はしごき続けながら、かがみ込んで陰茎を瞳の顔に近付ける。びゅるっ、びゅるっと吐き出された液体が、女の顔や髪を線状に穢した。

 徐々に勢いが弱まっていく陰茎を、男は瞳の口許へと近付ける。瞳は舌を伸ばして、亀頭から垂れる出残りの精液を舐め取った。そしてなおも近付いてくる肉棒を、口中に迎え入れた。

「……んんっ!!」

 射精を終えようとする肉棒を咥えたまま、瞳は不意に声を上げる。二人目の男が、充分に用意の整ったモノを、膣内(なか)にずぶりと挿入してきたのだった――一人目のモノを凌ぐ太さと硬さだ。間もなくそれが、急かすようなテンポでズチズチとヴァギナを犯しだす。

「んっ、んっ、んっ……あぁんっ」

 唇を窄めて亀頭をキャンディーのように舐めながら、すでに瞳の体と心は、新たな男との性交に専念し始めていた。

 

2.夕食の前に

 カラカラカラ、と引き戸の開く音がする。座椅子の上で胡座をかく悠一郎は、団扇をあおぐ手を止めてそちらを見遣った。三和土(たたき)に瞳が姿を見せる。

「ただいまぁ」

「お帰りなさい。どうでした? お風呂」

「うん、あのね……」と言いながら、スリッパを脱いだ瞳はそのまま悠一郎の元へにじり寄る。

「……何かあったんですか」

「あのね、お風呂……混浴だった」

「あっ、そうですか! へえぇ、僕、混浴って初めてだなあ」

「私だって初めてよ。それでね、先客の男の人がいて、それで……」そこで、言葉を切る。

 悠一郎の表情が変わった。

「えっ、まさか……」

「うん……シちゃった」

「へええ! すげぇ……石川さん、すっかり那珂田(ここ)に順応してるじゃないですかっ」

「順応ってワケじゃないけど……断るのもナンだし……」

「別にココでは断っちゃいけないっていうわけじゃないですよ?」

「そうだけど……やっぱり、ダメだったかな?」

「いやいや、ダメだなんて……貴重な経験ですよ。立派な業務です」冗談だか真面目だか分からないことを言う。

「で……何人だったんですか?」

「え? ……三人」

「石川さん入れて?」

「ううん、男の人が三人……」

「うおっ、それはまたハードな……え、代わる代わるって感じですか?」

「うーん、どっちかって言うと、同時に、かなぁ……」こうして説明してみると、さっきの状況の異様さが今更ながらに自覚された。悠一郎の顔をちらりと見上げる。

 目が合うと、男の体がそろりと動いた。後ろへと回り込むと、瞳をぎゅっと抱きしめる。

「え、ちょっと……」

「もっと……詳しく教えてくださいよ」

「あ……橘君……」悠一郎は後ろから瞳のうなじに、ちゅっ、ちゅっと興奮気味に口づけを重ねていく。

「あぁん……」瞳から甘い声が洩れた。

「ね、どんなふうにシたんですか……?」

「どんな、ふうにって……向こうが、『一緒にしませんか』って言うから、『はい』って言って……洗い場の床にタオル敷いてくれたから、そこに仰向けになって……」

「仰向け……うん、それで? いきなりズブって?」

「ううん……まずクンニ……してもらった」

「……イクまで?」うなじに接吻する悠一郎の息が、熱い。

「うん……ちょっとイっちゃった……で、そのまま、正常位で……」

「どんな人?」

「最初に挿れてきた人は、割とすらっとした人だったけど……でも力は強くて、お尻つかみ上げられて、ちょっと腰が浮いてるような姿勢で思いっきりガンガン突かれて……」性交のシーンがまざまざと思い出されて、瞳の体はまた火照り出した。

「気持ちよかったんだ……?」

「うん……いっぱい声出しちゃった……」

 悠一郎の手が、浴衣の上からゆっくりと瞳の乳房を揉みしだきだす。

 瞳は手を、後ろから自分を抱く悠一郎の腰元へと伸ばした。浴衣の合わせ目に差し入れると、勃起で張り上がったボクサーパンツに触れた。その先端が、カウパー液にべっとりと染みている。下着の前開きに指を入れて肉棒を外に出してやり、熱を帯びたそれをゆっくりとしごき始める。

