※この作品はR-18です。

チュートリアル用のチョロイン幼馴染に転生してしまった   作:水性さん

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バレタインデーがちょっと前にあったから、その話を詰めたもの。

一応本編にしておこうかな……番外編扱いにしようかな……どうしようかな。


ダンスパーティーは次回かな。



20240220 追記 なんか途中で書くの忘れてて書いてないとこあったし、変な部分とかも直したぞ。




バレンタインデー!!!

 

 

 この世界にはヒエリカ発祥のバレンタインデーという、2月14日に親しい人や恋人、片思いの相手にチョコを贈る、1万年もの古い歴史がある文化がある。

 

 大本命の相手にはホワイトチョコを贈る事になっており、初代皇帝が未来の皇后に贈ったとされる。皇帝がホワイトチョコ派だったのと、純白と翠色、白薔薇は皇族の象徴である為、愛を伝える為にも自ら薔薇の形に手作りしたホワイトチョコが入った翠色の箱を渡していた事が起源だ。

 

 当時ホワイトチョコレートは作るのにとても手間暇や材料費がかかる高価な食べ物だった為、国の豊かさを象徴する物でもあったという。

 

 現在、白い薔薇の形をしたホワイトチョコレートは最大限の愛を証明する物であり、よく告白をする時や恋人、伴侶などに渡すのが一般的だ。

 

 

 

「ハッピーバレンタイン、ノルト様ぁっ♡ どうか私の愛を受け取ってくださいませ♡♡」

 

 

 ピーッ! ピーッ! 

 

 

「ノルト様! 私のチョコを受け取ってくださいまし!」

 

 

 ピーッ! ピーッ! 

 

 

「おぞましい物を突きつけるな雌豚共」

 

 

 そう言いアーノルト12歳は、異物・体液などが混入している食品に音が鳴るアーティファクトを持って令嬢・一般庶民のメス共(大体は異性で、その中には同性や同性"だった"者も居る。これが多様性というものである)にドン引きしていた。

 

 そして一つ、ため息をついた。というのもこういう事が去年やその前の年にもあったからだ。これがおそらく毎年恒例の事になるだろうと察し、ノルトは憂鬱になった。

 

 エロ同人のようなこの世界、人から食べ物を貰う時などは特に注意しなければならない。中に何が入っているか分からない為、もしかしたら淫魔の体液などが混入されている場合もある。

 

 もしそれを口にしてしまったら……男女どちらからも襲われかねない。顔が良いという事は、そのような危険も着いて回る。

 

 そんな世界で、ノルトはバレンタイデーというイベントで大勢の異性達から沢山の媚薬・体毛・体液(意味深)入りホワイトチョコーレートを差し出されていた。普通に恐怖、鳥肌モノである。

 

(混入と言えば女性の皆さん、バーに2人きりの時は席に立ってトイレに行ったあとは絶対にお酒は新しく注文して、青いカクテルは睡眠薬を入れられたら気づかないから避けるようにしようね! 

 

 あと事前にどんなお酒が酔いやすいかも把握しておこう! もし男が執拗にお酒を飲ませようとしてる場合はクロ、どんくらいかというとペンタブラック並だ! 例え知り合いでも絶対に気を許しちゃダメだぞ! あっ、紳士の諸君も注意! お酒を飲んだ事はないけど、お酒入りのパウンドケーキが大好きな作者との約束だ! 

 

 えっ? 俺らには関係ねぇだろって? 

 

 てめぇのケツ穴がどうなってもいいんなら、俺ァ別に構わねぇんだがな……。新世界への扉を開きたくねぇんだったら、精々気をつけやがれ)

 

 

「(毎年9割のチョコに異物混入してあるとは、一体どういう了見をしているんだ……)」

 

 

 そんな訳なので、ノルトは毎年隠れて行動している……のだが、何故か見つかってしまう。令嬢達の探知能力は凄く、天下のアーノルト様でも恐怖を覚える程であった。だがそれだけならまだいい。

 

 

「受け取りなさい、貴方がお父様の国に住む"ただの庶民"であるのなら」

 

「……ありがたく頂戴します」

 

 

ピーッピーッピーッ!!

