※この作品はR-18です。

チュートリアル用のチョロイン幼馴染に転生してしまった   作:水性さん

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追記 本編の誤字脱字、その他修正 2024 11/23 21:53


本当はいい夫婦の日、つまり昨日に投稿する予定だったんだ……。

執筆が間に合わなかったぜ。

そして弟は昨日誕生日だったのだ、プレゼントに例のクレンジングバームと新・光神話パ○テナの鏡とAmazonギフトカードを買ってやったぜ。


それと、最近デスクトップパソコンを買ったぜ。

これからどんどん絵を描くし、ゲームもするぞーーッ!! うおーーッ!!

……カ○トオブザラムやるか。



あとあとッ!!


我氏また同じ施設に応援行く羽目になった。ちなみにその話を聞いたのは「もう二度あそこには行きたくないですね」という話をミーティングの時にした後の事でふ。


最悪でふ。




ハロー!クレイジーサイコマザー!!

 

 

「よいしょっ……ふぅ、今日もいい天気ね!」

 

 

 そう言いながらマリエッタは畑に使う肥料を引っ張る。額の汗をハンカチで拭うと、先祖代々に引き継がれてきた果樹園を見渡した。

 

 真っ赤に実る罪の味、こたつの上にある定番な物。イメージ的には夏の物。今が旬なのはそれぐらいの物だろう。

 

 

「そろそろアップルパイでも焼こうかしら……タルト・タタンも捨てがたいわね」

 

 

 今日もスイーツの事を考えながら、肥料を埋めて手を組み祈った。

 

 

「……自然の神よ、貴方に罪深き供物を捧げます。恵をどうか授けてください、そしていつまでも私達を見守っていてください」

 

 

 すると土はまるで意志を持っているかのように動き、肥料を土の中へゆっくりと沈める。

 

 

「神様は今回も満足してくれたかしら? ……さて、お昼ご飯の準備しなくっちゃ!」

 

 

 

 ~・~・~・~

 

 

 

 昔の幼い頃の私はよく、両親から「普通の人間にならないといけない」と言われて育ったわ。初めてそれを聞いた時、私は普通じゃないのね、と思った。

 

 けれど、私の前世の家は普通では無いことを近所の人達は知っていたわ。あの家の母親は異常者で、お父さんとその娘は可哀想な被害者って。

 

 大嫌いだったお母さんは、働いていたけれど借金があったから自由に使うお金が無いのに、余計な物を買ってお金を使おうとするし、お父さんの連れ子である私には欲しい物や必要な物を買ってはくれないのに勝手に自分が欲しい物は買う。依存気質だったから酒癖と煙草癖は悪くて、更にギャンブルの依存性。そしてお父さんの事が好きで、何よりも依存していた。

 

 だからもし借金を払いきれなくてお父さんに払わせようとしたら、直ぐに離婚する事になっていた。

 

 大好きだったお父さんは私も大好きな本当のお母さんが居なくなってからは、お母さんが恋しいのかお母さんに似た人に何人も浮気をしていた。でもお父さんは隠すのが上手くて、近所の人は誰もその事を知らなかったわ。

 

(私から言わせれば、本当のお母さん以外の女は例え結婚していても全員浮気よ!)

 

 だけどお母さんに似ていた私にはいつも私が誰にも話した事ないのに、本当に欲しい物を与えてくれて、私をひたすらに愛してくれた。よく「俺のお姫様」って言って、可愛い服や靴、アクセサリーを買ってくれた。それでいて、私をよく抱いていたわ。

 

 そして私はそんな環境で育つ、優しいお父さんを持った可愛そうで可愛い、要領の良い、わがままを言わないとっても素敵なお姫様みたいな子。

 

 嫌な家と環境だと、両親を知る人達は口を揃えて言っていたけれど、私にとってはいい環境だった。だって都合がいいし、お父さんは優しかったんだもの。私が嫌がること、痛い事はしないし。

 

 ……あぁ、でも初めて抱かれた時は痛かったわね。凄く優しくシてくれたけれど、やっぱり最初は痛い。

 

 けれど少しやり過ぎちゃったみたいで、長くは続かなかったわ。とうとう浮気がお母さんにバレて両親は家を売り、離婚をする事になったわ。でもまたお父さんはすぐに結婚した。

 

 新しいお母さんは、私の本当のお母さんにそっくりだったわ。

 

 お母さんと結婚したその日以降、お父さんは浮気をしなくなったわ。本当のお母さんの顔は朧気で写真で見たイメージにしかもう無いけれど、何となくどういう人だったかは覚えてる。だから私が初めてお母さんに会った時、私は「あら、お母さんだわ。今までどうして離れて暮らしてたのかしら?」って思ったの。

 

 私はお母さんが大好きになったわ。お父さんも私を抱く事は無くなって、お父さんはもう二度とお母さんが通り魔のせいで居なくなってしまわないように、家の中で守る事にしたの。

 

 ちょっとずつお母さんは「助けて」とか「来ないで」って言うようにはなったけれど、段々お人形さんみたいに大人しくなっていって、ある日お父さんは「ようやくお母さんが俺の愛を理解してくれたんだ」って、私に幸せそうで嬉しそうに言った。

 

 お父さんが幸せならきっとお母さんも幸せよね♡

 

 それが小学生の頃の昔の私で、中学生くらいから私はよくモテるようになった。

 

 何か特別な事をしている訳でもなくて、ちょっと学校生活で私が立ち回りやすくて都合のいいポジションに立っていたら、皆が自然と私の事を好きになっていて、私には友達が大勢できた。

 

 皆の目には私がとても魅力的な子に映っていたらしいわ。可愛くて優しいからなんですって。

 

 その事をお父さんに伝えたら自分の事のように褒めてくれて、私がもっと可愛くなれるように、お化粧の道具やお洋服を沢山買ってくれたわ。

 

 けれど私は可愛かったから、誘拐されかける事件があったの。

 

 お父さんはそんな私を心配して、いつも仕事で忙しいのにいつも学校の送り迎えしてくれたわ。

 

 高校生になった時、私はもっと可愛くなっていて、異性からの告白を受けるようになったわ。けれど私に近寄ってくる男の子には凄く魅力的で私だけを愛してくれて、ピンチの時に私を助けてくれる白馬の王子様みたいな人は誰も居なくて、告白してくるのは至って平凡そうな人、ちょっと顔がいいだけの人しか居なかった。

 

 だから私は、やっぱり白馬の王子様って居ないのね……と、思っていた。

 

 そんなある日、私は学校内でストーカーをされるようになったわ。その犯人は以前に私が振った相手で、どうやら逆恨みをしていたみたい。お父さんとお母さんに心配をかけたくなかったから、両親には相談できなかったけれど……。

 

 学校の先生に言えばもしかしたらなんとかなると思って、話したわ。でも、その先生は「一度付き合ってやればいいじゃないか、そしたら止めるし満足するだろ」と言って真面目に取り合ってくれなかったわ。

 

