チュートリアル用のチョロイン幼馴染に転生してしまった 作:水性さん
去年よりも遅れてる……?
えっ、今日は35日ですよね??一ヶ月は40日ですよ、常識じゃないですか。
あと今はハロウィンウィークですよね? えっ、知らない??
それはちょっと……遅れてますね。
「聞いて! 3年ぶりにヒエリカの空気中魔力濃度が0になったわ!!」
「……母上、仕事は」
ノルトは手に玄関のドアを持った母親(♂)に尋ねると、ノエリアは自信満々に答える。
「もちろんほっぽり出してきたわよそんなもの!」
「そうか、帰ってくれ。あと玄関のドアを壊すな」
本日はハロウィン、なんとまた今回もヒエリカに平和が訪れたのである。
「もう! ノルちゃんったら、そんな意地悪言わなくてもいいじゃない!」
「役目だろう、それを放棄するなと俺は言っているんだ、それとここは母上の休憩所ではない」
「お義母様、さつまいものモンブランをどうぞ♡」
「エマもだ、母上に要求されるがまま糖分を提供する必要は無い」
ノルトはもっともなことを言いながら右手で膝に乗る香箱状態のエルを撫で、左手でおもちゃを投げてはスピッツ犬のロロと遊んでやっていた。今日も毛玉達は元気である。
ちなみにモンブランは白い山という意味で、必ず栗じゃないといけないという訳ではなく、絞ったクリームの上に溶けない粉糖をかければそれはもうモンブランなのである。
「ゴロゴロ……」
「わんっ!」
ロロがおもちゃを咥えてノルトの所に行こうとする途中、玄関のドアが開く音がすると、それから間が空いてリビングのドアが開いた。
「ただいま! あれ、おばあちゃんだ。来てたんだね」
「あ、ほんとだ」
「わん!!」
「ロロも元気だった?」
学校から帰ってきたノエルにロロは尻尾を千切れんばかりに振りながら、おもちゃを口からポロリと落として走って近づき、そこでようやくレイゼルが隣に居る事に気がつくと「ゔゔゔゔゔ……」と威嚇をし始める。
近年、実は家族に対して犬は順位付けをしないということが明らかになってきたのだが、それでもあえて順位付けをするとしたら……。ロロにとって家の中でのヒエラルキーはノルトを頂点とし、その次にノエル、自分、僅差で下のマリエッタ、双子、エル、そしてレイゼルという風になっている。
ノルトが家のボスで、命令は絶対。マリエッタはちょっとおっかない自分の世話役。ノエルは甘えさせてくれる相手兼大好きなご主人様、双子は守る対象、エルは時々ノルトに遊んでもらってる時に嫉妬して猫パンチしてくる、情緒不安定でめんどうくさい同居人。
そしてレイゼルは……なんか勝手に居候していて、
ロロはノルトに似たのか、まぁまぁプライドが高い犬になった。だが元々愛玩犬なので基本的には人懐っこく、大人しいのだが……。
やはりレイゼルだけは気に入らないのである。
「ゔぅ゙~……わんっ! わんっ!!」
「今日も可愛くねー奴だな……」
「レイゼル、前に何かした?」
「いや、何も? なんなら一回も触ったことねーし」
「だよね……なんでだろう」
「ほんと、なんでだろーな」
そう言いながらレイゼルはノエルにくっつき「この犬っころ、俺なんもしてねーのに吠えてくるよぉ~……ノエル慰めて♡」と言いながらノエルにスリスリし、それを見たロロはガブリとレイゼルの足に噛み付いた。
ロロは年中発情期のでかい柴犬(概念)にジェラシーを燃やす忠犬なので、
ロロを放ってノエルにくっついておしりをさわさわもみもみし、ノエルにビンタされてようやくダメージを受けるのだ。
「ゔぅ……がるる」
「ロロちゃん今日も可愛いね♡」
吹っ飛んでハァハァするレイゼルを無視しつつ、ノエルはレイゼルに威嚇するロロを撫でると、すぐに尻尾をブンブンしながら喜んでいるロロを撫でていた。
「世界一可愛いわんこだよ♡」
「わんっ!」
「俺は!?」
「駄犬」
「俺の方が可愛いだろ!!」
「鏡見てきたら?」
