チュートリアル用のチョロイン幼馴染に転生してしまった 作:水性さん
どうも、やって来ました後編です。
今回は作者が前から言っていた漫画も込みで楽しんでねッ!
と、言いたい所だけど……案の定漫画はできてません。というか、学校の課題を仕上げないとそっち描けないし、ただいま就職活動中です。忙しいッ! あともし面接内定出たら、研修で1ヶ月間合宿するらしいから、ノートパソコンとか持っていけないだろうし、デジタルイラストとか漫画が描けない……。
まぁ道具を持っていけばアナログ作業はできるだろうけど、たぶん忙しくてそんなにできない。
という訳でまだ決まってないけど(内定通った気になっている人)とりあえず小説だけ先に出す事にしました。
あとハーメルンはPDFの形式ってアップロードできないからJPEGでアップロードしないといけないんだけども、思ったより漫画の総ページ数が多くなったんだよね。それで投稿できる画像の容量って限られてるし、PDFじゃないから見にくいんだよな……。という訳で、完成したら漫画は申し訳ないけどpixivで出す事にしたよ。
今は武器の設定資料絵が描けてないけど、いつか自分用に描く。あと特に確認せずに投稿したから、内容に誤字とか脱字とか、後々ルビ振ろうと思ってたけどやり忘れてるやつもあると思う。なのでそれはまた今度直す。
……誰かイケメンをイケメンとして描けるようになる方法を教えてくれ。今までイケメン(というか大人)をほとんど描いたことねぇから分からん。ロリとかショタならいっぱい描いてたから絵柄も相まって得意なんだけど……。というか、目を大きく描く癖があるんじゃ……だってッ! 可愛いからッ!!
どうしよ、原神とかそこら辺の絵柄とかお手本にしようかな? 鍾○先生とかタルタルを模写してれば身につくかな……。
追記
あ、いっそ1枚ずつ仕上げて出す事にしちゃおうかな。
「も、もし良かったら私達と一緒に周りませんか?」
「……」
ノルトは御手洗とついでに飲み物を買いに行っている妻を待っている中、寄ってくる若い女共をスルーしてベビーカーに乗っている娘と息子にミルクを飲ませる。
子供2人が居て、色々子供の為の物やら弁当などが入っていそうな大きな手提げバッグを持って誰かを待っている様子。そして左手の薬指にはしっかりとはめられた結婚指輪が輝いている。
見ただけで明らかに夫婦で来たと分かるのに、それでも話しかけられるのだから強すぎる美貌はこういう時に不便である。
「あ、あの……」
「(……この俺が、ただ若いだけの何の取り柄もない雌豚如きで、妻を裏切るような行為をする男に見えているのか? 身の程を知れ、小蝿共が)」
しかし流石に苛立ち始めたのか、ノルトはとうとう自分の中では雌豚から小蠅に何個もランクダウンした女共に口を開く。
「俺の視界から失せろ、蛆虫共」
相手が居るのにそれでも近づこうとしてくるということは、つまりワンチャンいけるんじゃね? という意志の表れ。それはつまり、相手にその程度の男だと見下されているのと同義であり、そんな自分が選んだ妻に対するなによりの侮辱。許されることではない。
自然と殺気の籠った目で更にランクダウンした女共を睨みつけると、女共は無様に震えながら泡ではなく潮を吹いた。
「「お゛っ♡♡」」
「あなた~♡」
「遅い、今まで何をしていた」
一瞬でドMの雌豚に化した女共を一瞥する事もなく、飲み物を持って戻ってきた妻の腰を抱き寄せる。
「ごめんなさい、実は予定日より1週間早く来ちゃったの。道理で今日は体が変だと思ったわ」
「……体調は?」
「大丈夫よ」
「そんな訳があるか、血が出てるんだぞ」
ノルトはバッグから一応用意しておいた、魔力を込めると熱を持ち始める、いわゆる充電式カイロのようなアーティファクトとブランケットを出し、それをお腹に当ててブランケットは肩にかけようとする。
「あと飲み物買おうとしたら男の人に絡まれちゃって……」
「それは何処の猿だ?」
明らかにノルトは「誰の許可を得て俺の妻の半径1m範囲内に入った??」という様子で、ブランケットを持っている手にグググッと思わず力が入る。
「だからちゃんと"穏便に"お話してきたわ!」
「……ならいいが」
その穏便に会話をした結果……男達が何故か後ろの穴をツタの植物に掘られ、もれなくそっちの快楽に目覚めていたが。
やったね! これで被害に遭って、泣き寝入りする事になる女性が出てしまうことを未然に防ぐことができたよ! こうして平和は守られたのだった!
「やはり俺も一緒に行けばよかったか」
「本当は離れたくないだけでしょう?」
マリエッタはそう聞くと、ノルトは少しの間無言になって「……そうとも言う」と答えた。ちょっと照れているらしい。
「うふふ、嬉しいわ♡ そのままずっと私だけの傍に居て、離れないでいてくれる?」
「……俺は愚問愚答をするつもりは無いぞ」
イチャイチャしながら2人は数十年ぶりに彼に会う為、コロシアム大会場へ向かった。
~・~・~・~
ピトッ
「うわぁっ!?」
思わず頬に冷たい物を押し当てられ、ゲイルは審査員の席から飛び上がる。
「久しぶりだな」
驚いて後ろを見てみれば、自分の頭の中にあった記憶よりも、顔立ちや体格などが随分と成長し、色々な意味で成熟しきった元ルームメイト兼親友であり、初恋の相手……ノルトが居た。
メガネも外して髪も黒から輝くような白になり、淡く7色に輝いていて、目は宝石のエメラルドのようになっていて。しかもスヤスヤと寝ている赤ん坊を抱えていたので驚いたが。
しかしあのドS加減は健在のようで、もう冬になる11月だというのに冷たい飲み物を頬に押し当ててきた。しかもゲイルにとっては苦くて飲めた物じゃないと思っている、大人な味のコーヒーだ。色々な意味で冷たい。
「ノルトくん……これじゃお腹冷えちゃうよ、それに苦いし……」
「相変わらずコーヒーも飲めないんだな、それに誰がやると言った」
そう言うとノルトはコーヒーのボトルを開けて飲む。そんなノルトにゲイルは「じゃあそれを押し付けてこないでよ……」と思っていると、暖かい物を今度は反対の頬に当てられる。
「うわぁぁぁぁぁっ!?」
「はい、どうぞ先輩」
またビクッとして声を上げると、後ろを見てみれば、そこには息子を抱え、母となったマリエッタが居た。ぷるぷると横でノルトがクツクツと笑っていたのでちょっとムッとしたが、ゲイルはマリエッタからミルクティーを受け取って、冷えた手を暖める。
「わぁ……暖かい。ありがとう! ここ、風が通るからちょっと寒かったんだ。それより2人とも寒くない? 大丈夫? ノルト君なんかタートルネックは着てるけど、結構布が薄めだし……あっ、そういえばノルト君は暑いのがダメなんだっけ。でも赤ちゃんは大丈夫なの?」
「あぁ、問題ない」
「大丈夫よ!」
「俺の子だからな」
「ノルトさんの子だもの! 」
夫婦揃って言うと、そんな2人にゲイルは「相変わらず仲が良いなぁ」とか「いいなぁ……」とかほんの少しだけ思う。
「……昔から変わらないね」
「そうか」
一見すると印象も態度も冷たいけれど、本当は凄く優しい所とか。君の事だからきっと気づいていた筈なのに、態度を全く変えないところとか。
「あっ、でもノルト君の雰囲気は昔と変わったかも」
「……そうか?」
「確かにそうかもしれないわね!」
「そうなんだよ! なんていうか、雰囲気とかが柔らかくなった……かな? さっきだって昔の君ならあまり人前で笑ったりする事、なかっただろうし。もうちょっとツンツンしてたかも? 子供自慢してくるところとか……」
「……物だろうが人だろうが、変わらないものは無い」
もしかして、今になってちょっと照れてる?
ゲイルは否定するのではなく肯定する様子から、レイゼルが「今日も俺のノエルは天使だなぁ♡ ノエル、大好き♡ 愛してるっ♡♡」と、セクハラすることもなく。珍しくただくっついたりいるだけのマトモな愛情表現をされている時の、照れているノエルを思い出す。
セクハラをされている時はパンチが出てくるのだが、そうでなければ意外とノエルは照れてはいるものの、照れ隠しで手が出る事はない。それはレイゼルに「ノエル照れてる? 可愛いなぁ~~♡ しゅきぃっ♡♡」と、更にデレデレになってくるというのもあるのだが。
理由はどうであれ、やっぱり親子だな……同じだなぁと、ゲイルは思った。
ゲイルとマリエッタはニコニコして、それにノルトが「笑うな」と言ってゲイルの頬をつまんで引っ張る。……訂正、ノルトは娘とよりちょっとだけ手が出る。
「(どうして僕だけなの? )
うぅ……やっぱり家族ができたから、なのかなぁ」
ゲイルには血の繋がった家族が居ない。
家族が居ないことは無いのだが、一般的な家族のそれとは大きく違うものだ。学生時代、文武学祭の時にやってくるノルトの家族を見て、少し羨ましいと思った事もある。だがそれは所詮無いものねだりというもので。今では特に思うような事もない、今更という話なのだ。
「……それは、少しある」
「やっぱり? あっ、そうだ! 僕ずっと気になってたんだけど、どうしてノエルさんに魔法を教えていたのに剣は教えていなかったの? ノルト君の性格的に、絶対に教えそうな気がするんだけど……」
「背負わせたくなかった、ただそれだけだ」
「……?? あと、学生時代は髪も目も黒かったような気がするんだけれど……メガネもしてたよね?」
「……あら?」
「……………………まさか、まだ気づいていなかったのか?」
「そうみたいね」
「えっ??」
ゲイルはそう言われて目をぱちくりすると、すぐ後ろにある観客席からの声が聞こえてきた。
「あれってもしかして、アーノルト様……?」
「やっぱりそうだわ!」
「うそーっ!?」
「じゃあ抱えてる赤ちゃんと隣に居るのって……ルト様とマリエッタ様とエルマー様!?」
「話しかけたらサインとか握手とかしてくれるかな~!」
アーノルトという名前はヒエリカではそれはもう名が知れ渡っており、国外に住んでいたゲイルにさえ耳に入ってくる。その人気ぶりはフェリラでもファンができる程だ。何故その名前が、元ルームメイトで初恋の人に向かって呼ばれているのか……。現実逃避をしていると、ゲイルは昔を思い出すのだった。
そう、3日目の剣技・魔法大会が始まり、出番が近づいて来た時に話していた事を。
『うぅ……緊張するなぁ』
『過度に緊張すると、体がついて行かなくなるぞ』
『そうだよね……あっ、そういえばヒエリカで思い出したんだけどね、僕一度皇族の人と戦うのが夢なんだ! 特に、第三皇子のアーノルトって人!』
『……理由は?』
『凄く強いらしいし、一度戦ったらいい経験になれそうだなって思って。でも皇族の人って忙しいし、偉い人だから一生できないかもしれないけれどね……』
『いや、案外そうでもない』
『そうかなぁ? うーん、でもいつか叶うといいなぁ』
……あれっ? あれあれ??
