※この作品はR-18です。

チュートリアル用のチョロイン幼馴染に転生してしまった   作:水性さん

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よくあるネタの被害者になるノエルたそと、オトモならぬナカマア○ルー(黒猫)が登場する話。




流石エロゲ世界の保健室!!!

 

 

「あ~……」

 

 

 どうも、朝食食べてない&昼ごはん食べる前で、思いっきり媚薬漬けにされて抱かれて、体温上がり過ぎたのと水分出しすぎたのと薬の副作用的なあれで、なんか今になって頭じゃなく体調をぶっ壊されたノエルです。

 

 その症状の正式名称、魔力拒絶反応・暴走性症候群。うーん、単純でシンプル。

 

 原因は唾液を媒介にした毒魔法シアンによる強い魔力。

 

 人が呼吸(魔人族の場合は体内での生成)によって得た魔力には波長と性質があり、一人一人全然形が違う。それは心臓にあるという魂に影響されていて、変質するからだそう。

 

 だから魔力耐性がある人は大丈夫だけど、耐性の無い人にはそれはもう魔法の近付くに居るだけでも強い痛みを感じるほど。体質によっては自分の魔力ですらダメな人も居たり、そもそも溜め込める魔力が多すぎて暴走したり。凄く珍しいケースの症状だけど、それで死ぬ人もいる。立派な暴走性症候群っていう病名が付くくらい。

 

 中には産まれてからおじいちゃんおばあちゃんになって、ずっと苦しみながら死んだ人も居る

 

 そして私の場合は魔力拒絶反応症。魔力は体の中で血のように循環していているけれど、基本的には魂がある心臓に集まっている。だけどそこに全く別の性質を持った魔力が現れると、魔力同士はお互いにぶつかり合って体に悪影響を及ぼす。

 

 魔力耐性が異常に高い人とか、血の繋がった家族の間なら水魔法アクタをゴクゴク飲んで水分補給とかもできちゃうんだけどね。

 

 私の場合は魔力耐性高いから、前は何ともなかったけど……今回はダメだった。……にしてもレイゼル製の媚薬やべぇ、あれ途中で意識飛びかけたし気持ちよすぎて命の危険を感じた。

 

 体だる……重、痛い。特に心臓、それから次に腰と喉。

 

 まさかここまで拒絶反応が痛い物だとは……なんだこれ、心臓病か何かか?? エグい。超痛いんですが、痛すぎて意味わからないんですが。さっきとは別の感じで意識飛びそう。

 

 しかも相手は勇者、半分神様の魂でできた純粋な魔力。神様は自分で魔力作れるらしいから、そんな魔力が体に思いっきり入ったからか命の危機を今感じている。

 

 とりあえず私は媚薬を薄める為にも、痛みが増すから水魔法アクタじゃなく普通の水を大量に飲んでいた。

 

 ちなみにそれらの知識や対処法はお父さんから教えてもらったもので、ここで保健室の先生に教えてもらったわけじゃない。というのも……先生はここにレイゼルに抱えられて連れてこられた時、保健室に居なかったからだ。何でこんな時に限って居ないの、先生。

 

 

 少しでも水を飲んでトイレに行って体の外に出さないと。

 

 

 はぁ……あの野郎マジではっ倒す、いっそ絞めるか? まぁ反省したら、許してはあげようかとは思うけど。……反省したらね。

 

 

 そう思いながら私は水を飲んでいると、トイレに行きたくなったのでベッドから離れると、何とか立てた。うん、かなり薄まってきたのかな……たぶん。

 

 壁を伝ってフラフラになりながらも私はなんとか辿り着き、スッキリした後で保健室に向かって腕をプルプルさせながらドアを開けたその時だった。

 

 

 

 

 

「んんっ♡ はぁはぁ、あ……ニルデ様っ♡ そこは汚いですっ♡ おやめ下さ──ひゃあっ♡」

 

「……ふふ、ラナ嬢に汚い所なんて無いさ。たっぷりここを味わっていても良いかい?」

 

 

「は、はい……♡ 沢山召し上がってください♡」

 

 

 

 

 

 おいおいおい、嘘だろ。

 

 保健室でそんな事すんじゃねぇよ、というか何でエロ同人とか小説でよく擦られてるネタがリアルであるんだよ。ここはラブホの一室じゃないんだぞ、ふざけんな!! 

