チュートリアル用のチョロイン幼馴染に転生してしまった 作:水性さん
ノエルたそが
作者、最近オリキャラ達のフィギュアを樹脂粘土でコネコネした。たのちかった!
あとこの話、カッコイイ戦闘シーンは無い。というか大会が開催されるまで無い。
「ぜ、全員家の中に避難しろ! 魔獣の攻撃だッ!!」
灰色の雷が落ちた後で勇気ある一人の男Aがそう言い、ヒエリカの各場所に設置してある屋台ストリートにあった魔獣警報ボタンを押す。するとヒエリカ中に警報が響き渡り、警報とその声を聞いた人々全員は、一斉に自宅の方へ駆け込むと素早く避難して行った。とても迅速な行動である。
「……ヒエリカって、国民全員が年に二回避難訓練してるからか、避難が速い……って、そんな事より! レイゼル、速く城下町から出るよ!!」
「わ、分かった!」
ノエルは焦った様子でレイゼルにそう声をかけると、2人は走って城下町の外へ向かう。そんな時、上方向からさっきよりも強く感じる魔力にノエルは冷や汗を流した。
「(また来る、レイゼルの方に!!)」
バチィィンッ!!
素早くノエルはまた避雷針を立てると、再び落ちてきた雷を回避させる。
「あ、あっぶねー!!」
バチィィンッ!!
「また!? ちょっ──」
バチィィンッ!!
「なんで俺だけ!!?」
「雷は高くて金属の方に落ちやすい性質があるけど、何でレイゼルの方に落ちるの? 結構避雷針立てた筈なんだけど……」
もしかして
ノエルはそう思うとまたレイゼルの方に雷が落ち、それをレイゼルが何とか回避するという、ギャグのような展開になっていた。
バチィィンッ!!
「あぶねぇッ!! 死ぬ、死ぬってこれ!!」
「早く寮に戻ってお金を──」
しかしここでノエルにピカッと豆電球が閃いた。
「あれ、でもこれって逆に言えばレイゼルの方にしか落ちてこない訳だから、それ以外のヒエリカの人達って安全って事だよね?」
「ま、まぁそうだけどさ!?」
バチィィンッ!!
「おわっ!?」
「じゃあ頑張って避けてて」
バチィィンッ!!
「
「あれって結構大変だったよね、私は結構失敗してたけど、テ○ーダよく生きてたな……じゃなくて!! とにかく私の前走って早く城下町出てて! 雷が人に当たるから!!」
バチィィンッ!!
「俺は良いのかよ!?」
「でも正直当たっても大丈夫そうだし……
バチィィンッ!!
「ひでぇ、まぁ分かるけど!! でも好き、終わったらセックスしよ!!!」
「……今思ったけど、この会話って緊張感の欠片も無いな!? 特にレイゼル!!!」
お前ら結構余裕だろ。そんなふうなツッコミが入りそうな2人だが、何とか避難している人達の波を避けるようにして少し遠回りをする形で移動すると、城下町にあった外に繋がる金属製の門の先にある橋を抜けようとする。だがその前に門が固く閉ざされており、押してみるがビクともしない。
「何だよ、こんな時に!」
「もしかして元々外からの魔獣の侵入を防ぐ為に自動で閉まって鍵がかかってるんじゃ……転移用の魔法陣を探して使いたいけど、ヒエリカの魔獣は魔力を感知できるし……流石に非常用の扉がある筈」
そう考えてキョロキョロと周りを見てみると、ノエルはすぐ近くに非常用扉を発見した。
「あった!」
その近くに行ってみると、そこには鍵やレバーの代わりに魔力認証の装置があり、ノエルは頭を抱えた。
「……やばい、ここに来て入国許可証の手続きしなかった事が祟った。魔力認証タイプだこれ……」
「嘘だろ!?」
ズーン、とノエルは落ち込んでいるさなか、レイゼルはハッとして「いやでも、ワンチャンいける……かも?」と独り言を言うと、ノエルに「とりあえず、やってみれば……たぶんいける、たぶん!!」と、認証させようとしていた。
ただノエルからは「うわ、何言ってんだコイツ……」というありえないやつを見る目で見られた為に、ちょっとレイゼルはゾクゾクしていたが。
「いいから! 一刻の猶予も無いだろ?」
「……分かった」
絶対に無理だ、といった様子でノエルは魔力認証の魔力を感知する部分に触れて魔力を込めると、非常用扉は"ガチャッ"という音を立てて鍵が開く。
