ロンドンからセントラルへ ハガレン ×刀剣×まほよめ 作:木桜 春雨
世界が変わると、こんなにも変わるのか、この男を喰らえば自分はもっと力を蓄えることができるだろうと鬼はにたりと笑った。
初めて、ここに来たときは戸惑いがあった、外ではない生き物が居て当たり前のようにいた、モノではない命あるものが、本来の形を持たずに生きているのだ。
二つの命と体が一つになって生きているなど信じられなかった。
そして見つけた、人の形をしていながらそうではないモノを見つけたのだ。
刀剣から逃げ、世界の狭間をくぐり抜けて大きな扉の前で、それを感じた、妙な力の波動を、興味本位で思わず手を伸ばした。
力が自分の中に入ってくるのが分かった。
刀剣達との戦いで疲弊した体に力がみなぎってくる、これは。
もっと、もっと欲しい、そう思ったとき、はじかれた。
仕方ない、しかたがない、時間が必要だ。
じっと、待つことは怖くない、時間はたっぷりとあるのだ。
たっぷりと、待つのは。
これは、刀剣の、いや、武将の気配だ、何故、どうして。
もし、自分の存在に気づいたら厄介だ、はやく、はやく。
父上と呼ぶ声がする、この男は息子か、だが、自分の存在に気づいてはいない、だが。
こうなったら仲間に知らせて攪乱する。
本丸に攻撃を、それも各時代の本丸に、それと。
突然、部屋に入ってきた女性にブラッドレイは驚いた、文字を書いた布を顔に貼っている、具合の悪い人が、ここにいませんか女の声にブラッドレイは迷った。
怪しいと思ったからに違いない、そのとき、音がした。
「貴様、何者」
部屋中に響き渡る声に女は答えない。
「タマシイ、魂の気配、サムライ、武将か」。
女の声に反応したのは鬼だ。
なんだ、耳鳴り、歳のせいかとマルコーは思った、患者が今日は少ない、軍人は体が資本なので多少の怪我をしても自分は大丈夫だと来ない輩もいるが、最近はそうでもない。
ラストが看護婦として手伝ってくれるからだ、ナイスバディの美女の気を引きたくてやってくる男たちの姿は、まるで恋する少年に見えなくもない。
「ドクター、窓、閉めましょうか」
彼女の言葉にマルコーは不思議そうな顔をした、すると、騒がしくないと彼女が聞いたのだ。
「聞こえるのか」
二人は思わず顔を見合わせた、てっきり歳のせいかと思ったマルコーだった、だが。
(あ、ある、じ、との)
(そちらへ、いけッッぬ)
掠れるような声だが、聞き覚えがある、自分を主と呼んだ二人の青年だ。
嫌な予感がする、マルコーは部屋を出た、行き先は分かっていた、いや、足が自然と向かうのだ、賢者の石を生成した場所へ。
続いてラストもだ、彼女はマルコーの背後から、いきなりその体を抱き上げると走り出した。
部屋の隅から、うっすらと煙が立ち上ったが、それは少しずつ形に、姿になった、甲冑をまとった鬼だ。
「武将、織田か」
腰の刀に手をかけた鬼に対し動こうとするブラッドレイに女が声をかけた、そばに居てあげてくださいと。
(父上のそばに、だが)
自分と戦うつもりか鬼は笑いながら刀を抜いた、どうするつもりだと、武将の織田、だが、その体は人間の女だ。
ゆっくりと女は両手を左脇に添えるようにおろした、その手に何かを持っているわけではない。
「何の、つもりだ、刀は、不動はいないが」
勝つ、つもりなのか、この人間は、刀剣、刀を持っているわけではない、何故だ。
顔が見えないことで感情が読めない、なのに全身から感じられるのはも、闘牙、いや、匂い、甘い、まるで」
下がっていた腕が、構えに鬼の体が震えた。
「開かない、どうなって、くっ」
中に入ろうとしたラストはドアが開かないことに苛立ちを感じた。
「待ちなさい」
マルコーは自分の掌に力を込めた、開かないなら、無理にでも、そのとき。
「こちらですか」
背後から男の声がした。
振り返った瞬間、風が吹いた、視界を覆ったのは白、薄く赤い、それは花びらだ、そしてドアが開く音がした。
入ってきたのは長身の男だ、黒スーツ、白い髪、だが、その顔には大きな傷跡が。
「ば、馬鹿な、き、貴様っ、焼け落ちて」
鬼の言葉に男は微笑んだ。
「ああ、二度も、ね」
久しぶりに更新できました。
次はオリジナルを更新したいわ。