チュートリアル用のチョロイン幼馴染に転生してしまった 作:水性さん
なんか、お久しぶりな感じがするな……え、そうでもない?最近、ジャレッドくんの立ち絵描いてたし、疲れてたし、今回かなり文字数多めに書いちゃったからかな? 完成したらこの回のあとがきに乗っけておくよ。
そんで、描いてたら最高に良いショタができた。髪型のいい案をくれたリア友、ありがとう。めっちゃ気にいってるよ。案くれた本人もこの小説見てるから、ここに感謝を書き残しておくぜ。
追記 完成したぜ
追追記 やっべ、ジャレッドくんに指輪着けるの忘れてた。
「(拝啓、レイゼル様とノエル様。私は今──)」
「お゙ぉっ♡ んほぉ゙ぉぉっ♡♡」
カリカリカリ……
「お゙ほぉ♡ ご主人様ぁっ♡♡ いきゅっ♡ イキましゅぅぅうううっ♡♡♡」
ガリ、バキッ
「……」
最低過ぎる城に強制帰還することになってしまった哀れな
「(…………地獄に居るの)」
冬休みに入り、精神安定剤にも等しい、推しCPのイチャイチャという名の供給が減った王女は、今にも倒れて死にそうになっていた。王女に有るまじき白目状態のヘレンにとって供給無し・需要超高騰は枯渇問題である。明後日は新年だというのに、クソみたいな12月30日だ。
そんな中、手紙の配達屋さんがやって来た。
「あら……」
それは豪風が吹き荒れるかのような音と共に、美しい白の鱗を持つ竜が城にやって来た。その竜は隣国からの使いであり、現時点で世界に知られている白い竜はこのたった一体しか存在しない。
(過去に他国の王族達が魔法石と白竜を欲しがり、強行手段で大勢の兵を送ってきた事もあったが、魔力の豊富な土地であるヒエリカの海は荒れやすく、竜巻もよく発生する為……。神風ならぬ魔の風によって万を超える兵士達は吹き飛び、クラーケンという魔獣の餌となった)
「クルル……」
「相変わらず綺麗……」
見る者全てを魅了させるほどに美しく、火を吹けば一瞬で辺りを焦土と化し、鉄を一瞬にして溶かしてしまう。それほどのポテンシャルを持った兵器にもなりそうなドラゴンだというのに、ビビりで戦闘面では全く役に立たないというのだから驚きだ。まぁそのおかげで無事に手紙や荷物などを運ぶ事ができるのだろうが。
「(今日もお父様(笑)に手紙を届けに来たのね……)」
窓越しから見えたドラゴンを見てそんなふうに思い、ヘレンは「あんなのの為にわざわざ飛ぶ羽目になるなんて……」と憂い、新しいGペンの先に交換する。
すると外から「クルル、キュアー」という、何かを呼ぶような声と、コンコン、という窓を叩く音がした。そういえば、普段と着地地点が違ったような? そう思いヘレンはもう一度外を見てみると、白竜がヘレンを見ながら手紙を受け取ってくれるのを待っていた。
「あら……わ、私?」
美男美女集団の皇族から初めて手紙を貰える事にドキドキしながらも、何故手紙を送られたのかは全く検討もつかなかったので、不思議に思いながらクルミから手紙……というよりはがきを受け取った。
するとそこに書かれていたのは──。
「えっ、私が推しの実家に……!?」
『ヘレンちゃんへ。
もしよかったら、私の実家で一緒に新年を迎えませんか。私に初めてお友達ができたことを、実家に帰った時にお父さんとお母さんに話したら一度会ってみたいと言っていました。なので、是非来てくれると嬉しいです』
「しかも推しをこの世に誕生させてくださったお父様とお母様に謁見……!???」
《王女ヘレンはすぐに出かける準備をした》
とってもウッキウキでヘレンは漫画の原稿用紙とインクとペンと定規とテンプレートとトーン、その他もろもろのアナログ漫画用画材と推しの前に着ていくに相応しい服、トラベル用品にそれから手土産も用意する事にした。それはもう、本当に楽しみ過ぎて、何故皇族の白竜がノエルからの手紙を運んできたのかと思う余裕も無い程に。
「やっぱりこっち、それともこの服? セバスチャン、貴方はどちらの服がいいかしら!」
そう聞くのは母の執事であり、自分の実の父親である方のセバスチャンだ。そのセバスチャンはとても微笑ましそうにヘレンを見て「どのお召し物もよくお似合いですよ」と当たり障りのない事を言っていた。
「そういう回答が1番困るのよ」
ヘレンがじとっとした目を向けていると、突然ドアが開けられた。開けられたドアの所に居る人物に目を向けると、そこにはヘレンが最も苦手としている姉……そして首輪と鎖に繋がれた奴隷が居た。その奴隷は姉の性の捌け口として使われているいわばお気に入りであり、その姿はとても痛々しい。全身が鞭で打たれており、青紫に腫れていた。
「エリザベスお姉様、姉妹との間でも守るべきマナーがあるのでは?」
「あらごめんなさい、つい。それより皇族からの手紙を受け取ったでしょう? ヘレンのご友人からのお便りかしら?」
エリザベスの「それより」発言にヘレンは心の中でカチンと来たが、普段からエリザベスはこんな感じなので、怒るだけ無駄だ。昔から何度言っても治らない──いや、治す気が元から無いのだろう。ならばこちらも礼儀正しくしてやる必要も無い。
「お姉様には関係の無い事です」
「そう」
するとエリザベスはにこりと笑って奴隷に鞭を打つ。男の絶叫が上がり、思わずヘレンはエリザベスから目を逸らす。