「うそ……」
「よし、これで外に出られるな!」
ノエルは頭の上にはてなマークをいくつも量産しながらドアを開けて城下町の外に出ると、城下町から離れた所から広い平原に向かって転移をした。転移魔法はゲームでよくある体が重なるバグのような感じをリアルで発生させてしまう為、悲惨な事故が起こる。
なので基本的に城下町や村の中では、魔法陣の中以外で転移をしてはいけない事になっているし、そもそも転移用の魔法陣がある場所でしか転移魔法が使えないようになっているのだ。魔法使用許可の免許がある場合はそれに限らないが。しかし今回は魔獣に居場所を教え、城下町に攻撃魔法が放たれるのを防ぐ為だった為、こうしてわざわざ足で移動していたのである。
「それでレイゼル、ちゃんと武器持ってる?」
「もちろん持ってきた! まぁ元々魔獣を狩る為に武器を持ってきた訳だしな」
一応確認すると、レイゼルは何処からか鞘に収められた鉄の剣を出すが、ポケットの中に仕舞う。これぞ(エロ)ゲームマジック。勇者のポケットは異次元で4次元である。それを見たノエルは「何処から出てきた……」と言わんばかりな表情だった。
「でも今回は1匹だから"聖剣"使っても平気そうだし、いーや」
「まぁ、確かに。私は動きやすいからダガーナイフを持ってきたけど、空飛んでる相手にはちょっと……投げるくらいしかないし、今日買った鞭にしよう……」
「……」
「(今叩かれたいとか思ってるな)」
その通りである。
ノエルは鞭を取り出して装備をすると、魔力を込めて戦闘モードにムチを切り替えると、一本の縄状に形が変わった。
「じゃ、いくよ」
「おう! 害獣退治に洒落込むか! ……で、どうすんの? 流石にレネダ使ってくる相手にレネダは効かないだろうし」
「うん、実際に効かないと思う。拒絶反応は起こすだろうけど」
「ノエルがそう言うなら効かないな! で、レネダが効いたとしても城下町に落ちてくる訳だろ? 危なくね?」
今回はもっともでマトモな意見をするレイゼルに、ノエルはフッフッフと意味ありげに笑うと「鞭の効果を発揮する時が来た!!」と言いながらやけに高いテンションで鞭をヒュンヒュンする。
「……まさか、それで?」
「そう、そのまさか」
「一応聞くけど、何すんの?」
「いつまでも頭を高くして見下ろしてくる
ノエリアに英才教育()を施された今回の事もあり、ノエルは完全にとは言わないが、鞭を持つとSモードのスイッチが入ってしまうようになったのか、口調が父親に随分と似てくる。
そんな幼馴染に変態勇者はハァハァして、自分から鞭に叩かれに行かないように我慢していた。
「……それにしても魔獣自体から一切魔力を感じない」
「はぁ、はぁ……♡ た、確かに。感じるのは魔法使った魔力の名残りくらいだしな……それで1回俺のこと鞭で叩いてほしいんだけど」
「盛った犬は黙ってろ」
「あっ♡」
ヒエリカは世界で初めて、魔獣を探知することができるアーティファクトを作り出した国だ。それも高性能でアーティファクトは現代の人工衛星のように打ち上げてあり、世界規模で魔獣を感知する事ができるのだ。ヒエリカの魔法化学力は世界一。(※*1)
しかし、魔力を発する事がなければ、探知する事もできない。見つからない筈である。アーティファクトに頼っても、現地に赴いても。魔力を感じなければ、見つける事はできない。
だが魔獣が魔法を使った事により、魔力の流れが発生した。
「道理で、今まで見つからなかった訳……なんというか、小賢しいというか。魔法使ったらバレるっていう、不完全な所が進化の過程じみてるけど……」
「5年後にはどんだけ魔獣がパワーアップしてるんだろーな」
「さぁ、ねっ!!」
そして空に向かってノエルは鞭を振ると、鞭の縄はまるで如意棒かのように伸びていき、魔獣に巻きついて捕らえた。
「……捕まえた」
「はぁ、はぁ……♡」