 

 

 エリザベス王女が権力と立場、そして周りに大衆が居るのを利用して、探知機が一番反応するホワイトチョコレートを渡してきたからだ。"アーノルト"であれば突き返す事も可能だが、今は"ノルト"だ。大人しく貰うしかない。絶対に会わないようにしていたつもりだったのだが……こういう時に限って遭遇する。

 

 午後の授業の前でも令嬢達はスタンバイしているし、視線を感じるので剣の素振りにすら集中できない。

 

 なのでノルトは気分転換の為に、"一応"お世話になっている教師に渡す為のチョコをスラのすけに渡す事にしていた。

 

 

「スラのすけ"先生"」

 

「ピキッ!?」

 

 

 普段魔物語で話しかける時、ノルトは先生なんて付けて呼ばない為、そう呼ばれたスラのすけはビクゥッとしながら、チョコの貰い過ぎでチョコ色になった体を振り向かせた。

 

 

「日頃"お世話になっている"先生に、"感謝の気持ちを込めて"先生のことを思い浮かべながら作成いたしました。どうぞ"受け取って"いただけますようお願い申し上げます」

 

「ピキ、ピキィ……」

 

 

 怖い!! 普段このニンゲン敬語なんて使わないから、怖い!! 

 

 しかも強調するようにして言ってくるし、なんか凄く笑顔だから逆に怖い!! その上抱えてきたから逃げられない!! あっ、なんかプニプニしてくる!! 何!? 怖い!!! 

 

 

「ホワイトデーを"愉しみに"待っています」

 

「ピキィッ!? (タダじゃ無いのねん!?)」

 

 

 スラのすけはプルプルした体を更にプルプルさせて、スンスンと泣きながらチョコを受け取っていた。そんな様子を見ていたゲイルは、ストレス解消をする為に完全にイジり、からかって愉しまれているスラのすけに「か、可哀想……」という目を向けていた。

 

 

《ノルトのストレス値が下がった!》

 

 

 その放課後、毎日全力で授業を受けていてもノルトは普段、そこまで疲れることはない。無意識に神経を必要以上に尖らせ続けていたのか、心身共に疲れ果てていた。

 

 

「ノルトくん…………凄く疲れてるね」

 

「ノルト先輩、大丈夫ですか?」

 

「勉強を教えるくらいの体力はある」

 

 

 いつもは図書館の個室(防音室になっている)で教えているのだが、令嬢達がチョコを渡そうと呼び出し鈴を押してきてうるさいだろうと見通して、いつもの待ち合わせ場所で集まった所で、自分達の寮室にマリエッタを連れていく予定だった。

 

 2人の名誉の為に一応言っておくが、エロ同人にありそうな展開をするようなやましい気持ちなどは全くない。精々、ノルトが何故かちょっとだけドキドキするくらいだ。

 

 ノルトが魔法で転移しようとした時、マリエッタがそれを止めた。

 

 

「先輩方、勉強の前に……少しだけ、付き合って欲しい事があります」

 

 

 そう言われ、男二人が着いていった先は、辺りに少しビターで甘い香りが漂う調理室。そして調理室には、様々な料理に使われるアーティファクトが置いてあり、いわゆるフードプロセッサーのような物もある。調理室にはそれらとは全く違い、普段見慣れないアーティファクトがずっと稼働していたのか、ウィィーンという機械特有の音が聞こえていた。

 

 

 マリエッタがゴムベラを持ってアーティファクトの蓋を取り、本体と金属のボウルのような物を取り外し、事前に用意していたらしい、独特な形状のアーティファクトに中の物を注ぎ、冷蔵庫から取り出していたチーズを魔法で溶かしてから、アーティファクトに注いだ。

 

 

「完成~! さぁ先輩方、どうぞ召し上がれ! 疲れた時には美味しい物が一番よ!」

 

 

 そう言い2人にフォークを持たせると、フルーツやマシュマロが沢山の大皿と、野菜とお肉の入った皿を3つ用意した。ゲイル用の物は他二つの果物が入った皿に比べてとても多い。

 

 豪華なチョコレートとチーズのフォンデュに、ゲイルはとても目を輝かせていた。

 

 

「い、いいの!? こんなに果物食べても……!!」

 

「普段の感謝の気持ちだからいいんです、それに村だと消費し切れなくて無駄にするだけだもの。まだまだあるので、おかわりが欲しい時には言ってくださいね! あ、チーズフォンデュ用の実家で取れるハチミツも沢山用意しましたから、好きなだけどうぞ♡」

 

 

 マリエッタはそう言うとゲイルは大層喜び「フォークをあともう一本貸してくれないかな!?」と聞いて、ゲイル式二刀流食事法であっと言う間に皿の上を空にしていた。

 

 

「ノルト先輩もどうぞ」

 

「あぁ」

 

 