「えっ、えっ……?
えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!???」
ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ
ぇぇ──
ゲイルの声が反響してエコーがかかると、またノルトはぷるぷるしながら笑う。
「夢が叶ったな」
「い、言ってよもう!! ノルト君のそういう思ってても聞かれるまで言わないところ、本当にやめた方がいいと思うよ!!?」
「ふふふ」
「気づかない方が悪い、だが惜しい事をした……もう少し秘密にしておけばよかったか」
「君っていう人は!!」
「あまり五月蝿い声を出すな、娘が起きる」
「まったくもう……」
よくも悪くも、ノルトとノエルは部分部分で似ている。そしてノルトは幼い頃から自分の執事でもあり、祖父の代わりにしていたセバスチャンの悪い癖が、移ってしまっているのであった。
「……あぁ、くれぐれも
人差し指を唇に寄せて立て、ノルトは内緒だぞのポーズをした。昔に比べて更に増した色気に思わずゲイルは顔が熱くなるのを感じつつ、心の中で「分かっててやってるのって、ずるいなぁ……」と思う。後輩のマリエッタはそんな夫に隣でキャーキャーしてくっついていた。それを見ていたファンという名のオタク達は更にキャーキャーする。
「でも
「それでも、血や親に縛られるよりは断然マシだろう」
「……本当にノルト君の周りって色んな事が起こるよね」
「それは俺が
本当にアーノルトという名の元ルームメイトのイケメンは罪である。
普通に聞けばキザったらしくて思わず顔を顰めてしまうような、聞いていて恥ずかしくなってしまうようなセリフだが、本人の性格や雰囲気を考えると普段はそんな事を言わないので何故か本当の事だと思ってしまう。そして何故か力になりたいと思わせ、惹かれてしまう。
もしかするとそれは惚れた弱みというヤツなのか、珍しく頼み事をされた事がとても嬉しくて舞い上がっているからなのか。
「うん、でももしかしたらノルト君よりあっという間に強くなっちゃうかも。ノエルさん、授業が終わっても時間になるまでずっと、魔力が切れるまで身体能力強化魔法をかけて誰よりも頑張ってるから」
「そうだろうな」
「えっ」
そう答えたノルトに驚きつつ、ゲイルは以前のノルトであれば「寝言は寝て言え」と言っていたんだろうなと、頭の中で想像する。
「ノエルが俺よりも強くなるのは至極当然の事だ、この世は盛者必衰……誰でも知っている。……そして絶対に勝つ強さと絶対に負けないという強さは、似ているようで違う。
……越えられない筈が無い」
その絶対に負けないという強さが、自分が例え死んだとしても絶対に守るべきものを守り抜く強さと自己犠牲が、躊躇無く
だがノルトはそういう訳では無い。最初からノルトはあくまで自分の為に強くなったと自覚している。
ノエルの性格を考えても、もし急に皇帝にされてしまったとしても……きっとそれを受け入れてしまう。
「(ノエルは……プライドはあるが、ヒエリカ皇族であれば必ず持っている筈の自尊心を全く持っていない。そして自己肯定感もだ。……自分の価値や存在を、自分で無意識に蔑ろにしている)」
ノエルがどんどん強くなる度に、ノエルは血に縛られて自由に生きる事ができなくなる。……ろくな死に方もできないのだろう。
だからそれだけは絶対に止めたかった、だから剣を教えなかった。しかしあのピザデブ王のせいで所詮はただの気休めにしか、ならなかったが。結局ノエルは勇者の旅に着いていく為だけに、強くなる事になってしまった。
まず勇者の旅着いていく相手はノエルでなくともいいのである。生物学的に女という括りであるなら、他にも沢山居る。学校にだって着いていく必要はなかったし、ヒエリカにも名門校は存在する。しかし勇者であるレイゼルが嫌がり、勇者としての力を使ってあの王を脅したから今に至るのだ。
「(……いや、そもそもの話、あのあれの性格と思考回路の事を考えれば……やはり、おかしい)」
そう考えて、ノルトは自分にしか見えない豚と化した"神"に一切視線を向けること無く、アイスコーヒーを飲んだ。視界の端……より正確に言うなら足元の方から大声で「ご主人様ぁ~~♡」と呼んでいる豚を全力で無視をする。
何故ならそう呼んでいいのは、隣に居る妻ただ一人だけなのだから。
「これから5年間、剣技・魔法大会の
「(あれっ、急に話が自慢話になったような……)」
「そうね! ノエルは本当にあなたに似て天才よ! それだけじゃなくて髪も目の色も、負けず嫌いなところも本当にあなたにそっくり……♡」
「目元はお前にそっくりだ」
「(惚気になっちゃった……)」
イチャ、イチャイチャ
それ以降ゲイルは親バカを発揮するノルトから子供の自慢と惚気話を聞くことになり、時間になるまでずっとその話を聞く事になった。
「(昔はそんなに話さない人だったのになぁ……)」
「最近エルマーが俺をお父様、エマをお母様と呼ぶようになったんだ、俺の息子は俺に似て賢い子供に育つに違いない」
「そういえば昨日、洗濯物を干していたらルトとエルマーが風魔法を使って乾かしてくれたのよ!」
「遺伝だな」
「きゃっ、天才……♡」
「え、えぇ……」
どうやら初恋の人は子煩悩で子供の事になると止まらない、誰よりも愛情深い……プライドエベレストの天才で、それ以上に秀才なツンデレデレドSらしい。
~・~・~・~
〘魔法形優勝者はなんと、またまた勇者であるレイゼル選手です! おめでとうございます!〙
〘剣技形に続いてまたもや優勝、流石勇者様ですね〙
「えっぐ……ひっく…………」
結局ノエルは午前中に行われる剣技形と魔法形の大会には参加せず、てっきり自由形も含めた全てに参加すると思っていたレイゼルは、自ら剣技形と魔法形に参加して非常に後悔していた。
未だに帰ってこない幼馴染に想いを馳せて号泣するレイゼルに、午前の部である大会に参加した生徒達は「なんでこんな泣きじゃくってる奴に負けたのか……」と思いながら、とても悔しがりながらも、勇者の強さを改めて確認していた。
具体的に言うならば、その理不尽な程に高い圧倒的な防御力。
いくら剣技形での物理とか魔法形で魔法で攻撃をしても全くダメージが通らず、攻撃をするとむしろこちらが消耗するばかり。しかし何もしないでいると、こちらがダメージを受けてやられてしまう。
それも顔面を涙やら鼻水でデロデロにしている、非常に情けないレイゼルに。
勇者という、産まれながらにして絶対に強い奴になる確定演出入った人間なので、もはやチート。しかも前世にゲームをやっていたので(今現在が実際にレイゼルがやっていたゲームにあった内容なのかと言えば、全くそうでは無いのだが)チートと言うよりビーター……あれっ、何処かで聞いた事あるような? これ誰ト君なんでしょうかね。
とにかく、貴族のお坊ちゃま達にとって屈辱としかいいようがないが、そんなレイゼルに負けたのは事実。強さは見た目によらないのである。
「それではレイゼル選手、今のお気持ちは?」
「ノエルに会いだいぃぃ……寂しくて死ぬぅぅぅぅうう、もう無理ぃぃぃいい……おふとぅんの中にインするぅぅぅぅうう……」
これを意訳すると、一刻も早くノエル成分を摂取しなければ死ぬ、ノエルの残り香をスーハースーハーして二重の意味で自分を慰めたいという意味だ。解説しなくとも分かるだろうが、一応この小説を読んでいる暇人達の為に説明しておいたぞ。
レイゼルはちゃんとノエルの居る場所は分かっているのだが、いい子で待っててと言われてしまった以上、レイゼルはちゃんといい子にして待って、褒められたいのだ。やっぱり寂しくて辛いけど。
それにそもそも、出番が来るまで控え室から出られないようになっているので。だが皆、意外とそれに気がつく人はあまり居ない。何故なら便利で外に出る必要がほとんど無いからだ。
トイレやシャワーは備え付け。食事はルームサービスのように、学校の食堂に繋がる電話でデリバリーで届けてもらう。とても便利である。
そしてお昼、昼食を食べる為の休み時間。
「にゅにゅ……」
「野菜食いたくないぃぃぃ……ノエルにあーんされないと無理ぃ、吐くぅ……」
なんで食事までこんなヤツの面倒を見なけりゃいけないのか、ご主人様が帰ってきたら沢山甘えて労わってもらおう。
そんなふうに思いながら、ニョッキはレイゼルの合い挽き肉の玉ねぎ無しの肉オンリーハンバーグにある付け合せの野菜をもしゃもしゃ。ぶっすぅ……とした不機嫌顔で食堂にて食べていた。さりげなくレイゼルのハンバーグもつまみ食いしようとしたら、レイゼルにカサをフォークでぷすりと刺された為、やめた。
それから自分の分のハンバーグをガツガツと食べ、出場選手専用の控え室でレイゼルとニョッキは試合が始まるのを待っていた。
「ノエルぅぅ……」
「にゅ」
その間もやはり泣きじゃくっており、目元はとんでもなく腫れていた。それはつまり、ずっと泣いてしまう程にレイゼルはノエルの事が好きで好きで仕方ない、という意味でもあるのだが……とても情けない。そんなレイゼルにニョッキはでっかいタオルで仕方なーく、顔を拭いてやっていた。
主人が戻ってきた時、この人間のオスがその状態で抱きつくだろうし、主人が嫌がる事は想像に容易かったので。だからニョッキはこうして偽善的な慈悲を変態ヤンデレストーカー勇者に与えてやってっている……つもりになっていた。
主人と使い魔は似るのである。
泣き過ぎてレイゼルは鼻水が出て鼻が利かない状態だが、ノエルに着けた
問題は無いのだが、ノエルの匂いがしないというのはノエルを感じられないという事で。レイゼルにとって更に寂しさが募り、拭いても拭いても滝のように出てくる。
ベビーシッターキノコと化したニョッキは、いつか干しシイタケのように干からびるのでは? と思い、現在進行形で水分を放出しているレイゼルに水を用意する事にした。これも全てはレイゼルの為ではなく、ノエルの為である。
ニョッキは跳ねるようにして移動すると、水分補給ができる給水器の所に行き、ちゃっかり自分も水を沢山ゴクゴクしてからレイゼルの方に器用にコップを持って行った。
「にゅ」
「ゾデー……11013分の1だげお前のごど好゛ぎになっだ気゛がずる」
そう言ってレイゼルは水を飲むと、タオルで汚れた顔を拭いた。すると、コロシアムの会場に声が響き渡る。
〘まもなく、剣技・魔法大会の自由形を開催致します! いやぁ、今年もやってきました! ルールを守れば何でもありで、飛び入り参加OKのまさに自由な戦い! 勝利条件はステータスに応じた仮想のHPをゼロにする、相手を行動不能・戦闘不能にさせる、降伏させる事、相手をリングの上から場外に落とさせる事!