 そして私はとうとう、ストーカーの人に追い詰められてしまった。後ろから首を絞められて、死を覚悟したの。そんな時、窓際の目立たなくて、いつも一人で居る男の子(当時私は彼をクラスメイトなのに存在自体を知らなかったけれど)が私を助けてくれたわ。

 

 あの時の彼はとても素敵で、本当にカッコよかったわ! まさに一目惚れで、私は何度も彼にアタックしたの。きっと彼は私の王子様に違いないと思って。

 

 その甲斐あって私は彼と恋人関係になれたわ。沢山デートをして、何度もセックスをして、愛を伝えたわ。デートをする時はいつも家の中だった、彼は着飾った私の隣に立っていると恥ずかしいって言っていたけれど……。彼がずっと私を見ていてくれるように、沢山色々な物をあげた。

 

 

「ただいま~!」

 

 

 けれど彼はいつの間にかあまり私に話しかけてくれなくなった。確か大学生になって同棲するようになってからかしら。最近では私が近づくと、ビクビクしたり怯えるような顔をするようになったわ。

 

 どうしてかしら、私は私なりの愛を伝えているだけなのに。

 

 

「■■さ~ん♡ただいま──」

 

 

 私は2階に上がると、■■さんの部屋のドアに付けておいた鍵を開けて、早く彼に会いたい一心でドアを開ける。その瞬間、私の顔に衝撃が走った。

 

 

「うっ……!!」

 

 

 彼が、不意打ちで私を殴ったの。ベッドに繋いでおいた鎖のギリギリの所で、いきなり殴ったの。

 

 私はしばらく何が起きたのか分からなかったわ。

 

 軽い私の体は簡単に床にべちゃりと倒れて、歯は抜けて、曲がっていた。鼻や口から血を流して、私は可愛いとは程遠い状態になっていた。彼はそんな状態の私から、肌身離さず持っていた鍵を奪って足枷を外した。

 

 

「……どうして?」

 

 

 白馬の王子様である彼が、どうしてお姫様である私を殴ったのか。離れようとするのか。……全く理解できなかったわ。今でも理解できない。そもそも彼は殴れる筈がない状態だったというのもあるけれど。

 

 

「どうして、殴ったの? ……大丈夫よ、私に全部気持ちを吐き出して。私は貴方の全てを受け入れ──」

 

 

 きっと彼はご機嫌斜めなだけ。私が彼を抱きしめて、落ち着かせようと近付こうとした時。

 

 

「く、来るなっ!!」

 

 

 ハッキリと、彼から拒絶の声が聞こえた。

 

 

「……え」

 

「もっ、もう、うんざりだ……!! こんな所に俺を閉じ込めて、愛だのどうの言ってるけど、結局は俺を都合のいい人形にしたいだけだろ!?」

 

 

「違うわ!! 私は本当に貴方を──」

 

「そんなもの愛じゃない!! ただの独り善がりだ!!」

 

 

 そう言われて、私の中で何かが切れた。そして唐突に理解したわ。

 

 

「……私の王子様は、そんな事言わないわ。私と私の愛を否定するような事は絶対に言わないもの!!」

 

 

 彼は理想の王子様じゃなくて、私と私の愛を理解してくれない詐欺師。俺も好きだとか言って私を騙した挙句、私から可愛いを奪った最低な男だったんだって。

 

 頭の中が真っ暗になって、何も見えなくなったわ。そして気づいた時、私の視界は真っ赤に染っていて、私は穴だらけの彼の上に馬乗りになって護身用のナイフを握り締めていた。

 

 そして私は自分のお腹にナイフを突き立てた。もう可愛いお姫様じゃなくなってしまったから。何もかも、どうでもよくなってしまったの。

 

 とても短い人生だったわ。これが私の前の人生、そして次に今の人生がやって来た。

 

 

「マリア、とっても可愛いわ!」

 

「まるでお姫様みたいだ」

 

「うふふ、ほんとう?」

 

 

 前の人生のお父さんは有名な企業の役職持ち社員だったから、とても裕福な暮らしだったけれど、今の人生の両親は一緒に働いていても貧しい暮らしだった。

 

 フルタ村が小さくて森に囲まれた田舎という事もあって、中々お金が手に入らなかった。でも、フルタ村は実り豊かで生き物や野菜、果物が沢山あったから、食べる物には困らなかったわ。ただ、娯楽とかオシャレが楽しめなかった。

 

 そんな中、お父さんとお母さんは頑張って私に可愛い服を買って用意してくれて、普通の人より光が眩しく感じてしまう私の為に、オシャレなアーティファクトの調光メガネを買ってくれたわ。

 

 お父さんとお母さんは凄くお互いを愛し合っていて、そんな両親から愛されていた私はとても幸せだった。

 

 それでお父さんとお母さんには夢があって、この村を世界一の果物の名産地にする事だった。私はそんな2人の夢をとても応援していたわ。2人の夢は次第に私の夢にもなっていって、いつの日にか、絶対フルタ村を世界一の農村にしてみせるって思ったの。

 

 けれどそんなある日、村で疫病が流行ったわ。

 

 村の人達も大勢亡くなって、若い子供もかなり減ったわ。私の幼馴染も、それで亡くなった。

 

 ……そして、今のお母さんもお父さんと私を残して亡くなった。

 

 

「エリーっ!! どうして、何でお前がっ……!!」

 

「おとうさん……」

 

 

「あっ、あぁっ……あ゙ぁ゙ぁぁぁぁぁッ!! アイツのせいだ!! アイツさえ居なければッ!!!! エリーッ!! お願いだ、エリー……エリー……もう一度、目を覚ましてくれ……」

 

 

 伝染病はどうやら、血液型によってかかる人とかからない人が居たみたいで、お母さんはかかってしまうタイプだった。だからお父さんは徹底的に伝染病対策をしていたし、かかってもヒエリカのワクチンを取り扱っている医者に治してもらえるように必死に出稼ぎに行ったわ。

 

 どういう方法で手に入れたのかは分からないけれど、充分なお金を手に入れてお父さんはお母さんを助けてもらおうとしたわ。でも医者は実は医者ですらなくて、そのお金を持ち逃げしてそのままお母さんは逝ってしまった。

 

 日に日にお父さんは精神的にどんどん落ち込んでしまって、働く事もできなくなった。お母さんはもう居ない事を認められなくて、体をそのままにして焼くこともできずに、毎日冷たくなったお母さんを抱きしめていた。

 

 見ていられなかったわ。

 

 それで私はお父さんを助けたいと思って、お母さんに会わせたくて、寂しいけれどお父さんを台所にあった包丁で刺して、家ごと焼いて弔った。だって家があったら、思い出して凄く寂しくなってしまうと思ったんだもの。

 

 刺した時、お父さんが「ありがとう、マリア」って言った時のこと、今でも昨日の事のように覚えているわ。また生まれ変わった時、お母さんと一緒になれるといいわね。

 