隣で羨ましそうに魔獣が居るであろう、空を見ながら興奮している変態をスルーしながら、ノエルは鞭を強く握り締める。雲の上で暴れているらしく、鞭が揺れて引っ張られながらも、重心を下にして鞭を通し大量の魔力をグリフォンに流し込んだ。
「ピィィグルァッ!??」
「魔力を隠すのもいいけど、他人の魔力が効かない体になった方が良かったのに」
そしてノエルは鞭を元の長さまで縮めていく。
「
「まぢノエルヒエリカぢゃん……そういうとこも好きぃ♡」
それから雲の上から引きずり出すようにして、思い切り平原に向かって引っ張った。
「ピィィィグルォッ!?」
その数秒後、巨大な鷲の頭と翼、そしてライオンのような足を持つグリフォンがその重量と体積によって強い風を起こし、分厚い雲を突き抜けながら地面に叩きつけられる。地面がグリフォンの周りを覆うようにしてクレーターができ、強い衝撃を放つ。しかしグリフォンは落下している最中に魔法を使い、その影響であまりダメージが入らなかった。
「……全身黄色の鳥だったらゲットしてポケットに入れてたのに」
「サ○ダー……」
「トオ──いや、やっぱりやめよ」
ノエルはそう言いながら魔獣を焼こうとしたものの止める。
「はぁ……小賢しいポイントその2、叩き付けられる前にフィジゾーンとカルゾーンを使ってる。しかもその後で物理・魔法反射のフィジカウンとカルリーフまで……。
(疲れてるから早く寝たいのに……)」
「うわ……」
その証拠に、グリフォンを覆うようにして魔力でできた透明なバリアがある事を感じていた。
「という訳でレイゼル、食べたエネルギーを使う時が来たよ」
「えー……ならそのエネルギーをノエルとセックスするのに使いたかったなー」
「捕まえてる間にさっさと
「はひっ♡ 精一杯手伝わさせていただきましゅっ♡♡」
魔人族以外の人間は聖力という生命と感情が引き起こす、自然エネルギーである魔力とは最も遠く離れた対極で似た神聖なエネルギーを使う事ができる。(※*2)聖力は奇跡の力を起こすことができる力で、魔力とぶつかると相殺して無になり、どちらかの力が強い方が残る。しかしその力は元々神が使える力。
聖歌を歌う事で神に力を求める声を聞き入れてもらい、力を使う為の権限とその力の源となる"種"を得るしかその力を得る道は無い。
そして聖力は有限であり、神ですら元々持っている聖力が底をついてしまう為、渡すのに限りがある。というのも、魔力は自然・想像のエネルギーで知識が必要であることに対し、聖力は生命と感情のエネルギーで、願うだけで奇跡を起こせるからだ。
つまり、神は聖力を全て渡すと消えてしまうのである。そして新たに別の存在としてその役割を持った神が生まれる。
なので必ず得る事ができる力という訳では無い。神に認められた生命力の強い者だけが、投資として種となる聖力を続けて得られるのだ。そして力を与えられた者が死んだ時、その聖力は元の持ち主に還る。
弱い種にいくら
勇者は半神である為、普通の人間とは違い聖歌を歌わずとも元々聖力を持っている。いやそもそも、純粋な聖力その物を持っている。そして勇者は他の神には無い、特別な力があった。
他の神が概念やら秩序、法律などの役割に伴い、それぞれその神にしか使えない能力があるように、半神で人間という生命体で何度も生まれ変わる勇者には、聖力を無限に作る能力を魂に宿していた。
それも感情と直結した形で、更に創造神達に力を与えられて。
なので能力を発現させる為のエネルギー(それらは食欲や睡眠、性欲などを満たす事で得られる)さえあれば、その量に応じて聖力を更に作り出せる。
そして魔力と対極した聖力は光の属性であり、闇の眷属である魔物や魔獣には聖力が弱点だった。
「……よっし、じゃあ行くぞー!」
レイゼルから光のオーラのようなものが出てくると、それはレイゼルの手に光が集まり、その光は剣の形になる。
これぞ勇者にしか使う事ができない、レイゼルだけの剣。その名も──。
「来い、なんかピカる剣!」
「……いつも思うけど、その名前変えた方がいいと思う。せめてエクスカリバーとかラグナロクにしてよ、そっちの方がまだカッコイイから(ちょっと痛いような気もするけど……)」
