ロンドンからセントラルへ ハガレン ×刀剣×まほよめ 作:木桜 春雨
肩の付け根から右腕はなくなっている、再生させようとしても右腕は、ないままだ。
もしかして、ずっとこのままなのか、腹が立つ、正直くそったれと叫びたい気分だ。
お父様に連絡をとるわとラストの言葉に少年は駄目かもしれないと呟いた。
「どうしたの」
不思議そうな顔をするラストに、確かに自分らしくない台詞かもしれないと思いながら、それでも黙っていることができなくてエンヴィーは吐くように言った。
「変身、できない、本来の姿にも戻れない」
その言葉にラストは、まさかという表情になった。
「ねぇっ、ドクターに診てもらう、錬金術で」
嫌だっ、エンヴィーは思わず叫んだ、頭を下げろというのか、きっとした表情で少年は美女を見上げた。
確かに今、人間とホムンクルスは共存という形をとっている、だが、両者の間に争いがなく良好かといえば、決してそうではない。
自分とラストの二人が協力しているのは錬金術師達に勝てないからだ。
「じゃあ、ブラッドに話す、それならいいでしょ」
「大袈裟にいわないでくれ」
「あなた、分かっているの」
不思議そうな顔をする少年に小さく溜息をもらした美女は、敵になったら厄介よと呆れた顔になった。
腕がなくなったこと、だが、それ以上に本来の姿に戻ることもできないというのが。
もしかして、このまま、いや自分は消滅してしまうかもしれない。
いや、ありえないだろ、そんなことは、このエンヴィー様が。
弱気になるなんてらしくねぇぞ、まるで、人間みたいな。
【くそったれがっっ】
自分に向けての悪態が空しく感じられた。
ブラッドに話すと言ったラストを止めれば良かったと今更のように思ってしまった。
錬金術なら、なくなった腕を元通りにできるだろうか、脳裏に浮かんだのは医者の顔だ。
だが、自分たちの力はと言った、あの言葉を思い出す。
もしかして、錬金術も通用しないのではと思ってしまった。
そうだ、あいつ、笑っていなかったか。
そう思った、見えただけかもしれない。
考えたところでどうしようもない、寝よう、ベッドの中で目を閉じた。
駅から車に乗って、軍の司令室、そこで話し合った事は妙な連中、鬼と名乗る者達のことだ。
そして、退ける為に現れた二人の青年。
マルコーのことを主と呼び、鬼を退けると姿を消した。
得体のしれない連中は、他にも、このセントラルにいるのだろうか。 らしくないと思ってしまった。
自分はホムンクルスなのに、こんなことを考えて、疲れたなんて。
そう思ったとき、部屋の中に気配を感じた。
ラストが戻って、いや、違う。
薄暗い部屋の中に見えたのは二つの赤い点、目だ、駅のホームに現れた鬼だ、そう思った瞬間、ない筈の腕が痺れるような感覚を憶えた。
「おい、なーに、やってんだー、んっっ」
それは、この場に似合わない声だった、まるで、そう、酔っ払いのオヤジのような声だ。
「な、何故、貴様」
声は驚きというよりは、何故という疑問に満ちていた。
「退け、よ、それとも、やりあうか、ここで」
ぱっと見た瞬間、少年のよう印象を受けたが、それは見た目だけかもしれないとエンヴィーは思った。
「おー、間に合って良かったぜ、ほい」
体格や服装から自分とあまり変わらないように見えた。
突然、手を伸ばしてくると飲めと手渡されたのは竹筒だ。
「飲め」
普通なら、怪しい、いや、飲むわけがないと思っただろう。
だが、このとき、エンヴィーは嫌だということもなく素直に口をつけた。
自分が飲んだことを確認すると相手は振り返った、それは自分ではない、ドアの向こうに立っている誰かにだ。
だが、その姿はエンヴィーには、はっきりとは見えなかった
翌朝、目が覚めたエンヴィーは驚いた。
なくなった筈の腕が元通り、ついているのだ、それだけではない、感じていたはずの痛みや違和感もない。
昨夜のことを思い出そうとした、ところが、ぼんやりとしてはっきりと思い出せないのだ。
まるで、もやがかかったようだ。
本当はお父様に話しておきたい、でも、エンヴィーは必死になっていた、絶対に知らせないでほしいと。
普段から生意気な態度の彼にしては珍しい、昔ならわからない、だが、今のお父様なら彼を叱る、いや、怒る事はないだろう。
数日前からだ、お父様の体調に異変が起こったのは。
大丈夫、心配ないと言っているが、こんな事は初めてで本当にと思ってしまう。
ブラッドにエンヴィーのことを知らせたら、お父様に内緒にするのはよくないと反対するのでは、生真面目な性格の男だ。
それを考えるとブラッドに話すのはと躊躇してしまうのだ。
部屋を出て廊下を歩いていた、ブラッドに話す前に誰かに相談しようと思ったとき、浮かんだのはマルコーの顔だ。
不意にラストは足を止めた、気配を感じたのだ。
「何か用かしら」
二人の鬼がいた。
ラストの顔がわずかに曇った、死んだと思っていたが、もしかして別の鬼なのかもしれない。
「ガキと同じ匂いがする」
腰に下げていた刀を鬼が抜いた、感じられるのは殺意だ。
自分は勝てるだろうかと思ってしまった、人間相手なら、そんなことを考えず攻撃していただろう。
それなのに、今、自分は負けるかもしれない。
何故、そんな事を思う自分にラストは心臓が、体か震えるような感覚を憶えた。
「なんだ」
鬼が疑問を投げかけるように声をかけた。
振り返ったラストは自分の背後の人物を見て驚いた。
マルコーとスカーに支えられて診療室に歩くのもやっとだったはずだ、それなのに。
「邪魔をするか、キザクラ」
返事はない、だが、ラストは名前を呼ばれた相手が笑った気がした。のだ、不思議なことに。
ほんのわずかな沈黙の後。
「それを言うか、鬼の分際で」
はっきりと聞こえる、それは男の声だ。
「き、貴様、まさか」
「あり得ん、何故だ」
鬼は狼狽、慌てている、だが、相手は少しも動じる様子がない。
「オマエは死んだ」
あの燃えさかる紅蓮の城の中で全て、崩れたのだ。
鬼の叫びが廊下に響き渡った。
ノブナガ、お、織田の武将だと。
色々とネタが浮かんで試行錯誤中です。