ノエルがそう言うとレイゼルは何故か入っている手鏡をポケットから出して、じっと自分の顔を見る。
「ノエル! 鏡にイケメン居る!!」
「あぁそう」
ちょっと面倒になったノエルは適当に返事をしてロロを撫でていると、2階から降りてくる音が聞こえ始めた。
「ねえさん!」
「マーくん!」
最初に降りてきたのはエルマーで、ノエルは飛びついてくるエルマーを抱き締めると全力で頬擦りをする。
「今日もモチモチほっぺだねぇ~♡超絶可愛いよ♡♡」
「ねえさんこそ、きょうもかわいいよ!」
姉弟でイチャイチャしながらノエルとエルマーは抱き締めあっていると、エルマーの足に体重がグリグリとかかる。
「……ルト? 僕と姉さんの再会を邪魔しないで欲しいんだけど」
「邪魔、通れないから退け」
「ルトが横を通ればいいでしょ、僕と姉さんの時間を邪魔しないでくれる?」
「いいから退け」
ルトは無理やりエルマーを引き剥がすと、ノエルから顔を背けながらも傍に寄る。
「……姉、何か言う事は」
「えっ、何が?」
「分からないフリすんな」
「ごめん可愛いからつい……ただいまルト」
ノエルはルトを抱き締めると「言うのが遅い」と言いながらもルトはノエルを抱き締め返した。ルトは家族に対しても結構ツンデレの気が強いのである。
「……ん」
そんなルトの後ろには約2mの祖母(♂)が居り、そこでスタンバっていた。
「じゃあ、あたしもエルきゅんにギュってしてもらおうかしら」
「ところで、母上は何をしにここへ来たんだ?」
早く帰ってくれと言わんばかりなノルトにノエリアはノエルに抱き締められながらも答えた。
「決まってるじゃない、今日は10月31日……つまりハロウィンよ? 誘いに来たの」
「そうか、今日はここでハロウィンパーティーをする予定だ。絶対にヒエリカには行かないからな」
「どうしてなの!? ノルちゃん何か変な物でも食べちゃったのかしら!? もう、意地悪が過ぎるわよ?」
「3年前のハロウィンパーティーの事を忘れたのか??」
ノルトが思い出すのは前にヒエリカで行ったハロウィンで、あの時は実に騒々しいことこの上なかったのだ。どういうふうに騒がしかったのかと言うと、久々に生のノルト(吸血鬼の仮装)と仮装をした皇族全員が揃っている所を見る事ができた国民達が失神し、尊死する者が次々と現れてちょっとした
特に唐揚げを食べに和食店へ行った時は店内の人達が絶叫し、食べている時も視線が鬱陶しかった。
「もし国民達の心臓がノエルの魅力で止まったらどうする、俺は責任を取らないぞ」
「大丈夫よ、人間そう簡単には死なないわ。あたしが綺麗なせいでちょっと息をする方法は忘れるかもしれないけれど。
というかもう、今日ヒエリカにノルちゃん達来るって皆に言っちゃったのよね!」
「……は????」
こうしてヴェリカ家一同はヒエリカに行かざるを得なくなってしまったのである。もしやっぱり来れないとなれば、国民達はショックのあまりにハロウィンパーティーが盛り上がらなかったという事態に陥れば、経済的大損失に陥るかもしれないからだ。
……という訳で。
「前にヒエリカへ行った時は母上が用意した仮装だったが、あれは少し露出度が高かったからな。今回は俺が用意した物を着てくれ」
「(お義父さんが着せたいんだろーな……)」
レイゼルはそう思いながらノルトが娘に用意した衣装を渡す様子を見ていた。
「うん、ありがとうお父さん」
「じゃあ俺、ノエルが着替えてる所をちゃんと見てるからな!」
「エル」
「にゃーん」
ノルトはレイゼルにエルをけしかけると、エルは猫パンチでレイゼルをぶっ飛ばし、ノルトからご褒美のちゅーるを美味しそうに貰っていた。
「猫が出していい威力じゃねーだろ、あれ……あ、そうだノエル! これあげるな♡」
そう言い、レイゼルは恒例の自分を模した物を渡す。今回は頭だけの物ではなく、全身がある……安全ピンで服のどこかに留められるぬいぐるみであった。