「ここは私の部屋ですので、そういった嗜好はお姉様のお部屋でお願いします。セバスチャン、お姉様をお連れして」
「はい」
娘の言われた通りにセバスチャンはエリザベスを連れて部屋に帰らせようとすると、エリザベスはセバスチャンにムチを振るう。風を切る音と革が打ち付けられる音が部屋の中に響き渡り、悲鳴を上げずに痛みに耐えるような声がセバスチャンの口から漏れ出た。
「ぐっ……!!」
「おと──セバスチャンっ!! お姉様、お母様の執事に何をするのです!!」
「私様はウィリアム王の娘であり、
そしてエリザベスはブツブツと何かを言っては、突然大きな声を出し始めるのだった。
「なのにどうして私様じゃなくあの女を……いや、いやっ……いやぁぁッ!! あんな女、あの人には釣り合わない!! あの人は完璧で、誰よりも優れていて──」
「(いつものヒステリーね……やるなら自分の部屋で発狂して欲しいわ、本当に)」
こうなってしまえばこちらの声はもうエリザベスには聞こえない。きっと聞こえるのだとしたら、エリザベスの言う
それから自分の部屋なのに長居が出来ない原因がヒスっている為、さっさと部屋から出る為にヘレンは服を決めたのだった。先程まであんなに悩んでいたのに、すぐに決まってしまったのだから不思議なものである。
~・~・~・~
「いらっしゃい、ヘレンちゃんっ! 待ってたよ!」
「にゅーっ!」
「マ゚ッ……」
天使はここに居た。私は今、そう断言出来る。
その天使はクソダサTシャツ(何故かりんごの絵とばななとクッソ汚い字でプリントされている)を着てニョッキを抱えていたけれど、それも可愛いポイント。天使は何を着ても可愛いのよ。たとえクソダサでも。
なんて可愛らしい笑顔……ここが
私はそんな風に思っていると、甘い匂いが微かにしてくる玄関のドアを開けようとして何も掴めなかった手をノエル様に取られる。
おっ、おおおお推しの手が!! 私の手に!!! 思わず重い荷物を話してしまったわ!!! その中にはあげる予定のつまらない物が入っているのに!!
「ヘレン、いらっしゃい! 存分にゆっくりしていってくれよな~!」
「ミ゚ッ……」
久しぶりのレイゼル様きちゃぁぁああああ!! レイゼル様前に会った時より身長伸びました!? 50cmくらい!!
《王女ヘレンは混乱している》
とにかく今日も顔が良い~~!!!!
「レイゼルは居候してるだけでしょ」
「えー、でも王様の命令でここに居るんだし、いいじゃんかぁ~」
今日も相変わらず仲が良さそうでおばさん、とても嬉しいです。精神年齢入れたらアラフォーの女より。
「それより、そろそろ入ってもらわないと! 外寒いでしょ? ほらヘレンちゃん、入って入って!」
ノエル様はそう言い、私の手を掴んだまま家の中まで引っ張ると、レイゼル様は私が落とした荷物を持って中へ運んでくださる。あ~~、そういう女性には優しい部分が好きぃ!! もちろん異性としての意味じゃなく!! 推しとして好きぃ!!!
私は鼻血を吹きそうになりながら、王女としてそんな失態を犯さないように何とか冷静になっていた。……さて、ノエル様のお父様とお母様のご尊顔を拝ませてもらうわ!! いつでも来い!!
「お父さん、ヘレンちゃん来たよー!」
ノエル様は元気にリビングであろう部屋のドアを開けてそう言うと、私の手を引っ張って中に入る。そこに居たのは──。
「そんな大きな声を出さずとも、魔力で分かる」
「……あっ、あーーーーッ!!?」
時々私の護衛をしてくれる
「あ、貴方がノエル様のお父様だったのですか!??」
「……殿下のお転婆には困り物ですね、まさか私の娘と交友関係を築き、私共のような下自民ごときの家にまで上がるとは思いませんでした」
相変わらずの態度と「相変わらず無茶をするガキだな」と言わんばかりの目……ありがとうございます、イケメンからのそういう目はご褒美です。
「あれ、ヘレンちゃんとお父さんって知り合いだったんだね」
「はい、私が4歳の時に初めてお会いしました」
「(まぁヘレンは面食いだから何となく会ってそうだとは思ってたけどさ……)」
あぁ、懐かしい……初めてノルト様に会った時の事、今でもはっきりと私は覚えているわよ。年相応に振る舞って、地獄から少しの間抜け出す為に駄々をこねてこねて、こねまくった時ね。
「あれは確か、こちらの殿下が1人だけ護衛を付けて城の外に出たいと仰った結果、30人の護衛達が俺に仕事を押し付けてきた時の事だ」
「そ、そうなんだ……」
ノルト様、本性が出てくるのが早過ぎるわ。ノエル様に言っているからって、
「今は仕事中ではございませんし、普段通りの言葉遣いで結構ですよ」
「あぁ、分かった」
相変わらず切り替えが早いわね、ノルト様……。
私がそんな風に思っていると、外からでも匂っていた甘いお菓子の香りが強くなり、一人の女性がマドレーヌやフィナンシェ、カップケーキをキッチンワゴンの上に乗せて運んでくる。
「うふふ、いらっしゃいませ♡ いつもノエルと仲良くしてくださって、ありがとうございます」
「ム゚ッ」
顔良ッ……しかも甘ロリの萌え袖三つ編み丸眼鏡巨乳ッ!! なんて属性の塊なのッ!!! 属性の渋滞を起こしてるわ!! ありがとうございます!!!!