 

 というか保健室に戻れねぇ!! 

 

 よくここで人が入ってくるシーンあるけど、まさか私がそれになれと!? 嫌だが?? 絶対に声我慢しながら隣でヤッてるヤツじゃ……というか魔力の感知でお前達が何処にいるのか分かるぞ私は。

 

 って、そこ私が寝てた所じゃねぇか、何してんだ!! 

 

 そう思いながら音を立てないようにしてドアを閉めると、私は廊下で壁を背にしながら座り込む。パンツが見えないように、あと楽だから胡座をかく状態になっていた。

 

 

「……とりあえず、出るタイミング合ってて良かった」

 

 

 ただ私の体が意味分からないくらいムラムラするけど!! 

 

 

「いっ……はぁ、最悪。次会った時は絶対にアイツ無視してやる……」

 

 

 私はそう思いながら対して凹凸のない胸を擦りながら、痛みに耐えていた。すると急に強い痛みが胸の中に襲ってきて、喉から熱い何かが込み上げて吐き気がしてきた。

 

 

「かはっ」

 

 

 思わず吐き出すと、口から出てきたのは真っ黒な血だった。サーッと、血の気が引いていくのを感じながら、心の中でひたすらに「ヤバい」という思考で埋め尽くされる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アンタ、何でそこで座ってる訳? さっさと保健室の中に入れば、死にたいなら別にいいけど」

 

 

 その時、さっきまで周りには誰も居なかった廊下で、音もなく上から声が聞こえてきた。私は顔を蒼白させながらも重い頭を上げて見てみると、そこには細身で長身の猫耳、それからツノを生やした黒髪のイケメンが私を見下ろしていた。少し無気力そうな金色のジト目が私をじっと見つめている。

 

 

「……いや、無理。獣人族の人だし分かるでしょ、保健室の中で何が起こってるのかくらい」

 

「でも保健室は普通アンタみたいな人の為の部屋だろ、盛った奴らの事は気にする必要無いんじゃないの」

 

 

 確かに、そうではあるけれども。

 

 

「はぁ……私の心の問題だよ、こんな中の状況で行けるほど度胸は無いし」

 

「ふーん、アンタ意外とまとも……いや、変わった感性してるな。他の奴らだったら普通に興奮しながら入ってるぜ」

 

 

 ……んん?? 

 

 

「マトモって……いや、これが普通では?」

 

「普通、ねぇ。この世界だとその考えは異質だ、アンタが思ってる普通とここは普通の定義がそもそも違う。幼い頃に体験した事や記憶によって人の考え方は変わるが……。

 

 この世界特有の思考回路じゃない上に、その"普通"の定義なのは……アンタもしかして、俺と同じか? 

 

 

 

 前世は現代の日本とかで生きてた、とか」

 

 

 私は目の前の猫耳に言われて目を見開いた。……まさか、私と同じ人が居たなんて。

 

 

「う、うん……」

 

「じゃあ仲間か。

 

(お嬢に強制的に行かされる事になった学校で、まさか偶然そんな奴と遭遇するなんてな……)

 

 とりあえず、その拒絶反応を何とかするぞ。せっかく見つけた仲間だ、見捨てたら夢見が悪い。それにしても、アンタ俺に会うなんてツイてるな」

 

 

 そう言って猫耳は「なるべくリラックスしてから目を閉じろ」と私に言ってくる。私は胸の奥がズキズキとなりながらも深呼吸をしてから目を閉じる。

 

 

「……いいか、先に言っておく。これは医療行為だ、嫌だったとしても殴ったりビンタするのは止めろよ。流石に命には替えられないしな」

 