「……なにこれ」
「俺のって証!」
レイゼルぬいぐるみには犬耳と尻尾が付いており、どうやらレイゼルは自分でも自分の事を犬だと自覚していたらしい。
「何この犬耳と尻尾の付いたぬいぐるみ」
「俺はノエルの犬だから……♡」
「あぁそう」
適当にあしらう言い方をしつつも、ノエルはぬいぐるみを結構大事そうに抱き締めており、レイゼルはニヤニヤとした顔でその様子を見ていた。ちょっとその顔やめて、と今にも言いそうな顔をするノエルにレイゼルは思わずニヤニヤを越えてデレデレな顔になる。
「あっ! あととこれも!」
そう言い、レイゼルは衣装にいつもの頭だけの安全ピンが付いたぬいぐるみを付ける。今回は分かりやすくハロウィンという事で、頭にかぼちゃを被っている。
「(……無駄にクオリティが高いな。裁縫スキル高いし、将来こういうのとか服とか作る仕事でもしたらいいのに)」
そう思いながらもノエルは父親に渡されたハロウィン衣装を自分の部屋で着る。その様子をニョッキと隠しカメラがじっと見ていた。
「……流石お父さん、可愛いな」
ノエルは着ている途中、鏡を見てじっと自分の姿を観察する。今年は魔女っ子で、可愛くもありつつ、スカートを履いていない状態のショートパンツのみでも中々良い。
「そして今日も
「にゅ!」
着替えに戻ろうとすると、ベッドの上に置いておいたスカートと一緒にレイゼルから貰ったぬいぐるみが見え、ノエルはなんとなく手に取ってベッドに座る。
「……結構可愛いのが腹立つな」
そう呟いてノエルはレイゼルの匂いがするぬいぐるみをなんとなく抱きしめてみる。
「(大き過ぎるから付けるんじゃなくて飾ろうかな)」
「にゅ……」
すると隣の部屋から「あ゙ぁ~~~~ッ!! ノエルしゅきぃ!!!!」という声が聞こえてくる。それを無視してノエルはぬいぐるみを置くと、ノエルはスカートを履いた。
「あ、そういえばニョッキも仮装する?」
「にゅっ!」
「実は用意してたんだ、はいこれ」
ノエルはニョッキに悪魔のツノのカチューシャを付ける。
「ごめんね、ニョッキに着けられそうなのがこれくらいしかなくて……似合ってるよ」
「にゅーっ!」
ぴょんぴょん跳ねながら喜ぶニョッキにノエルは「あっ、これでいいんだ」と思いながら部屋から出ると、ドキドキしながらリビングに向かう。
「お、お父さん、どうかな?」
(ガタッ)
ノエルはそう聞くと、ノエルの姿を見たノルトが急に席を立った。膝に乗っていたエルが驚いて降りると、イカ耳の状態で不服そうにノルトを見上げる。
そしてノルトは無言でノエルの方に歩くと、スマホを出して写真を撮り始めた。
「……お父さん?」
「よく似合っている、だがその服はまだ未完成でな」
ノルトは手のひらの上に魔法である物を転移させる。それは金の葉と茨のある白薔薇の飾りであり、知る人が見ればどこをどう見ても「この子はうちの子です」と言っているようなものだ。
金の茨を持つ白薔薇は皇族の象徴なので。
「これをその帽子に付ければ──……ノエル、その趣味の悪いふざけた物体は何だ」
「あ、これ? 着替える前にレイゼルが着けていったやつだよ」
「ノエル超可愛い!! 結婚して!!!!」
その瞬間、狼男(何故か奴隷の証であるタトゥーを模したシールを顔に貼って首輪をかけている)の仮装をしたレイゼルのアホ毛がノルトの
レイゼルは「俺のチャームポイントが!!」と嘆き、ノエルの姿を見たノエリアはとっても素敵な笑顔になった。
「エルきゅんとっても可愛い!! 凄く似合ってるわよっ!! 世界一可愛いわっ!!!!」
普段大剣を持っているその手には一眼レフカメラを持っており、フラッシュの嵐をノエルに浴びせていた。ノルトはノエルに近づいて魔女っ子帽子を外すと、趣味の悪いふざけた物体を取ろうとする……が。
「……チッ」
なんと、付けたら二度と外れないピンだったのである。クソデカ舌打ちをしたノルトはノエルに帽子を被せた。