「もしよろしければ、私の作ったお菓子を召し上がってください。私からのほんの気持ちです」
「((い、頂いていいの!? タダで? タダで!?? タダでは貢げないではありませんか!!
……とか、思ってそうだなぁ)」
するとノエル様はマドレーヌを持って私に差し出してきた。……こ、これはっ!! まさかっ!!!
「お母さんのお菓子、世界で一番目くらいに美味しいんだよ! だから、あーん」
推しからのあーん!??? これは絶対に私に食べさせようという意志を感じるわッ!! でもノエル様、無課金で貴女からのあーんを食べるのはオタクとしてそんな許されない事──。
「……食べてくれないの?」
「ありがとうございますッ!! 頂きますッ!!!!」
「なぁなぁノエル、俺にもあーんやって』
~・~・~・~
『わたくしはしろのそとにでるのです!!!』
ヘレンが4歳の頃、あの父親の振る舞いに耐えきれなくなり、城の中に居ることや、自分にそんな父親の血が流れている事がおぞましく感じて。そしていつか来るであろう、最悪を想像してしまって……怖くなって外に出ようと駄々をこねた時があった。少しでも自分が王女であることを忘れる為に。
『で、ですがヘレン様、王女である貴女様が護衛を30人付けずにたったの1人だけの護衛で城外を出歩くというのはあまりにも危険すぎます!』
『30にんもいたらめだつのでゼッタイにわたくしはイヤです!!!』
当然城の兵士達は困り果てた。王女の護衛など、責任重大。それに万が一粗相でもしたら己の首が物理的に取れかねない上、何かあっても当然首と体がさよならグッバイする事間違い無し。その上一人で護衛しろとの無茶ぶりだ。
一体どうすればいいものか。兵士達は困り果てた。
そんな時、一人の兵士がアイツに任せとけばいいのでは? と、周りに言えば、全員が納得した。そのアイツというのがもちろんノルトだ。ノルトには同じ年齢の娘が居るし、何より優秀で顔が良い。フェリラの王族は総じて面食いなので、ノルトに金と仕事と全ての責任を投げたのであった。
『本日のみ殿下の護衛を務めさせて頂く、ノルト・ヴェリカと申します。この身に変えても、王女をお守りする事を誓いましょう』
『ピッ……(なんなの、この顔面兵器男はぁ!!! ありがとうございます!! ありがとうございます!!!!)』
ヘレンは会った瞬間にノルトを推しにした。まぁいつもの事だが。
そしてノルトは何故俺が子供の面倒を押し付けられなければいけないのかと、心の中で不満を募らせていた。ノルトは別に子供が好きという訳では無い。嫌いでもないが。
大好きな家族と愛する妻の子が好きなのだ。要するに、うちの子可愛い、うちの子しか勝たん、というわけである。まぁ、この頃はまだノエルが心を開いていない保護猫状態であった為、ノルトはこう見えて実はメンブレしていて既に体調があまりよろしくは無い。
基本的に皇族は病気にかかったり、体調を悪くする事は無いのだが、身内関係で何かあるとすぐにメンブレして免疫力をバチくそに落とし、風邪になったりする。愛が重いが故なのだが。
『殿下、本日はどちらへ行かれるのでしょうか?』
『しろのなかではない、どこかです』
だから一体
『では馬車の手配を致します』
『ばしゃはけっこうです、あのあかときんいろのばしゃにはのりたくありません、いろがイヤです』
が、ヘレンはお忍びで城の外に出たかった。でなければ、国民達から望まれずに産まれた哀れな王女として見られるからだ。
『となると、徒歩での移動手段になりますが、それでもよろしいでしょうか』
『はい、はやくいきましょう(お、推しとのデート!! 今日は絶対に楽しんでやるわっ!!)』
『ですがその前に……少しの間だけ、こちらのマントを羽織っていてください。外出時に危険を回避する為の物です』
『(黒いマント……? あっ、私のドレスを隠す為ね……。1番地味な物でも、普通に貴族と思われるようなものだし、そんな格好をしてたらバレバレだわ。攫ってくださいって言ってるようなものね)』
なのでまず最初にノルトとヘレンが向かったのは城下町にある商店地区。そこでは庶民達の売り買いしている物がズラリと並んでいる。その中でノルトはヘレンを連れて、服屋へと向かった。
『あら、ドSの色男さんこんにちは、またウチに来てくれたのね♡ それで、その子が前から言っていた貴方の娘さんかしら?』
『いや、
『(推しが息を吐くように嘘を言ってるわ……。それにしても、素ってそんな感じなのね。非常に……良いわね、凄く良いわ)』
2人がやって来たのは、マリエッタお気に入りのロリータブランドの店だ。そして店員が言っていたように、これが初めての来店ではなく時間がある時に少しの間だけ普段から来ている。
一体何故か? それはロリータ服の中でもカジュアルな子供向けの服が売っているエリアで、その服を着ているノエルを想像する為である。ヒエリカなら全く問題ないが、住んでいる国は
オマケに国の王はとんでもねぇ性癖の持ち主であるクソッタレである。無理やり嫌がる幼い少女達に豊乳させて、一生大人に心と体が成長や抵抗もできず、愛玩道具として生を終える奴隷にしている。
そんな国で可愛い服を着せようものなら、一瞬でノエルがロリコン共の餌食になるのである。
