※この作品はR-18です。

チュートリアル用のチョロイン幼馴染に転生してしまった   作:水性さん

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今回は過去編も挟んでおります。




海と言えば夏!!

「……疲れた」

 

 

 天宮(あまみや)千弦(ちづる)はベッドの上で喪服姿のまま寝転がる。顔は色も悪く深い隈ができている為、実年齢以上に老けて見えた。

 

 先程一人娘の葬式に行ったばかりで、今はその帰宅後である。

 

 

「(もう何も考えたくない、何もしたくない、全てがどうでもいい……いっそ死ぬか)」

 

 

 年齢は50代。親は有名なブランド会社の元社長で、自分はその跡取りとして作られた。兄と弟は居たが、体が生まれつき弱く心臓の病を患っていた兄は病死。弟は年齢が10以上も離れており、事故によって生きてはいるが今も意識不明。いわゆる植物状態。

 

 つまり残っていたのが自分だけであった為、継がなければならない状況下に置かれていた。

 

 そして次の跡取りとして妻は前時代的にも程があるが、親が決めた相手を宛てがわれた。妻に千弦は不倫されている方の立場だったが、別にお互い他人だと思っているので、それを知った所で何の感情も湧かなかった。まぁそれを知った後、千弦も風俗に行くようになったのでお互い様だが。

 

 しかし、そんな妻との間に産まれた娘だけは愛して何よりも大事にしていたのだ。

 

 娘の為に敷かれたレールを走り、元々怠惰な性格だったが、がむしゃらに仕事に取り組んだ。幸いにも経営の才能はあった為、元から大きかった会社は更に大きくはなったが……。

 

 大きくなり過ぎたせいで、社長である千弦の仕事は増えていった。社員達を路頭に迷わせる訳にはいかないので。

 

 ただそのせいで千弦は家に帰れなかった。いや、逃げていただけなのかもしれないが。

 

 在宅勤務をしたら絶賛不倫中の妻に会う。仮にも戸籍上だけの関係とはいえ、そんな存在は誰だって見たくはない。

 

 娘に会いたいと思いながら、仕事を理由に家に帰る事をしなかったのだ。考えている事がどうであれ、行動に移さなかった。

 

 そんな家庭環境で育つ子供は遅かれ早かれ、心が歪む。その結果が、今なのだ。

 

 流されるまま千弦は生きてきた。ただ自分で考える事を止め、求められるがままに動いた。その方が楽だったからだ。その結果、全て失った。

 

 そして千弦はまた、楽な方へ逃げる選択をした。その死に方も実に怠惰な方法で。わざわざ痛くない方法で死ぬ為に、その為だけに海外へ行き、安楽死を取った。

 

 天宮千弦の人生はこれで終わった。

 

 ……しかし、次が訪れてしまったのだ。今度は永遠の時間を過ごすという、彼にとって一番の罰を受けることになって。

 

 

 

 ~・~・~・~

 

 

 

「ティア、そろそろ仕事をしてくれ」

 

「もうちょっとだけ置きたいなぁ」

 

 

 アレスはジトーっとした目で妻にして主人であるティアを見ると、ビーフシチューを口に運ぶ。

 

 

「周りが困るだろう、特に僕が」

 

「でもすぐに終わらせたら、ボクの暇つぶしが無くなっちゃうじゃないか」

 

 

 山のような報告書や沢山の書類がひしめいている中、ティアは一時間でそれを全て終わらせてしまう。別に面倒くさがっているからやらないという訳では無い為、周りからしたらさっさと仕事を終わらせてくれた方が助かるのだが。

 

 

「吸血鬼にとって暇は大敵だよ? 忙しい事がどれほど有難いことか……キミは研究に勤しんでるし、人間との外交もあるから暇とは無縁だろうけれど」

 

「それで一国の王達からほぼ全員に睨まれるのは僕なんだが?」

 

 

「んふふ、ごめんね?」

 

 

 ティアのわざと人を巻き込む趣味に、今更何を言っても直る事は今後一切無いので無駄な事だ。相手が魔者達の王兼この世界では邪神と呼ばれている概念の神なので、元人間にして勇者であり眷属の裏切り者を睨みつけるのも仕方のない事だろう。

 

 アレスはハイドとエリオと共に先代魔王、そして現在では義父にあたるディアルトを封印した。魔王が凶変する問題を解決した後でティアが封印を解き、ディアルトを元の心優しき魔王に戻した後で王位の継承を行った。