「じゃあエクスカリバー!!」
《なんかピカる剣はエクスカリバーになった!》
名を改めてエクスカリバーをレイゼルは構えると、拒絶反応による痛みと拘束から抜け出そうと黒っぽい魔力でできた体液のようなものを口から吐き出しながら暴れているようで、なかなか大人しくならない。
しかしその動きは勇者であるレイゼルには随分と遅く感じていた。
「よいしょーっ!」
「(餅つきみたいなノリでシールドブレイクしながら絞めたな……)」
対極にあるエネルギーの塊が魔力の膜を刃が当たる前に相殺し、無の状態にするとエクスカリバーは何の抵抗もなくグリフォンの首を斬り落とした。
「ノエル! 俺偉い? 偉い?? ちゃんと首切れた! 俺たぶん初めて勇者らしい事したよな? 早くホテルに帰っていっぱい俺の事よしよし(意味深)して!!」
「あー、はいはいエライエライ。というかエクスカリバー持ったままブンブンしない」
「扱い雑!! でも好き!!」
「それより早く燃やすかこのまま浄化しないと──危ないっ!!」
その瞬間、一際大きな雷が落とされた。あまりの威力に地面が焼け焦げ、平原に生えていた草は発生した熱によって燃やされ灰となる。
「うーわ、もう復活してる……早すぎだろ」
「たぶん、断面に入ってきた聖力が足りなかったんだと思う。だから……うん、流し込んだ私の魔力と相殺されちゃって、ただ首が切られただけになったのかも」
その前にノエルは勘働き、レイゼル腕を掴んでから
だが普通の生き物と違って、魔獣はゾンビのような存在。筋肉の繊維などが断面から見えたり、アニメなどではお決まりの再生する時に筋繊維がニョキっと出てくる感じで再生するのではなく、魔獣特有の黒に近い灰色の魔力と同じ色をしているぶよぶよとした物がうねうねと動きながら再生していく。
とはいえ首を切られた後で復活するのに数十分は時間がかかる筈なのだが、数分もせずに復活していた。本来であればエクスカリバーの力でもっと復活までの時間は長かったのだが……。
「……ごめん、魔力を流しすぎた」
「何その強キャラ感あるセリフぅ……好き」
魔獣は燃やし尽くされるか、聖力で浄化される事以外では死なない。なので魔力の拒絶反応程度では死なない為、魔獣を弱らせる為にグリフォンの体の大きさに大して効果が十分得られる程の量を流し込んだ。
しかしそのせいでレイゼルの聖力とノエルの魔力がお互いに相殺し合ってしまったのである。
「グルルピィィッ!!」
すると切り離された頭が動き出し、地面を這うようにしてドロドロに溶けていきながら自分たちに向かって動く。
「何あれキモッ!? 俺ああいうの無理!! こっち来んな!!」
「爆ぜろ」
気持ち悪い上に鬱陶しい、邪魔と言わんばかりなノエルは、魔獣に心の中で
さっさとホテルのふかふかベッドで寝たい。眠い、沢山歩いたから疲れた。早く終わると思ったのに。
そんなふうに思っているノエルはイライラしながら、思い通りに事が進まないのが嫌だと思う事に内心父親と同じ共通点が自分の中にある事に気がついた。
……口にこそ出さないが、父であり師であるノルトの事をノエルはとても尊敬していた。なので父親と同じ共通点を見つけられて、少しだけ嬉しくはなったが、今はこのイラつきのせいで素直に喜べない。
生き物は思い通りには動かない。だからそれは別にいい、だが
ノエルは今、最高潮に気分が悪かった。
そんな時こそどうやって倒してやろうかと思考が働き、攻略法を見つける事ができる。
「レイゼル、やっぱり
「じゃあここで
レイゼルがそう言ったタイミングでグリフォンの再生が終わり、敵意の籠っている目でレイゼルとノエルを捉える。そしてまた雲を突き抜けて空に天高く飛び立った。
「大人しくあれで死んでいれば、苦しい思いをしなくて済んだのに」
某伝説のブロッコリーのような事を言いながら、ノエルは勘で魔法を使う位置を決めて魔力を一瞬にして爆発させるようにして使った。
「レネダ、エルズ」
ドゴォォンッ!!