なのでパパはこの店に来ては、服を着た娘の想像をしては我慢しているのであった。普通なら大体は見てるだけのノルトは店側にとっては冷やかしでしかないが、ノルトは神ですら心酔させ、学生時代では数多くの豚を大量発生させていた豚製造機(中には同性も居た)なのだ。
ちょっと憂い気なイケメンが時々ため息をついては、何かに想いを馳せて子供用の可愛い服を眺めているワケで、状況はよく分からないが目の保養、又はワンチャンスを狙ってノルト目当てで店で来る客が増えたのだ。売上に影響を出す、良い客寄せをする
ノルトはヘレンを更衣室へ入れると、すぐに子供用の服を手に取って、更衣室の中に入っているヘレンに渡して着させた。来た後、更衣室から出てみると、ロリータ服を来たちょっといい所のお嬢様風のヘレンを見てノルトは「流石俺だな」と、自分の服のセンスを自画自賛していた。
『あらあらまぁまぁ! すーっごく可愛いじゃな~い♡ きっと貴女のパパも喜んでくれるわ!』
『そ、そうですね……』
そう言われたヘレンはつい苦笑いをしてしまうが、とりあえず今は推しから服をプレゼントされた事に喜ぶ事にした。
(ちなみにプレゼントには物によって意味があり、服だと贈った相手にその服を着て欲しい、そして服を脱がしたいという意味がある。もちろんノルトにはそんな意図など全く無く、意味も全く知らなかった)
ノルトが素早く服の会計を済ませた後、ヘレンを連れて店内から出ると、ヘレンに用意しておいたポシェットを持たせた。
『ここに庶民の子供が親から与えられるお小遣い程度のお金を入れておきました、もし欲しいものがあればそちらでご購入ください』
『あ、ありがとうございます!』
『それから……ここからは貴女の安全を守る為に身分を隠す為、私は貴女が城内へ戻るまで知り合いの娘の面倒を見ている保護者、つまりプライベートでの言葉遣いで接します。どうかご無礼を先にお詫び申し上げます』
『いえ、きになさらないでください。いわれずとも、わたしもそういうつもりでしたので』
『貴女の寛大な御心に感謝を』
ノルトはそう言うと、ヘレンの手を繋いだ。
『ヒュッ……』
『ヘレン、今日はお前の行きたい場所に連れて行ってやろう。あの男の愚痴もこの俺が付き合ってやる』
それから本当にヘレンはノルトと色んな場所を回った。美味しそうな食べ物が売ってある店や、城下町で流行している物をジャンル問わずに見て回った。
食べ物は買い食いして、ひたすらに城下町でエンジョイした。昼食も庶民が経営する食堂でとることとなり、ノルトがメニュー表を取ってヘレンに渡す。
『好きな物を選べ、この店は元々この国のシェフだった男が経営している、庶民の財布に優しい食堂だ。柔らかく焼いた食パンの中身を丸ごとくり抜き、その中に牛スジが柔らかくなるまで煮込んだビーフシチューを入れて、パンと一緒に食べる看板メニューが俺のオススメだな。見た目のインパクトとボリュームが良い上、手頃な料金で食べられる』
『で、ではそれがいいです! あっ、でもぜんぶは……』
『食べきれない分は俺が食べてやる』
『(つまり間接キス……?!)』
それからヘレンはノルトと一緒に看板メニューの丸ごと食パンビーフシチュー詰めを美味しいわねこれと食べ、食べきれない分はノルトに食べてもらった。だがそれとは別に普通に自分の分を食べていたのだから、ノルトはゲイル程では無いものの、よく食べる。ヘレンが食べきれなかったビーフシチュー、そしてロールパンとブラックコーヒーを追加で頼んで完璧に食事マナーを守ってお上品に食べていた。
一口サイズにちぎって食べているところを見て、ヘレンはふと思う。
『ノルトさん、そだちがいいのですね(私の残り物を食べるのは別として……)』
『……親の躾がいいからな』
『きぞくのかたですか?』
『お前はそう見えるのか』
ヘレンは騎士の出自の人間かと踏んだが、答えはNOらしい。考えてみれば確かに、貴族の人間が明らかに庶民が通うような場所で、しかもメニューをオススメする程の常連だ。それにしては育ちも雰囲気や態度も、上流階級の人間のそれだったが。
『それより、何故あそこから出たいと言い出したんだ? 城の外にでも出てみたかったのか』
『はい、しろのなかはとてもきゅうくつで』
本当は父親とその穴兄弟ならぬ、大乱交竿姉妹ガールズの声を聞いていたくなかっただけなのだが。なので、よくある城の外に憧れたお姫様をヘレンは演出した。
『……嘘をつくなら、もっと上手く表情を作る事だな。嫌悪感が隠しきれていないぞ』
『えっ』
しかしノルトは洞察力が常人よりも高く、その能力は戦闘面でその真価を発揮させている。王女としてもう既に教育を受け始め、王女らしく笑顔を絶やさず綺麗な微笑みを作る練習をしている程度では、ノルトを欺くことはできない。ましてや、たった数時間とはいえ、一緒に居たのだ。それくらいの時間があれば、ヘレンの癖や思考など大体は分かる。
『アレと同じ場所に居たくなかったんだろう? そして自分が色々な意味でその娘である事が嫌になった、奴隷達を見ていたくなかった……というところか。精神年齢が歳不相応であるが故の悩みだな』
『……』
『だが、その程度の悩みは努力と時間があればどうとでもなるだろう』
『そのていど、ですか……かなりおおきななやみだとおもいますが』