「待って、それってどういう──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私が聞こうとした瞬間、猫耳は私にキスをした。

 

 それも軽いやつじゃなくて、もっと生々しいヤツを。驚きすぎて抵抗どころか頭の思考が止まったように感じて、体がピクリとも動かなかった。なので私は客観的に見ればそのまま大人しく、猫耳にキスをされていた。

 

 だけどその間、不思議な事が起こった。

 

 何故か私の魔力ごと、レイゼルの魔力がどんどん目の前の男に吸われていく。それにつれて私は徐々に胸の痛みが治まっていくのを感じていた。

 

 

「ん……よし、これで大丈夫な筈だ。にしても凄く強い毒魔法でできた媚薬の魔力だったんだけど……一体どんなプレイした訳? 普通の人間だったらとっくに壊れてる。

 

 というか、快楽で脳が焼き切れて死ぬレベルだ。次やったらアンタはたぶん効きすぎて腹上死、それか拒絶反応で今度こそ死ぬぞ」

 

 

 もう二度とするな、と戒めるように見てくる猫耳に私は思わず顔を逸らす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……学校側のせいでお題部屋にいれられ、幼馴染の勇者に強制的に媚薬付けにさせられて、犯されてました」

 

 

「へぇ、アンタだったのか」

 

 

 すると猫耳は興味深そうな表情をするとしゃがんで私を見てくる。

 

 

「よりによって勇者か、道理で魔力が普通とは違う訳だ。それにアンタから匂う精液の匂いが尋常じゃないくらいに強いのと、執着の匂いもそれと同じくらいがする事もな」

 

 

 執着……匂いでそんな事まで分かるんだ。というか待って、セッ……したの匂いでバレるのは普通に恥ずかしい、いや普通どころかとんでもなく恥ずかしい。

 

 

「俺はネロ、2年だ。父親が猫人族とサキュバスのハーフ、それから母親が森人族。要するに見ての通りのキメラ」

 

「あ、先輩でしたか……」

 

「敬語は要らない。あと仲間なのに距離感じるし、なんか聞くのめんどくさくなるからいい」

 

 

 この世界では様々な人種が居て、3つ以上体にそれぞれ他種族の遺伝(魔物の遺伝でもそう)による肉体的特徴があると、そう言った人達はキメラと呼ばれる。

 

 私はネロをよく見てみると、頭に猫の耳とツノはあるのに確かに森人族特有の耳が付いていて、合計で耳が4つもある。しっぽは猫……ちょっと触ってみたい。そして背中にはコウモリのような羽が小さく生えている。

 

 でも魔力を吸収できる理由が分かった、それにそういう種族は相手の魔力を取り込むと自分の魔力として変換する事ができる。だからツイてる、なのか。これが地獄で仏に会ったっていうやつかな。

 

 

「アンタ、ノエルだろ? 勝手に親の事情で勇者を奪う為に、邪魔だから色んな女からライバル視されてるっていう」

 

「う、うーん……まぁ、合ってはいるけれど」

 

 

「俺の家、貴族だからアンタの情報も色々結構入ってくるし、親に耳がタコができる程聞かされた」

 

「個人情報!! おい何でだよ、どうなって──ゴハァッ!!!」

 

 

 残ってた血が口からまたドバッと出ると、思いっきり制服とかにかかる。

 

「……とりあえずその制服はもう使い物にならないな、学校に渡してクリーニングするか支給してもらえばいいんじゃないの」

 

「分かった、そうする」

 

 

「あと寮の方に送ってく、どうせさっきまで媚薬の効果と拒絶反応でぐったりしてたから立てなかったんだろ。女子寮の手前まで送ってってやる」

 

「あ、ありがとう……。

 

(インキュバスの血入ってるけど、意外と紳士だな……。もしかして森人族(エルフ)の血が入ってるから中和みたいな感じになってるのかな? 森人族は人だけど珍しく性欲は低いから……でもその反動で時々遺伝的にものすごくエッチなエロフとして産まれたっていう人も出てくるらしいけど)」