 体が魔力の補給を求めているのか、ノルトは無意識にイチゴをフォークに突き刺し、まずはチョコをたっぷりとかけてから甘い方を一口で食べる。

 

 

「……少し、苦いな」

 

「チョコレートフォンデュにするから、砂糖の量を減らして沢山チョコを食べられるようにしてみたの。それにノルト先輩は女の子からもうチョコを沢山貰ってると思いまして!」

 

 

「いや、貰ってはいない。全て突き返した(食べられそうな物はいつの間にか俺のバッグの中から消えていたが……)」

 

「えっ、そうなんですか?」

 

 

「チョコに変な物を入れてくる馬鹿が居るからな」

 

「モテるのも大変ね……私は絶対にそんな事はしないので、安心してください!」

 

 

「そうか……あぁ、俺から2人に渡す物がある」

 

「本当!?」

 

 

 口の周りをチョコで汚しているゲイルがすぐさま反応し、とても嬉しそうにしながら期待の籠った目をしていた。何故ならノルトは去年まで、2月14日が一体どういう日なのかを知らなかったからだ。

 

 ノルトはイベントやお祭り事などに興味が無かった為、意外とそういう部分で世間知らずな所があった。

 

 よく母親(♂)から毎年白い薔薇の形をしたホワイトチョコが入った翠色の箱を渡されては「ノルちゃん、ハッピーバレンタインデー♡ 今日もノルちゃんはかっこよくて可愛くて大好きよ~~♡♡ 一生愛してるわ♡♡♡」と言われ、ノルトも「当然だろう??」と、愛情を当たり前のように受け取っていたが……。

 

 気になってゲイルに教えられるまでは、それがそういうイベントだとは知らなかったのである。

 

 なので去年まではチョコを用意してはおらず、ゲイルがとても残念そうにしていた為、今年はちゃんと作っていたのである。そういう所でノルトは優しいので、もしかしたらとゲイルは期待していたのだった。

 

 

「ハッピーバレンタインデー……だったか? 去年ゲイルが欲しいと駄々を捏ねていたからな、特別に用意してやった。この俺が用意してやった事を光栄に思え」

 

 

 まぁ、ノルト本人はちょっと恥ずかしかったのでそんな言い方をしてしまったが、ゲイルは普通に喜んでいた。……だが、喜んでいる最中で気がついた。

 

 

「(あれ……? マリエッタさんのチョコも箱が翠色だ……)」

 

「あら……白い薔薇だわ」

 

 

 2人に贈られたチョコがホワイトチョコであり、チョコの形が白い薔薇である事に箱を開けた2人はとても驚いていた。

 

 

「えっと……ノルトくん、もしかしてだけど……バレンタインデーの事調べないで作ったの?」

 

「ホワイトチョコレートを白い薔薇の形に加工した物を渡す日ではないのか?」

 

 

 もう一度言おう、ノルトはこういうイベント事には全く興味が無かった為、そういう所は世間知らずなのである。そして周りが渡してくるのはどれも白いチョコレートばかり……勘違いするのも仕方の無い事である。

 

 

 

 一方、その頃のスラのすけ先生は──。

 

 

「ピキィィイイイ!!!」

 

 

 白薔薇のチョコレートを貰って、恐怖に震えていた。

 

 

 

 

 ~約20年後~

 

 

 

 

「あなた、ハッピーバレンタインデー♡ あなたを想いながらあなたの為に今年も私が愛を込めて、品種改良をしながら試行錯誤して作ったカカオからできた純度120%の愛を込めたチョコよ♡ 今年も沢山私と子供達を愛して幸せにしてね、私のノルトさん♡♡」

 

「当然だが??」

 

 

 そう言い、ノルトはスッとホワイトチョコレートの入った翠色の箱を出す。そんな夫婦の様子をハイハイができるようになっていたルトはそれを目撃してドン引きしていた。魔力の感じ取れないマリエッタには分からないが、ルトやエルマーには分かった。

 

 

 それがノルトの魔力だけで作られた、激重感情しか入っていないチョコであるということを。

 

 つまり、カカオの種から魔力でできており、品種改良も魔法、水やりも魔法で雨水を一切使っていないし、太陽の光も魔法。なんなら光合成をする時に使われる二酸化炭素も魔法で生み出されたものだし、使われた砂糖すらも自分の魔法で自作してある。

 

 普通の人間であればすぐに拒絶反応を起こして死にかけるものだが、マリエッタは知らずにノルトによって魔力の耐性を付けられている為(それもあって双子を出産した時も何の後遺症も無く産めたのだが)異常な程に魔力の込められたホワイトチョコレートは、もはやルトにとっては呪物としか思えなかった。