ノルトは当然気づいていた。ヘレンから感じる魔力は、あの王ともエリザベスとも全く違うものであると。そして、ヘレンの精神も当然あの王族と全く違うという事も。
『俺は時々、一般人を巻き込んで国の未来の為だと豪語し、ただの復讐に人殺しを正当化する社会のゴミを掃除しているが……。世界的に見ると、フェリラはその手の
その気になれば、もっと大きなテロを起こす事で国を大混乱に陥らせるだろう。そして武力で思う通りにいくと踏み、いつかまた襲撃した後はアレと、その血の繋がった王族の首を一人残らず落とし、奴隷達を解放してな。もはやテロと言うよりもクーデターだ。とはいえ、アレはアレで意外と有能だ。ただのテロ犯のボスごときがトップに昇格した所で、結局は権力に溺れる可能性が高いだろう。よくある話だ』
『……』
まさにヘレンが想像して、怖くなった最悪の状況がそれだった。いつか、あの王のせいで自分は何もしていないというのに、無意味に殺される時が来るのではないか。見世物にされ、沢山の人々から死を望む声を浴びせられる。
ヘレンはそれが恐ろしくて仕方なかった。
『聖力は人間の三大欲求を満たす事で使える、奇跡の力であり、生命エネルギーそのものだ。常に盛ったアレは当然、病気などにはかからずにしぶとく寿命が来るまで生きているだろうな。もう既に薄いが神の血を先祖返りで多少強く引き、その能力を多少得て産まれたアレなら尚更だ。
それにここはフェリラ……お国柄で魔法より聖力を使う者が多く、400年前まで様々な国に戦争をしかけ、植民地化させていった。今でも対人用兵器の開発も盛んな国であり、実際に体が動けるかは別として一応護身程度の戦闘知識があるアレは多少戦う事もできるだろう。
例えゴミが計画に失敗し、生き延びた所で次の後継者であるお前の兄がアレに成り代わるだけだ。待つだけでは無意味、お前は一生地獄のような家に囚われる。何処かに嫁いだとして、その扱いは口が裂けてもいい物とは言えないだろう。そしてどこに行ったとしても、アレの娘であることが付きまとう』
『っ……』
ノルトはブラックコーヒーを飲み干し、ヘレンは俯いていた。あまりよくない空気が流れる中、ノルトが突然手を上げる。
『……すみません』
そしていつの間にかパンとビーフシチューを食べ終えたノルトが手を上げて店員を呼び止めた。
『メガ盛り☆クリームマシマシバニラアイストッピングキャラメルソースがけパフェを一つ』
『はいよ!』
『(待って、急にシリアスが崩壊したわ。というかまだ食べるし、ノルトさん甘い物好きなのね……意外だわ。ブラックコーヒー頼んでいたから、てっきり甘い物は苦手かと……良いわね)』
すっかりシリアスがパフェの底にあるシリアルに変化すると、少しして漫画とかアニメに出てくる程の大きな器に入ったパフェが運ばれてくる。
『メガ盛り☆クリームマシマシバニラアイストッピングキャラメルソースがけパフェお待ち!』
『ありがとうございます』
店員に感謝の言葉を伝えた後、ノルトはスプーンを手に取ると、クリームをすくって口に運ぶ。
『だが、その問題を解決する方法は至ってシンプルだ。汚らわしいアレの尻を椅子から引きずり下ろし、その椅子にお前が座ればいい』
『…………わ、わたくしが、ですか!?』
まだまだ外れやすい笑顔の仮面を落としてヘレンはノルトに聞くと、ノルトはアイスを今度は口に運ぶ。
『……あぁ、シンプルだろう? それにお前はアレらの中でも全く問題行動を起こさず、変な噂も立てていない。そしてお前はアレの被害者という立場になれる、上手くやれば強い同情心と仲間意識を芽生えさせる事だろうな』
ヘレンにとってノルトの言葉は青天の霹靂かのような発言だった。自分が女王になるなどと、今までのヘレンなら思いつきもしなかった事だからだ。
いきなり異世界に転生する事になったかと思えば、あの最悪でクソのような父親のあれそれを食事中でも見せつけられる事になる人生をこの4年間送る事になり、しかもあの父親は小物みたいな言動と、なりをしている癖に自分にとって利益にならない相手は容赦なく切り捨てる冷血さと、発言に嘘が混じっているかが分かってしまう固有スキルがある。
まぁつまり、ヘレンに勇気が無かったのと、父親が怖くて思いつきもしなかったのだが。
そしてこんな発言をしているノルトだが、ただのアドバイスとして言っている訳ではなく、普通に打算などもあった。女王になってくれた方が、ノエリアや互いの国の為にとっても良いものになりそうだと思ったからだ。
『だが他にいい方法があるのか? ただ見ているだけでも俺は別に構わないが……。もしお前がその座に座りたいというのなら、俺はその座に着く為の手伝いと、上に立つ者としての心構えを教えてやる事ができる』
ノルトはこれでもヒエリカの元皇太子。国の政治には直接関わらないものの、皇帝には臣下である王族の政治を監督する仕事もある。なので政治についての知識も多かった。
『全てはお前の努力次第だな』
『……ほんとうに、あなたはナニモノなんですか?』
このような発言は、王に対する反逆だ。誰が聞いているかも分からない、人が多い中でそんな事を言ったのだから、相当な度胸がある。やはりただの凡人には見えなかった。ヘレンはノルトの正体を探るような目で見ながら聞くと、ノルトはパフェをまた一口食べ、それから窓の外に視線を向けてから答えた。
『俺はただの隣人だ』