今年は一体どんなハチャメチャな戦いになるんでしょうか!? 乞うご期待です! 実況は僕、引き続きフロルド・ツクールと……〙
〘その妹、解説役という訳でもなく解説役風に勝手に横で喋ってるだけのミーシャ・ツクールでお送り致します〙
なんだか実況と解説(?)に既視感のある名前だが、気のせいである。ちなみに顔グラは全く似ていない。
〘自由形はとにかく自由ですからね、一度も戦ったことの無い人でも武器、というか戦力さえ持っていれば誰でも戦闘可能です。例えば動物を従えさせるテイマーも、動物達を武器、戦力としてカウントしていますからね!
ですがその代わり、武器を相手から見えないよう隠し持ったり、参加時に申請したりしていないとそれは武器として使えませんから、そこは注意!
……そういえば武器という括りで、開発科のアーティファクト部門の生徒が毎年とんでもない物を持ってきて参加する人も居ますよねー! 去年はフェリラ国の偉い人が参戦して、アーティファクト兵器を使われた時なんか度肝を抜かれましたよ!〙
〘いくらダメージを受けないフィールドだからといって、流石に死ぬかと思いましたね……。それにしても私がこの学園に入学する前からテレビの生中継を見ていて毎年思っているんですが、この自由形って……。
アーティファクトの試運転とかド派手な作品発表会みたいになってるところがあるのは、私の気のせいでしょうか……?〙
〘今ではもう国ぐるみでそういったことは無いよう、ちゃんと拒否してますから観客の皆さんは安心してください!〙
〘あっ、アーティファクトを使用するのはまだ禁止されてないんですね〙
〘まぁその方がぶっちゃけ視覚的には派手ですからね、それに時々アーティファクトの性能を上回るようなフィジカルが強い人が現れますし。特に今回なんか、剣技形と魔法形で全生徒の中でも目を見張るほどの防御力を誇る、勇者レイゼル選手も居ますし、今回は一体どうなるのか目が離せません!〙
〘去年みたいにロボット同士の対決にならないといいですけれど……〙
〘そういえば元々、誰がアーティファクトを使い始めようとしたんですかね?〙
〘それは約二十年前に全ての形式を入学当初から卒業するまで5年間連覇した、誰よりも強く顔の良い戦闘部門の選手が居た事が始まりです。彼が女子達にこれ以上モテるのを阻止し、顔に泥を塗りたいが為に、モテない開発科の生徒達が知識を結集させてアーティファクトを作り出し、そのリーダーが戦った事がきっかけです〙
〘あっ、意外と詳しいんですね。流石ミーシャさんです! ……ん? でも連覇って事は、結局アーティファクト作った側が負けてないか? どれだけ強かったんだ、その人。今頃何してるんだろうな?〙
〘さぁ……今、ここで観戦してたりして〙
本当に大丈夫か、この大会。
普段のレイゼルであれば絶対にツッコミを入れていた所だが、メンタルがエグチでオフトゥンインコースなので無反応。やはりツッコミ役のメインヒロインが居ないと、この小説もレイゼルも駄目なのであった。
そしてラッパのファンファーレが鳴ると、第1試合が始まる。
〘第一回戦目、一組目は……おや、早速アーティファクトを武器とした選手同士の戦いですね〙
〘これは純粋な耐久性と火力が勝負の分かれ目になりそうです〙
それからはほとんどがアーティファクト同士の戦いのようになっていて、普通に剣とか魔法で戦おうとしている人達は大体降伏するか、圧倒的な火力に負けてすぐに初戦敗退になっていく。
「くらえ、魔法超電磁砲!!」
「理不尽すぎて草」
〘やはり瞬殺! モブ・キャラー選手、何も出来ずに初戦敗退!〙
〘やっぱりアーティファクト、禁止にした方がよくないですか?〙
「魔法化学こそが正義なのだぁ──っ!!!」
「……本当につまらない自由研究の発表会だな」
それを見ていた、自由形がこんなふうになってしまった原因は心底くだらなそうに見下ろしていた。
昔はまだよかったのに、一体何故こうなってしまったのか。そんなふうに原因は思っているが、お前のせいである。
「それに自由参加だから、本当に参加者が多いわね……確か第一回戦だけでも、100組以上……。昔に比べてコロシアムの数が多くなったのも納得ね!」
学校には10箇所の普通サイズな観客席の無いコロシアムと、その全てのコロシアムの中継を見られるシアターのような場所、それから勝ち残って残り16人になった後で使われる決勝トーナメント用の大きなコロシアム大会場がある。
コロシアム大会場では観客席などが用意されており、実況者達が面白そうだと思い、セレクトした試合は10個のコロシアムに設置してある特別なセンサー付きカメラで撮った映像をプロジェクターを使い、大きなコロシアムでそのまま一切のタイムラグ無しにそのまま再現され、実況と解説はその状況を実況する。
これも全ては安全面……は二の次で、エンタメの為。これなら大勢の人の視線や声もあまり聞こえにくいし、あがり症な選手もあまり緊張しなくて済む。
しかしいくらコロシアムが沢山あり、飛び入り参加と言っても参加者は毎年あまりにも多く、初日に予選会のような物が行われている。これに勝ち抜かないと、外部者はそもそもの3日目に行われる大会に参加できない。
なので今回の戦いに使われているアーティファクトはその予選で使って勝った時の物とは違う二台目であり、その改良版だ。やはり戦いに使った以上、壊れるので。
だがいくら自由とはいえ、やはりこれは生徒の為の大会なので、必ず参加した生徒の数だけ外部の人間が参加できるようになっている。ただしトーナメントは去年優勝、準優勝、または戦闘部門の教師に推薦を受けてシード権を持つ生徒以外は公平なクジで決まるので、運の無い生徒は部外者が持ってきた強過ぎるアーティファクトの火力で一瞬にしてやられてしまうのだが。
そして公平なクジによって決まった結果、レイゼルとノエルは別々のコロシアム会場に決まり、その上コロシアムはそこに出場する人以外は入れないし、移動できる範囲が制限されている。その理由は、もしかしたら相手やその他の誰かに武器を隠されたり、アーティファクトを破損させるなどの不正されるのを防ぐ為だ。
その上ノエルの事なので、絶対に勝つ為にレイゼルに会わずにずっと魔力を高めようと精神集中していそうだ。
やはり2人が会うタイミングは決勝戦のみである。ちなみにレイゼルはついさっき初めて公開されたトーナメント表を見た時、更に五月蝿く泣きながら「チクショウ!!」と叫んで、先程はニョッキに世話を焼かせていたのだった。
「すぅ……」
「それにしてもルト、よくこんな色んな音が大きい中で寝ていられるわね……」
「うぅ……んぶーっ!」
「エルマーもやはりつまらないか。こんなもの、金さえ積めば誰でも勝ててしまうからな。これで一位を取った所でなんの面白みも価値も無い」
妻の膝に乗り、試合を見て不満そうな息子を見てノルトはそう言うと、エルマーは同調するように「だぁ!」と、ガラガラを持ってブンブンした。明らかに言葉を理解している様子にノルトは、心の中で「天才だな」と思いながらエルマーの頭を撫でる。親バカ大爆発だ。
「それで、あと何試合でノエルの番かしら?」
「よりによって、第一回戦の最後だ」
「……じゃあその間、エルマーはパパとママと一緒におもちゃで遊びましょうね♡」
「あー!」
夫婦はその他の試合を(どうせ勝つだろ、という事でレイゼルの試合も見ず)全てスキップして息子を構い倒し、それから待ちに待ったノエルの試合。
〘何か面白そうな戦いって無いのか、このままだと俺達の存在意義が…………〙
〘あっ、ならこの試合は?〙
〘どれどれ、んー? ……何!? アーティファクト部門と戦闘部門唯一の女子生徒だと!? 紅一点同士だ!! ……でも、相手がまたアーティファクト使ってるな。これ、勝負になるのか??〙
〘たぶん大丈夫よ。だってこの選手、このアーティファクトが多く参加するキッカケになった人と同じ姓だし、何よりその人に顔がそっくりだったもの。きっと強いんじゃないかしら? それに名前……ノエルって言うのよね〙
〘マジで!? それって確か、レイゼル選手が言っていた人の名前と同じだったな! ……あっ、ゴホン。というわけで! おそらく観客の皆様の見たい試合がここで見れるんじゃないかということで!