 それから私の家が無くなったから、私に死なれたら困る村の人達は、私の納得がいく新しい家の設計、資金集め、建築が終わるまで、誰の家に住まわせるかを話し合った。その結果私はメーヌさんの家に住むことになって、色々と家事を教えてもらったわ。

 

 

「全く、とんでもない村のとんでもない神子(・・)を押し付けられたもんだね」

 

「これからよろしくお願いします」

 

 

「はぁ……とりあえず、お前の家ができるまで、完璧に一人暮らしできるくらいには色々と教えといてやるよ」

 

 

 そう言ってメーヌさんは私に料理を教えてくれたわ。そして学校に入学するまで、私はメーヌさんの家に住んでいた。まさか国から手紙が来るとは思わなかったけれど、私はこの機会をチャンスだと思ったわ。

 

 お父さんとお母さんの夢を、私が叶えるチャンスだと思ったから。

 

 どうして国から手紙ができたのかなんて、すぐに理由は分かったし、理由も書いてあったけれど……私の力は私の為に使うって決めているし、正直あの国王に従う気は無いわ。

 

 今はノルトさんとお義母様にも守ってもらっているから、無視しても大丈夫だもの。

 

 それで学校に入学して、ノルトさんと運命的な出会いをして……♡

 

 本当に出会った頃のノルトさんはまだ小さくて可愛かったわ……♡♡でもあの頃の私はノルトさんをただのいい人だと思っていて、少しも興味が無かったから、顔を見ても「綺麗な顔をした人ね」としか思わなかったけれど。

 

 今思うと、もっと見ておけばよかったわ……。あっ、なら見れるようにすればいいのよ! 次のお休みの日の前日、晩御飯に若返り薬を混ぜようかしら……♡

 

 

 ~・~・~・~

 

 

「好きだ」

 

「え?」

 

 

「……っ!? いや、違っ……違う、訳ではないが!! クソっ…………マリエッタ、俺の恋人として……付き合ってくれないか」

 

「………えっ!?」

 

 

 ノルトの告白は意外とかなりシンプルであり、そしてその告白はノルトが恋を自覚したその次の日の丁度2年目になる二人っきりの勉強会で本人が意図せず無意識の内に行われた。

 

 セリフを見るだけでも分かる程、ノルトは思いっきり顔を赤くしてマリエッタに合わせず横を向いている、全く余裕の無い状態だった。

 

 一方マリエッタはまさかノルトからそんな事を言われるとは思っておらず、そもそも異性として意識したことがなかったし、マリエッタはノルト×ゲイルの妄想をしていた人間なので、緊張というよりも単なる驚きでしかなかった。あと、解釈違いであった。

 

 

「……ごめんなさい。私、今は恋愛より将来の夢の為に勉強をする事で頭がいっぱいなの。それに……先輩の事を、私はそういう風に考えたことが一度も無いわ。だから、ごめんなさい」

 

 

 ノルトにとって、マリエッタのその発言はかなりプライドが傷つけられるものであった。というのも、今まで廊下を歩いているだけで、そこらへんに居るお嬢様や女子たちは全員四つん這いになってハァハァするのだから、まさかフラれるとは思ってなかったのである。

 

 まぁ、将来の為にひたむきに頑張っているマリエッタの事を好きになってしまった時点で、少し考えればフラれることは分かりそうなものだが。

 

 普段なら気付きそうなことも気づけなかったし、普段通りなら入念に準備をして、好感度をしっかり上げた後で完璧な告白をしていただろう。

 

(とはいえ、4歳ほどの歳が離れていた上、ヒエリカ人は元々日本モチーフのランセンからの移民。ヨーロッパ辺りの国モチーフなフェリラ人で、前世が大学生だったマリエッタにとってノルトは小学生くらいの子供にしか見えない上、皇族の男は個人差があるが、早くて13歳、通常は14歳、遅くて15歳の成長期を迎えないと身長が伸びない特性があったので、結局振られていただろうが)

 

 だが恋はグラビティ、ジェラシー、ジェノサイド。

 

 もし言わないままでいたら、ぽっと出の男に盗られてしまいかねない。もし盗られてしまったら……そう考えたらノルトは非常によくない考えが浮かんでしまっていた。

 

 そしてまた実際に会った時、それまで考えていた悪い事が全部吹き飛んでいた。やっぱり自分はマリエッタの事が好きなのだと再確認していたら、思わず思っていた事がそのまま口から出ていて、告ってしまっていたのだ。

 

 

「……分かった」

 

「それに先輩、ゲイル先輩の事が好きなんじゃ──」

 

 

「ただの同じ部屋の荷物持ちだ、それ以上でもそれ以下でもない。それよりも何故そうなる」

 

 

「あ、あら? そうだったのね……じゃあ、ここの問題が分からないから教えて欲しいのだけど──」

 

「次は絶対にマリエッタが俺に向かって「愛しています」と自分の意思で言うまで、この俺が口説き落とすまでだ」

 

 

「せ、先輩……?」

 

「覚悟しておけ」

 

 

 それからノルトによる、約1年の猛アタックが始まった。

 

 

 ひたすらに押し、押して押してねじ込み、引く事をしなかった。引いたら最後、マリエッタは顔と体が良く、気が利く上におだてるのが上手く、外面だけは清楚系女子だった為、結構モテていた。なので他の男に取られかねなかった。

 

 

 だからか、ツンデレのツンは出している場合ではなかった為、実は学生時代、アタック中の時はほとんどツンが出ることはなかった。まぁ、デレ発言を言っている最中にやはり恥ずかしいからかしっかりと顔を合わせて言っていることは少なかった上に、恋を自覚する前は驚く程ツン成分が多かったが。

 

 しかしマリエッタは恋愛より夢の方が優先なので、ノルト同様に他の男達も全員振ったし、ノルトを全く相手にしなかった。

 

 そんなマリエッタがノルトを意識するようになったのは、実にベタなもので、そして前世と全く同じ展開だった。それは振った男達が、マリエッタに逆恨みで強姦しようとした時の事。

 

 ただ、前と少し違うのは……。

 

 

「無事か」

 

「え、えぇ……」

 

 

 ノルトが、逆上して強姦しようとしていた男達をまさに死の一歩手前、血の海になり、原型が歪んで治らない所までボコボコに殴りつけた事だろう。

 

 本当は足の先から少しずつスライスして輪切りにして殺してやりたかったが、武器を使うのは魔獣相手だけだと昔からよくノエリアに言われ、育ったからだろう。

 

 それが皇族としてのプライドと誇りであり、人を殺したら自分が制約で死ぬと言われていたからか、ノルトはギリギリの所で武器を使わなかっただけに過ぎない。

 

 

「……掴まれた痕が付いているな」

 

「だ、大丈夫よ、これぐらいすぐに消えるわ」

 

 

「回復魔法(ヴァリカー)」

 

 

 そんなマリエッタの言葉を無視してノルトは男に掴まれて赤く痕になっている手首に触れながら痕を消す。

 

 

「……あの虫けら共に、マリエッタが痕が残る程強く触れ、無理やりされていたかもしれないと思うと、どうしようも無い程の怒りが込み上げてくる」

 