 

 そしてティアは魔王となり、早速人間達の前に現れ、宣言したのだ。

 

 

『キミ達人間は愚かだから、ボクがこの世界を支配して……より良い生活をさせてあげるよ!』

 

 

 ……と。

 

 最初人間達は何言ってんだこいつと、誰もがバカにしていたのだが……ティアが人間と偽り多くの身分を使い分け、様々な事業に手を出して物流やインフラ、更には食物に情報、不動産、そして魔獣の討伐、防犯、そして一番大事な生活水準の大幅な上昇、更には政治まで。どんどん人間達の生活に大きく関わる所で仕事をするようになり……、もはやティア無しでは国どころか世界が回らないという自体に陥った。

 

 一体どうやってそんな事を可能にしたのかというと、超高性能アーティファクトのロボットを使ったのである。質感や表情、温度、声。それら全て、生身の人間と変わらない物を一人で用意したのだ。

 

 ティアが全てそれを遠隔から操作、そして100年経った後で正体を告白した。人間達は知らずの内にティアによって楽で豊かな生活という恩恵を受けていた事に驚き、ヤバいヤバいと騒いだ。

 

 人が住んでいない土地は合法な手段によって、ほぼ全てティアが所持。家の建設技術の向上に大いに貢献し、耐震耐火、耐衝撃、防犯などの安心できる上に夏や冬が過ごしやすい家の設計。食に関する規定や法律を整備、野菜や肉、魚の養殖などの産業も運営。服は安価にして機能やデザイン性も優れた物を作らせ、衣食住を完璧に掌握されていた。

 

 ただでさえその部分が強いと言うのに、インフラや政治まで手を出されたら、もうお手上げである。

 

 人間達は知らずの内にティアによって支配され、気づいた頃には各国の王達はもはや国の飾りと化した。本来なら王族がやるべき仕事を全てティアが行い、法の改正や整備もほとんどティアが関わり、王から任され行っていた。

 

 自堕落で優雅な生活をする事になった王族はただの穀潰しとなっていたが、それ以上に国が安定して回り、国民達は貧困には陥らなかった。

 

 そんな時、ティアからの衝撃の告白と「じゃあボクが世界の頂点で、世界征服したって事でいいよね?」という発言を聞き、人間達は誰も肯定はしなかったが、誰もが文句のひとつすら言えなかった。

 

 なので「いや、お前……世界征服以前に概念の神じゃねぇか」なんて事は誰も言えなかった。

 

 

「さて、アレスも朝御飯を食べ終わったし、これ片付けたら一緒にお風呂──」

 

 

 そう言いかけ、ティアは皿を取った……その時。

 

 

「!!」

 

 

 箱庭のルールを犯す魔法が使われた事を感知した。

 

 ティアは大昔、前世の男神だった頃に箱庭の法を作った。箱庭というのは、神が作った世界の事だ。その箱庭を作る際のルールという物があり、その中の一つには「故意に人間の魂、又は人間そのものを、別の世界に連れて来てはいけない」と「外の人間を魔者にしてはいけない」というルールだ。

 

 世界の裂け目や条件が揃ってあれば例外として、基本的に別の世界に転生するという事は有り得ない事。

 

 まず、魔法や聖力などは現実には存在しない空想の物だと思われている世界の人間を(だが微量ながら魔力は存在し、魔力を集める能力が高いと霊が見えたり、少し特殊な能力が使えたりする)それらが存在する世界に故意に転生、又は召喚させると、そもそも魂に魔力というエネルギーの情報などは無く、受け付けない。

 

 しかしその情報は無いが、精神エネルギーである魔力を体は吸収してしまい、魂もとい心臓に集め……大きな負荷を受け、最悪の場合は死亡、又は魂が自壊する。

 

 つまり前者は魂を守るためのルールであり、別に故意にしたところで、それによって生じる問題が無ければ問題は無い、というもの。

 

 そして本来なら魂は肉体の記憶を保持する事は無いが、転生した後もそれを保持してしまう。

 

 普通は人の記憶や感じた物は脳で記録され、処理される。死によって肉体と共に記録は消去され、魂は新しい肉体に入り込む。時々、強い未練や感情などがあれば、魂に情報が刻まれ前世を覚えている事もあるが。

 