魔獣の轟くような緑の……完全に某映画に出てくるア○ダケタブラを彷彿とさせる雷が落ち、魔獣のシールドが貫通した。
ノエルが思っていた通り、雷は魔獣には効かなかったが、拒絶反応で少しづつ魔獣のHPが削れていく。
そして普段は使用するすることの無い魔法陣をノエルは足元で展開させ、聞き慣れない呪文を唱えた。
「ルカトーラ・ヒエリカ・ローヴィズ」
すると魔法陣は強く輝き始め、魔法陣からふよふよと魂のような物が出てくると、カッと光ったと思えば空に登って行った。
「よし、勝った」
「えっ、今ので!? ……でもエルズって、草魔法だろ? 雷でシールドを破壊するのは分かるけど、草でなんかできたっけ? あとさっきの呪文初めて聞いたんだけど」
「見てれば分かるよ」
ノエルはそう言うと、レイゼルは雲に二つの穴があいた空からじっとグリフォンを見つめて確認をする。
「あっ、落ちてきた」
ドゴォォンッ
二度目の落下。ただ今回は落下の衝撃をまともに受けた為、かなりのダメージを受けて体が潰れている。それくらいのダメージなら本来は再生するのだが、治るどころか魔獣の体が段々と溶けて消えていく。
「うわグロッ」
「確かにグロい……けど、血じゃないから平気」
そして魔獣の頭から……。
「にゅーっ!」
「なんか生えた!?」
つぶらな瞳と可愛らしい口から覗くちまっこい牙、赤くて白い斑点模様に、魔女の帽子のようなカサの先にチョウチンアンコウのような怪しい光る丸い物が付いた物を持ったマスコット的なキノコが小さく生えた。
「レイゼル、知ってる? キノコには冬虫夏草っていう、寄生するキノコが居るの」
「知らない!」
「素直でよろしい。それでこのキノコ、品種改良というか魔改造してできたのが魔力吸草っていうオリジナルキノコ」
「名前そのまんまだなー」
「レイゼルよりマシだと思う」
じとーっとした目でノエルはそう言うと、レイゼルはそれにハァハァする。やはり変態である。
「でもそのまんま使うと枯れるまで吸い尽くすし、枯れる前に周りに胞子を飛ばして無限に増えて大変な事になるから……キノコにこの平原に居た精霊を召喚してキノコを肉体としてプレゼントした」
「精霊? ここって精霊居んの?」
(※精霊とは*3)
するとレイゼルはキョロキョロと周りを見渡して、平原を見る。精霊は湖や森などに居る守神のような魔力でできた存在。なので、精霊が居そうな場所を確認しようとしたが……居ない。
「らしいよ、昔はここって森一面だったけど焼かれちゃったんだって。
「……流石魔力の終着点って言われてるだけあるよな。普通だったらもう存在消えてんのに、空気中の魔力だけで微かに存在を保ってられてたんだ」
「それでもしかしたらいけるかなーって思ってやったら、いけた」
「……ダメだった時は?」
「ヒエリカの新しい特産品になってた。冬虫夏草って、珍味だけど体に良いらしいし……魔力吸草も良さそうかなーって」
「えー……そういうとこ、ほんとに良くない……けど好き」
レイゼルはノエルにくっついていると、魔獣の魔力を吸収していくキノコはどんどん大きくなっていき、スラのすけより少し大きいサイズのキノコに成長した。
「あれ、でもよく考えたらこれって近年言われてる空気中の魔力濃度が高くなってきてヤバいっていう問題と魔獣の問題がこのキノコで解決するんじゃ……? それに冬虫夏草って薬にも使われてるし、食べたら効能ありそう」
「確かに!」
そうなると某配管工の赤い帽子と青いオーバーオールを着たヒゲのような感じで、人類全員がキノコを片手に魔物と戦争をする事になるのだが。
「でも魔獣でできたキノコを食べるって、なんか食欲が失せるな……」
「というかそのキノコ食っても平気……?」
様々な疑問が次々と現れるが、そんな事はキノコの変化によってすぐに露と消える。
「にゅっ、にゅっ!」
「「立った!?」」
なんとキノコに丸っこくて短い足が生え、カラカラに干からびて魔石だけとなった魔獣の上をキノコは嬉しそうに「自由だ~!」と言わんばかりに走り回っていた。途中で盛大にコケながら。だがノエルはキノコを見ていて、走り回っているというのにあまり元気が無い事に気がついた。
「……とりあえず、魔石を回収して帰ろうか」