 

 

 それから私は同じ元日本人だったという事で、この世界の事についての情報を提供していた。

 

 

「……ふーん、なるほどな。それならこの世界の狂った価値観と貞操観念がこうなってるのも理由が分かる、エロゲーの世界だったからか。

 

(ただ、少し気になる部分はあるが……考えるのが面倒だ)」

 

「うん……だからレイゼルからのアプローチが全部セクハラで、前にそれが理由でノイローゼになりかけたことある」

 

 

 そう言うとネロの顔がドン引きしたようになった。

 

 

「ならさっさとアンタが別れを切り出せばいいだろ。あそこまで薬漬けにしてる男、しかも勇者だ。誰がどう見てもロクな奴じゃない。それにあんな異様な執着の匂いまでさせてるんだ、その方が身の為だって事くらい分かるだろ」

 

「で、でも……」

 

 

「何、なんか理由でもある訳」

 

 

 そう聞いてくるネロに私は「前世の頃に初めて好きになった人と、似てるから……つい」と言うと、盛大にため息を吐かれた。

 

 

「勇者も勇者だけど、アンタも大概だなノエル。どっちもめんどくさくて嫌になる」

 

 

 ……まぁ、自分でも分かってはいたけれども。

 

 

「言っとくが過去は過去だ。例え記憶を持っていて性格も昔と変わらなかったとしても、それは過去の自分でしかない。もはやそれは別人。

 

 本当にお互いに好きなら、そういうの抜きで恋愛してればいいんじゃないの。勇者も半神の魂を持ってるから、俺達みたいに必ず勇者は前世の記憶を持ってる。

 

 だからその時に勇者もアンタによく似た女を好きになったんじゃない?」

 

 

 え、何それ知らない。でもなんとなく前世の知識持ってるって情報のソースは、神様だろうなって事は分かった。それから一応レイゼルが前世の記憶を覚えている謎も。それにしてもネロ、匂いだけでこんなに分かっちゃうんだ。凄いな……。

 

 

「とりあえず、一回本心でぶつかり合って右ストレートを一発顔面に入れとけば。アンタ嫌がってたんだろ、それに死ぬ所だったしな」

 

「分かった……」

 

 

 確かに、そうだ。

 

 私はそう思いながら項垂れて結構落ち込んでいると、ネロは頭を撫でてきた。

 

 

「ひゃっ♡」

 

「うわ、ビックリした……急に何? メスみたいな声出されても困るんだけど」

 

 

 ジト目でそう言われて私は恥ずかしい思いをしながら、必死に理由を伝える。まぁ、確かに自分でもかなりアレだなぁとは思ったけど!! 

 

 

「ち、違う!! ず────っとレイゼルに頭撫でられながらされてたから、たぶん性感帯的な感じに……されたんだと、思う」

 

「……仲間だし、少し慰めようかと思ったけどアンタが今みたいに反応されるなら止める」

 

 

 サッと手を引っこめると、ネロは私に歩く歩幅を合わせて歩く。それにしてもやけに自然なナデナデだったな……。

 

 

「もしかして下に弟とか妹が居たタイプ?」

 

「まぁな、結構歳離れてるのが前世に居た。その時の名残りとかクセみたいなものだから、深い意味は全く無い」

 

 

 なるほど……さっきはついお兄ちゃんムーブが出ちゃっただけなのか。というかなんか、それってやっすい男主人公みたいな行動だな……素でそういうの出る人って、本当に居るんだ。

 

 私は肩を貸されながらそう思うと、2人でこの世界のやべぇ所やあるあるをお互いに話し合っていた。

 

 

「えぇ……嘘」

 

「本当の話。貴族の男として女も抱けてない、セックススキルも無いのは恥だ。とか親に言われて、その親が用意したどっかの家の娘に襲われた。貴族の結婚とかめんどくさいし、第一そういう女と結婚する気も予定も無いから、その必要も無いんだが……。あの時ほど興奮しなかったものは無いな」