 しかし無理矢理異世界に転生、又は召喚された者は魂が変質してしまい、今後魂が情報を抱えきれなくなり崩壊するまで記憶を魂で全て記録してしまう。

 

(神や特殊な魂を持つアレスのような存在であれば問題は無い)

 

 なのでその問題をクリアする事ができれば、問題は無い……が、そんな事ができるのはごく限られている。

 

 そして後者は言わずもがな、禁忌である。人間と魔者の魂は全く違う構造をしており、人間よりもずっと複雑にして大きな情報を持っている。

 

 人間の魂を魔者の魂に無理やり変えるとなると、魂を熟知し扱える存在でなければならない。でなければ、壊れてしまうからだ。

 

 元々人間を魔改造して、神の器として作られた吸血鬼であれば、どんな魂であろうとも肉体(器)に移すだけで問題無く行動できるが……。

 

 ……今回の場合は、問題が起こってしまったという事だ。

 

 

「アレス、ちょっと出かけてくるよ。すぐに戻るからいい子で待ってて」

 

「……あぁ、分かった」

 

 

 ティアはアレスにキスをすると、それから禁忌を犯した愚か者共の元へと転移魔法(ムーヴィ)を行使した。

 

 その先は暗い地下室で二体の悪魔が居り、その悪魔は異世界から自害した魂を召喚し、用意していた獣人族の肉体にしまおうとしていた。一体は受肉した普通の悪魔、人間の魂を食い消滅させる存在。そしてもう一体は悪魔は悪魔でも、人の精気を吸う淫魔(サキュバス)だった。

 

 

「キミ達、誰の庭でこんな事をしているのかな」

 

「……流石に鼻がいいな」

 

「あら魔王様、ご機嫌いかが?」

 

 

「頗(すこぶ)る良いよ、数十秒前まではね」

 

 

 ティアは器を中心に発動してしまった魔法陣を見て「それ、回路の書き込みが足りないし間違ってるよ。何をしたいのかは分かるけどね」と言い、横から魔法陣の行使を無理矢理代わって、新たに書き加える。そして愚か者共を闇魔法の鎖で拘束した。

 

 

「なっ!?」

 

「そんな、魔法陣を横から奪うなんて……!! そんな事をしたら魔法が中断される筈!!」

 

「ちょっと静かにしてくれるかな、集中できなくなる」

 

 

 ティアはそう言うと、闇魔法の効果で彼らの喋るという行為の概念を消す。何故そのような事をしたのかというと、途中で止めたら魂にどんな影響が出るか分からない上に、自壊してしまいかねないからだ。それならしっかりと魔法を成功させた方がむしろ安全、そう思い魔法陣を完成させ代わりに行使した。魔法が行使された時点で魂は変質してしまっている為、もうどうにもできないので。

 

 彼らが行おうとしたのは、人(魔)工的に悪魔を作ること。

 

 それも元人間で魂を消滅させず、負の感情のみを取り込み、悪魔化した後も人間の頃のように肉体を持ち、魔者のように自ら魔力を生み出す。そして淫魔の力を持ち、様々な方法で魔力の供給ができエネルギーの枯渇を知らない悪魔。

 

 彼らはその悪魔を、自分の魔力供給の為の道具にしようとしていたのだ。魔法陣からは使い魔というよりも、それ以上に強い強制力のある隷属の契約も込められた回路が含まれていた為、ティアはその目的に気がついた。

 

 そもそも魔力供給に困っているなら、ティアに言えば良かったのだ。しかしそれをせず事を起こしたという事は、実験の意味もあったという事。しかも様子からして、禁忌だと分かっているようだった。

 

 そんな勝手な真似、この世(コズモ)を作り神同士の間にも存在する法(ルール)を作った概念の神が許す筈が無いのだ。

 

 辺りは奔流する魔力の余波によって発生した風が吹き荒れ、魔法の行使が終了すると共に辺りに強い衝撃が起こった。

 

 

「やぁ、お目覚めはどうかな」

 

「……最悪だ、死んだと思ったらもう来世か? しかも明らかに異世界、冗談きついぜ」

 

 

 ■弦は目を覚ますと、目の前にはとんでもない明らかに雰囲気と髪や口から覗く牙から人外だと察せるゴスロリ少女が居り、なんだこれ夢か?と千■は思うのだった。

 

 