「そーだな!」
ノエルはすっかり養分にされて土へ還った、燃やされることも復活することもない"魔獣だったもの"から出てきたかなり大きな魔石を拾うと、それを眺める。
「魔石の中でビリビリしてる……」
「ほんとだ、ビリビリしてる」
「……これ、半永久的に発電できるんじゃない?」
「確かに……とりあえず、明日換金しに行こー? 」
「それがいいわね、それにしても本当に上質な魔石……あたしでも滅多にお目にかかれないのに」
ノエルが持った魔石をまじまじと見つめる、いつの間にか隣に居たノエリアに2人はビクッとして「いつの間に……」と驚いていると、ノエリアは「さっきの戦い、見てたわよ♡ 評価としては5点だけど、初めて大物を倒したなら上出来。それにこの平原の精霊を召喚しちゃうなんて! 流石あたしの孫ね!」と言いながらキノコを抱えた。
「にゅっ? にゅ──っ!!」
「もう! ちょっとくらい良いじゃない! ……あら、この子モッチモチでプニプニだわ」
そう言い、ノエリアは嫌がるキノコをモチモチしてプニプニを堪能する。
「それよりエルきゅん、レイきゅんお疲れ様♡ 本当はあたしがもっと早く駆けつけて倒すつもりだったんだけど……他の所でも出てきたのよね。大物の魔獣が2体も」
どうやら空気中に含まれる魔力濃度はそこまで増えてきているらしい。通常は年に一度、ハロウィンの日に一体の筈なのだが……おかしい。明らかに異常事態が起こっている為、ノエルはビーストハンターである(ノエルが代々そういう家業をしていると聞かされているだけ)祖母を見て心配に思う。
「おばあちゃん、大丈夫?」
「えぇ、でも来年はどうなるのかしら……」
「にゅ──っ!!!」
するとキノコは暴れだし、ノエリアの腕の中から脱出するとノエルの後ろに隠れてじっとノエリアを見つめる。その時、くっついてきたキノコの感触を足に感じてノエルに衝撃が走った。
……なんというモチモチプニプニ加減!!
「私が召喚したから、私は平気なのかな」
「きっとそうね。実はあたしも過去に精霊を出そうと思ってやってみた事があるんだけれど、全然無理だったわ。というか、精霊以前に召喚できそうなのが少なかったの……魔力とか性格とか色々合わなくて。召喚できそうなものがこういう可愛い子じゃなくて、ゴリッゴリのムッキムキで明らかに強そうな召喚獣だったのよね……」
そう言うノエリアにノエルは頭の中で、某最後の幻想シリーズに出てくる召喚獣達を頭に思い浮かべる。
ぜったいにつよいやつじゃん(小並感)
「エルきゅん、しばらくあたしが預かってていい? 元々ここの子だし、それに精霊だからここから離れられないと思うのよ。それにエルきゅんには学校もあるし……ねっ?」
「そんなキラキラとした目で言わなくても……」
明らかにこの子飼いたいオーラが出ているおばあちゃんに、ノエルはキノコを見つめる。
学園は申請をすれば使い魔を連れて歩くことができ、更に寮内でも小型の使い魔で、しっかりと契約者の言うことを聞くのであれば飼ってもいい事になっている。
とはいえ、これは妖精や召喚獣などではなく精霊。どうしても産まれた場所から離れられる事はできない。それに元々は森の精霊だったのだ。余計に離れる事はできないだろう。
「そういえば森の精霊だから、元々は木だったんだよね? ……どれがその依代というか本体?」
「確かに……」
するとキノコはとある木の方向を見たので、3人はその視線を辿って見てみると……。
「デカッ!?」
「大きい……」
「にゅ……」
周りには木が1本も生えていない、たった1本だけの大樹を見つけた。だがしょんぼりとしているキノコに爺と孫は「可愛い!!」とときめくが近づいてキノコがカサの先に付いた丸い物が発光し、その強い光で大樹に照らしてみると、現状はあまり良いものではない事が明確に分かる。
「枯れかけてる……」
「つまりあとちょっとの命……って事か。見た感じ、素人目でも分かるくらい木の表面がボロボロで引っ掻いたり削られたような跡があるけど……」
「魔獣のマーキングね。こうして木に傷をつけたり体を擦り付けたりして、自分の縄張りと主張するのよ。ただ……おかしいわね、これくらいの傷なら精霊がついてる木は平気な筈。ヒエリカは魔力が豊富だから、すぐに元通りになると思うのだけれど……」