「ノエル頼む「お父さんお仕事頑張ってね、大好きだよ」と言ってくれないか」
「えっ」
「それを言うか言わないかで来月の給料が大きく変わる」
「え、えぇ~……それはちょっと恥ずかしいんですけども」
「家族(俺)の為だ、言ってくれ」
そう言われてしまえば言わざるを得ない。ノエルは顔を赤くしながらも、意を決して恥ずかしいので俯きながらも言う事にした。
「……お、お父さんお仕事頑張ってね。……だ、大好きだよ」
(ピッ)
「えっ」
言い終えた後に聞こえてきた電子音に思わずノエルは顔を見上げると、そこには何とも悪い意味でのいい笑顔のスマホを持ったドSパパが居た。
「ま、まさかっ」
〘……お、お父さんお仕事頑張ってね。……だ、大好きだよ〙
「あーっ!??」
ノルトは先程のノエルをMP3ではなくMP4で撮っていたらしく、バッチリと照れている様子がスマホから映し出されていた。
「消して!! 今すぐ!!」
「無理だな、もうバックアップやコピー、クラウドにも保存をしておいた」
「嘘!?」
「セバスチャンにも送っておいた、これは家宝として末代まで残るだろう」
「どうして!!!!」
「これで今日の仕事も捗りそうだ、ありがとうノエル」
そう言うと、ノルトは魔法で仕事着に着替える。その様子を見たノエリアがノルトの肩を掴む。
「ノルちゃん……? ど、どこに行こうとしているのかしら??」
「見て分かるだろう、仕事だ」
「お仕事……?? 聞いてないわよ、そんな事。ヒエリカに行くのよね??」
「俺は最初から行くとは言っていない」
「嫌ぁぁぁぁああっ!! 行くの!!! ノルちゃんもヒエリカ来るのよ!!!!」
「諦めてくれ、俺もできる事なら行きたくはなかった。
だが……ハロウィンの城下町に集まる頭の弱い馬鹿共が馬鹿騒ぎをして馬鹿げた事故・事件を起こすからな。
おかげで俺は今日、よりによって今日、今日だけしか見られないノエルのこの姿を、俺は出勤ギリギリの時間にしか見られない。その上、どこかの駄犬が馬鹿をしでかしたせいで俺が完璧な衣装にしてやれなかった。こんな馬鹿げた話があるか、ふざけるな」
そのどこかの駄犬はノエルにくっついて「ノエルぅ~♡なぁなぁ、セックスしよ♡♡」と言っており、ノエルに思い切り蹴り飛ばされて喜んでいた。
そして這いずってノエルに近づきスカートの下からショートパンツを見ようとすると、ノルトが徹底的にレイゼルからのセクハラ防止を施したスカートという名のアーティファクトは、謎の発光によりレイゼルの目にダメージを入れた。
「目がぁぁぁぁぁぁッ!!」
「……え、えっと、頑張ってね」
「あぁ、これを見て頑張るからな」
そう言いながらまたさっきの動画を流す。
「やめてお願い、それだけは本当にやめてください」
こうしてノルトは仕事に向かい、ノエル達はヒエリカに転移する。そして着いた先は……。
「陛──、ノエリア様が来てくださったぞーっ!!」
「よかった、助かった!!」
「気を抜くな!! 油断は死に直結するぞ!! さぁ、この腐肉共にヒエリカ帝国民としての誇りと、ヒエリカの魔法科学力を見せてやれ!!」
「「「「イエッサー!!」」」」
ノクターンの指揮の元、全ヒエリカ国民達と皇族達は突如として現れたゾンビの大群との戦いを繰り広げていた。
「母上、やっと戻ったか」
「な、なんなのよコレ!? ノクちゃんどういう事なの!? どうしてゾンビが!?」
ノエリアは慌ててノクターンに問い詰めると、タイミング良くセバスチャンが転移してくる。
「陛──ノエリア様、お帰りなさいませ」
「セバスチャン、どういう事なの!? どうして今まで会いに来なかったのよ!」
「本来であれば真っ先にお伝えするべき事でしたが、どういう訳かヒエリカの外に出る事ができなかったのです。アーティファクトでの連絡も何故かできず……」