『(……隣人、というのはなんの事かしら……? やっぱり貴族の人?? 城の隣に貴族の屋敷なんてあったかしら……それよりもヴェリカ家なんて聞いた事ないわ、まぁ他の家も見たり聞いたりした事ないけれど……)』
だがヘレンはノエルとは違い、非常に残念なことに恋愛以外では勘がとても悪い女だった。
『それで悩みを解決する方法は見つかった訳だが……お前はデザートを食べなくていいのか?』
『たべます!! デザートはベツバラなので!』
『そうか、なら食べながら今度は俺の悩みでも聞いているといい』
『あなたにもなやみはあるんですね』
『人間誰しも悩みのひとつくらいはある』
それからノルトはヘレンに愛する娘が何故か自分を避ける上に何故か怖がるので、どう接したらいいのか分からない。もっと娘に愛情表現がしたいと言い、ヘレンは『親子関係、そっちもあまり良くないのね……』と、思うのだった。
『いちどかいわか、おやこのじかんをふやしてみてはいかがでしょう?』
『それはもう既にやっている。それでも上手くいかないんだ、もし親子関係が破綻でもしたら、俺は病気にでもなって死ぬかもしれないな』
『そ、そうですか……でしたらなにかのキッカケで、かいけつできるかもしれませんよ』
『そういうものだろうか』
『そういうものです、あせらないことがイチバンのちかみちではないでしょうか』
『……そうだな』
そしてヘレンがデザートを食べ終わるタイミングでノルトもパフェを食べ終わり、会計を済ませた後で店の外に出る。その時、ノルトは少し周りを見てヘレンの手を繋いだ。そして推しから手を繋がれたヘレンの心の中は、とても愉快なパレード状態である。
『さて、次は何処に行きたいんだ?』
『そうですね、つぎはカワイイざっかてんがいいです!』
『……ならいい場所と近道を知っている。その近道は狭い路地裏なんだが……人目につかないが故に捨てられているゴミが多い。汚いから目を閉じておくといい』
『はい! ……ですがめをとじないといけないほど、そんなにおおいのですか?』
『あぁ、耳を塞ぐ事も忘れないようにな』
『……はなではなく?』
『大丈夫だ、臭うよりも前にすぐ俺が片付ける』
ノルトはそう言うとヘレンの目を手で覆う。そして潜んでいるクーデター犯に拘束魔法を行使した。
『スカフ』
『ぐっ!?』
『何故だっ!! 気配遮断のスキルを持った俺達が何故ッ!!』
鎖状の魔法をクーデター犯の足元から出すと、そのまま手足を縛り上げて亀甲縛りにもしておいた。随分と屈辱的な縛り方をされてしまった誘拐犯達は『ク、クソッ!! 離せ!!』と騒ぎ立てたが、言った瞬間に檻の中へノルトが
『(魔力をあそこまで出し、波長を乱れさせていては、見つけて欲しいと言っているようなものだ)』
魔力には波長と性質がある。波長は魔力の流れ、動きの事であり、性質は魔力が持っている属性の型や、生き物が持っているDNAのようなもの。例えばノエルとマリエッタの持つ魔力の性質は草魔法で、ノルトの魔力の性質は雷、といった具合だ。
そして魔力の波長は心理状態などに大きく変化するもので、平常心の時が一番乱れる事は無い。だが今回のようにヘレンを狙って来た輩は少々、緊張し過ぎていた。
魔者と魔人族、皇族、そして神でなければ感知する事ができない魔力をダダ漏れにして、集中して攫うタイミングを見ていた輩は無意識にヘレンとノルトの方に大きく乱れた魔力を流してしまっていた。
『(あんなゴミ共よりノエルの方がずっと隠れるのが上手い……流石俺の娘だな)』
心の中でノルトはうちの子の方が凄いと思いながら耳を塞いで歩くヘレンを連れて、他にも潜んでいるゴミを処理しながら路地を通った。人通りが多い場所に出た時にノルトはヘレンの手を握り、目や耳を解放させる。
『ろじをぬけたようですね、どちらにおみせはあるのですか?』
『こっちだ』
そう言うとノルトはヘレンの足に合わせて歩いて、妻お気に入りの雑貨店へ向かうのだった。
~・~・~・~
「ルト、エルマー、今日は私の学校の友達が遊びに来てくれたんだ」
「うあーーっ! あおあいー!!」
「メ゚ッ……」
エルマー、今なんとなくだけど……ヘレンちゃんを見て顔が良いって言った? 言ってなかった?? うん、分かるよ。ヘレンちゃん顔がいいよね。ルトは無反応でおしゃぶりチュパチュパしてるだけだけど。
私はヘレンちゃんの方を見てみると、ヘレンちゃんは……なんか、表情がデレッデレになりそうなのを必死に我慢しているような顔をしていた。
「とても……可愛いらしいですね」
「(ヘレンちゃん、お父さんとお母さんの前だから「あーーーーッ!! 推しの妹様と弟様が私の目の前にッ!! つまらぬものですがこれを受け取ってくださいッ!!!!」って言いながらお金を渡すのを我慢してるな……)」
「……ヘレンどーかした? なんか、推しが尊いとかいつもの限界オタクが消え──」
「ふんッ!!」
《ノエルは
「あふんッ♡」
「あふん言うな」
《
全く、この変態は……。それにしても今日は遅いな、お仕事が長引いてるのかな……。
「お父さん、そういえば今日おばあちゃん達来るの遅いけど、いつ来るの?」
「今日は来ない」
「えっ、来ないの?」
「あぁ、
毎年いつもお年玉渡しに大晦日の日は絶対に会いに来るのに……珍しいな、どうしたんだろう?