じっとノエルは見つめて大樹を観察していくと、ある事に気がつく。やけに木の幹がボコボコとしていて、一部膨れている事に。
「病気になってる……これ、コブ病*4だ。剪定して薬を塗ったり植え替えたりしないといけないけど……これ随分と進行してる。復活するのは絶望的」
実はノエルの前世の高校は校舎のある通信制で、様々な選択科目があった。料理は料理でもキッチンカー、ドローン、中にはレジンを使った手芸、服を作ったりボランティアなどなど。
そして前世の自分が選んだ授業に、某毎週日曜の夜7時から放送している番組のように木を切ったり、山を開拓して畑を作り、皆で野菜を育てたりしようぜ! という、まぁちょっとワイルドな普通とは少し変わった授業が存在し、それを受けていた。
なので木にまつわる知識なども授業で座学として受けていた為、知っていたのである。
「……でも、確か森の精霊の木は伐採しても、根が枯れていない限り魔力さえ与えればまた元に戻るんだよね」
「にゅ!」
その通りだと言わんばかりのキノコだが、ここで問題が発生した。
「でもさ、さっきのを見る限り……相当魔力が必要だよな。動き回る為の体を手に入れるだけでも、カラカラになるまで吸ってたし。このサイズってなると……たぶんここに居る三人分のでも足りないと思うぞ」
「だよね……あっ、魔石! 魔石は魔力の塊だし、いけるんじゃない?」
ノエルはそう思ってキノコに魔石を差し出すものの、キノコはプイッとそっぽを向く。
「……食べてくれない」
「たぶん俺と野菜みたいな関係で、体に合わないんだと思う!」
「分かりやすい……あっ、冬虫夏草は普通のキノコと違って雷のショックで生える訳じゃないから合わないのかな」
こうなれば魔力を直接流し込んで助けてあげたいとは思うが、それができるなら既に行動に移している。
そんな時、スーパーアグレッシブおばあちゃんがある物を出した。
「それならたぶん、コレで大丈夫よ」
「「えっ」」
そう言って出してきたのは、お誂え向きのような魔石2つだった。
「あっ、水の魔石と草の魔石だ! なんて都合がいい!!」
「(流石ゲームの世界、R-18だけど……)」
「これ、さっき狩ってきた大物魔獣から取れた物なのよ~! でも草の魔石と水の魔石って砂漠地帯でしかほとんど使い道が無いし、これくらい大きいとむしろ危ないからこの際使っちゃいましょ。それに精霊に魔石を食べさせたらどうなるのか気になるし!」
ノエリアはそう言い水の魔石を食べさせようとする……が、キノコはダラダラとヨダレを垂らしているのにも関わらず、食べようとしない。
「ねぇエルきゅん、レイきゅん……あたし、誰かに嫌われるのって多分これで二人目(?)だわ……」
「たぶん、スピリチュアル的な所が合わないんだと思うよ……たぶん」
「そ、そう! 人同士でも相性とかあるし! ほら、趣味の話は合うけどなんか食の好みとかが合わないな~みたいなさ!?」
いくら皇帝様でも、流石にかわいい生き物から拒否されるのはとてもショックで辛かった。まじぴえんなおばあちゃんを2人は慰めつつ、レイゼルはノエリアから2つの魔石を受け取ってキノコに食べさせる事にした。
「ほら、夜食だぞ~」
「……」
「おーい」
「…………」
「(か、完全スルー……!!)」
しかしキノコは無反応で、ノエリアと同じく……いやそれよりも態度が悪かった。なので勇者は魔石を地面に置いてみるが、食べる気配が無い。しかしその代わりに……
「にゅ……」
魔石をじっと見ているかと思えば、チラッチラッとノエルの方を見た。
「おいこの菌類、まさか──」
なのでノエルは魔石を持ってキノコの口元に持っていくと、キノコはものすごい勢いでガリガリガリッと音を立てながら食べ始めた。
「にゅ~!」
「は? コイツころ……殺…………よし殺るか! 死ね!!」
「おい待てレイゼル!! 早まるな、気を高めるな落ち着けぇ!!」
大樹に向かってトオン(炎の玉バージョン)を投げつけようとするが、ノエルの制止によって何とか止められた。