「残念ながら、来世じゃなくて終わりの無い延長戦だよ。キミは死んで悪魔になったんだ、怠惰を司る悪魔としてね。とりあえず、今日からボクはキミを不可抗力とはいえ悪魔に作り替えたご主人様だ。これからはボクの為に働くといい。

 

 衣食住と愉快な同居人達もセットに、飽きない日常をキミに保証するよ」

 

「はは……そりゃ随分と手厚いな」

 

 

「……さて」

 

 

 ティアは愚か者達に威圧(プレッシャー)の籠った視線を向けると、二体の悪魔は震えながらも抵抗しない。

 

 

「良かったね、ボクに感情ができて……前のボクならキミ達の魂を消してたよ。後でキミ達の処遇を考えておくから、しばらくそこに居るといい」

 

 

 ティアはそう言うと、新しく悪魔として生まれ変わった■■を連れて城に帰った。ここで先に説明しておくと、二体の悪魔達はあのままティアの気が済むまで放置という名の封印である。一体鎖が解かれるまで何年かかるかはティアにも分からないが。

 

 そして悪魔となった千■は魔王城前に連れてこられ、ティアは大き過ぎる門を開ける。

 

 

「ただいま皆」

 

「「「ピキー!」」」

 

 

 するとその先にはヘルムを被ったスライム達が居た。不思議と■■はスライム達の言葉が何故か分かり、スライム達はティアに「おかえりなのねん、魔王しゃま!」と言っているのが分かった。スライム達はティアに飛びつき、ティアはスライム達を撫でる。

 

 兵士と言う割にはかなり言葉遣いがフレンドリーであるし、ティアのスライムに対する態度も兵士と言うよりも家族であり自身の子供にするかのような態度と様子だ。

 

 

「ピキー? (ところで魔王しゃま、もしかしてその後ろに居るのって?)」

 

「ピキ、ピキ! (新しいドレイなのねん!)」

 

「まぁそうだね、だからこれから色々と神であるこのボクが直々に教えてあげないといけないんだ」

 

 

 ~・~・~・~

 

 

「まぁ、大体分かった。つまり俺は結局最初から最後まで他人に使われる運命ってことか」

 

「でも今回は当たりじゃないかな? 使われる相手と環境はね」

 

「どうだろうな」

 

 

 そう言うのは3時のオヤツを食べるアレス。今日のデザートはみたらし団子であり、大皿3つをピラミッドのように積み上げて用意された物を食べていた。

 

 

「アレス、それってどういう意味かな?」

 

「気をつけろ、ティアは人を振り回すのが趣味だ。トラブルが好物と言っても過言では無く、分かっていてワザとトラップにかかる。自分よりも圧倒的に弱い人攫いにあえて攫われ、遠足帰りの感覚で人攫いの拠点から出ようとする。

 

 気をつけろ、何か言った所でティアは直す気がない。…………本当に気をつけろ」

 

「(今合計三回言ったな……外れ引いたか)」

 

 

 ■■は嫌な予感がしながらも、アレスからの忠告を肝に銘じる事とした。

 

 

「そういえば、名前を付けてなかったね」

 

「名前? 何でまた名前なんだ?」

 

 

「だってキミ、自分の名前覚えてないでしょ?」

 

「……魔力の影響力って強いな」

 

 

 ■■は「流石に自分の名前を忘れる訳が無いだろ」と言おうとしたが、言う前にティアの言う通り、何故か忘れてしまっている事に気がついた。正確には実在した人物の名前、全てを。親や兄弟、自分の名前すら忘れていた。

 

 

「それでキミもうボクの使い魔っていう形のドレイだから、ご主人様であるボクが付けてあげようと思って。折角の新しい人生なんだしね。いや、もう悪魔生かな……どんなのがいい?」

 

「なんでもいい、呼びやすくて無難で紙に書く時に書きやすい名前でいいぜ」

 

「それでいいのか? 一生付き合っていくものだぞ」

 

 

「いい、好きにしてくれ」

 

 

 だらーんと横になり、■■は尻尾で床をポンポンした。そんな様子にアレスはそれ以上何か言うのを止めた。何故ならそう言う本人の顔は、本当にどうでもいいと言わんばかりの顔をしていたのだ。まるで未来に期待していないかのような、そんな顔で。

 

 

「うーん、じゃあ今日からキミの名前はネロ。キミにピッタリだと思うんだけど、どう?」

 

 