「……電話かけたら繋がるかな」
「あぁ、きっと……いや、確実に喜ぶ」
お父さんが言うなら絶対そうだ、それに喜ぶって私の勘が言っているし。おばあちゃんにヘレンちゃんの事を紹介したいし、かけちゃおう。
そう思いながら私はつい最近ID交換して手に入れたおばあちゃんの連絡先から通話をかける。
「あのね、本当はヘレンちゃんにおばあちゃんも紹介したかったけど、今日は忙しいみたいだから出てくれたら通話で紹介するね」
「いえ、そんな……ありがとうございます、ノエル様(ありがとうございますッ!!)」
(ピロンピロンピロン)
(ポロン!)
……おばあちゃん、ワンコールで出たな。
「もしもし、おばあちゃん?」
そう言ってスピーカーモードにしてみると、数秒経ってからおばあちゃんのクソデカボイスが聞こえてきた。
〘……きゃーーーーっ!! つい反射的に出ちゃったけど、初めてエルきゅんからお電話くれたわっ!! ちょっとみんな!! エルきゅんからお電話!! あたしに!!!!〙
「少し、個性的な方なのですね……? (それに声が低いような……)」
「まぁ、うん。すご~くね、でも凄く優しくていいおばあちゃんだよ」
〘みんな聞いた!? 今エルきゅんあたしのこといいおばあちゃんって言ったわよ!! 聞いたわよね!? あと優しいって!! もうやだ、エルきゅんったら! もっと! もっと言って頂戴!!〙
「ノエル、構って」
「にゅ!!!」
ヘレンちゃんもおばあちゃんのタイプが予想外だったのか、笑顔の仮面をもう1枚被って「ちょっと思っていたのと違うお方だったけれど、推しの家族の仲が良好で良かったわ!」って、思っているような気がする。
それよりレイゼル、空気読め。それとありがとうニョッキ、変態を引き剥がしてくれて。
〘それで、エルきゅんもしかして……隣にお友達が居るのかしら? 〙
「そうだよ」
〘あらやだ、ちょっと恥ずかしいわ……。初めまして、いつもエルきゅんと仲良くしてくれてありがとう〙
「いえいえお祖母様、私の方がいつもノエル様に仲良くしてくださっているのですよ。大変良いお孫様でいらっしゃいますね」
〘そうでしょう? うちのエルきゅんったら本当にいい子なのよ~♡〙
「なぁなぁノエル~」
「にゅっ!?」
なんか、会話がおばあちゃんと孫の友達がする会話じゃないような。ヘレンちゃん、それ遊んでくれる近所のおばさんとかおばあちゃんとかが言うようなセリフだよ。
レイゼル、構ってくれないからってニョッキの拘束から抜け出してセクハラすんな。私のまな板を触るな。
〘それでエルきゅん、どうしたのかしら? 何かあたしに御用? 〙
「あ、それはね。おばあちゃんに私の学校でできた友達を紹介したくて。今日てっきり来ると思ってたけど、お仕事が忙しいみたいだから通話越しにしようと思って」
〘あらっ? 今日は大晦日だし、急いで終わらせ──〙
「いいや、忙しいんだろう?」
お、お父さん? おばあちゃんまだ何か言いかけてるよ?
「
どうしたの? 何でお父さん、嘘ついておばあちゃんにそんなに圧をかけているの?? というか、その圧は一体どんな理由で───と、思ったけどなんだか頭がほわほわしたので考えるのを止めます。
〘そ、そうなのよ~! 大晦日はいつも忙しいけれど今年は特に忙しくって、本当に行けないのが残念だわ〙
「そうなんだ……じゃあ明日は絶対に会おうね」
〘そうね、絶~~っ対! 会いましょ!!〙
「じゃあそろそろ切るね」
〘も、もう、切っちゃうの……? 他に話したい事とかがあるのよね? そうよね??〙
なんだか罪悪感を感じる……けど、忙しい中そんな長電話なんてしてられない。
「あるけど、忙しいんでしょ?」
〘うぅっ……どうしてなの!! この事は半年間くらい恨むわよノルちゃん〙
どうしてここでお父さん?? そう思っているとお父さんが「さぁ、話が終わったら年越しうどんを作るぞ。あの人の無駄話で時間が無くなったら美味いうどんが作れなくなるからな」と言って私のスマホを取る。
〘ちょっとノルちゃん! 無駄話ってどういう意味──〙
(プツン)
あ、切った。
「……じゃあヘレンちゃん、一緒にうどん作ってお昼ご飯にお雑煮食べよう!」
「蕎麦ではないのですね……?」
「お父さんはヒエリカが祖国なんだけど、ヒエリカだと皇族の色である白っていうことと、初代皇帝がうどん派だったから、うどんを食べるんだって。蕎麦なのはランセンらしいよ?」
「そうなのですね(久々のうどんとお雑煮……しかも推しの家で食べられるなんて!! 明日、私は死ぬのかしら!?)」
「みんなで作ったうどんは美味しいよ、それにお父さんとお母さんも一緒に作るからね」
それからうどんを一緒に作ったけど、うどんを踏んでいる時にレイゼルが「ノエル、俺の事も踏んでっ♡♡」って言ってきたからビンタしておいた。ニョッキもビンタした。
~・~・~・~
「今日で今年が終わるのー、一年って本当に短いのー」