 

 ルトの眉間や顎に深いシワができているが、父親がヤンデレなのは血筋の影響である。将来自分もそうなる可能性を十分に秘めているのであった。

 

 

「それにしても、エマも同じ事を考えていたとはな」

 

「あなたもチョコを種の頃から作ってくれたのね! 嬉しいわ♡ 早速食べてもいい?」

 

「あぁ」

 

 

 イチャつきながらお互いにお互いのチョコを食べさせ合い、感想を言い合う。

 

 

「とっても美味しいわ♡ 味も私の好みで……って、このチョコ、テンパリングしてあるのね! とっても滑らか……♡」

 

「作るからには完璧な物を用意するに決まっているだろう? ……それよりエマ、チョコに何かしたな??」

 

 

 もはやいつもの事だが、ノルトは一応そう聞き出すと、エマはすぐに女の顔をしていた。

 

 

「カカオは精力増強の効果がほんの少しだけあるでしょう? だから、ココアバターにその効果が高くなるようにして品種改良をしてみたのよ♡

 

 今日も沢山シてください……ご主人様ぁ♡」

 

「全く、本当に仕方の無い雌豚だ♡」

 

 

 その日の夜は当然夫婦で仲良くしていた為、ルトがまた寝不足になったという。

 

 

 ~・~・~

 

 

「ノエル! 今日はぁ、バレンタインデーだろ? チョコちょーだい♡」

 

 

 両手でチョコ乞いをしているレイゼルにノエルはチラッと視線を向けて、それからお弁当に視線を戻す。

 

 

「放課後にね」

 

「やだ!! 今欲しい!!」

 

 

 レイゼルにとって、学校で好きな人からチョコを貰うというイベントは夢だったのである。なので朝からソワソワしていたのだが……お昼になっても渡される気配が無かった。

 

 

『勇者様、ささやかな物ですがこのチョコをどうぞ』

 

『いえ、私のチョコを!!』

 

『勇者様にそんな安物のチョコレートを渡す気でいらっしゃるの? 私のチョコレートがこの場にあるどんな物よりも最高級ですわ!!』

 

『ノエルぅ~、俺こんなに貰っちゃったー! ひとりじゃ食べきれないな~!』

 

 

 チラッ チラッ

 

 

『俺めっちゃモッテモテだなぁ~!』

 

 

 チラッ チラッ

 

 

『そっか、良かったね』

 

 

 こんな感じでノエルに嫉妬されたいが為にチラチラとノエルの方を見てみようとしたものの、ノエル本人は無表情で植物図鑑を見ていた。

 

 一見すると素っ気ないのだが、ほぼ24時間年中無休でずっと昔からノエルを見てきたレイゼルには分かっていた……。ノエルは今とんでもなく、嫉妬に身を焼かれているであろうという事を!! 

 

 今にもそのチョコを爆散したいと思っているであろうノエルを見て、レイゼルは凄く笑顔になった。しかし、そんな出来事があっても未だにノエルがチョコを渡す気配が無い。

 

 こうしてレイゼルはとうとうチョコ乞いをしたのである。

 

 するとノエルはバッグからチョコレートの入った箱を取り出すと、レイゼルの表情がとても明るくなった。……少しの間だけだったが。

 

 

「ヘレンちゃん、いつもありがとう」

 

「へぁ──ッ!? よ、よろしいのですか!? スゥゥゥゥッ……家宝にします」

 

 

「生チョコだからすぐ食べないと悪くなるよ!?」

 

「えっ……? ノエル、俺の分は……??」

 

 

 友チョコを家宝にしようとする王女にノエルはツッコミを入れ、一方絶望といった表情で最後の希望にすがる思いで変態という名の勇者はそう聞き出す。しかし待っていた答えは絶望であった。

 

 

「寮室にあるから今持ってない」

 

 

 ノエルがそう言うやいなや、レイゼルは駄々っ子スタイルに切り替え、泣き出す。

 

 

《勇者は泣いてしまった!》

 

 

「あ゙────!! 彼氏なのに!! 彼氏なのに!! 後回しされた!!!! ノエルは俺の事好きじゃないんだぁぁぁああ!! その内ノエルに捨てられて、ひとりで寂しく野垂れ死ぬんだぁぁあああ!!!」

 

 

 とても勇者とは思えない程の泣きっぷりである。すると呆れているノエルの後ろから、黒い猫が甘い匂いと五月蝿い声につられてやって来た。

 