 聞いた■■改めネロは「酷いダブルミーニングだな」と思いながらも「いいぜ、じゃあ今後ともよろしく、ご主人サマと旦那サマ~……」と言ってため息を吐く。

 

 

「(俺が10代の頃だったら、この展開に喜べてたな……)」

 

 

 こうしてネロはティアの使い魔となり、ダラダラ過ごしていたらいつの間にかティアとアレスの子供のお守り役になってしまい、現在より約50億年前……。つまり頭のおかしいエロ同人的世界が産まれてすぐ後の事。

 

 

「はぁ……どうしよう」

 

「どうしたティア、珍しく困ってるな。話だけは聞いとくぜ?」

 

 

「……いや、太陽と月の神に頼まれて最近ボクが新しく作った魔者と、この世界をほとんどコピーした世界をプレゼントしたんだけど……まさか魔王まで用意する事になるとは思わなくて。渡した後に魔王も欲しいって言われて驚いたよ。でも吸血鬼を作るのは大変だし、人間の命を使う必要がある。その中でも魔王一族は特別だから……いっそボクがあっちでも魔王になるしかないなって思ってるんだけど、正直気乗りがしなくてね……」

 

「あぁ、あの存在が薄い本の二柱か。アルダかレア辺りを魔王にしとけばいいんじゃないの」

 

 

「アルダは世界中を旅して加護を与えてるからいつ帰ってくるか分からないし、レアは普通に嫌がるだろうし……というかそもそも、あんな奴らの遊び場に連れていきたくないしね」

 

「まぁ、だろうな」

 

「じゃあ私が行ったらお母様喜んでくれる!?」

 

 

 ティアとネロはビクッとして声の聞こえた方を見た。そこにはクマ伯爵(ぬいぐるみ)を持った末っ子のティアラが、目をキラキラさせていた。その表情は、いかにも「お母様の役に立ちたい! 褒めて欲しい!!」というやる気に満ちたものだった。

 

 

「てぃ、ティアラ? でもあの世界はこっちよりもっと時間の流れが速いから、会えるのは100年に一度になるよ?」

 

「たったの100年でしょ? 平気だよ!」

 

 

「それにこの世界より絶対に変で愚かな人間がいっぱい居る世界だよ??」

 

「どの世界でも人間は愚かでしょ?」

 

 

「な、何かされるかもしれないし……」

 

「人間が私に何をできるの?」

 

「諦めろ、こういうワガママで傲慢な所はご主人サマ譲りだぜ」

 

 

 ティアは不敬な黒猫の尻尾をぎゅっと掴み、それから研究室に居るであろうアレスの元へティアラを抱え転移した。

 

 

「アレス、ティアラを説得して!!」

 

「無理だ、母親似だからな」

 

 

 即答であった。

 

 

「お父様、私魔王になる!」

 

「そうか、できればやめてくれ」

 

 

「なるの!!」

 

 

 すっかりティアラは駄々こねモードに入っていた。そんな娘にティアは観念し、ネロの尻尾を離す。

 

 

「……ネロ」

 

「何だ? 面倒事はお断りだぜ」

 

 

「ティアラの見守り、頼んだよ」

 

「……やっぱそうなるよな」

 

 

 そして長い年月が過ぎ、現在……。

 

 

「サマーと言えば海じゃ! という訳で妾、海行きたい!!」

 

「じゃあ荒波に呑まれて来れば? 俺は絶対に助けに行かないけどな」

 

 

 和ゴシック魔王城にて、ネロはダラダラとポテチを食べながら、元祖感覚遮断エロトラップ物のエロ同人を読む。

 

 

「魔界の海な訳なかろうが! 近づくだけで即戦闘になるじゃろ!! 善は急げじゃ、前は一人で人間界に行ったからクロウに怒られたけど……ネロも居るし大丈夫じゃろ!」

 

「はぁ? 俺は行かないって言ってるだろ」

 

「人間界の海!? オレも行く! 絶対行く!!」

 

「ピキ、ピキピキー! (なんだか面白そうだからぼきゅも連れていくのねん!)」

 

 

 こうしてネロはワガママな子供×2人とスライム一体のお守り役として、海へ行く事になってしまったのである。ネロはとんでもなく深い溜息を吐いた。

 

 

「(怠惰を司る悪魔の中でも、俺ほど働いてる奴は他に居ないだろうな……)」

 

 

 ネロはそう思いながら、ウッキウキで準備をするティアラとレイネルを尻目にポテチをつまんで食べていた。するとティアラはふと思い出す。

 