「嘘!? ……あら、本当だわ。転移しない……外からは入れるけれど、閉じ込められちゃってたのね。一体誰がこんな事を……あっ、そうだわ! 魔獣と状況はどうなっているの!?」
「魔獣はご心配なく。依然、空気中に含まれる魔力濃度は0、魔獣の姿も確認していません。
ゾンビは各エリアに現れた正体不明のゲートから出現しており、偵察用のアーティファクトにゲートの先へ向かわせたのですが、ゲートを通ったその瞬間に通信が途絶えました。
本来であれば人を襲わず、高い知能を持っている草食性の温厚な魔物の筈なのですが……。
ほとんど知能などがなく、精肉店の生肉などを金も払わず貪り食い、人を襲っていたところから推測するに……。
恐らくこの世界ではなく、別の世界から転移したゾンビのようです」
まさに不幸中の幸い。もし魔獣まで現れていたら一歩間違えれば国が滅びていたところだ。
「そう、結局今年もいつもと変わらないのね……魔獣がゾンビに変わっただけで」
ノエリアは残念そうに肩を落とし、両手の人差し指にはめてある
「ノクちゃん、とりあえずあたしは門の付近に居るゾンビ共を殺るわ」
「あぁ、そこにはルーアとルースが門を守っている。2人もそこを守っていたから、人員が足りていなかったんだ。2人にはそれぞれ、母上が来たら東と西に行くように頼んである。北にはノーディン、市街地エリアにはノイルだ。
エマは皇宮で魔力補給用のスイーツの準備、ノエルはビル街、レイゼルは商店街を頼む。俺は中央で腐肉共を殲滅する」
「えっ」
ノクターンは素早く指示を出し、仕事に戻ろうとする……が、その指示に納得がいかない人物が一人居た。もちろんアイツである。
「……俺の指示に何か異議でもあるのか?」
「ある!! 大ありだ!! 絶対に!! 俺は!! ノエルから!! 離れないからなっ!!」
そう言うレイゼルにノクターンはため息を吐く。
「そうか……つまりお前はお前の知らないノエルを知りたくないという事だな」
「……どーいうこと?」
するとノクターンはクソデカアルバムを手元に魔法で転移させる。
「そっ、それはまさかっ……!?」
反応したのはノエルの方である。ノエルは顔を赤くさせながら分厚過ぎるアルバムをめくるノクターンを止めるべく、アルバムを取ろうとするが、ノルトよりも高い背のノクターンには届かなかった。
「これは母上が、ノエルが赤子の頃から幼少時代を撮ったアルバム……その中の一つだ」
「やめて──っ!!」
背伸びやぴょんぴょん跳ねて手を伸ばすノエルにノクターンを頭を撫でながらアルバムをギリギリ届かない高さで持ったり、ノエルの手から避けさせたりする。実に意地が悪い。そんな様子を見て国民達の指揮は上がる一方。
「俺の指示に従わないということは、余程お前は
「殺る!! 俺超~頑張る!!」
「そうか、そう言ってくれると思っていたぞ。では頼む」
「ノックさん!? あの、ちょっと、待って、今聞き捨てならないことを聞いた気がするんですけども!! ノエルファンクラブって、なんですか!?? 聞いてます!??? ちょっと!?」
問い詰めるノエルにノクターンは無視しながら頭を撫でる。やはり俺の姪っ子は可愛いなと思いながら、国民達に指示を出していた。
「さて、お前達は精々奴らの餌にならないよう、そして国を守る事に尽力しろ。ここは自由を掲げ、生きる為に日々文明を進化させている国。それを奪おうとする奴らを殲滅する為なら、法を犯さなければどんな手段でも構わん。
好きに暴れろ!!」
「「「おーっ!!」」」
更に士気の上がったヒエリカ帝国民達はそれぞれマイボトルならぬマイウェポンを持ってゾンビ達の頭を破壊していく。
ヒエリカは皇族、特に皇帝の強さにフォーカスが向くが、ある程度であれば戦える者が多いので(強くなければいつ死ぬか分からない為)実は世界的に見れば上位に入る程に国全体の戦闘力は高いのだ。