 

「この勇者いつも五月蝿いな……おかげで何処にいるのかすぐに分かりやすい」

 

「あっ、ネロ。そういえばこの前に魔法教えてくれたよね、あの時のお礼」

 

 

 そう言い、ノエルは予め用意していたらしい、義理チョコをネロに渡す。

 

 

「あぁ、闇魔法についての事か。やっぱりアンタ、律儀だな」

 

「何でぞいづにもヂョゴ渡じでるんだよぉぉぉ!! 俺にはまだなのにぃぃいいい!!!」

 

 

《勇者はみっともなく泣いている!》

 

 

 ネロは早速箱を開けてチョコをモグモグし、その様子を見ていたレイゼルが更にギャン泣きした。

 

 

「ずるい!!!!」

 

「だから放課後になったらね……ちゃんと用意してあるし、そのチョコ持ち運べないし、他のより溶けやすいから冷蔵庫に入れてあるだけなの」

 

 

「……持ち運べなくて他のより溶けやすいって事は、俺のは特別仕様って事?」

 

「まぁ……一応、そういうこと」

 

 

 ノエルがそう答えると、レイゼルはさっきまでのギャン泣きが嘘泣きだったかのようにピタリと止まり「えへ、えへへぇ……♡」と、喜んでいた。

 

 

「ノエル好きぃ♡ 一生愛してるからなぁ♡♡」

 

 

「この勇者の情緒ってどうなってる訳?」

 

「ずっと幼馴染してるけど、正直私もよく分からない」

 

 

「ノエル嬢!! 僕様の愛を受け取っ」

 

 

 

 それからどこからともなく現れた蠱豚はノエルのビンタで吹き飛び、一瞬で退場。午後の授業の前、ノエルはゲイルとスラのすけに日頃の感謝のチョコを渡していた。

 

 

「ゲイル先生、いつもありがとうございます」

 

「いいの? ありがとう、ノエルさん。お返し何がいいかな」

 

 

「なんでもいいですよ?」

 

「うーん、それはそれで逆に迷うなぁ……」

 

 

「あっ、スラのすけ先生の分もありますから!」

 

「ピキ、ピキィ……」

 

 

 ゲイルはノルトに昔「俺のチョコに釣り合う物を出せ」と言われていた事を思い出しながらも、ノエルに何を渡そうか3日くらい迷う事になり、スラのすけはプルプルしながら箱を開けて、普通の茶色いチョコだった事にとても安心したのである。

 

 ……それもノルトがスラのすけ宛にチョコを魔法で贈るまでの話だが。

 

 そして授業が終わり、寮室に帰った後。レイゼルは朝の時以上にソワソワしていた。

 

 

「ノエル、チョコいつ? 今!?」

 

「食後のデザートとして出すつもり」

 

 

「マジで!? じゃあ爆速で作って食べよ!!」

 

 

 それから2人で一緒に晩御飯を作っていたのだが、いつも以上に早く作り終え、ノエルからのあーんで野菜を食べる時も、レイゼルはすぐに食べ終えた。

 

 

「……もうちょっと噛んで食べた方がいいと思うけど。体に悪いよ」

 

「俺は勇者だから平気!」

 

 

「何その屁理屈は」

 

 

 ノエルの目にはレイゼルがおやつをねだる犬に段々と見え始めていた。ブンブンとイマジナリー尻尾が高速で動いて見える。

 

 

「まだ待ってて、私が食べてるから」

 

「じゃあ待つ!」

 

 

 元気よく返事をしているレイゼルだが、じっとキラキラした視線を向けているので、急かしているようにしか見えない。

 

 

「まだ?」

 

「まだ」

 

 

 

 

「……まだ?」

 

「見て分かるでしょ、まだだってば」

 

 

 

 

「…………ノエルぅ~」

 

「執拗い」

 

「にゅー!! (少しは待ての意)」

 

 

 そんなやり取りを何度も続け、ノエルが遂にご飯を食べ終わるとレイゼルの視線が更にキラキラする。

 

 

「ノエル、チョコちょうだい!」

 

「はいはい、落ち着いて。後ろ向いて待っててね」

 

 

 落ち着きの無いレイゼルにノエルはそう言うと、食器棚にある皿と一緒にしまってあるフォークを出すと、冷蔵庫から例のものを取り出す。そこでノエルの勘が察知した。

 

 

「今振り向こうとしたでしょ」

 

「バレた~」

 

 

 そして例の物をフォークと一緒にテーブルの上に置いた。

 