「先輩……でも、先輩のおかげで私は今こうして無事でいるわ。だからそんなに思いつめないで、まずは深呼吸をして落ち着きましょう?」

 

 

 マリエッタはそう言い、ノルトをなだめようとする。だが、ノルトからすれば全く無理な話であった。

 

 

「好きな女性が、下劣で最低極まりない虫けら風情に襲われかけていたんだぞ……落ち着ける筈がないだろう」

 

 

 前に魔獣の大群を一体残らずを斬り伏せ、自分だけではなく多くの生徒を守っていたその手で、血に染った状態で力強く握り締める。そんなノルトの様子を見たマリエッタは、思ったのだ。

 

 そこまで自分の事を好きで、心配して、このような事をしてしまう程に怒ってくれていたのかと。

 

 そう思ってから、マリエッタは段々とノルトを意識し始めるようになった。その次の日、そしてまた次の日と、二人の距離感は少しずつ、変わっていったのである。

 

 強姦未遂事件の一ヶ月後。期末テストが終わり、ホリデーの前に行われる一足早いクリスマスパーティー兼舞踏会が迫っていた。

 

 

「……はぁ」

 

「元気ないね、マリエッタさん。もしかして……テストの点数、思ったより取れなかったの?」

 

 

「違うわ……」

 

「じゃあどうして?」

 

「聞くなゲイル、恒例の発作だ」

 

 

「今度の舞踏会で着るドレスが一着も無いの……」

 

「……でも、毎年大勢のファッションデザイナー志望の人からドレスを貰ってるよね? ……眼鏡かけてる女の子が好みの人から」

 

 

「えぇ、でも仕方なくよ。私の着たいドレスが毎年、一着も、無いの。お金があれば作ってもらっているところだけれど……今年も妥協するしか──」

 

 

 この世界の国は、国の主が住んでいる城が中心に建っており、その周りを囲うようにして民家などの建物が建っている。つまり、その中心から離れている場所はほとんど山や平原、森などであり、転々と村が存在する。色々と説明したが、要するにド田舎である。

 

 そういう村はほとんどお金が機能しておらず、村の住人同士で持ちつ持たれつで生活している為、フルタ村のように恵み豊かな土地ではお金は基本的に要らない。

 

 しかしマリエッタの母の件のように、必要な場面がある時は本当に困るのだ。そして今回もお金が無い為に、必要なドレスを見繕ってもらう事すらもできないのである。マリエッタの気分はまるでシンデレラ状態。

 

 

「そうか、それは都合がいい。今年は俺が用意しておこう」

 

「えっ」

 

 

「色やデザインの希望はあるか」

 

 

 そう言われ、マリエッタは思わず「お姫様が着ていそうな可愛いドレスがいいわ!」と答える。が、言った後でハッとした。

 

 

「で、でも……いいのかしら。ドレスって、凄くお金がかかるでしょう?」

 

「ノルトくん、結構お金持ちだけど……流石にそれは大丈夫なの?」

 

「問題無い、気にするだけ無駄だ。だがどうしても気になるというのなら、これは取引だと思えばいい」

 

 

 取引? と、マリエッタとゲイルは頭にはてなマークを浮かべると、ノルトは意を決して、平常心を装いながら伝えた。

 

 

「今度のクリスマスパーティーで行われる舞踏会、俺はマリエッタだけを誘い続けるつもりだ」

 

「……っ」

 

 

 そう言うノルトにゲイルは胸が締め付けられるかのような感覚を感じた。前からゲイルはノルトがマリエッタの事を異性として見ている事に何となく気づいていたが、こうして目の前ではっきりと言外の「マリエッタ以外に興味は無い」発言され、傷ついていた。舞踏会のダンスは別に必ず男女でなくてはならないという訳ではなく、別に男同士でも女同士でも全然構わないのだ。

 

 なので去年、ノルトはゲイルとマリエッタの2人と踊っていた。だが今年は違う。マリエッタだけ。このパーティーは何かと恋愛に関する事やパーティーをきっかけに恋人ができると話題だ。

 

 つまりは、そういう事。

 

 ノルトは告白する気なのだとゲイルは思ったが、実は既に振られた後だという事を知らなかった為、これは意識してもらう為の発言である事に気づけなかった。

 

 

「でも先輩と一緒に踊りたい子はいっぱい居ると思うわ、私だけだなんて……それに踊るだけでいいなんて、不公平よ」

 

 

「俺にとっては同じくらいの価値がある」

 

「なら良いけれど……本当にいいの?」

 

 

「あぁ」

 

 

 それからマリエッタは自分の着たい服のイメージデザインを描くと、それをノルトに渡し、ノルトは服飾デザイナーのヒエリカ国民にデザインを改良し作らせることにした。デザイナー達はノリノリでドレスを作り、そして数週間後……。

 

 

「どうだ? 好きな物を選べ」

 

「……選べないわ」

 

 

 俯きながらマリエッタはそう言うので、ノルトは「気に入らなかっただろうか」と思いながら、当日までもう時間が無い事に焦りを感じる。

 

 

「この中から一つだけだなんてっ!! 私にはできないわ!! どうして着たい物しか無いの!??」

 

 

 が、杞憂であった。

 

 ドレス達はマリエッタが大好きな甘ロリ服であり、どれもフリッフリでスカートにボリュームと丈のある物だ。どれも色やデザインが違うので、一つとして同じものは無い。しかもデザインのモチーフもそれぞれ違うのだ。マリエッタが悩むのも無理は無い。

 

 

「……まだ3日はある。選ぶのもいいが、ダンスの練習もしておけ。それから、そのドレスはマリエッタにやろう。着やすいように設計させた上、全てエンチャントで汚れや破れ、ほつれも新品同様に元に戻り、洗濯も必要ないアーティファクトにしてある。普段着としても着やすい筈だ」

 

 

「アーティファクトって事は……やっぱりこのドレス、高いのよね?」

 

 

「一着、5千ソルだ」

 

 

(※人間の通貨である1ソルは日本円にして100円である。つまり50万円のドレスだ)

 

 

「……思ったほど、高くないのね。50万ソルくらいかと思っていたのだけれど」

 

「デザイナーに税込の材料費だけでいいと言われてしまってな……とりあえずエンチャント代も含めてキリがいい値段で買い取ったが……」

 

 

 それにしては服の生地がとても上質な物である。それにマリエッタは気がついており、実際にフェリラであればこの質のドレスはマリエッタが想像している通りの値段になるのだが……。

 

 このドレスはどれもヒエリカ製、ヒエリカで作られている物の質はそもそも高いのがデフォルトであり、他国がそれを買って加工やデザインをしている為、どうしても高くなってしまうのだ。

 

 ノルトは原価でドレスを買った為、安かったのである。

 

(後日、ノルトはデザイナー達に感謝の手紙と礼金を贈り、デザイナー達はそのお金で現在のマリエッタお気に入りのロリータ専門ブランドを作った)

 