「だって!! ノエルからのあーんは俺だけの!! 俺だけの特権なのに!!! 猫とかキノコが勝手に奪ってくる!!!」
「にゅふっ……」
「あーっ!! 今コイツ鼻で笑った!! 鼻どこにあるか知んないけど腹立つ!!!」
こうしている間にキノコは魔石を食べ終え、すっかり元気になった様子で大樹の近くに寄ると体をゆらゆらと揺らした。
《おや……!? 大樹の様子が……!》
「にゅ──っ!」
すると次の瞬間、大樹に次々とキノコが生えていき、その中でも一際大きなキノコが生え……なんと、大樹を取り込んでキノコが本体になった。
《おめでとう! 大樹は巨大キノコに進化した!》
「木が養分にされて置き換わってる!?」
ヤバい、どうしよう森の精霊じゃなくてキノコの精霊にしちゃった……。
そんな風にノエルは冷や汗を流すものの、まぁ消えた訳じゃないのでこれでいいのか……と思う事にした。
「にゅーっ!」
キノコはぴょんぴょんと跳ね、嬉しそうにすると辺りに胞子が撒き散らされる。地面にキノコがすぐさま生え、辺りの空気中にある魔力を吸収し始めた。それを見たノエリアは「やっぱりあたしのところに来ない?」と勧誘する……が。
「にゅっ」
プイッとそっぽを向いたキノコにフラれたのだった。おばあちゃん、思わずそれにはしょぼん顔になる。そのキノコはノエルにくっついており、おめめウルウルの上目遣いをしながらナデナデを催促していた。
「コイツやっぱ焼きキノコにした方が良いと思う」
「そういう事言うのはやめた方がいいと思う」
じとーっとした目でノエルはレイゼルにそう言うと、変態はそれに喜びながらキノコに張り合うようにしてノエルを抱きしめた。
「それにしても
「にゅにゅにゅ……」
両者はバチバチと程度の低い、視線での争いをしている間、いわゆる「私のために争わないで!」な状態にされているノエルはふと思う。
「そういえば名前ってあるの?」
「にゅ?」
本人ならぬ本菌は、何それといった様子でノエルの質問に頭ではなくカサを傾げる。
「……じゃあ、ニョッキ。これからはニョッキって呼ぶから」
「安直だなー」
「それでもレイゼルのよりマシだし、可愛いと思う」
「えー、コイツの名前はソテーでいいと思うけどなー……」
「明らかに悪意が籠ってるよね」
その時、キノコ改めニョッキは輝き始め……。使い魔の証であるマークが、カサの模様のようにして現れた。
《ニョッキが使い魔になった!》
「……うそ」
ここでひとつ新情報、精霊は使い魔になると誰でも見えるようになるぞ!
ちなみにどうして幼少期にノエルたそが迷子になってもノルトパパが見つけられなかったのかというと、ノエルたそが魔力を感じ取れるからです。
ある日自分の魔力というものが明確に感知出来るようになった時に、某魔王のスライムみたいに「"ここに居ますよー!! 社会の窓全開ですよーーっ!!"って主張してるみたいで恥ずかしい」と思ったからである。
なのでドラ○ンボールのように気を抑えるみたいな感じで魔力を外に出さないようにしていたら、いつの間にかアーティファクトが反応しないor自分が感じとれないくらいになった。
おまけ
「でも結局この子は元々精霊だからここから離れられないわよね」
「残念だったなソテー!! お前はずっとここでキノコとして生きてろ!」
「にゅにゅにゅ……にゅーっ!!」
「あっ、怒ってる。……ん? えっ、そのしっぽみたいなの伸びるの!? いや待って、なんで木に生えてるキノコを私に……もしかして、くれるのかな。ありが、ムグッ!?」
「あーーーっ!! ソテーが自分の体(?)をノエルに食べさせてる!! なんて羨ましい真似を!! 俺の舌が再生するんだったらノエルに俺のタンを食べさせてるってのに!!」
「にゅっ!!」(これで常に一緒だぞ!! の意)
「……どうせなら生じゃない方が良かった。というかレイゼル、さっきのは普通にドン引きした……気持ち悪いからやめて。カニバの趣味無いからやめて本当に」
実はニョッキの絵を描いたけど、今は学校だから家に帰ったらここに出すよ。
ちなみにニョッキの昔の実体があった頃の姿はデ○の木の子供みたいな感じだったよ。
【挿絵表示】
使い魔の証は後ろにあるよ。出そうと思ってたけど完全に忘れてたよね。