そちらの試合を観戦することに決定します!〙
すると観客達は沸き立ち、歓喜の声を上げる。
「やっとか……」
「長かったわね」
「うぶー」
「むにゃ……はっ」
丁度ルトも起き、目を開けるとコロシアム大会場に第3コロシアム会場の中継がプロジェクターに映し出される。
〘それでは僕達が第一回戦最後の実況をする2人に登場していただきましょう! アーティファクト部門のユーリカ選手、そして戦闘部門のノエル選手です!〙
そしてコロシアムの出場者が出てくる大きな出入口から鉄格子が上がり、ユーリカがとてつもなく大きい戦車のようなアーティファクトを後ろに連れて登場した。
「私のフェアリーちゃん、とうとう出番が来たわよ!」
とても自信満々で、見るからにやる気に満ちている。そしてぐるぐるメガネをかけていて、見るからに頭が良さそうだ。一方反対のノエルはというと……。
〘おや? ノエル選手が登場しませんね?〙
〘……今情報が入りました、現在ノエル選手は今に至るまで一度もコロシアムに来ていないそうです〙
〘嘘だろ!? まさかの怖気付いて不戦敗か!?〙
「ノエルぅぅぅぅぅぅぅうううう!!! 嘘だと言っでぐれよぉぉぉおぉおおおうぇぇぇぇぇぇぇええええ!!」
試合を見て、今か今かとようやくノエルを拝めるとレイゼルが期待している中、まさかのまだ来ない。またレイゼルは別のコロシアム会場の控え室で泣き始めた。隣に居るニョッキは眉間と顎に深いシワを寄せる。
対戦相手のユーリカは「!?」という顔で、メガネをずり落ちさせていた。
「嘘っ!? 私のフェアリーちゃんの活躍の場は!??」
マリエッタとエルマーは一体どうしたのかと思いながら見ていると、ノルトと双子、レイゼル、そしてニョッキは身に覚えのある魔力を感じた。
「来たか」
「ノエルぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅうううううう!!!」
そしてコロシアム会場に翠色の光が輝くと、そこには巨大なガーベラの蕾が現れ、花が開く。そこから主人公であるノエルが装飾の凝った白いバラのブローチを、出場選手が必ず着る服に付けた状態で出てくると、ガーベラを散らせた。
〘ノエル選手、巨大な花と共に美しく登場だ! まさかの演出付きの登場! これは今までに無い登場だ!! あー……でもこれって大丈夫なのか? 無許可だろ?〙
ヒソヒソと実況のフロルドさんは話しているが、高性能なマイクはその声をちゃんとしっかり拾っているので、観客全員に聞こえる状態だったが……観客達は興奮していたので全く聞いていない。
〘大丈夫じゃない? 試合、開始すらしてないし。せいぜい数十秒くらいの遅れだし、こういうのって大体予定通りになるものじゃないし。むしろ今までがあっという間に決着着くの早くて、尺が有り余ってたのよね。……ほら、OK判定出た〙
〘こんな事まで自由! まさに自由形!!〙
「(逆にそれでいいんだ!? 全国中継されてるのに許されちゃったんだけど!? 演出のひとつとして誤魔化したけど、大丈夫だった!! よかった!! 危なっ!!)」
スピーカーからコロシアム大会場の声が聞こえていたノエルはそう心の中でツッコミと安堵をしていたが、今までの試合を見ていなかったので知らなかった。何故なら今まで同じような絵面や展開で始まって終わっていた為、観客は飽きていたのである。
そこでノエルが最初来ないと思わせ、後から魔法で美しく登場。そして魔法で転移して来たってことは、あの難しいと言われる魔法使用許可免許を持っている戦闘部門の生徒だということ。
しかもノエルはすっかり自分の顔を見慣れてしまっているし、変態にしかモテなかったので忘れているが、前世にやっていたゲームのヒロインなので顔がとても良い。
観客が喜ばない訳がなかった。
ガチのアクシデントなのに観客達はまるで狙ってやっていた演出かと勘違い、なんとか許されたのでノエルはホッとし、ユーリカはぐぬぬぬぬ、と観客の目を独り占めにされたので、ノエルに敵意の目を向けていた。
もちろん身内の人達はアクシデントだと気づいていたが。
〘それでは気を取り直しまして、アーティファクト部門の華、ユーリカ選手と戦闘部門の華、ノエル選手の試合を開始します! 〙
「レディ……ファイッ!」
そして試合を開始させた審判の声が聞こえると同時に、ユーリカはニッと笑ってアーティファクトに魔力を流して動かした。
「先手必勝!!」
「(……なんか、完全に舐められているというか、油断されてない?)」
次の瞬間、戦車の大砲がノエルに向けられ、発射される。だがこれは玉ではなく魔力の塊であり、それも
〘ユーリカ選手の魔力砲が炸裂したーっ! なんという威力! 目に見えるほどの大きな電流の光で、ノエル選手が見えなくなっている!!〙
〘どうやら中に刻まれた魔力回路を魔法陣のように機能させ、そこから魔力を雷魔法として放出したようですね。更にこの威力ともなると、雷属性の魔石も使い、その魔石の爆発も利用しているのでしょう。このように少ない魔力で魔石さえあればこれ程の魔法を行使できるのが、ユーリカ選手曰くフェアリーちゃんの強みだそうです〙
〘つまり、その大爆発を耐えられる程の耐久力も兼ね備えているという事ですね!?〙
〘はい、ユーリカ選手の強みはその高い技術力ですから〙
すると電流砲は急に止まり、それからピリッとしたゲップのようなしょぼい電流が砲身から出た。
「……あら? フェアリーちゃん? あと8秒くらい放出できる筈じゃ──って、待って。
何処にも居ないじゃない!!」
ノエルが居たはずの位置には誰もおらず、そこにはただの無があった。あの背が低くてまな板な姿は何処にも無い。
〘これも今までに無い展開! ノエル選手、一体何処へ行ってしまったのか!?〙
〘失格にはなっていないので、コロシアムの外には出ていない筈です〙
一体何処に行った!? ユーリカは周りを見渡すが、ノエルの姿は見えない。すると数秒遅れて戦車にキノコがにょきっと生えた。
「フェアリーちゃん!!?」
〘ユーリカ選手の戦車に、突如として謎のキノコが生えた!! それもいくつも生えていく!!〙
〘草魔法の一種ですね、ですがこのキノコが一体何なのかは私も検討がつきません〙
「にゅーっ!」
「ノエルぅぅぅぅぅうぅぅうううう!!!」
「何処に行っちゃったのかしら?」
「んむー!」
「……あぉお」
控え室ではレイゼルがニョッキと一緒にモニターに齧り付くようにしてガン見し、魔力を感じ取る事ができないマリエッタは観客席からはて? と見ていた。
すると膝の上に乗っているエルマーがガラガラをブンブンして指すものの、それはいつもの事なのでイマイチ伝わらない。なのでルトが小さな手で指した。分かっている双子にノルトは「あぁ、そうだな」と言うと、頭を撫でる。
そしてそれを見てようやくマリエッタは気がつくと、ビクッとしていた。
「……あら!? そんな所に!?」
「本当に思い切った大胆な方法だ」
〘ミーシャさん、ノエル選手は一体何処に行ってしまったんでしょうか!? 未だに姿を現しません! なお、当コロシアムには隠れられる場所は無く、特殊なフィールド……つまり試合用に作られた地形がある訳でもないので、隠れられる場所は無い筈なのですが……〙
〘いえ、一つだけあるじゃないですか。それにかつ、一番安全な場所……〙
そしてノエルがその答え合わせをするかのように現れた。
〘戦車の下が〙
「思ったよりちょっと狭かった……」
それからノエルがほふく前進をして現れると、それを見たユーリカは「はぁ!??」と驚く。
〘ノエル選手、なんと戦車の下から出てきました! 先程の登場と違って、随分となんだかカッコ悪い!!〙
〘意外と勝つ為ならルール違反以外でカッコ悪くても使える手は使うタイプなんでしょうかね〙
ノエルは結構普通に土とかで髪とかが汚れるのは、全然抵抗がないタイプの女の子である。まぁそうでなければ前世に選択授業で自ら喜んでチェンソーで木を切ったり、野菜作ったり花を育てたりなんかしないのである。
「なんでそんな所から出てくるのよ!? 普通避けられたとしても横とか後ろじゃない!!」
「こういうのはもっと3Dに考えて、ちゃんとしたテスターも使わないと駄目だよ。
(アクションゲームとかでも、製作者が想像していたルートとか方法以外でゴリ押しとかできちゃうこともあるし……)」
「フェアリーちゃん!! ……ってキャ──────ッ!?? 私のフェアリーちゃんがキノコまみれに!!! 沢山すぎて気持ち悪い!!!」
「機械にフェアリーって、矛盾してない? 確か妖精って精霊と同じく金属が嫌いな筈じゃ……」
「うるさいうるさいっ!!」
ユーリカは涙目で魔力を流して戦車を動かそうとするものの、何故か戦車は動かず、むしろキノコが増えていく。そしてキノコが戦車の中の隙間に入り込み……。
パァンッ!
〘あっ、爆発した……じゃなくて!
戦車の中に入ったキノコの胞子が急激に中で育ち、成長しキノコに耐えきれなくなった戦車が破裂してしまいました! ユーリカ選手の妖精が破裂音をBGMに空を舞い飛ぶ!