 

 

 ……話を聞いていて思う、ネロはかなりの面倒くさがり屋だ。

 

 でも今みたいに私の面倒を見ている訳だから、根は普通に優しいし世話焼きなんだと思う。やっぱりお兄ちゃんだな……。

 

 

「さっさと異世界転生でよくあるスローライフがしたい、身の回りは全部アーティファクトにやってもらって。後は時々旅行だな……実質ただのニートだが」

 

「でもいいね、それ。凄く楽しそう!」

 

 

 そう言うとネロは「……なんか、アンタと凄く似た人が勇者に好かれて、アンタがその代わりにされた理由が分かった気がする」と言った。

 

 

「アンタ、最初から立場とか色々とそういうの抜きで接するよな。この学校、貴族が多いから普通は地位の無い一般人ってやけに仰々しくするからウザいくらいにめんどくさいけど……。

 

 俺が年上だって知るまで普通に接していたし、第一で貴族とすら思ってなかった」

 

「まぁ、ネロは貴族って感じがしなかったし……それに大事なのは中身の方でしょ」

 

 

「……なるほどな」

 

 

 意味深にそう言うとネロはクツクツと笑う。

 

 

「もしスローライフ生活ができるようになったら、アンタも誘ってやろうか。時々あっちこっちにフラフラして、気ままにさ」

 

「じゃあレイゼルが戦争終わらせた後くらいに、田舎の一軒家に招待してよ」

 

 

「ならその時には間食付きでもてなしてやるよ、日本人のおもてなし精神ってヤツで。とは言っても家事はしないし、やるのはアーティファクトだ。

 

 だからいっそ泊まりに来てもいい、なんなら永住でもいいぜ?」

 

 

 チェシャ猫のように笑いながら黒い猫耳はそう言って、それに私は「保留で」と答えた。

 

 

「あーあ、振られた」

 

 

 そう言ってはいるけれども、ネロはこれから起こる事が楽しみだと言わんばかりの顔で笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 すると、突如として後ろから高濃度の魔力が吹き荒れているのを感じた。この魔力は……言わなくても大体察しはつくだろう。後ろからひしひしと殺気も出ているのを感じて、冷や汗がダラダラと出始めていた。

 

 私に向けられている訳じゃないのに……こ、怖い。怖ぇよぉ……。というか、うーん……まさか前から思ってた事が本当だったとは。

 

 

「ノエル、そいつ誰?」

 

 

 体の芯から冷えるかのような声でそう言われて私はビクッとすると、一方でネロは面倒くさそうな顔をしていた。

 

 

「……はぁ、俺の一番嫌いなタイプの人間がやって来た」

 

 

 そう呟きながらもネロは足を止めることなく、立ち止まらずに寮の方まで歩いてくれる。転移魔法のムーヴィで行けたら楽だったけど、学校の中では限られた場所でしかムーヴィが使えないし、行先も固定されてしまう。

 

 というか、今のレイゼルが近づいてきたらガチでヤバいのでは?? 

 

 

「ここは俺が離れた方がなるべく穏便に済そうだな、アンタ今日は絶対安静にしろよ」

 

「あ、ありがとう……」

 

 

 ネロはあっさりと私から離れていくと、振り向かずに手をヒラヒラと振って何処かに行った。とてもありがたい、けれども私の前に立ちはだかるレイゼルがヤバい。

 

 

「で、ノエル。あいつ誰?」

 

 

 二度目の絶対零度な質問に私は鳥肌が立ちながらも振り返ると、私の状態を見たレイゼルが目を見開いた。それはそうだ、だって制服が結構多めな血で汚れてるんだから。

 

 

「ノエル!?」

 

「来ないで」

 

 

「……っ!!」

 

 

 多分初めてレイゼルにこういう拒絶をしたと思う。だけどそれはそういう意味じゃない。だから私は変な勘違いをして変な事をレイゼルが口走らないように続けて「今のレイゼル、魔力が思いっきり出てる状態だから引っ込めて。さっき魔力の拒絶反応で吐血したから……」と言うと、レイゼルの顔色が急に悪くなる。