 そしてパーティー当日。マリエッタは貴族のお嬢様達に囲まれていた。

 

 

「見慣れないドレスですわね……」

 

「とても斬新ですわ!」

 

「うふふ、ありがとうございます」

 

 

 よくマリエッタは人から恨まれる事が多いものの、前世からのいい感じのポジションと会話のテクニックで、結構広く浅い友人が沢山居る。この周りにいるお嬢様達は、その一員だ。

 

 

「このパーティーで素敵な殿方に見初めてもらえると良いですわね!」

 

「きっとエスカーナさんなら、運命の人との出会いを体験できるかもしれませんわ」

 

「……そう、だといいですね」

 

 

 その会話の途中、一員の一人にそんな風に言われた。

 

 確かにマリエッタはこの舞踏会で少なからず、もしかしたら運命の人に出会うかもしれないとは期待した。だが、ここに集まっているのは、ほとんどがこの世界にとっての普通の貴族と平民ばかり。

 

 理想の顔が良くスペックの高い男子はことごとく、ハーレムを形成し、爛れた毎日を送っている。いくら顔が良くても、そんなエロ同人の竿役みたいな事をしているのであれば当然論外だ。

 

 マリエッタは自他共に認める、愛がグラビティな女なので。そしてマリエッタは、ふと思う。

 

 

「(……先輩って、女性との経験はあるのかしら。告白してきた様子からして、あまり無さそうだけれど……)」

 

 

 もし経験があったら。そう考えると、マリエッタは不思議と胸に痛みを感じ……気がついた。

 

 

「(う、嘘……私、まさか先輩の事……でも、前の事もあるし、もしまた離れていってしまったら……)」

 

 

 だが、マリエッタは恐れていた。なので気づかなかったフリをした。

 

 

「お聞きしたいのですけれど、そのドレスはどこで仕立ててもらいましたの?」

 

「ドレスを仕立てて貰ったお店については──」

 

 

「マリエッタ」

 

 

 その時、ノルトがやって来た。ノルトの格好はマリエッタのドレスに合わせてロリータ仕様となっており、甘ロリとは対極的なゴシックロリータの衣装となっていた。

 

 

「取引を忘れてはいないだろうな」

 

「あっ、先輩……凄く可愛い服を着てるのね、とても似合ってるわ!」

 

 

 ロリータ仕様なので、全体的にフリフリなゴシックショタと化していたノルトは、今更ながらにデザイナーに衣装のデザインを全て任せなければよかったと思ったのだった。まぁ仕方ない、ノルトは別にファッションにこだわりがある訳ではなく、あくまで服は自分の魅力を引き立てる要素に過ぎないと思っている。

 

 

 なのでダサくない程度のシンプルな機能性が高いモノトーンファッションが基本。ロリータファッションは、まさに未知の領域である。

 

 常に全力なノルトも調べはしたが、結局どういう物がいいのかは分からなかった。まぁそもそも自分が着る上ではロリータは趣味では無く、基本的に機能性、それから自分に似合うかを重視するので。

 

(好きな人が着るとなると話は別だ)

 

 そしてデザイナーに全部を任せてしまった結果……デザイナーの趣味丸出しな物となったのだ。ちなみにこの服が届いたのは数時間前の事。あくまでマリエッタを主役で、引き立てるようにしろとは事前にノルトは言っていたのだが……それにしても主役を食いかねない程の気合いの入り方である。

 

 

「(……まさか、母上の差し金か?)」

 

 

 正解である。

 

 最愛の息子が、好きな女の子のハートを掴む為にロリータなドレスを用意させようとデザイナー達にドレスのデザイン募集をした時から、話は進んでいたのだ。

 

 全ては滅多にお洋服の着せ替えをさせてくれない上に新しい服を来た時に写真を撮らせてくれないノルトに、ゴスロリを着せる為である。

 

 そしてセバスチャンを経由してノエリアがノルトの様子を見る為に。

 

(更に当時、ノエリアは国民達に「うちのノルちゃんを見なさい!!」と言わんばかりに、テレビの生放送までしていた)

 

 

「俺の趣味では無いが、あくまでマリエッタに合わせた結果だ」

 

 

 それを知らないノルトは、ヒエリカ国民100億人の前でマリエッタに手を差し出す。

 

 

「どうか、今夜は私に貴女の時間を頂けませんか」

 

  

「……はい、喜んで」

 

 

 ノルトは完璧なエスコートをすると、それからマリエッタにウィンターホリデーは何をするのか、何をしたいのかなど、他愛の無い会話をしてパーティーを楽しんだ。

 

 マリエッタの方も実は内心少しノルトを意識してドキドキしており、運動神経が良くないのも相まって、ダンス中は何度かミスをしかけてはノルトがそれを上手くカバーしていた。

 

 

「また足を踏みかけたな」

 

「ご、ごめんなさい、なんだか緊張しちゃって……。嫌だわ、練習の時はこんなに失敗なんてしなかったのに……」

 

 

 ちなみにその練習相手はノルトであり、練習の時とは明らかに違うマリエッタの反応にノルトは笑う。

 

 

「つまりこの非日常的な時間を利用し、準備を労してようやく俺を意識したという事か」

 

「そ、そうみたい……」

 

 

「なら後は押すだけだな」

 

「(いつも押しているような気がするのは気のせいかしら……)」

 

 

 マリエッタがそう思っていると、それを見透かしたノルトが「考えている事が顔に出ているぞ」と言った。

 

 

「……何もしないでいたら、他の男に取られるだろう」

 

 

 不覚にもマリエッタは照れながらそう言うノルトに「か、可愛いわ……」と思うのであった。そしてマリエッタが体力の限界を迎える頃まで踊ると、途中、ノルトを狙っているお嬢様達に話しかけられもしたが、ノルトがしっかりと「俺は今、マリエッタと話している。他に当たれ」と断った。

 

 そして次の日からウィンターホリデーがやって来た。その間、当然2人はしばらく会えない時期が続いたのだが、そのホリデーが終わった後……マリエッタはノルトに会って驚いた。

 

 

「先輩……随分、背が伸びたのね」

 

「あぁ、やっと伸びるようになってきた。……が、成長痛が思っていた以上でな。おかげで痛み止めを飲む始末だ」

 

 

 以前のノルトは自分の目の位置くらいだったのだが、今はなんと自分より若干低いくらいになっていた。そんなノルトを見てマリエッタは「男子の成長って凄いわね……」と思っていたのだが、数ヶ月後にはもう、160cm代のマリエッタの身長をすっかり通り越して、175以上になっていた。

 

 美少年から顔のいい高身長イケメンになると、マリエッタの中ではもう、男の子から男子、男性へと意識が変わっていく。

 

 その変化をノルトが見逃す筈もなく、これまで以上にマリエッタにアタックをしたのだ。心臓を部位破壊するくらいには。

 

 

「昨晩、また徹夜したな」

 

 

「ど、どうして分かったの? 誰にも言っていないはずなのに……」

 

 

「口の周りにヨダレの跡が付いているぞ。それから寝癖も付いている上に、髪が乱れている」

 