……また飛んだー!!〙
〘外装やパーツが見事に吹き飛びましたね〙
〘それにしてもこのキノコ……地味ですが、とてつもなく恐ろしいですね。もし戦車アーティファクトではなく人だったらと思うとゾッとします〙
〘おそらくこのキノコは魔力によって成長する特殊なキノコなのでしょう。そういえばヒエリカでそんな新種の巨大キノコが数週間前に発見されたって報道されてましたよね〙
〘あっ! ニュース僕も見たんですけど、今ではヒエリカで特産の食用、かつ年々空気中の魔力濃度が上がっているのを防ぐ為の重要なキノコとして量産しようと品種改良をしているそうです!〙
「(そうなの!? つまりニョッキの仲間がいっぱい……)」
たくさんのニョッキをノエルが思い浮かべている間、戦車の中に入っていた魔力はもちろんのこと、魔石は全て養分になり、戦車は完全にスクラップにされ、最後に大きなキノコが戦車の上ににょきっと生えた。
〘ユーリカ選手のフェアリーは既に、巨大キノコへと化しました! これはもはや試合というよりも、キノコの成長過程と自然の力強さ、そして無慈悲さを見せられているのでは!?〙
〘自然界ではより多く子孫を残したもん勝ちですからね〙
「フェ、フェアリーちゃん……フジツボみたいにキノコまみれにされて、面影もない……そんな、なんて気持ち悪い姿に…………私の、負けよ」
「勝者、ノエル!」
〘なんだかんだで勝利したのはノエル選手! ユーリカ選手の唯一の武器であるフェアリーちゃんを完封し、茸々しく勝利!〙
「思ったより簡単に勝っちゃった……」
「思ったより……!? お、覚えてなさいっ! 5月の学祭では絶対に貴女を倒せるフェアリーちゃんを作ってみせるんだから!!」
「にゅーっ!」
ユーリカはそう捨て台詞を吐き、退場。この試合を見ていたニョッキは喜びながら跳ね、レイゼルは「えっ!? もう終わりかよ!? ノエル!?? ノエルッ!????」と、控え室の中で叫んでいた。
「あら、もう終わっちゃった……」
「所詮アーティファクトが強く、魔力保有量が多いだけだからな。訓練も受けていないのなら、例えお互いに魔法で戦ったとしてもこの俺がノエルにずっと魔法の知識を教えてきたんだ。勝てる筈も無い」
「あぅ!」
エルマーはガラガラをブンブンしながら「そうだ!」と言わんばかりに反応すると、ルトは再びすやすやと眠り始める。大会のスタッフ達がキノコまみれの会場を掃除した後、また再びつまらないアーティファクト同士の戦いが繰り広げられた。だがその中で盛り上がりを見せるのは幼馴染2人で、レイゼルの方の試合はというと……。
〘今回もまた耐え抜きました!! なんという凄まじい防御力!〙
〘……ここまで来るともう変態的ですね〙
「ノエル……ノエルぅぅぅううう……」
「これだけやって、通ったダメージがたったの10だとぉッ!? そして残りが9990……馬鹿な!!」
アーティファクトによる全力攻撃ですらレイゼルにほとんどダメージを与える事はできず、レイゼルはただ突っ立って泣いているだけなのにエネルギーと弾を切らさせていた。
〘どうやら魔力切れの模様です!〙
〘そのようです、これはもう降参するしかありませんね〙
「俺の設計と魔力量は完璧の筈ッ!!」
「ノエルぅぅぅ……」
「何が、何が足りなかったと言うんだッ!!!」
「ノエルぅぅぅうぅぅぅぅゔうううう……会いだいぃぃぃぃいいいいいい……ずぐ帰るって言っでだじゃんかぁぁぁぁぁああああ……ノエルば俺の事なんがどうでもいいんだぁぁぁぁあ……他の女の子と水族館に行っで浮気じでやるぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
普通に攻撃力と会心率が足りなかった、それに尽きる。
そしてレイゼルにず──っと名前を呼ばれているノエルは、レイゼルの試合を一度も見ていない。だって絶対集中できなくなると思っていたので。それくらい今回ノエルはガチなのであった。
午後のゲイルによる授業では、まだ一度も模擬試合でレイゼルに勝ったことがない。やはり剣術メインで教えられているからか模擬試合中は魔法無しでやっているし、純粋に体格やら体重の差もある。だからこそ、魔法を自由に使えるこの自由形でレイゼルを絶対に倒すのだと心に決めていた。
打倒、レイゼル。
打倒、変態。
打倒、勇者。
打倒、エロゲーの主人公。
もちろん終わったらノエルの今できる範囲内で、レイゼルを甘やかすつもりだ。自分のワガママで、すぐに帰るという言葉を嘘にしてしまった結果、レイゼルがノエル分離恐怖症を再発させてしまうのだから。
「……」
でも今はレイゼルを倒す事が最優先、ノエルは無心でクッキーをサクサクして魔力の補給をした。魔法は頭を使うので、食べた後は精神統一。
座禅を組んで「レイゼル、今頃ギャン泣きしてるだろうな……」とか「ごめん……」という雑念を無理やり外に追い出して、例え腕や足を折られ、目を潰され耳を削がれても反応しない程に無になっていた。それはもう、途中からノエルの先祖が出てきそうなくらいに。
それからまたノエルの試合がやって来た……のだが。
〘これは一体どうした事でしょう!? トバス選手の使い魔が立ち尽くしています!〙
〘今年の大会は予想外な事がよく起こりますね〙
「……」
「ど、どうしたんだ!? 普段のお前らしくないぞ!?」
植物の妖精をテイムしている、飛び入り参加者なテイマーの男は、普段は意気揚々と人を気絶以上の状態にさせる事もある、あの叫び声を浴びせる好戦的な相棒が、うんともすんとも言わない状態に目を白黒させていた。
「叫ばないマンドラゴラって居るんだ……」
「しかも何でそんな媚び売ってるんだ!?? 俺には一度もそんな事しなかった癖に、何でだ!!!」
そしてとある控え室では……。
「あ────っ!! 雑草の癖に俺のノエルに媚び売ってんじゃねぇよ!! そこ代われ!!!!」
「に゛ゅっ……」
レイゼルはニョッキを抱き絞めあげながら、ぎゅ──っと抱き締めていた。
そしてノエルの方に戻り、撫でてもええんやで、という様子でサツマイモ風のマンドラゴラはススス……と、ノエルに近づく。全く攻撃をしようとは見られない様子で、ノエルはちょっと撫でてみるとサツマンドラゴラが嬉しそうに体を揺らした。
「ドーラ、しっかりしろぉ!!」
主人の言葉を無視してノエルにくっついているサツマンドラゴラ。そんな使い魔に仕方なく、隣に控えさせていた他のテイムした動物に戦わせる事にした。
「仕方ない、行けお前達!」
その後、結局ノエルは戦うことも無く、相手が謎の黒服に棺桶ダンスをされて退場していった。何故ならまさかのマンドラゴラがフレンドリーファイアで、主人諸共仲間に叫んで気絶させてしまったのだから。精霊はともかく妖精は自由気ままなので、完全に使い魔として使役するのはむつかしいのである。
ノエルとしては不完全燃焼だったが、レイゼルとの試合の為に体力や魔力をなるべく消耗させたくないので、無理やり良しということにした。
一応使い魔も武器という判定にはなっているので、ニョッキも申請すれば大会に参加できたりもする。だがそれではノエルの目的である、自分の力量を確かめることができなくなってしまう。という訳で、ノエルはニョッキを参加させなかったのだった。あとレイゼルを見ておく係が居なくなってしまうので。
レイゼルの試合は相変わらずで割愛、ノエルは準々決勝に上り詰めていた……のだが、その時に変な奴と出会った。だがいつもの事である。
「……くく、ふははは!」
「(えっ、なんか急に笑い出したし……見るからに痛々しいな?)」
ノエルはじっと自分を見つめてきたかと思えば、急に笑い出した歳の近そうな青年を見てそう思った。
何故なら黒髪に赤いメッシュ、更にマントのような黒いコートと赤い目と眼帯、何故か血糊が付いていて、鎖と包帯が巻き付けられているドクロの大鎌、腰に着いた無駄に装飾が凝った短剣……明らかに厨二病患者な人がそこに居たのだから。
唯一マトモなのは、胸にあった魔力の残量を確認する為のアーティファクトだけだった。あ、決してデザインの事を言っている訳ではなく、性能云々の話だ。
普通の人間には魔力を感知する事はできない為、自分の魔力の残量すらも分からずに魔法を行使しようとして、何も起こらない事がある。なので魔法を使う魔法士や魔法剣士などはほぼ必ず、魔力残量計測機というアーティファクトを自分が見えやすい位置に身に着けている。相手の厨二病のは……何故か十字架の形をしていたが。
「まさか、宿命に囚われし大天使がこの咎人である俺の元に、舞い降りるとは……。
これも運命……か」
いきなり意味不明な事と意味ありげに言ってくる厨坊にノエルは「はぁ……?」という声を上げそうになったが、頑張ってガマンした。本当は共感性羞恥がエグかったので、言えなかっただけなのだが……。
ついノエルはまな板の辺りをさすっていると、更に声をかけてきた。
「くっ……呪われし死の力が既に影響を与えているというのか? この
「うぁ゛っ……(痛い、痛い痛い……本当に痛い、何この人)」
ここに来て、初めてのピンチ到来。ノエルにとって、この精神攻撃はヤバかったのである。物理がダメなら精神攻撃……意図していないものだから、タチが悪い。
(※ちなみに
見た目に超こだわり抜いた武器だが、素人が超頑張って鉄を叩きまくり、鋼にした後で魔法で鎌の形に切り、研いで作った武器なので……武器自体にスキルなどは全くない。
厨二病は、己の世界を作る為に自らの手で武器を創造するのである。コスプレイヤーもまた同じく、自分の推しを表現したいが為に、アクセサリーや装飾、ウィッグを作るのだ)
〘✝︎血塗れの死神✝︎選手、絶好調ですね〙
〘ノエル選手に早速精神的ダメージが入ってますけど、HP数値を削っている訳ではないのでルール上は大丈夫とはいえ……〙
〘……結局本名はなんていうんだろうな〙
「俺の真名を知れば俺と契約を交わしている悪魔の闇に引きずり込まれ、二度とケルロー神のもたらした聖なる光の当たるそちら側には戻れなくなる。悪魔と俺は一体であり、この右目は悪魔の目だ。そして今も俺の体を通して外界を覗いている。
俺は周りを巻き込む趣味は無い。だから仮の名を使い、この未開の地へ赴いた……。だがその覚悟があるのなら、真名を教えてやろう」
「……」
やめて! ノエルのライフはもうゼロよ!
ノエルはあまりの痛々しさに、死神なんだか悪魔なんだか結局どっちなの、というツッコミを入れられずに白目になっていた。
〘お兄ちゃん、この人学園の体験入学として大会に参加してきたみたいよ。人見知りだけど、絶賛友達募集中だって〙
〘さっきの説明でよく分かったな……って、これは人見知りなのか? ……ゴホンッ、両者が揃いました! この戦いに勝てば準決勝へ進めます! ようやく我々が求めていた戦いが見れそうで、なんだか緊張してきました!〙
ようやくの人同士の試合にコロシアム大会場ではこれ以上に無い程、歓声が響き渡る。
「ルシファー、試させて貰うぞ。この俺が手に入れた……魔眼に封じられた死の力を!!」
そう言いながら厨二病は、眼帯を取り外し……金色のカラコンを開眼させた。
「うぐぅ……」
《ノエルには既に効果抜群だ!》
〘では試合、開始!〙
その一言で試合が始まり、その瞬間にノエルは草魔法と転移魔法を同時に発動させて横に移動した。すると厨二病は大鎌でノエルの居た場所を振り抜いており、風を斬る音が鳴った。
「(勘で助かった……)」
「やはりルシファー、貴女であれば避けられると思っていた」
何言ってんだお前。
そんなふうにノエルは思っていると、ノエルは足元に草魔法で作り、設置しておいた種を発芽させ、次々と茨を生やす。
〘✝︎血塗れの死神✝︎選手、一瞬でノエル選手に近づいて先制攻撃です! ノエル選手は転移魔法を使って避けると、草魔法で茨を作りあげました!〙
〘ノエル選手の茨は拘束だけではなく、攻撃にも使えそうですね〙
茨は厨二病少年の体に巻き付き、トゲが少年の体に刺さると仮想上のHPが減っていく。しかし実際にケガする事は無い特殊な空間の為、痛みは感じない。
「全ての災厄から我が身を守りたまえ、フィジゾーン!」
なのでフィジゾーンを無駄に凝った厨二感溢れるナイフの形にし、それで茨を切った。
その
「エルズ、アクタ」
更に茨を生やしていき、栄養剤入りの水で急激に成長させる。だが相手の方が初動が速く、せっかく成長していたハエトリグサは簡単に斬り伏せられ、距離を詰められていく。
するとノエルは勢いよく白い薔薇のブローチを取った。それに魔力を込めると、ブローチは一瞬で魔法剣に形を変えた。
魔法剣の特徴で柄の部分から刃先になるにつれて傷一つないガラスのように透明度が高くなっている。そして刃の部分は茨を模しておできており、柄の部分には幼い頃にレイゼルから貰った、結晶化している半透明な白薔薇が装飾として使われていた。
ジェームズ作 作品名 白薔薇の追憶。
〘なっ、なんと! ノエル選手の左胸に着いていたブローチが武器に変わりました!!〙
〘ただの飾りかと思っていましたが、ちゃんとした剣だったんですね。しかも見たところ特注のようです、綺麗ですね……〙
ヒエリカの現状における最先端鍛冶技術を結集して作り上げた、性能共にデザインも最高傑作とも言える業物。一見するとレイピアのような細身の剣で、切り付けようとすれば折れてしまいそうだと感じる。
だが、柄から刃先につれて透明になっていくノエルの魔力色に染った美しい刃は、純粋な魔力の塊。滅多な事で折れることは無い。
剣で受け流し、少しの力で相手の力をそのまま横に逸らす。
「アイジス!」
「(無詠唱の中位氷魔法……誰かが使う所、そういえば初めて見たな)」
(※通常、魔法には下位の魔法であっても詠唱は必要に……そういえば説明はしたな。魔法についての説明は12話、なんか目覚めた!!! の会を見て欲しい、大体暇人の読者は忘れている頃だと思われるので。
皇族の血を引いたノエルは生まれつき、魔法の熟練度が凡人よりも非常に上がりやすく、少し使っただけですぐに使いこなせてしまう。なので……実は無詠唱魔法を使った事がなく、身内も全く使わないので、初めて見たのであった)
家にある椅子と同じくらいの大きさの氷が何個も現れ、ノエルに向かって勢いよく飛んでくる。慌てることも無くノエルは氷塊を剣で切り付けると氷の塊が砕け散り、消えてなくなった。
溶けるでも蒸発するでもなく、消えてなくなる。その様子に見ていた厨二病は少し違和感を感じながらも、大鎌を振る。
「(大体この厨二病の動きは分かってきたな)」
〘✝︎血塗れの死神✝︎選手、猛攻撃でノエル選手に魔法や回避する隙を与えませんが、ノエル選手は平然とそれを受け流し……反撃し始めていきます!〙
「(魔法を上手く使えているし、絶対に使いづらい大鎌を使って戦えるのは凄い……けど、動きが読みやすい)」
父親譲りの豊富な魔力と相手の動きを見極める能力に、母親譲りの草魔法と水魔法、土魔法に特化した魔力の波長。そしてノエルの正確で鋭い勘。
それらの才能を遺憾無く発揮し、ノエルは魔法剣を振る。
キンッ キィンッ!