 

「そうじゃ、レイネル。最近……その、様子はどうじゃ?」

 

「あぁ、それなんだけどさ、聞いてくれよ! さっき話してて、笑ってたんだ! まぁ、アイツの話をしてる時だったけど……」

 

 

 それを聞いたティアラは顔をほころばせて喜ぶ。

 

 

「そうか、そうか! 良い傾向じゃな! 折角だし、ちょっと外に出させよう。久しぶりに太陽の光当たった方が回復も早くなるじゃろうしな」

 

 

 ~・~・~・~

 

 

「はぁ……」

 

「おばあちゃん、抱き締められながらため息つかれたら困るよ」

 

 

 ノエルはノエリアに抱きしめられながら、某無人島でスローライフゲームとよく似たゲームでヒレのある大きな魚影を見つけて、釣り糸を振り下ろした。

 

 

「だってもうすぐで家に帰っちゃうでしょう? そう思うと凄く寂しいのよ~っ!!」

 

「まぁね……私もちょっとだけ寂しいかな」

 

 

 魚影が針にかかったのを見てノエルはボタンを押すと、ノエルに似たキャラクターが釣りあげたのは、メンタルand胃がよわよわのマンボウである。そしてノエルは海から離れて島クリエイト機能で即席で作った池にマンボウをわざわざリリース、そして埋め立てた。控えめに言って鬼畜だ。

 

 

「ちょっと(・・・・)??」

 

 

 そして今、ノエリアの視線はノエルの頭のてっぺんであり、じっとノエルをハイライトが消え失せた目で見ていた。

 

 

「 ……もうエルきゅんったら、恥ずかしがって嘘ついちゃったのね! 嘘はダメよ、可愛いけれど!」

 

「はい……本当は凄く寂しいです、永住しちゃおうかなって思いました……」

 

 

 照れ9割、怖さ1割。普通の人間なら、198cmの祖父に当たる男からこんなクソ重い愛のこもった目をされたら失禁物だが、ノエルもノエルで日頃からクソ重い感情を両親や恋人から受けていた為、怖いという感情がかなり無くなって、普通のように思えてきていた。かなりノエルが日常的にヤンデレのヤンに触れて、慣れてしまっていることが伺える。

 

 

「そうなのね~♡ ず~っとここに居てもいいのよ?」

 

「そうしたいけど、フルタ村が私の故郷だから……故郷からはあんまり離れたくないな。来年の夏にはまたここに滞在するから、待っててね」

 

 

「そう……じゃあ待ってるわ」

 

 

 ノエルがヒエリカに居るのも残り一週間。ノエリアは今の内にと、思う存分ノエルを吸う。

 

 

「くーん……」

 

 

 するとロロは構ってくださいと言わんばかりに甘えてじっと見つめる。そんなつぶらな瞳で甘えられてしまったらノエルはゲームを中断せざるを得なくなり、とりあえずノエルはロロお気に入りのプキュプキュ鳴るボールを転移魔法(ムーヴィ)で持ってくると、それをぶん投げた。

 

 

「わん!」

 

 

 ロロは勢いよくボールを追って走っていき、ボールを拾うと爆速でノエルの元にやって来る。

 

 

「はっはっはっはっ!」

 

 

 拾ってきましたよ、ご主人! ほめてください! 

 

 キラキラとした目でロロはブンブンと尻尾を振りながらノエルを見つめる。

 

 

「ロローッ♡ すごく可愛くて偉いね♡♡」

 

「わん!」

 

 

 モフモフな白い毛並みを撫でくり回すと、ロロの尻尾は更に激しく揺れる。ちなみにロロはおしりの方を撫でるといつも痛がるので、ノエルや家族は全員撫でていない。ちなみにその原因が、尻尾の振り過ぎによる筋肉痛だ。なんとも可愛い理由である。

 

 すると視線を感じ、ノエルはその方向を見る。そこにはレイゼルが居り、床に寝っ転がった状態でノエルをじっと見つめていた。

 

 

「ノエル、俺は?」

 

 

 犬に張り合う勇者に、ノエルは見なかった事にしてロロを撫でる。

 

 

「ノエル、俺は??」

 

「……昔は偉くて可愛かったよ」

 

 

 また聞いてきたので、今度は答える。もちろん10年前の話だが。

 

 

「今は?」

 

「……」

 