 

 

「ご、ごめん……俺のせい──」

 

「今日で二回もレイゼルに殺されかけた訳だけど……それより吐血したんだから、今回はお父さんにバレたらレイゼルが絶対に殺される事になると思うし、とりあえず責任持って看病してくれない?」

 

 

 貸一つって事で。

 

 そう付け加えて言うと、レイゼルはブンブンと頭を縦に震る。

 

 

 

「する!! もちろん、絶対する!!」

 

「それでさっきの人は血を吐いてた私を助けてくれたの。元々はレイゼルが原因なんだし、後でちゃんとお礼言ってね」

 

 

 するとレイゼルは凄く嫌そうな顔をしてくる。たぶんネロがインキュバスで、インキュバスは魔力を相手から吸収できるけれどその方法が粘膜接触。

 

 私もビックリし過ぎて驚いたけど……なんか、自分でも特に何も思わなかったな。むしろその後に普通に会話もしちゃったし。

 

 仕方ないとはいえ、私がキスをされたことをレイゼルは察していて、それが嫌だったんだろう。もし私が逆の立場でも凄く嫌だし。もちろん、借りを更に作ることになるからが理由だけど!! 

 

 

「助けられたらお礼をする、人として当たり前のマナーだよ。次会った時でもいいからちゃんと言ってね?」

 

「……………………分かった」

 

 

 かなり長い間ができたけれども、レイゼルはそれに頷いた。

 

 

「とりあえず着替えたいから寮まで運んでくれる?」

 

「運ぶ!! ノエルの為だったら1000kmだって地面を舐めながら這いずってでも行く!!」

 

 

「それは流石にやめて、そしたらもう二度とキスさせないから。しようとしたらその舌を切り落とすから」

 

「じゃあそれは絶対しない!!」

 

 

「よろしい、なら肩貸して。正直、立ってるのもちょっとキツイけど、流石におんぶとかされるのは──」

 

 

 それから何故かお姫様抱っこをされ、ナチュラルにレイゼルは私のプライドに傷を付けていたのにそれで更に塩を塗り込んできたのだった。

 

 

「離せ、止めろバカ恥ずかしい!!」

 

「ノエル~、婚姻届って何処に出せばいいんだっけ」

 

 

 そして何を思ったのか、何故かそんな事を口走ったレイゼルを私がひっぱたいたりしていた。それから寮に着いた後、私はベッドに寝かされて横になっていた……けれども。

 

 

「レイゼル、早く授業に戻ったら? まだ授業の時間でしょ」

 

「やだ、ここに居る」

 

 

 駄々っ子のようにそう言って、レイゼルも横になって私を抱き枕にしていた。おい離せ、お前勇者だろ。人類を救う為の英雄(生贄)だろ……いや、これの場合は遊者か。

 

 

「じゃあ随分前にレイゼルは私の匂いだったら嗅ぎ分けて場所が分かるとか意味分からないこと言ってたけど……それができると仮定した上でサボってるレイゼルに聞くよ。

 

 今日、私を保健室に連れて行く前にシャワーを一緒に浴びたよね」

 

「そうだな~! その時のシャワーの水に当たるだけでも敏感になってるから感じてるノエル、すっげー可愛かった♡ ……また朝みたいにシようか?」

 

 

 そう言いながらレイゼルはスリスリと頬擦りすると、下半身を押し付けてくる。おいコラ、貴様全く反省してないのか。というか本当に性欲バケモノだな、また勃たせるな。もうちん……が熱いんですけど、どうなってんだ勇者って。意識飛びかけてたし、記憶はとっくに飛んでるからあんまり覚えてないけど、15回以上はされてるな……下手したら20。

 

 やっぱりバケモノでケダモノだ、そのぶら下がっている玉は一体どうなってるんだ全く。

 