金属同士がぶつかり合う音の間隔が徐々に速くなっていき、戦いは激しさを増していく。そんな中、厨二病が切っていた茨やハエトリグサの茎の葉の付け根から腋芽が生え、徐々に厨二病に近づいて伸びていく。
茎を切った程度では、根を下ろした植物に強いダメージを入れる事はできない。……ならば、と厨二病は受け流しきれない程の強さと速さでノエルに斬りかかるが、普通に避けられる。
だが大鎌はとても広い範囲で攻撃する事が可能なので、あまり動かずに避ける事はできない。自然と後ろに下がるようにして避けたノエルから一撃離脱をするようにして離れ、厨二病は近づいてくるハエトリグサに蹴りを入れた。
その様子を見た一瞬、ふとノエルは「さっきイナバウワーみたいに体を仰け反らせた後、そのままバク転して大鎌を蹴り上げればよかったな」と思いつつ、後悔しながらも厨二病が魔法を使うのを勘で察知する。
「フェイリン」
「デイル」
〘✝︎血塗れの死神✝︎選手がノエル選手から離れるようにして距離を取りつつ植物に足蹴りした後、双方揃って土魔法を行使しました! ……が、何も起きませんね〙
相手の厨二病が土魔法を使おうとする事は、ノエルの勘で分かっていた。地震のような物を起こし、足場の状態を悪くさせようとしている事を察知していたノエルは、土魔法で逆に地盤を固定させる事で。少し地面が揺れるだけに留まった。
「エルズ!」
ノエルは再び草魔法を行使すると、次々に背高い木々を辺り一面に生やしていく。
〘ノエル選手の草魔法でコロシアムの開場が木々に覆われていきます!〙
〘これはおそらく、フィールドを作る為だと思われますね〙
「(そしてその小さな花でトラップを作り、隠す気か? だが何故そうはさせんぞ、ルシファー)」
それに警戒する厨二病は今度こそ無詠唱の
「アクタ、グロウ」
こうも足場が不安定で荒れていると、戦いづらくなる。
「っ!?」
剣士が自ら武器を手放すようなありえない行動に思わず驚き、咄嗟に✝︎血塗れの死神✝︎という厨二病患者は大鎌で剣を弾く。
その時に剣から魔法陣が展開され、茨のような拘束魔法が自動的に行使される。勢いよく発射されるそれを切り付け破壊しようとするが、それが悪手だった事に気がついたのはすぐ後だった。
「!!」
〘ノエル選手、武器を投げつけたかと思えばノータイムで茨状の拘束魔法を行使しました!
そして今、✝︎血塗れの死神✝︎選手の大鎌で拘束魔法を弾いた瞬間、電撃を発して大鎌がウェポンブレイク! それから✝︎血塗れの死神✝︎選手に巻きついて拘束! ですがノエル選手の手から離れても刃が出ているという事は……〙
〘あの剣、どうやらヒエリカでは主流の充魔式魔法剣のようですね。あ、今ノエル選手が登録した武器についての情報が入ってきました。えっと、どれどれ……うわ〙
〘ミーシャ? どうしたんだ、その変な顔をして〙
〘いや……あの顔に似合わず、結構武器のスキルが……ちょっと、イヤらしいというか〙
〘んん? ………………何だこのイヤらしさ。ノエル選手の戦い方を見ていて思ったんですけれど、結構戦い方が……その搦手が多いですよね〙
魔力を刃に直接流して使うのが魔法剣の特徴。だからこそ刃に直接属性を付与する事が可能であり、ノエルは毒属性(正確には酸)を付与させた状態で大鎌の攻撃を受け流していた。
魔法剣の原理はとてもシンプルであり、だからこそ使用者にとって最も敵を殲滅する為のツールとして要望が出しやすい。
そしてノエルが出した要望は、最も見た目が自分に似合っており、剣として使いやすく、どんなに戦いが長引いても絶対に負けず、立っていられる為の武器。
だからこそジェームズがノエルに応えた結果、事前に魔力を溜めて使う、充電ならぬ充魔式の魔法剣を作り出した。
ただ充魔式自体は別に珍しくもなく、魔力の多い魔法剣士の冒険者はこぞってこのタイプを使う。それもヒエリカでの場合だが。
何故なら充魔式アーティファクトは、一度の充魔にとにかく魔力を消費する。
だから使わない時も常に身につけて、溜められる分だけ使用者から直接吸収し続ける。なので魔力保有量共に魔力を回復する速度が優れている者でなければ、いつまでも体内の魔力が回復せずに魔力が枯渇してしまうという自体に陥る。なのでヒエリカ以外の国ではほとんど普及されていない。
実は魔力の保有量と魔力の回復速度はどこの国と場所に住んでいるか、そしてどこのどんな血を引いているかによって異なる。
常に魔力が空気中に多い場所に住んでいれば魔力の回復も早く、魔力を溜められる最大値が自然と増えていく。人間は太陽と月の神によって作られた存在。魔力に影響を大きく受けてしまう。
月の神が持っていた能力のひとつ、魔法に影響されるからだ。
(※魔人族であれば魔物の血を引いているので魔力を体内で生成する事ができる他、魔力の感知や魔法の行使なども他種族に比べて違い最も優れている。魔物は元々概念の神が作り出した存在だが、概念の神は月の神の力を持って誕生した存在と伝えられている。魔人族もこの世界の魔力に大きく影響を受ける)
つまりヒエリカ出身の人々は他の国の人間よりも、とても豊富な魔力を持っている。だからこそ、充魔式の魔法剣を使う事ができるのだ。
そして充魔式の剣は、溜められた魔力を使って使用者の意思一つで簡単に魔法を行使できる。
だがこの白薔薇の追憶は普通の剣と違って大きな特徴を持つ。
「全ての災厄から我が身を守りたまえ、フィジゾーン!」
✝︎血塗れの死神✝︎はまた再び魔法で拘束を解き、腰に差していた短剣で攻撃をしようとした。
しかし、魔法は未完成のまま空気中に霧散すると、魔法の行使に失敗してしまった。
「(まさか魔力切れか!? 経験上、まだ俺の中には魔力がまだ残っている筈!!)」
そう思い、厨二病は胸に着けている残り魔力を可視化するアーティファクト(十字架)を確認し、目を見開いた。なんと、銀色に輝いていた十字架が、真っ黒に黒ずんでいたからだ。
これは魔力切れという事であり、攻撃手段がなくなってしまったという事を意味していた。
ならば茨を引きちぎるのみ。
そう思い、自称死神の少年はダメージ覚悟で拘束魔法を引きちぎろうとする……が。
「(力が、入らない……!!)」
〘ここで✝︎血塗れの死神✝︎の魔力が全てなくなりました! いやぁ、本当に……なんというか、ちょっと恐ろしいですね〙
〘✝︎血塗れの死神✝︎選手、かなり攻撃手段を奪われましたね〙
〘武器は残り腰に着けた短剣のみですが、拘束された状態では握る事もできません! そんな中、ノエル選手は魔法剣を魔力で引き寄せ……キャッチしました! そして思い切り振り上げ──〙
「鞭を振る要領で……そいやぁッ!!」
〘✝︎血塗れの死神✝︎選手を容赦なく地面に叩き付ける!!〙
ドゴォッ!!
凍った地面がえぐれる程に強く叩き付けると、ノエルはそれからグルグルグルとぶん回し始める。
「……あれ、よく考えたらフローレちゃんの鞭なくても、ジェームズさんがなんか勝手に付けた、拘束魔法が使える機能でよくない? あっ、でもこれは自動的に
ノエルは頃合いを見て最後に思い切り地面に叩き付けると
吐きそうになっている自称死神は口に手を当てて、フラフラと立ち上がる。なんともみっともない。すると、ふと足元に白い花が生えているのを発見した。それは自分を中心に花畑のようになっており、死神には全く合わない景色になっていた。
……いきなりだが、ここでノエルがノルトに教えてもらった唯一の戦闘技術……不審者撃退術(7話参照)という教えを、今更ながらに読者の暇人達に伝えたいと思う。
まずノエルがノルトパパンに教えてもらったこと、1……視界に入れる価値も無いゴミに出会ったら、人間にとっての急所を狙う事。うーん、素晴らしいお子様の教育ですね、元皇太子様。
そして2、相手が武器を持っていたら、その武器を魔法で奪って攻撃手段を減らす事。もし可能であれば相手を拘束し、完全に無力化させる事。やっぱり武器が無いと戦えませんもんね。
最後に3、1と2ができなかったとしても、殺さない程度にとにかく徹底的に叩きのめす。実にエクセレント、パーフェクトでございます。
ノエルは全て忠実に、父親の教えの通りに戦っていた。例え変態じゃなくても、全身真っ黒で痛々しい厨二病患者は不審者なのであった。ならばやる事はひとつ。
オーバーキルだろうが、とにかく叩きのめす!!