 その問いかけには答えず、ノエルはロロを撫でまくる。

 

 

「ノエル?」

 

 

「…………」

 

「何で黙んの??」

 

 

「はぁ……」

 

「何でため息????」

 

 

 昔を思い出すと、どうしても「何でこうなってしまったのか」と思わざるをえない。

 

 

「急成長してしまったなぁ……って思ってるだけだよ」

 

「え? んー……?? ノエルはショタコンだったってこと?」

 

 

「違う」

 

「じゃあどーゆーこと?」

 

 

「自分の行動を振り返ってみれば?」

 

 

 ノエルはそう言うと、レイゼルはゴロゴロと転がりながら考え、ノエルの所にやって来る。そしてレイゼルは何かを思い出した。

 

 

「あっ!!」

 

「(なんとなく、別の事を思い出しただけで自分の行動に反省してなさそうな気がするな……)」

 

 

 その通りである。

 

 

「そういえば、せっかくの夏休みなのに俺とノエル今まで海行ったことなくね!?」

 

「……海? そういえば行ったこと無いね」

 

「あら、そうなの? 今ヒエリカではサマーシーズンだし徹底的に海の魔獣を駆除して、魔力の流れの管理と溜まりすぎた魔力をアーティファクトで回収してるから、安全よ」

 

 

「なーなー、明日海行こ」

 

「行かない」

 

 

「何で!?」

 

「外暑い……」

 

 

 まぁ、行かない理由はあともうひとつあるのだが。ノエルはとりあえず行かないという意志を伝えると、レイゼルはノエルにくっついた。

 

 

「ヴーッ……わん!! わんっ!!!!」

 

 

そんなレイゼルに嫉妬でロロは吠える。普段鳴くことはあれど吠えることは無いロロだが、大好きなご主人の隣をボスに認められていない&躾のなってないデカイ犬が奪おうとするなら話は別。エルに時々気分で寝床を横取りされる事もあるロロだが、そんなロロにも譲れないものはある。

 

 

「行こー?」

 

「行かない」

 

 

「行く!!」

 

「行かないって」

 

 

「行きたい!!!!」

 

「ヴゥ゙ゥ゙ゥ゙ッ……」

 

 

 レイゼルはまるで小さい子供かのように腕と足をバタバタと動かしてわがままを言う。実に見るに堪えない16歳児だ。そんなレイゼルにロロはガルガルガブガブと噛み付いていた。マジ噛みである。

 

 

「だから、行かないって言ってるでしょ?」

 

 

 ノエルはそう言いながら、冷ややかな目をして呆れた様子でレイゼルを見ていた。

 

 






勇者大失格の世界の悪魔はちゃんと魂を消滅させて食べるし、自然発生するタイプ。チューチョロは魂を浄化させる、元々は人間で自害して悪魔になるタイプ。浄化し終えた魂はフーッて息を吐くと体内から出ていく。ちなみに勇者大失格の方は魂が穢れたままなので、消滅しないとずっと悪人として転生し続ける。


そういえばしっかりと闇魔法の説明をしていなかった気がする。

我氏が書く作品における闇魔法は、よくあるダークネス的力の事ではなく、使う対象の概念を操作する魔法。概念を消したり、新たに作ったりするのが闇魔法です。

つまり相手の生命という概念を消せば、死が残って死にます。

逆に死を消せば、不死の存在になります。ただ、老いという概念も消さないと永遠に歳をとり続けます。

概念を作るのはとてもエネルギーを使うのと、概念の神であるティアにしかできません。

魔者さん達が闇魔法を使えるのは、概念の神である前世のティアによって産まれた存在だからです。

そして闇魔法は何も指定しないで使用した場合、デフォルトが概念の消去なので、人間にとっては害しかありません。

その効果はまるで呪いのようで、魔者さん達以外はちょっとだけでも闇魔法に当てられた生物は徐々に生命という概念が消えて死にます。

基本的に人間は魔力を感知できない為、闇魔法に当てられても気づきません。病気だと勘違いして死にます。聖力浴びたり、元々聖力が強い人間は魔力が相殺されて無になるので、問題無いです。

ノエルさんがエロゲの原作知識で闇魔法がめちゃくちゃ強いって言っていた理由はこれです。

まぁそんな訳で、生命エネルギーである聖力とは真反対の、デフォルトが生命を消去する効果がある力なので闇魔法って呼ばれております。







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