「あらっ!? やだ、私ったら……」

 

 

 恥ずかしそうに口元を拭き、手で寝癖を直そうとするマリエッタに、ノルトはハンカチを出して反対側を拭き、魔法で櫛を出してマリエッタの三つ編みを解くと、髪をとかす。

 

 

「逆だ。全く、世話が焼けるな。身だしなみくらいは整えておけ」

 

「……なんだかんだ、先輩が世話を焼いてくるのがいけないと思うわ」

 

 

 ちなみにこれは今に始まった事ではない。マリエッタがノルトに勉強を教えてもらうようになってから、なんだかんだ言いながら色々と世話を焼いてくるノルトに慣れてしまい、段々と自分でやらなくなってしまったのである。

 

 

「先輩のせいでどんどん甘えてしまっている気がするもの。

 

 課題の事とか、先輩は関係ないのに私が授業で使う道具の忘れ物チェック、私が生理二日目の朝にお弁当が作れなくてお昼ご飯無い時に、いつも何も言わずにお弁当用意してくれているし……いつも頼りっぱなしで、困った時は先輩に聞く癖もいつの間にか付いちゃって……。

 

 その内、ダメになっちゃいそうだわ」

 

「そうか、それは都合が良い」

 

 

「……どうして?」

 

 

 そう聞くと髪をとかし、三つ編みに結び終えたノルトは薄暗い笑みを浮かべて答える。

 

 

「このまま俺だけにしか頼れなくなり、堕ちてきてしまえばいい」

 

「……っ」

 

 

 やはりノルトは愛が重い男なのであった。そしてそんなノルトを見たマリエッタは、ときめいてしまっていた。

 

 そしてノルトがマリエッタをデートに連れて行った時には、ヒエリカに連れて行ったりもした。

 

 

「あら、いらっしゃ~い♡もうノルちゃんったら、こんな可愛い女の子連れて来て……いきなりだったから、あたし全然オシャレできなかったじゃない! ……あ、初めまして、ノルちゃんのお母さん兼お父さんです♡」

 

「え、えぇ……初めまして……?」

 

 

 その時には本当に偶然、ノエリアとマリエッタはコンタクトを取ったのだが……。

 

 

「これからよろしくね♡」

 

「は、はい……これから??」

 

「気にするな、母上はいつも気が早過ぎる」

 

 

 既に迎え入れる気満々だった。

 

 

 後は会話をする時に「使っている果物は故郷の村の物を使っていると前に聞いたが、母上達にも食べて欲しいと思っている。新鮮な物を直接見て魔法で贈りたい」と言って、それに引っかかったマリエッタは「じゃあ今度のお休み、私の故郷を案内するわ!」と言ってしまい、ノルトは計画通りに育ての親のメーヌに会ったりもした。

 

 

「初めまして、ノルト・ヴェリカと申します。マリエッタさんとは、学校の一つ上の学年で今は(・・)友人として親しくしてもらっています」

 

「(そんな丁寧な自己紹介している先輩は初めてだわ……。この人、知らない人に敬語使えたのね…………)」

 

「ほ~……マリア、お前中々いい男を捕まえたね。私はいいよ、名門校の男なら仕事に困らないだろうし」

 

 

「……メーヌさん? 私と先輩はそんな関係じゃないわ」

 

「うちのイカレ娘をよろしく頼むよ、私はもう開放されたいからね」

 

「分かりました、お任せ下さい」

 

 

「(……あら? ひょっとして私、外堀を埋められていってるのかしら?)」

 

 

 大正解である。

 

 そしてマリエッタは順調に外堀を埋められていき、気づいた時にはまだ付き合っていないのに、周りからは付き合っていると思われる所まで来ていた。

 

 だがそこまで来ると、嫉妬した女子達がマリエッタを虐めようと考える者が大勢出てくるのだが、マリエッタがそのような事をされる前にノルトが徹底的にその輩を排除していた。

 

 まだ直接手を出していないので、バイオレンスではなくバイオ攻撃をした。食べ物の中に魔法でちょっと特製ウイルスを撒き、食べたらマイコプラズマ肺炎よりも長い期間で似たような症状が起こるものだ。

 

 なので虐めようとしていた女子達は隔離された寮室にて、卒業ギリギリまで休む事となり、マリエッタはその間に少しずつノルトを異性として好きになっていったが……。

 

 まだあと一歩足りない、気になる人止まりであった。それが、前世での事が原因である。

 

 簡単に言えば、マリエッタはまた、自分から離れていってしまうのではないかと恐れていたのである。

 

 自分と相手の愛情表現や恋愛における考えの違い、お互いの愛情の量。それらが合っていないせいで、また前のような辛い思いをするかもしれない。そう恐れていた。

 

 

 一週間後のとある一室にて。

 

 

 マリエッタは謎の手紙で普段は使われていない校舎の奥にある部屋に呼び出され、向かってみると……待ち伏せていた肥料に襲われかけた。

 

 

「あらっ? 貴方はこの前の方ですね、まだ何か御用──」

 

「この前はよくもこの俺を振りやがったな。庶民マンコ風情が、この俺を馬鹿にしやがって」

 

「(敵意帰属バイアスかしら、それにお金はあっても品性がまるで無いわね)」

 

「おい本当に良いのか~? 前までこの女に惚れてたんだろ?」

 

「なぁ、誰が当てられるか勝負しようぜ」

 

「いいな、誰に似るのか楽しみだ」

 

 

 下衆じみた笑いを浮かべる男達にマリエッタは「考えることは何処の世界でも同じなのかしら」と思いながら、周囲を一瞬見回し、マリエッタは自然な動きで男に近づく。

 

 

「逃げようとすんなよ? このネクタイの色で分かるだろうが、俺は魔法科学科の戦闘部門。そして魔法使用免許持ちだ、大事な顔に傷が……っ!?」

 

「ごめんなさいっ!!」

 

 

 そして男の胸にマリエッタは飛び込むと、顔を近づけて見上げ……。

 

 

「貴方がそこまで私を愛していただなんて知らなかったんです! 私、自分だけを愛してくれる人じゃないと恋愛対象として見れなくてっ……だから──」

 

 

 護身用のナイフを胸に突き立てた。

 

 

「がッ!?」

 

「専攻している分野だけじゃなく、女の子の扱い方と誘い方を来世ではお勉強したらどうかしら? きっと役に立つと思うわ!」

 

「ひ、ひぃぃッ!!」

 

「誰かぁッ!!」

 

 

 グリッとナイフを捻りながら引き抜くと、男は倒れる。その光景を見た周りに居た取り巻き達はマリエッタから逃げるようにして外に向かった。

 

 だがそれを逃がす程マリエッタは甘くは無い。事前に持っていた水を貯めておく皮袋を出し、それをドアの出入口に投げる。

 

 すると水は床に染み込み、突如としてツタの植物がドアを覆った。

 

 

「なっ!?」

 

「草魔法ッ!?」

 

 