「魔王様、せめてちゃんと座ってください」
「でも背中が寒くなるじゃろ。あー、む……平和じゃなー」
50人は入れる巨大こたつでぬくぬく、床にゴロゴロしながらティアラはクロウにみかんをあーんをされていると、エプロン姿のゴブレスがやって来る。
「魔王様、おしるこができましたよ!」
「来たか! 待っておったぞ、やはりお主のしるこが一番美味じゃからな」
「……やっとか、待ってたぜ」
「見ないと思ったら、ネロ貴方はそんな所に居たんですか。横になっていないで、ちゃんと座りなさい。魔王様が貴方のせいで、だらしのない方になってしまったらどうするのです」
どうやら真ん中で寝ていたらしいネロは、こたつの端へ移動をしてティアラの隣に這い出てくる。
「今更だろ、俺はお前やお嬢が生まれるよりもずっと前からご主人サマに拾われて、子供の面倒を見させられてたんだ。多少俺に似てても仕方ないだろ、それに吸血鬼はある程度成長したら後は不老だしな」
「全く……父君がお怒りになりますよ」
ネロはおしること箸をゴブレスから受け取ると、びっくりする程よく伸びる餅を食べる。
「はは、ならバレないように次会った時に少しはちゃんとしとくか。アレスは怒る時にネチネチ毒を吐いて2時間くらい説教するから面倒くさいしな」
「ならすぐボロが出るのに賭けます」
するとプルプルしながらすらたろうがやって来て、ウザイ顔を披露してくる。
「ピキ、ピキー! ピキキ♡(全員こたつに入ってるのねん、寒しゃに負けるお前らよわよわなのねん、じゃあこじゃあこ♡)」
「そりゃ環境適応能力ゴキブリ並のスライムに比べたら、オレらは雑魚だろ」
「「ピキッ!? (ゴ、ゴキブリ!?)」」
「あ、あはは……まぁとにかく、みんなでおしるこ食べよう?」
ずっとコタツに入っていたレイネルがゴキブリ発言をし、そのゴキブリより高い適応能力を持ったスラたろうと、寒くないけどみんな入ってるから自分もこたつに入っていたスラのすけが結構なショックを受ける。そしてゲイルは既に3回ほどおかわりしていて、おしるこは口の中に吸い込まれていく。そしてレイネルの分のおしるこをよそうと、それを差し出した。
「深夜におしるこ食ったら太るだろーが、オレのナイスボディに無駄な脂肪ついたらどうすんだよ」
「そっか、美味しいのになぁ……」
「レイネル何を言っておる、むしろこれからが本番! ここで食べず、いつ食べるのじゃ!」
「要らないならあたしにそのおしるこ頂戴!」
「ご、ごめんね、もう僕が食べちゃった……」
「早っ!?」
今日も魔界は平和である。
~・~・~・~
「アグちゃん、私ごはん食べたかしら……?」
「くっ、もう天からの使いに聖なる抹消を受けてしまったというのか!? 暗黒館の主、獄炎のスタイラー! 忘却のエフィーナが天の使いからマークされているぞ!!」
「あー、実は最近エフィーナさん認知症が進行してて、前は数時間後くらいだったのに30分くらいで忘れちゃってるんだ」
ここはヒエリカの入居型介護施設。魔法使いや元傭兵達などが入居しており、その多忙さは大晦日だろうが関係無い。
「エフィーナさん、この方角でここから5689メートル離れた場所に全長が56m、軸が半径が22mもあるキノコがあるんです。そのキノコが一瞬で炭化する程の雷を出そうとした時、どのように魔法陣を書いたらいいか教えてくれませんか?」
するとエフィーナはすぐに紙を出して書き出す。
「できましたよ」
「計算はできるのに、覚えてられないんだからもう」
施設長のスタイラーはやれやれといった風に独り言を言うと、エフィーナは耳に手を寄せた。
「へ??」
「ダメだ、耳も遠くなってる。それよりアグネス」
「俺は✝︎血塗れの死神✝︎だ」
「父さん古傷が痛んでその名前で呼べないから勘弁してくれ」
次回で学校の予定です。
【挿絵表示】
ジャレッドくん 20240610
おまけ
「──というふうに、王女の護衛をしていた」
「あなた……」
「どうした?」
ノルトが仕事の様子を話している時の事。マリエッタが急にハイライトを無くした目で何故か包丁を持ちながら見てきたのである。
「あなた、浮気をする気なのね??」
「は??」
「あの
「……エマ、相手はヘレン王女だ」
「あ、あらっ!? そうだったの、じゃあ次のお休みは絶対に私にも愛の籠ったプレゼントをくれるわよね♡」
「言われずともそのつもりだ、その後は……エマが一番好きな事をしよう」
「あなた……♡♡」
それからノルトが休みの日、ノエルをノエリアの所へ預けてマリエッタの欲しい服やノルトが選んだ服をプレゼントし、お買い物が終わった後はめちゃくちゃセッ(以下略)
~おまけ2~
「にゃー……」
「エル、ちょっと警戒気味みたい」
「モ゚ッ……か、可愛い!!」
「でも安心して、ちゅーるですぐに仲良くなれるよ、ほらあげてみて」
「そうですか、では……」
「にゃーん♡♡」
「ほら」
「(チョロいわこの子……)」