「やるからには完璧で徹底的に、容赦なくやらないとね」
ノエルは
一見すると無害そうな花だが、この試合を見ていたノルトが娘のやろうとしている事に気がつくと……すぐさま
「これ、ちょっと1回言ってみたかった……。
エクスプロージョンッ!!」
そう言いながらボッと、地味ーな感じで一番手前の花を燃やす。すると花は一瞬で燃え上がり、まるで導火線のように連鎖していく。ノエルは両手で自分の耳を塞ぐと、一拍子遅れ……。
地面を揺らす程の巨大な花火が上がった。
〘花が燃え上がり、会場は大爆発を起こしました!!〙
ピ──ッ!
試合終了の合図が鳴り響き、会場にある魔力によって映し出されているモニターには、「ノエル・ヴェリカ WIN」という文字が書かれていた。
「……やはりキスタス・アルビドゥスだったか」
「あら、ロックローズってそんな名前が付いてるのね」
「ただの学名だ。ヒエリカやランセンでは
暇人の読者の皆さんはご存知だろうか、ゴジアオイという名の変わり種を。この花は自らの子孫を残す為、自らを燃やす事によって他の種を全て燃やし……火災の後に種を落とすという、とんでもない花なのである。
その証拠に花全体には油分が含まれており、香油として使われる事もある。
ノエルはその花をちょっと改造して、通常の個体よりも油の量を増やし……キノコ同様、魔力を吸い上げる事で成長するようにした。
土の中にゴジアオイを種の状態で隠しておき、そして土魔法で地震を防ぐのと同時に硝石、硫黄を大量に作り上げ、相手に木を燃やさせる。
そうする事で大量の木炭を作り、相手の炎で火薬の材料となった土を地震によって空気に晒させ、中で眠っていたゴジアオイの導火線が生やせるようにする。そして発火しないよう、水魔法を氷魔法で魔法で凍らせていた地面は、ノエルがぶん回している間に火災によって活性化したゴジアオイの種の養分となった。
そして沢山のゴジアオイは種から花となり、養分となった魔力と水分は土をカラカラにさせ……
「やっぱり爆発は芸術だね……。
こちとら前世の時もス○ラトゥーンではホットガロン、モ○ハンの武器はガンランス。モ○ハンストーリーズのオトモンはテオ・テ○カトル。スマブラでは推しゲーのキャラとは別に、セ○ィロスとスネークでギガフレアとC4爆弾。原○のク○ーちゃんで過負荷反応起こして全部ドカーンしてた、爆発共に威力厨のアクションゲーム好きなゲーマー舐めんな……」
実は爆発と爆発的な威力を持った武器や、操作キャラクターが好きだったノエルさんであった。
〘……えっと、✝︎血塗れの死神✝︎選手、生きてますか?〙
〘お兄ちゃん、ダメージを受けないフィールドなんだから、生きてるに決まってるでしょ。ただコロシアムが全壊だし、プロジェクターのセンサーも当然ダメ。こっちまで振動と爆風の余波が来たけど〙
〘今年はとんでもない爆弾が入ってきたな……〙
〘もはや爆弾魔〙
《ノエルは爆弾魔の称号を手に入れた!》
爆弾魔の称号を得て、コロシアムの再建費などを全て王様に支払わせる事になった所で(そもそも学校生活でかかるお金はレイゼルが脅して全てあの糞な王様が支払わせることになっている為タダ)試合が終わったノエルは一応相手選手の安否を確認しようと、ぶっ倒れている厨二病に近づくと、黒焦げとなった厨二病をじっと見ていた。
「……大丈夫?」
「傲慢を司る者が……まさか、ここまでの闇の力を持つ
次に相まみえる時、俺は貴女と同等で対になる存在へ成り……再び顕現しよう」
「ゔっ……」
《ノエルの心に99999のダメージが入った!》
「ではまた会おう、ルシファー……ムーヴィ。
……あっ、ゴホン」
こうして魔力が無いことを忘れていたらしい、訳の分からん厨二病はボロボロのコートを翻し、そのまま歩いて見る影もなくなったコロシアムから出ると、ノエルは控え室に向かった。
一方、この戦いを見ていたレイゼルは……。
「……また、俺の見てない所で他の男が俺のノエルに近づいて来た気がする」
「に゛ゅ゛あ゛あ゛……」
気絶したニョッキを絞めるように抱き締めて、それからレイゼルはニョッキを離すと、出刃包丁……ではなく。
「今は刺しに行けないから……これで、末代まで呪い殺してやる……俺勇者で半分は神らしいし、できるよな……俺のノエルを狙う男は皆死ねばいいんだ……」
何処からか、藁人形と釘と金属槌を出し、壁に無許可で叩いていた。器物損壊だが、勇者なので許される。この穴を埋める費用もクソな王様が払うのだ。
そして厨二病は変態ヤンデレストーカー勇者の
ノエルはレイゼルがそんな事をしているとも知らず、厨二病との戦いで魔力を消費した為、控え室にある受話器から有料で食堂に作って貰える濃厚で甘いバニラアイスを食べながら、勝利の味を楽しんでいた。もちろんこれを払うのは
「やっぱり運動した後は甘くて冷たいものに限るね。後はパフェとプリン、それからタルトも頼もう……あ、そうだ」
ノエルはふと、今はブローチの状態に戻っている魔法剣を思い出す。魔力が足りないのか、蕾の状態になったブローチは生きているかのように持ち主であるノエルの魔力と、材料として使われた血の影響でワ○ピース世界にあるビ○ルカードのように惹かれて、ズリズリと「お腹減ったぞ……」と言っていそうな感じで少しづつ近づいてくる。それをノエルは手に取ろうとして、ハッとした。
「あ、危ない……私も忘れるところだった」
そのままノエルはブローチを持たずに転移魔法を使ってブローチを父親の元に飛ばす。そして父親であるノルトは、突然目の前に転移して落ちてきたブローチを持つと驚いて思わずそれを落としてしまいそうになった。
「あら、ノエルの剣だわ! ……でもどうしてここにノエルが飛ばしてきたのかしら?」
「間違いなく、この剣に必要な魔力を全て補給して欲しいんだろう。だがまさか……持ち主以外の魔力も吸収し、ノエルの魔力として変換できる物だったとはな。
その上、今実物を見て確信したが……この剣でダメージを与えると攻撃力と防御力を下げるスキルを付与する回路が花びらの裏に緻密に掘られている」
「それ、ただの飾りの模様じゃないのね」
「デザインと機能を両立させるのが、ヒエリカの匠の技だ。その上、ノエルがこのスキルや機能に頼りきりにならず、日々の授業で模擬戦用にも使える為にも魔力を攻撃力に変換せず、スキルが発動しない機能やダメージを入れない機能まで付いているらしい。
そして状況に応じて切り替えられるように自律思考機能も付いている。流石に喋れはしないようだが……手厚い配慮だな」
まるで誰かさんを倒し、その誰かさんを守る為に作られたかのような、いやらしい性能をした魔法剣だ。だがその代わりに、消費する魔力がとても多い。そのデメリットを解消する為、この魔法剣は空気中の魔力すらも吸収している。
「そして先程の戦いを見ても、これは最大まで充魔ができていなかったと考えられる。本当にデザインも機能も両立しているな。ノエルが全力を出して戦えるよう、準備不足という事も考慮し……今回だけは特別に手を貸すか」
綺麗な薔薇には棘がある。
うめぇうめぇと持ち主によく似た魔力を持つノルトから魔力をものすごい勢いで吸い上げ、真っ白で満開な状態に姿を変えると白薔薇の剣は自動でノエルの元に帰って行った。
そして他の試合を飛ばしてやってきた準決勝、ノエルは「またか……」と思いながら、目の前のアーティファクトを見ていた。それらはドローンのように空を飛んでおり、ガトリングのような物が付いてある。それが何台も相手選手の周りに飛んでいる。
「(……なんか、ガッカリだな。来年は参加するの、やめようかな……あ、戦闘部門の人は絶対にどれかひとつは参加しないといけないんだっけ。クソ仕様だこれ……剣技形と魔法形だけ出よう、というかアーティファクトはアーティファクトだけの大会を作ってほしいね)」
なんと、あの棺桶ダンスをされた選手と厨二病な選手以降、アーティファクトを使う選手としか試合がなかったのである。レイゼルも同様に(ずっとレイゼルという名の変態は「のえるぅぅぅぅぅぅ!!」と泣き叫びながら突っ立っていただけだったので)一気に飛ばされて準決勝の所まで時間をキ○グ・クリ○ゾンをされた訳だが、本当にほぼ同じような絵面で、コロシアム大会場に移ったというのに見所がなかったのだ。飛ばされるのも仕方ない。
まさか全国に放送されている大会がこんなにも拍子抜けで、つまらない物だったとは……。
試合の真っ最中、ノエルはそう思いながら、魔法・物理防御壁のカルゾーンを二重に展開させて、時々来る雷属性の攻撃は勘で察知して避け、草魔法で何個か種を作ると水魔法で種に水をやり、それを相手の近くに転移させた。
これ程度なら大して魔力は必要無い上、相手の魔力を吸って成長するので放置した。
「(それにしても今まで全然使ってこなかったから分からなかったけど、草魔法と水魔法、炎魔法に比べて使っても全然魔力減らないな……。私の魔力の性質が草魔法寄りみたい。
草魔法は他の魔法とかと違って、あんまり教えられてこなかったからヒエリカで一度しっかり学ぼうと思って勉強して……。それでまさかお母さんの遺伝がここにきて判明なんて。
……せめて発育の方に来て欲しかった)」
拝啓ジェームズさんへ、今なら得意な魔法をはっきり答えられそうです。
ノエルはそう思いながら、にょきっと生えてきた巨大なハエトリグサ(もはやモンスターのように動いており、それはさながら某むしとりポ○モンのようである)がアーティファクト達を美味い美味いとパクパクしているのを見ていた。酸性の消化液でジュ──ッという金属溶ける音と、相手の叫び声をBGMに。
「僕の発明がっ!! クソっ、この! ただの雑草ごとき、燃やしてやるっ!! ヘオンド!!」
相手の選手はハエトリグサ達に炎魔法、ヘオンドを使う……が。このハエトリグサもキノコ同様、魔力を吸収するタイプだった。そしてこのハエトリグサは自然界ではありえない、とんでもなく強い硫酸と酷似した消化液を持っている。
読者の暇人な方々はご存知だろうか、濃い硫酸に水をいきなり入れるとどうなるか……。そんな訳でハエトリグサくんは全く炎が効いていない様子で、相手の選手に近付いた。
「おい! ま、待てっ! 来るな──ッ!!」
それからあむあむと相手の選手は食べられ、ノエルが魔法剣を使う事もなく相手選手は敗退。
次はとうとう決勝戦、レイゼルとの試合だ。
ノエルはキャラメルをモゴモゴした後、精神を集中して魔力を高め……ノエルは待ちに待った機会にソワソワしながら待っていたのだった。
【挿絵表示】
授業で描いたもの 20231124
【挿絵表示】
なぞなぞ 20240111
【挿絵表示】
コレクションがッ!!! 20240111
最近YouTubeでワンピース見てるんだけどさ、見てて思ったの……。絶対ノルトパパ、ハ○コックが超絶苦手だし性格面で相性悪いだろうなって。どっちもプライド高いし、過去に支配されてた側の人間だから共感はできるだろうけど……ノルトパパン、いくら顔が良くても性格悪くて見下す人は全員嫌いだから……。
おまけ
公式ファンクラブ アーノルト様の豚になりたいの会
件名 大ニュースです!!