「許可されていない場所では魔法の使用は免許が無いと使えない筈──」

 

「確かに学園内では使えないわ。でも……外で魔法を使ったら、その発動した後の魔法は持ち込めるでしょう? 例えば……氷魔法(グロウ)とか」

 

 

「まっ、まさかっ!?」

 

「死体は私がちゃんと有効活用するから心配しないで! じゃあ……さようなら♡」

 

 

 流石にマリエッタもどういう目的で自分を呼び出したのかを察していた。なので、マリエッタはこうして逆にバイオレンスな意味で襲ったのである。自らやってきた畑の肥料を、マリエッタは嬉々として解体をした。

 

 こっそり着いてきていたノルトにしっかりと至近距離でその現場を最後まで解体作業を見られ、動画を教室に入って来た時から全てを撮られながら。そして肥料を麻袋に詰め終わり、全ての袋を教室のタンスに隠した。後で夜にそこから取り出して、村に魔法で移動させる為に。

 

 ようやくその作業が終わったので帰ろうと振り向いた際、客観的に見るとノルトの胸に飛び込むような形でぶつかった。

 

 

「せ、先輩っ!? こっ、これは……その、えっと……」

 

 

 

 どうしよう、見られたわ。

 

 

 この状況にマリエッタは青ざめながら必死に、どうすればこの状況を切り抜けられるかを考える。だが頭の中はショートしているようで、真っ白になっていた。

 

 絶対に嫌われた、幻滅された。嫌われたくない、でも何よりも……また離れていってしまうかもしれない。それが何よりも怖い。

 

 そんな気持ちを無意識に感じ、それに気づいていないマリエッタは、前と同じようにまた離れていってしまうくらいならと考え、手に持っていたナイフを強く握り締め、振りかざそうとした。

 

 

「随分と大胆だな、準備もせずに行うとは……。全く、次からは計画を立てて行動しろ」

 

 

「……え」

 

 

「どうした、その間の抜けた顔は。まさかこの俺が他の誰かに言うとでも?」

 

「そ、そうじゃ……なくて、いくら相手が相手でも、人を殺す所を見たら……。普通は叫びながら逃げて誰かに言うか、腕に自信がある人なら私を取り押さえるわ。そんな、庇うみたいな事──」

 

 

「惚れた女性の秘密の一つや二つ、守れなくてどうする。それに今マリエッタが殺した奴らの事は、その辺に落ちている石以上にどうでもいい。いや、むしろ死んでせいせいした」

 

 

 そう言い、ノルトは血で汚れた部屋を魔法で清掃し、現場にある全ての証拠を無くす。

 

 

「今日この場で起こった出来事は、若い男女が誰も居ない場所に集まり、二人っきりの時間を過ごした。何も珍しい事ではない、よくある事……そうだろう?」

 

 

 まるで先程の惨状は無かったかのように綺麗になった教室で、ノルトはマリエッタに言い聞かせた。

 

 

「……えぇ、そうね」

 

 

 この日以来、マリエッタはノルトならどんな自分でも、自分の好きなオシャレも、ありのままを全て受け入れてくれる。この人は絶対に自分だけを愛して、離れていくことは無い。

 

 この人こそが、自分の運命の人で王子様。マリエッタはそう確信した。確信し、そしてやっと自分の気持ちに素直になった。

 

 そこからは実に早いもので、マリエッタの態度は180度変わっていた。

 

 

「せ、先輩! お、おはよう……ございます」

 

 

 全く目を合わせられないまま、マリエッタは俯いて体を縮こまらせた状態でノルトに挨拶をした。

 

 一番可愛い時の自分で会いたくて、頑張ってメイクをした状態だから、本当はしっかりと目と目を合わせて自分を見て欲しかった。

 

 だがメイク自体はとても久しぶりだった上、前世のようなコスメは持っていない。お金が無いから、手作りの植物性の染料などを使って代用したし、頑張って作ったものの、自分の肌には正直合っていないし好みの色でも無い。

 

 

 全く自信がなかったのである。

 

 

「そう言われたのなら、俺も挨拶を返したいところだが……下ばかりを見るな、肩が丸まっているぞ。俺の前に立つのならもっと堂々としろ、胸を張れ」

 

 

 そう言いノルトはマリエッタの肩を掴み、クイッと姿勢の悪くなっていた背を伸ばす。

 

 

「それから──」

 

 

 そして、顔が見やすいようにマリエッタの顎を指で持ち上げた。

 

 

「おはよう、いつも以上に綺麗だな」

 

「ふぁい……♡」

 

 

 マリエッタの好きな人に対する好感度の上昇率はいつも倍数。会っても会わなくても、好きな人の事を考えるだけで常に上がり続ける。

 

 つまり一体それがどういう事なのか?

 

 ここまで見てきたマリエッタを知る読者の諸君にはもう、お分かりであろう。狂人なサイコパスからクレイジーヤンデレサイコストーカーにマリエッタは進化したという事である。

 

 しかし、そんな進化すらものともしないのがノルトだ。

 

 ある時はずっと図書室で本を読むノルトをストーカーし、その様子を網膜に焼き付けているマリエッタに──。

 

 

「(ノルトさん(・・・・・)……今日もカッコよくて可愛いわ♡)」

 

「……マリエッタ、いつまで後ろから俺を見ている気だ」

 

 

「(き、気づかれてるっ!?)」

 

 

「見るなら俺の隣で見ろ」

 

「じゃあ隣で見てるわね♡」

 

 

 またある時、ノルトに四つん這いになって着いてくる女子生徒達を畑送りにしようと、肥料となった物を加工していたマリエッタに──。

 

 

「これでよし、早く畑に埋めないと……きっと今年の冬も豊作ね! 楽しみだわ♡」

 

「頬に付いているぞ」

 

 

 魔法で濡らしたハンカチで返り血を拭き取ってあげたりもした。

 

 

「うふふ、ありがとうノルトさん♡」

 

「化粧をするなら血より、インペラーにしろ」

 

 

「あっ! それって隣国の皇帝も愛用してるブランドよね!」

 

 

 そして、そんな二人が正真正銘の恋人関係になったのは、テストの点数が良くノルトにそれを報告しに行った日のこと。

 

 

「ノルトさん! 見て、この前の小テスト!」

 

「マリエッタにしては中々良い点だ」

 

 

「うふふ、そうでしょう? 前に教えてもらった所が出てきたの!」

 

「しっかりと覚えている証拠だな、頑張ったご褒美は何が良い? なんでもひとつ言う事を聞いてやる」

 

 

「なっ、なんでも……!? じゃ、じゃあ……婚姻届に貴方の名前を書いて欲しいわ!」

 

「いいだろう」

 

 

 既に自分の名前と立会人の名前が記入してある婚姻届にノルトの名前を記入させ、書き終えたノルトはその婚姻届を魔法でヒエリカの自室に転移させた。

 

 

 

「あっ!?」

 

「出すのはまた今度だ」

 

 

「そ、そんな……」

 

「それに俺達はまだ恋人ですら無い」

 