 

「もう──」

 

 

 まだ言いかけている途中、一瞬で振り向くレイゼルにノエルは「そこまで楽しみだったんだ……」と思いながら、頭を横に傾けて「あれ??」という様子のレイゼルを見ていた。

 

 

「イチゴのショートケーキ……? チョコじゃない、チョコ違う……。でも匂いが何か違うよーな……」

 

 

 そう言いながらもレイゼルは小さなホールケーキを写真で撮り、流れるようにノエルと一緒に(ニョッキは見切れているものとする)自撮りをしていた。

 

 

「もう良い?」

 

「良い! 食べよ!」

 

 

 そしてワクワクしながらレイゼルは切り分けられたケーキをフォークで一口サイズに刺し、スライスされたイチゴをちょっと避けてケーキを口の中に入れると……すぐに生クリームの正体に気がついた。

 

 

「んへへぇ~~♡」

 

「何そのだらしない顔」

 

 

「俺のノエルは素直じゃなくて可愛いな~って♡」

 

「いいから早く食べる」

 

 

 今度は急かす方が逆になり、レイゼルはニヤニヤニコニコしながら、ホワイトチョコレートの味がするショートケーキを食べていた。

 

上に丸々一個乗っかっていたイチゴや、中にスライスされていたイチゴはノエルにあーんで食べさせてもらい、レイゼルはとても満足しながら……夜にはお返しのホワイトチョコレート(意味深)をプレゼントしていたのだった。

 

 






【挿絵表示】
 卒業作品3P 20240219


【挿絵表示】
 卒業作品4P(R18仕様) 20240226


【挿絵表示】
 卒業作品5P 20240227

勘違いしないでよねッ! もちろん提出するのは健全な(という名のR15)方なんだからッ!! こっち出さないから!! 学校に出張編集者さん来る時は間違えてこっち渡さんようにしなきゃ……。



おまけ


「ピキ、ピキィ……(あ、開けたくないのねん……怖いのねん……)」


スラのすけはプルプルしながら、ノエルに貰った箱を見つめ、冷や汗をかいていた。そして恐る恐る箱を開け……盛大に安堵のため息をついた。


「ピキ……ピキピキー(よかったのねん……普通のチョコなのねん)」


そう安堵しているつかの間、とても身に覚えのある、感じたら身の毛(毛は無いのだが)がよだつかのような恐怖(魔力)を感じていた。


その箱は翠色であり、箱は中に入っているものが見えるようになっていた。

その中に入っているのは……一枚一枚、とても精巧に作られた白い薔薇の形をしたホワイトチョコレートであった。


「ぴぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁああッ!!!!」


スラのすけはまるで背後にきゅうりを置かれた猫かのように飛び上がり、それからグスングスンと泣いていたのであった。結局そのチョコは美味しく頂いたのだが……ゴブレスが作った物と同じくらい、とても美味しいチョコであった。

しかしそれで終わりという訳ではなく、その箱にはなんと手紙が入っていたのである。

スラのすけにはその手紙が呪いの手紙にしか見えなかったが……読まなかったら読まなかったで後が怖い為、恐る恐る読んだ。


〘梅のつぼみが春を知らせる季節となりました。いつも娘がお世話になっております、スラのすけ先生は私が卒業した日からお変わりございませんでしょうか。

 日々生徒へのご指導に励んでおられると存じます。まさに教師の鏡でございますね。私の娘は私と似ていて、大変伸びしろがありますので、先生のご指導が非常に意義深いものとなっていることでしょう。娘へのご指導に熱心に取り組まれていることと思います。

 本日はバレンタインデーという機会でもあり、普段から娘がお世話になっていることへの感謝の気持ちを込めまして、カカオを育てるところから手作りしたこのホワイトチョコレートをお贈りいたしました。

 何かお返しをする必要はございません。お時間がございましたら、感想をお聞かせいただければ幸いです。

 ノルト・ヴェリカ〙


「ピ、ピキ、ピキィィィイイイッ!!」


やけに改まった書き方を魔物語で書いてあり、スラのすけは真っ白になってしまいそうになりながら、手紙の封筒にもう一枚入っている事に気がついた。


〘追伸 なお、感想に関しましては対面でのみ承りますので、慎重にお願い申し上げます。その後、手紙を読み終えられた際には、自動的にそちらへお伺いできるよう、手紙に魔法陣の回路を組んでおりますので、その際にお会いいたします〙


スラのすけはホワイトチョコレートのように、真っ白になった。
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