「ノエルぅ、俺本当は一秒も離れたくないけど……ノエルの可愛い所を見──国の為だからさぁ。ほら、俺勇者だし……やっぱ人助けしないとじゃん?」
「全然取り繕えてないから、ほぼ全部口滑らしてるから」
「って訳だから、これ俺だと思って服のどっかに着けてて」
そう言い、レイゼルはまた頭のみのストラップのようなものをノエルに握らせる。
「(どこに着けろと?? 他にもう着けられる所とか無いけど??)」
「じゃ、またな……あ、行く前にノエルから「レイゼル頑張ってね、愛してるよ♡帰ったらエッチしようね♡」って言ってくれたら俺もっと頑張──」
「さっさと行けッ!!」
「あ゙っ♡♡」
レイゼルをぶん殴った後で魔法でレイゼルを商店街へ転移させ、それからノエルはビル街に転移し、ニョッキはノエルに着いていった。
「じゃあ、あたしもそろそろ行くわね」
「……どうしよう、この生首」
〘ノエル、さびしい!!〙
そしてビル街に転移していたノエルは、レイゼルから渡されていた頭だけのレイゼルぬいぐるみを持て余していた。
「し、しゃ……シャァベッタァァァァァァァ!!!」
〘ノエル、けっこんしよー!〙
「にゅ……」(ぬいぐるみでもうるさいなアイツ、の意)
〘ノエル、はらへったー!〙
「はいはい……」
〘ノエル、ゾンビたおした! ほめてー!〙
「いいこだね、えらいね…………ん?」
〘またたおした! ほめて!〙
「す、すごいね?」
〘ノエルすきー!〙
「……もしかしてこの生首、レイゼルが考えてる事とリンクして喋ってるんじゃ……?」
〘ノエル、セックスしたい!〙
「あ、聖力使ったから早速性欲が……全く、生身じゃないのにこの騒がしさ……どうしようもないな」
何とも騒がしい生首にノエルはそう思いながらも、ゾンビが湧いて出ているワープゲートに魔力が弾丸となる銃火器を向けつつ、魔法でゾンビ達を屠っているヒエリカ帝国民達の元に歩いていった。
「……ヒエリカの人達、強いな」
これ手伝う必要ある? と、つい思ってしまうが、魔力は無限にある訳ではない上、いつゲートが閉じるかも分からない。そして無駄にゾンビの数も多く、波のように押し寄せてくる。なのでやはりノエルが手伝う必要があるのだ。
「エルズ」
ノエルはゾンビ達に直接
「フィジゾーン、カルゾーン、アクタ、トオン」
そして水素が漏れないようにしつつ爆発から守るために物理共に魔法防御壁を張り、アクタで空気中の水素濃度を上げていくと
その結果一気に花が燃え上がり、水素爆発を起こした。
「やっぱり爆発こそが芸術だよね……」
〘ノエルすきー!〙
「にゅっ!」
ニョッキは防御壁の中に魔法で転移すると、ゾンビ達の頭から栄養をちゅーちゅー吸い上げ、干からびさせていく。
「ニョッキ、ゾンビの栄養美味しい?」
「にゅ~……にゅ!」
どうやら普通らしい。
「さっさとこのゾンビハザードを終わらせて、ハロウィンを楽しまないと……レイゼルが騒ぐし」
〘ノエルだいすきー!〙
「……はいはい」
全く仕方ないな、というような表情でノエルはゾンビ達の居る防御壁の中に入る。
「ヒエリカの皆さん、時間を稼ぐので、その間深呼吸をして魔力の補給をしていてください!
……よし、頑張ろう」
ノエルはゾンビの大群を前に、帽子の中になんとなく必要になりそうなので入れておいたブローチ状態の白薔薇の追憶を取り出すと、剣の姿に戻す。
「これ、一回言ってみたかった……いらっしゃいませーっ!!」
大丈夫、大丈夫……遅れてないったらない。
次回、本編でティアラちゃまとレイゼルくんの話だぞ!
おまけ
(ピシィッ)
(バシィッ)
「おい、豚共。その見苦しい姿で外を出歩くな、この俺の目が汚れるだろうが」
「「「ひぃぃんッ♡♡」」」
◇一方その頃、ノルトはほぼ丸出しのドスケベコスプレをして盛っていた愚かな若人達を躾ているのだった。
「やっぱこういう仕事は先輩が一番適任ですね」
「(グリーズ……いつかこの借りは必ず返してやるからな)」