 

 不思議な事に、これでもまだ実際は先輩後輩の関係である。仲の良さと距離感は普通に恋人だが。

 

 

「じゃあ私ノルトさんの恋人になるわ! ノルトさん、婚姻届を書く為に私の恋人になってください!」

 

「じゃあとは何だ。最初のはもはや宣言だな、やり直せ」

 

 

「えぇっ!??」

 

「当たり前だ。ムードも何も無い中、これで恋人関係になったところで嬉しい筈が無いだろう」

 

 

「ムードが無い中、いきなり告白したノルトさんが言える事じゃ無いと思うわ」

 

「…………五月蝿い、とにかく言い方を変えてくれ。この際、ムードは無くてもいい」

 

 

 そう言った結果、ノルトはもし「お父さんとお母さんが付き合った時に告白した台詞って何だったの?」と将来の子供(ノエル)達に聞かれた時、マリエッタの色気もムードの欠片もねぇ告白で付き合ったと言わなくて済んだ。

 

 

「もしかして……ノルトさん、今言って欲しいの?」

 

 

「……俺だけが言うのは不公平だろう」

 

 

「うふふ。そうね、改めてちゃんと言うのは緊張するけれど……。

 

 どんな私でも、絶対に私や私の趣味を否定しないで受け止めて、守って、私を真っ直ぐに見て、夢を応援してくれるノルトさんが世界で一番大好きよ。ちょっと(・・・・)嫉妬深い所があるから、これからも沢山嫉妬しちゃうかもしれないし、畑仕事も忙しくなる(・・・・・・・・・)かもしれないけれど……こんな私の恋人になってくれますか?」

 

「あぁ、むしろ望むところだ。いくらでも畑仕事(・・・)をして汚れればいい。その度に俺がエマ(・・)の周りを飛ぶ小蝿諸共、洗い流してやろう」

 

 

「ノルトさん……大好き♡」

 

 

 こうして後(のち)のクソやべぇヤンデレ夫婦となる2人はくっついたのである。

 

 

 

 ~・~・~・~

 

 

 

「~って事があって、今に至るの♡」

 

「意外だなぁ、お母さんがお父さん振ったなんて……それに付き合うまで結構時間かかったんだね。同じ学生で恋人でいる期間って、結構短かったんじゃ……」

 

 

 

「そうね、1年くらいしかなくて……ノルトさんが卒業した時は寂しかったわ。寮生活で同棲もできなかったし…… 」

 

 ノルト様の特別授業が終わり、ノエルはノルトに連れて帰られるがまま、家に帰ったのだが……。ノルトが帰って来るなり、濃厚なキッスと愛しか込められていないハグをしたマリエッタと、娘の前でそれをされたノルトが「やめろ」と言いながらも無抵抗なまま照れているのを見て、ふと「この2人の馴れ初め話ってそういえば知らないな……」と思ったのが事の発端である。

 

 そしてマリエッタはバイオレンス要素をある程度抜いて、学生時代の事を話したのだ。まぁその話を始めた瞬間、ノルトは恥ずかしいのか逃げるように風呂へ行った。

 

 ちなみにヴェリカ家の風呂はとにかく広く、脱衣所も広いので……誰が先に入っているかは、着替えの入った箱の中を見ない限り、分からないのである。

 

 という訳で、先に風呂に入っていたレイゼルはドキドキ☆お義父様とお風呂でエンカウント! というイベントが発生していた。実に不運である。

 

 

 

「どうして振ったの?」

 

「その時は意識してなかったっていうのもあるし、今なら考えられないし、絶対にノルトさんはしないって分かっている事だけれど……。不安だったの、もしかしたら離れていくんじゃないかって。

 

 

 だから昔のノエルがレイゼルくんに対して凄く不安になっていた気持ちも、私にはよく分かるわ」

 

「(……昔私が事故とはいえレイゼル押し倒しちゃったのをお母さんが目撃した時、私に対してやっと素直になれたのねって言ってたけれど……あれって自分もそうだったなーって心の中では思ってたのかな)」

 

 

 ノエルはそう思いながら久しぶりに母のケーキを食べる。

 

 

「同棲した時ってどんな感じだったの?」

 

 

「聞きたい? うふふ、初めて同棲した時はノルトさんと毎日、ずっと一緒に居られるのが嬉しくて幸せだったわ♡ノエル達ができてからはもっと幸せ♡でもノルトさんはもうお仕事していたから、朝から家を出ちゃうのが寂しくて……。それだったら家から出られないようにすればいいんだわ! って思いついて、夜寝ている間に魔法を使えなくさせる手錠をかけてドアに沢山鍵を付けたの!」

 

「oh……」

 

 

「でも一瞬で壊されちゃったわ……」

 

「そ、それで?」

 

 

「次の日、一緒に新しい手錠を買いにショッピングデートしたわ!」

 

「普通は監禁しようと思ってる相手と手錠を選びに行かないよ、お母さん。行く方も普通は行かないけど……」

 

 






実は先に告白した方はパッパだし、無意識だったっていうね。

本当は少女漫画みたいな感じに描きたかったけど……いつの間にか不思議な事にこうなってたぞ??なんでだぁ??

まぁとにかく、ヤンデレバカップルは近づくより見守るのが一番だね。

ちなみにノルトパッパがどうしてマリアじゃなく、エマ呼びなのかというと……マリアという名前は聖母の名前というイメージがあるので、合わないと思ったからでふ。

エマッマについてもうちょい詳しく知りたかったら、下のURLから質問するんだぞ。まだ登場してない設定あるからねッ!


https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=310118&uid=338603




~おまけ~


「……エマ」

「ノルトさん、おはよう♡」


「あぁ、おはよう」


ブチッ


「あらっ!? 嘘、鋼でできてるのに……」

「脆すぎる、次からは材質がオリハルコンの物にしておけ。俺がこんな物で自由を奪われる筈が無いだろう」


「そうね……」

「明日は休みだ、その時に新しい手錠を買いに行くぞ」


「本当!?ショッピングデート、楽しみだわ!何を着ようかしら~っ♡」



~おまけ2~


「そういえばノルトさん、私の何処が好きになったの?」

「夢の為にこの俺を振る所だ」


「……あの時の事、今も気にしてるのね」

「多少はな」


「本当の所はどうなのかしら?」

「……嘘は言っていない。本当によくある、頑張っている姿を見ている内にいつの間にか……というありきたりな話だ。俺には熱中できるような趣味も夢も無いからな……。

あるとすると、今の所はルトとエルマーの世話や寝顔を見ては、成長した姿を想像し……いつまでもこの平穏が続くのを願う事ぐらいだ」



~おまけ3~


「……あの、お義父さん??背中洗ってくれんのは嬉しーけどさ……なんか力加減強いと思う、というか痛ぇんだけど」

「気のせいだ」


「あと今日、俺めっちゃその言葉聞いた気がするし、お義父さんに付けられた傷のとこばっか洗ってる気が――」

「黙って洗われていろ駄犬」

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