ハロウィンシーズンという名の魔獣が最も増える恐ろしいピークが終わり、我が家ではこたつ布団がもう既に恋人になってしまっているこの度……。なんとファンクラブ会員様にのみ、アーノルト様の極秘プロフィールを大公開しちゃいます!
ご本人様公認のファンクラブ公式運営が直接、隣国の宮廷魔法士としてお仕事中のアーノルト様に突撃して特別にインタビューをしてもらった所、アーノルト様は困惑しながらも意外な裏プロフィールを公開していただきました!
……あ、一応言っておきますけれど、はた迷惑な厄介ファンという名のただの豚のように、自分の欲望を満たす為だけに近づいた訳じゃないですよ。
実はフェリラ国に仕事で行っていたのですが、不幸にもあの国の王へのテロというか、革命?? が起こりまして。なんとテロ犯は魔獣を何処からか用意して、解き放ったのです!! しかもどういう訳か、魔物にしか魔獣を操れない筈なのに、ただのテロ犯が魔獣を操っているのです!!
アーノルト様のファンという名の豚である同士達になら、私の言わんとしていることが分かる筈です。
そう、アーノルト様の力を持ってしてもちょっとだけ追い詰められた、あのワールブルク学園の魔獣襲撃事件の再来が!! 私の目の前で起こってしまったのです!!!
まさに阿鼻叫喚、テロ犯の行使する魔法や魔獣に人々が逃げ惑いました。それで私は我先にと逃げようとする人達に体を押され、転んでしまい……逃げようとしている人達に体を踏まれたりして、ようやく大勢の人達が行ったかと思えば、目の前には魔獣……私は死にかけたのです。
まぁあのウィリなんたら王が国のトップならテロを起こしたくなる気持ちも分かりますよ、他の人を巻き込まないで欲しい所ですけども。でもあの国のウィリなんとか王のことですから、たぶん国民が減ったら産ませればいい的な事言ってそうですけれども。……控えめに言ってクソですね。
とにかく!! 魔獣に頭をかじられ、魔獣のまるごと☆お手軽朝ごはん!になりかけて絶体絶命の中、私は一周回って冷静になって「あ、うちの国のヤツより全然弱いな」とか思っていました。
その時、我らがアーノルト様が黒髪を風になびかせ、颯爽と転移魔法で駆けつけると、あのヒエリカの人間国宝と名高い鍛治職人の巨匠、ジェームズ氏作"蒼き狩人の殲爪"で魔獣の首を切り、一瞬で炎魔法トオンで魔獣を燃やして助けてくださったのです!!!
(ヒエリカ以外の国で仕事モードをする時はあのお美しい髪や目を魔法で黒く見せているのは、アーノルト様ファンにとって1+1は2という誰でも知っている答えと同じくらいの覚えておくべき義務教育範囲内ですが、私はそのお姿を実際にお目にかかることができて大変幸せでございました。眼福の限りです)
それから魔獣達を一瞬で一断ちすると、炎で再び燃やし尽くしました。私でなければ見逃していましたね。
テロ犯には魔法や手を使って攻撃を防ぐ事もなく、無駄の無い動きで回避しつつの足技……それはもう美しさすら感じておりました。一方地べたで座り込んでいる豚の私……月とすっぽんとはまさにこの事!!
……でもここだけの話、アーノルト様の足技を受けたテロ犯が羨ましく感じてしまいました。お前、そこ変われ。
武の極みに達した皇族の方々って何故あんなにも動作が自然で美しいのでしょうか? もはや芸術の域に達しておりました。ですが皇族の方々は決して最後まで油断をしません。アーノルト様はその方々の中でも誰よりも分析能力に長け、相手の能力を把握し、なおかつ一切の油断をなさらぬお方!!
大混乱で人が逃げ惑い、入り乱れる中……他にも隠れ、各地で暴れているテロ犯を謎のアーティファクトで確認すると、魔法を行使なさったのです!!
ただ二言で、しかし凛として涼やかな美しい声で「スカフ、レネダ」と!!!
そして私には千里眼を持っていないのでどうなっているのかは分かりませんが、おそらく他のテロ犯を全員、拘束魔法スカフで縛り上げたんだと思います。いつか千里眼能力を手に入れてみたいものですね。
それから先程まで青かった空には大きな暗雲が発生し、アーノルト様の得意な雷魔法レネダが発動しました!
テロ犯と魔獣達におそらく裁きの雷が落とされ、アーノルト様の転移魔法でそのままテロ犯達は豚小屋行きになりました。そして私の周りでのびて気絶しているテロ犯達は無事アーノルト様に縄で亀甲縛りやら手足を拘束され、こちらも豚小屋行きに。
そしてアーノルト様はもみくちゃにされて踏まれ、ボロボロになっていた豚である私に涼やかな視線を向けると、気にかけてくださったのです!!
えぇ、もちろん一字一句全て覚えておりますとも!! なのでその時のありがたいお言葉を、全て!! ここに書き残しておきます!!
「……まだ残党が残っていたとは。それより、逃げ遅れたようだが痛む所は無いか」
「あ、アーノルトさ――むぐっ」
「今はその名前で呼ぶな、ケガがあるか無いかだけを答えろ」
「足を思いっきり捻ったのと擦りむいたので痛いです!」
「そうか、さっさと立て」
「はい!! ……あっ、やっぱり立てません!! 痛みとかそれ以前に腰が抜けてます!!!」
こんな感じでアーノルト様は私を心配してくださったのです!! しかも自らの手で私に魔法で作った水で擦り傷をしっかり洗い流し……私の膝に、手を!! 猫ちゃんの絆創膏を!!! なんというギャップ!!!!
これはもう私は前世にきっと数え切れないほどの徳を積んだに違いません。
そしてアーノルト様は私に手を差し伸べてくださったのです。もうこれだけでご飯10杯はいけます。
「この俺の手を煩わせるとは……俺に手を差し伸べられる事を、その身に余る程の光栄な事だと深くその頭に刻み付け、この世に産まれた事に感謝しろ」
「ハァァァァァァァッ↑」(限界オタクの断末魔)
……流石アーノルト様!! 我らが皇族様!!! 一生家畜として着いていきます!! 奥様とノエル様、ルト様とエルマー様とお幸せになってください!!!
と、こんな感じで私はアーノルト様に図らずともそのご尊顔を拝見する事ができたのです!!
かなり裏プロフィール公開の話から脱線いたしましたが、私はそんな状況の中、アーノルト様につい聞いてしまったのです!! という訳で、非公開の裏情報をどうぞ!!
「あの!! 貴方の特技って魔法以外に何かありませんか!??」
「腰抜け風情にしては肝の座り方が一人前だな」
「意外性のある感じのをください!! 私、貴方の公式ファンクラブ運営の一員なんです!! ファンの為にも是非!!!」
「おい待て、そんなものがあるとは初耳だ。誰だそんな物を作った馬鹿は」
「私です!! ちなみにファンクラブ会員第1号が皇帝陛下で第2号がスクイナ皇后様、その次がノクターン様、ノーディス様、ノールス様ノルーア様、大きく数字が離れてノイル様です!!! きゃーっ! やりましたよ陛下! 認知していただけました!! もう死んでもいい!!!!」
「母上は想定済みだが、兄上達まで!? その上ノールス、ノルーアに甥……お前達もか。母上、今度会った時は覚えておけ」
だ、そうですよ陛下!
「あ、つい最近ではノエル様のファンクラブも結成され、既にファンクラブ会員が1万人越えをしたそうですよ」
「ノエルのもあるのか!? ……まさか、それも母上が一枚噛んで――いや、なんでもない。嫌な予感しかしない。もう勝手にやっていろ、好きにすればいい」
えぇ、好きにやらせて貰いますとも!!!
「それで陛下や皇族の方でも知らないような特技とか情報ってありませんか!?」
「……一応、ピアノが弾ける。苦手な曲はラ・カンパネラ、だが断じてその曲が弾けないという訳ではない。得意な曲は……魔王とRush Eか? ピアノがいくつかあれば完全再現できる」
マイファーザーッ!!
「神は貴方にいくつ才を与えれば気が済むんですか!? ちょっといい加減にしてください、お金払いますよ!??」
「黙れ、喚くな。それよりさっさと立て腰抜け、魔法で治したから立てる筈だ」
「はっ!? いつのまに!?? そっそれで! ほ、他にはありませんか!? もう一声!!」
「公務執行妨害だ、立てるのならもうさっさと行け」
「そこをなんとか!!」
「はぁ……。
……俺の娘と息子が立つよりも先に、妻が洗濯し終わった衣類に風魔法を使った」
「天才過ぎません!???」
「この俺の子だからできるに決まっているだろう」
子供自慢してるアーノルト様、そしてルト様とエルマー様……可愛いすぎませんか???? というか仕事中で貴方の貴重なお時間を私のような家畜に割いてちゃんと答えてくださるアーノルト様、優しすぎません???????
あっ、そう考えたらあの時の私……ものすごくおこがましいな、ちょっと死にたくなってきた。
……と、いうわけで!! 同士である皆様方、これはもしかしたらいつの日かアーノルト様の奏でるピアノを拝聴できる日が来るかもしれません!!
ではまた来世!
~・~・~
「ノルちゃん、あたしの為にピアノ弾いて♡」(ファンサうちわを持った母♂の姿)
「ここにはピアノなんぞ無い、それより帰れ。仕事しろ」
「ダメって言わないノルちゃん優しい~~!」