「あ……気持ちいい」

「そう……?」

(キスしようよ……)悠一郎に視線を送るも、男は依然としてうなじから肩にかけて口づけを重ねている。

「その間……あとの二人は?」

「うん、二人は、私の両脇にいて……手でしごいたり、お口でしたりしてた」

「両手で、一本ずつ……? 正常位で突かれながら……?」

「そう……ごめんなさい」

「なんで謝るんですか?」

「だって……私、橘君とペアで視察に来てるのに……一人で4pしちゃったから……」

 その言葉に刺激されたのか、瞳の手の中でペニスがびくんと一度跳ねた。

「……確かに、僕、見たかったですよ。石川さんが両手でチンポしごきながら、おまんこ突かれてアンアン言ってるとこ……」

「ああん……橘君、キスしてよっ……んっ!」悠一郎の唇が、すかさず瞳の口を塞いだ。口中で、即座に舌が濃密に絡み合う。瞳がしごき上げるペニスから、くちゅっくちゅっという音が鳴っている。

「ね、挿入《い》れて……さっきの続きしよ?」

「続き……」

 ――そう、先ほどの電車内では最後まで(ヽヽヽヽ)はできなかったのだった。「おああぁっ!!」タカユキの勢いよい射精を口内に受け止めながら、騎乗位の瞳は大きく腰をグラインドさせ、あと一押しで悠一郎を膣内射精に導こうとしている……というところで目的の穂都駅に着いてしまい、二人は慌てて服と荷物をかき集めながら電車を降りた。その時のドタバタを思い出して、二人は顔を見合わせて小さく笑った。

「ね、だからここで……最後までシようよ。私、橘君にも射精《だ》してほしい」

「僕だって射精《だ》したいです……でも、もうすぐ配膳が……」

「大丈夫だって……ここは、那珂田市なんだから」

 瞳はすっと立ち上がると、浴衣をはらりと脱ぎ捨てた。黒の上下の下着に包まれた女の姿を見つめながら、男も座ったままで浴衣を、そして下着を脱ぐ。

 瞳は背中に手を回してブラジャーを外し、それを摘まんだままショーツに手をかけた。下着を抜き取る脚の動きが、男を魅惑した――間もなく、一糸まとわぬ姿になった石川瞳が、こちらに向き直った。悠一郎の視線が、上から下へ――女の顔、首もと、乳房、臍、そして茂みへと、縦に動いた。

 瞳は、座っている全裸の悠一郎に向き合ったまま、腰を落としていく。そして屹立したペニスを手に取ると、腰を更に落としこんだ。対面座位の姿勢で瞳の女陰が亀頭を呑み込み、次いでペニスをずぶりと根元まで咥え込んだ。「あっ……!」二人はぴったりと結合した。互いの背中を抱き寄せ合い、舌を絡ませる。

 両足裏を畳に着いて、瞳が腰を上下させ始めた。ずちゅっ、ずちゅっという潤んだ音が二人の結合部から鳴りだす。肉欲に任せて瞳の動きはぐんぐんと速まっていく。肌が打ち合う音が、パンッパンッパンッパンッと性急なテンポで響く。