 それに結局朝みたいにまたシャワー中でもされたし。私そんなにお風呂好きじゃないよ、皮膚ふやけるよ。というかちょっと股の方ヒリヒリして痛いから無理。

 

 

「……まだそんなに時間が経ってなかったのに、どうして匂いが分かったの? 汗もかいてないのに、何ですぐこっちに来れたの? シャンプーとかボディーソープも学校の備え付けだから、絶対に分からないと思うんだけど」

 

「戦争終わらせる為にもやっぱ授業ちゃんと出ないとなー、行ってくるー」

 

 

 なんだその白々しいセリフは、しかも棒読み。

 

 そそくさとレイゼルはベッドから降りると部屋を出て行こうとする、でも正直私にはその理由は分かっていた。

 

 

「コレなんでしょ? あと他のも」

 

 

 私は腕に……正確的にはブレスレットに指を指しながらそう言うと、レイゼルは「あぁ~、やっぱ気づいてたか」と、まるであちゃー、失敗したー! みたいな風に笑って言っているけれど、全く感情の篭っていないのが顔を見なくても分かった。

 

 

「随分前に外そうとしたけど呪いかかってて外せなかったし、他にも色々と機能付いてるんじゃないかとちょっと思ってたけど、レイゼルが来た瞬間に確信した」

 

「……それで?」

 

 

 だからそれがどうしたのか、と若干開き直っているかのような言い方をしてくる勇者に、私は少し呆れながらも背を向けるように寝相を変えた。

 

 

「ただの事実確認」

 

 

 本当はここで「私を前世の頃に好きだった人の代わりにしてるなら、私が何処に居ようとも別に関係ないでしょ。私は別にその人じゃないし、代わりにするならこの世界は100万kmもあって広いんだし、私よりもっと似てる人は探せば居ると思うよ」とか言いたいけれど、それを言ったらもう最後だ。

 

 それにその人に負けを認めるのと同じ事、きっとレイゼルだって私が言っている事をそっくりそのまま返してくるだろう。そういうのにレイゼルって鋭いし。

 

 どうせ不毛な争いを呼ぶだけだし、言う必要も無い。

 

 それだったらこのままの方がある意味で安定しているとも言えるし、とりあえずレイゼルが私の誕生日に渡したアクセサリーの効果を頼っている間、私は捨てられることも無い。

 

 ……うーん、今まで自分磨きとかした事無かったけど、してみようかな。でもメイクは流石にハードル高いし、現代日本じゃないからY○uTubeとかで検索して調べられないし。

 

 せめて髪とか爪とか、肌とか……地味だけどちゃんと手入れしようかな。

 

 でもレイゼルがそういう細かい所に気が付くかな……。気付いたとしても、レイゼルは意外と自己肯定感低いから自分の為とは気付かないだろうし、自分以外の好きな男ができたとかいう思考になりそう。

 

 はぁ、どうしたものか。

 

 そう思っていると私のお腹の方から空腹の音が鳴ってきた。

 

 

「……ご飯持ってきたら許してあげるよ」

 

「そんなでいーの?」

 

 

「美味しくなかったら許さないから」






なんか出てきた病名は作者がテキトーに付けました、細かい事は気にしないでね。

そういえばレイゼルくんって、普通なら嫌われる事しかしてないんだよね。イケメンでもこれは許されませんな、一生修復不可能レベル。

というか二度もうっかりで殺しかけたし。

(まぁそれで死んだら吸血鬼かゾンビにさせた後、もう離さないゾ♡ なルートに入りますけどね。絶対に逃られないよ!)


でもノエルたそは最終的に許してるんだよね。それってある意味、変態勇者よりもヤバい。








~おまけ~




「……レイゼルは完全に透明化できるから取らなくていいって言ってたけど、流石にそろそろ取った方がいいよね。付けっぱなしって、ちょっとズボラな感じがするし」




《ノエルは呪われていてブレスレットを外す事ができない!》




「……マジですか、まぁ透明化していればいい話だけど」

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