「あっ、あっ、だめっ……そんなにされたら、すぐイっちゃいます……」快感に抗うような声で、悠一郎が訴える。

「だって……イってほしいんだもん」瞳は腰の動きを緩めない。

「でも、僕だって石川さんをイかせたいです……」悠一郎の息遣いが苦しげになってきた。本当に、射精が近いようだ。

 瞳は悠一郎に、チュっと一つ口づけすると、腰を振ったまま両手を男の頬に添えた。そして、

「うん、私もイかせてほしいよ……ご飯食べた後でも、明日でも明後日でも……」と囁いた。そして数センチの距離で男を見つめながら、腰の動きを更に速めた。

「あっ、あ、ああっ……!」

「すごいエッチな顔……。イく? イッていいよ?」

「あぁっ……!!」

 射精に備えて悠一郎が瞳の背中を強く抱いた――その時だった。

 コンコン、と部屋の戸を叩く硬い音がした。二人の動きがビタリと止まり、同時にそちらに視線を向ける。

 カラカラと引き戸の開く音、そして、

「遅くなりまして申し訳ありません、お食事をお持ちしました……」という女性の声が、部屋の入口から聞こえた。

「あ、はぁい、お願いします」

 悠一郎と繋がったまま、事もなげに瞳が応対する。悠一郎はぎょっとして瞳を見つめたが、瞳は結合を解こうとする様子を見せない。

 間もなく、お膳を抱えて四十代ほどの仲居が二人、部屋に入ってきた。室内の二人が裸になって結ばれている様子を見ると、

「あら! お取り込み中で……出直しましょうか?」と言った。

「いえいえ、決めてあった時間ですから……」と、男のモノを陰部で咥え込んだまま、仲居の方を見て瞳が答える。

「では、準備致しますので、どうぞお構いなく進めてくださいまし……」

「はい、お願いします」

 座卓の上に配膳を始める仲居を背に、瞳はまた悠一郎に向き直った。顔同士がくっつく寸前まで近付きながら、腰を上下に振り始める。闖入者にひるんでいたペニスが、また見る見るうちに女の中で硬く膨張した。「あ……!」嬉しそうに声を立てる瞳。

「ううっ……」すぐ目の前で、裸の瞳が自分に腰を打ち付けてくる……そのいたずらっぽい眼差し、蠱惑的な微笑みを浮かべる口許、なめらかな肌の質感、乳房や腋のライン……性器同士がこすれあう感触以上に、そうした視覚情報が悠一郎の心をただただ高まらせた。

「キスしよ……」女が誘う。むろん男はそれに従う。快感をぶつけあうように、口中でお互いを貪る。

 

「あ、そうだ……」てきぱきと配膳を進めながら、仲居がふと二人に声を掛けた。

「あの、お客様の中には撮影を頼まれる方なんかもおられますが……いかがですか?」

「あ……、じゃあ、お願いできますか?」瞳は悠一郎から離れずに手をぐいと伸ばし、座卓の端に置いてあったスマートフォンを手に取った。そして動画撮影モードにして、

「じゃあ、少しお願いします……」

 と言って仲居に手渡した。

「はいはい」

 仲居の構えるスマートフォンが、対面座位で交わる二人の姿を記録し始めた。

 

「じゃあ、待たせちゃ悪いから、そろそろイこうね……?」

 瞳は容赦なくズンズンと腰を振り下ろしていく。そうしながら、両手は男の乳首をぐりぐりといじり始めた。

「はっ、ああっ、んん……」悠一郎から切迫した声が洩れる。

「キモチいい……?」

「はい……たまんないですっ」

「私もキモチいいよ……すごく」

 膣内にズブズブと突き立てられるペニスが、びりびりと震えている――いよいよ、射精(く)る。

(全部はダメよ……このあと、お風呂でも、お布団でも、エッチするんだから……でも……いっぱい射精(だ)してっ!!)

 ――そう伝えたいと思うものの、夢中で舌を絡ませ合っていて声にはならない。女と男はただ、

「んっ……んんっ……」

「ふぅんっ……」

 という、くぐもった喘ぎ声だけで会話している。

 やがて悠一郎はハッと唇を離すと、

「あぁっ!!」

 と短く叫んだ。痙攣のように体を震わせながら、槌(つち)を振るように一発一発に力を込めて、腰を下から上へと突き上げる。瞳の膣奥めがけて、男根が身悶えしながら吐精を開始した。

「あっ……!!」瞳も高い声を上げた。

(私、射精《だ》されてる、橘君に、膣内(なか)に……ナマで……)

 瞳は、注ぎ込まれるその感触に全神経を集中させようとするように、目をきつく閉じた。

 裸の二人が、一点で繋がれたまま抱き合っている。どくっ、どくっと精子を送り込む男と、それを膣内(なか)で受けとめる女。全ての射出が終わるまで、二人は目を閉じて甘い口づけをねっとりと重ねていた。

 

 手慣れた様子の仲居が構えるスマートフォンが、膣内射精のさなかの二人を捉えている。きつく抱きしめ合った二人の体が少し緩んだ、その頃合いを見て、フォーカスがペニスとヴァギナとの結合部に当たり、見上げるような角度からゆっくりとそこへズームしていく。

 瞳がおそるおそる腰を上げる。硬さの残るペニスがヴァギナからぶるんと抜け出た。男の跡を残すように小さく開いた膣口。するとそこから、悠一郎の精液と瞳の膣液とが混ざり合った白い液体が、どろりと流れ出た――その流れを、カメラが冷静に追う。

 液体は、立ち上がった瞳の内ももを伝い、膝の裏を越え、ふくらはぎの緩やかな膨らみに沿って降りていき……やがて、二人が下に敷いていた、今はくしゃくしゃに乱れた浴衣へぼたりぼたりと落ちて、白濁の水たまりを作った。

 

【つづく】

 

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